巨人の後、寄生獣が引き継げるか…少女・女性向けコミック誌部数動向(2014年7月-9月)

2014/11/03 10:00

印刷物、特に雑誌の不調ぶりは少年・男性向けのものばかりでなく、少女・女性向け雑誌にも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2014年10月27日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2014年7月から9月分)をもとに、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の動向を大まかにではあるが確認していくことにする。

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ちゃおとBE・LOVEのトップ変わらずだが大よそ軟調


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など記事内で使用している各種用語の解説、諸般注意事項、そして「印刷証明付き部数」を基にした定期更新の記事に関するバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にまとめて掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌。要は比較的年齢が若い世代向け、未成年でも高校生ぐらいまでを対象とするもの。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無し。

↑ 2014年4-6月期と最新データ(2014年7-9月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2014年4-6月期と最新データ(2014年7-9月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌の「ちゃお」の独走ぶりは、少年コミック誌における「週刊少年ジャンプ」の勢いに例えることができる。第二位として続く「別冊マーガレット」に2倍以上の部数差異をつけての売れっぷりはほれぼれとするもの。現在取得可能な最古のデータである2008年4月から6月分のデータからこの独走状態は続いている。もちろんこれよりさらに昔にさかのぼれば順位変動などが見受けられるかもしれないが、無料で誰でも自由に確認検証可能な信用性の高いデータとしては、見つけることができないのは残念だ。

全体的な様相としては「ちゃお」の群抜きトップ、「別冊マーガレット」「りぼん」が20万部位で横並び、その後に「花とゆめ」「LaLa」「なかよし」「Sho-Comi」が14万部前後でそれぞれ横並び。一部微増を示す雑誌もあるが、大よそ前四半期比で多少ながらも数を減らしているのが分かる。

続いて女性向けコミック誌。「少女向け」と比べてやや年齢層の高い、大まかに区切ると大学生以上の女性向け雑誌。成人指定は成されていないが、内容的にその指摘を受けても何らおかしくは無い類の作品を見受けることができるのも確かではある。印刷部数は「少女向け」と比べてやや少なめのため、グラフの部数区切りの数も異なっている。

↑ 2014年4-6月期と最新データ(2014年7-9月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2014年4-6月期と最新データ(2014年7-9月期)による女性向けコミック誌の印刷実績績

トップの「BE・LOVE」(30-40代をメインターゲットにしたレディースコミック誌)はやや頭一つ秀でており、トップの座を不動状態としている点は少女向けコミック誌の「ちゃお」と類似しているが、それほど大きな差異は第二位の「YOU」との間には開いていない。またそれ以下の部数の雑誌が、比較的きれいな形で並んでいるのも特徴的。ただし今四半期に限ると一番上、つまり監視対象雑誌においてはもっとも部数が少ない「ARIA」に大規模な変動が起きているのが分かる。これについては次の項目で詳しく解説していく。

りぼんの健闘、ARIAの失速…四半期変移で直近動向を探る


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行い、その状況変化を確認していく。季節動向に伴う影響は受けるが、手っ取り早く部数の変化を知るには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年7-9月期、前期比)

プラス領域は誤差の範囲(プラスマイナス5%以内)とはいえ「りぼん」「ちゃお」の2誌。マイナス領域は10誌に登るが、いずれも誤差範囲に留まっている。

少女向けコミック誌の中では最大部数を誇る「りぼん」が最大の上げ幅を示しているのは意外だが、過去からの推移を確認すると意外な事実を知ることができる。

↑ りぼんの部数推移(2014年7-9月期まで)
↑ りぼんの部数推移(2014年7-9月期まで)

雑誌不況が盛んに叫ばれる昨今において、この形のチャートを形成できる雑誌は少数派。奇しくも震災を機に下げ基調が止まり、それ以降はほぼ横ばいを示している。スマートフォンの浸透が進み、子供世代でもコミック系雑誌離れが進む中、部数を20万部台でほぼ維持することに成功している。掲載漫画(&執筆陣)の固定ファンが多いのに加え、ツボを突いたアクセント的な付録の数々が魅力としてとらえられ、定期購読を続ける人が多く、それらの読者のハートをつかんで離さないのだろう。何かきっかけがあれば上昇する気配を覚えさせる動向でもあり、今後が楽しみ。

一方「Sho-Comi」は雑誌名の変更も含めたリニューアルを果たし、また2010年における小学館の少女向けコミック誌の再編成に伴いターゲット層をやや下げるなど、さまざまな手立てを講じているが、今年に入ってから徐々に部数の低下が確認できる。こちらは「りぼん」と逆で、今後の動向が不安視されるチャートではある。

↑ Sho-Comi(少女コミック)の部数推移(2014年7-9月期まで)
↑ Sho-Comi(少女コミック)の部数推移(2014年7-9月期まで)

続いて女性向けコミックの動向。少女向けコミックと比べ、一点をのぞけばさほど変わりはないが、その一点の影響でグラフそのものは大きく様相を異にする形となった。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2014年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2014年7-9月期、前期比)

↑ ARIAの部数推移(2014年7-9月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2014年7-9月期まで)

プラス領域の雑誌が少数、マイナス領域の雑誌が多数だがいずれも誤差の範囲という点では少女向けコミック誌と同じ。ただし「ARIA」は別格。

「ARIA」は「進撃の巨人」のスピンオフ「悔いなき選択」の掲載開始と共に大きな飛躍をとげ、部数を数倍にまで底上げし、「進撃の巨人」効果の筆頭雑誌として名を知られることとなった。しかしその効果も永久に続くことは有りえず、時の流れと共に失速。今四半期では特需前と比べればまだまだ部数は多いものの、前四半期と比べると大よそ半減してしまう。

該当時期に発行されたのは3誌。2014年9月号では単行本の第二巻発売と連動する形で「進撃の巨人祭り」とでも評せるように(実際、雑誌のあおりでは「進撃の巨人 スピンオフ祭り 夏」と記載されている)、さまざまな視点からとらえた、多くの作者による「進撃の巨人」のスピンオフ作品が掲載されている。「進撃の巨人」ファンからは大いに注目を集めたはずだが、部数への貢献度合いはこれまでと比べれば小さかった。

また9月27日発売の11月号では、先日新解釈によるリニューアル的な形でのアニメ版が始まった「寄生獣」の、やはり原作からのスピンオフ的な作品「ネオ寄生獣f」の連載が始まっている。こちらも話題性としては十分なものがあるが、現在のところポテンシャルは未知数。第二の「進撃の巨人」的特需を生み出すか否かは、次四半期の結果を見て判断が下されよう。

現状を明確に表現した形…前年同期比


続いて「前年同期比」の値を算出し、グラフ化で状況の確認を行う。年ベースでの動向であることから直近の大きな動きを確かめることはできないものの、季節変動の影響を受けない、より精密な形での雑誌の勢いをうかがいしれる。まずは少女向けコミック誌。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年7-9月期、前年同期比)

5%を超える下げ幅を示した雑誌は9誌で、前四半期における測定値8誌からは1誌増えている。10%を超えたのは4誌で、こちらは前四半期から変わらず。一方、前四半期比でもプラスを示した、最大部数の「りぼん」が前年同期比でもプラスを示しており、同誌の安定感をあらためて思い知らされる。それにしても有名どころの雑誌が軒並み1年で1割以上も部数を落としている現実は、複雑な想いを起こさせる。

続いて女性向けコミック。「ARIA」は年ベースでは今なお「進撃の巨人」効果が生じている状態で、大きなプラスを示す形となった。それ以外は大よそ状態として少女向けコミックと変わらない。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2014年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2014年7-9月期、前年同期比)

四半期ベースでは大きな減退ぶりでグラフの全体像を崩した「ARIA」だが、前年同期比ではプラス幅の大きさから、やはりグラフの全体的なビジュアルを崩してしまっている。「進撃の巨人」の影響力の大きさを再認識する次第。

それ以外ではプラスはゼロ誌、マイナスは10誌。誤差を超えた下げ幅は6誌。特に「YOU」はここしばらくの間、前年同期比で1割以上の減退を記録し続けており、先行きに不安を覚えさせられる。



ここ数四半期の間、「進撃の巨人」に振り回されることが多かった少女・女性向けコミック誌だが、「ARIA」の動向を見るにそろそろその影響も終えんを迎えつつある。「寄生獣」がそれに続く形となるか否かはまだ未知数。直近の販売動向についてちまたの声を拾う限りでは、少々難しいかもしれない。

今四半期では少年向けコミック誌や一部学習系雑誌において、「妖怪ウォッチ」「トッキュウジャー」などの隆盛の恩恵を受けた雑誌の伸長が確認されている。いわば「進撃の巨人」的な立ち位置ではあるが、「妖怪ウォッチ」は少年だけでなく少女向けの作品でもあるだけに(多分に少年向け的な香りはするが)、今後何らかの形での連動企画による盛り上がりに期待したい。少女向けのアニメとしては、アイドル系の作品や変身ものの作品が複数放映中だが、それらとの連動による連載も見受けられるものの、雑誌そのものの大きな底上げ効果までは生じていないのが残念。

今後第二の「進撃の巨人」的な、あるいは少女・女性向けコミック誌における「妖怪ウォッチ」的なタイトルが登場するのか否か。アニメやゲームなど近接業界の動向と共に、注目していきたいところではある。


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