一部雑誌にもアレの影響が!?…諸種雑誌部数動向(2014年7-9月)

2014/11/02 15:00

集客力の低迷と共に面積も縮小され、イートインコーナーやプリペイドカードの陳列棚にその場を譲る場面も増えてきたコンビニの雑誌売り場に代表されるように、紙媒体としての雑誌市場は低迷の度合いを深めつつある。一方で充実した付録をセールスポイントとして生き残りを図る雑誌も増え、大手本屋の陳列棚は付録展示場と見間違うばかりの雑誌コーナーの姿も見受けられるようになった。そのような多種多様な状況下にある各分野の雑誌のうち、ごく一部ではあるが本屋やコンビニなどで見聞きする分野に関して、社団法人日本雑誌協会が2014年10月27日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値をもとに、雑誌の部数における「前年同期比」を算出し、その推移を確認していくことにする。

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意外な健闘を見せる写真誌…一般週刊誌


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項、類似記事のバックナンバーは一連の記事をまとめ収録したページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にて確認のこと。

まずは一般週刊誌のジャンルに該当する雑誌。いわゆる写真週刊誌も含む。状況は前四半期と大きな違いは無い。

↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)

↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2014年7-9月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2014年7-9月)(万部)

今回計測期では脱落、追加の雑誌は無し。銀行や床屋、病院などの待合室などのような公共の場における時間つぶしのツールとして欠かせない存在であることから、最低限の需要は維持され、元々発行部数も多いため、各誌とも専門雑誌と比べれば余力を残しているのだろう(当方も処方箋受付の薬局や通院先の病院などで、本棚に収められているこれらの雑誌を手にして待ち時間を費やす経験を持つ)。とはいえ、先日医療機関など内における携帯電話のガイドラインの変更が示されたことで、いくぶん周辺環境が変化する可能性はある。

前期比(前年同期比にあらず・グラフは略)でプラスは4誌。前四半期の10誌からは大幅に減っている。中には「サンデー毎日」のように前四半期比で1割超の下げ幅を示した雑誌もあり、一般週刊誌の中でも印刷物全体を襲う荒波にもまれている雑誌もあるのだと実感させられる。

一方その季節変動を除外できる、上記のグラフにある前年同期比で見ると、マイナス5%を超える下げ幅を示した雑誌は4誌となり、前回の4誌と変わらず。実は上下の度合いも前四半期からほとんど変わらず、少なくとも一般週刊誌界隈では(直上の「サンデー毎日」のような前四半期単位での変動を除けば)、大勢に変化は無いことが分かる。また、プラス領域の3誌のうち2誌までがいわゆる写真誌で、注目に値する動きと言える。この2誌は前四半期比でもプラスの値を見せており、風向きが変わってきた感すら覚える。

残る「SPA!」はここ数回に渡り定点観測をしている通り、一般週刊誌市場全般が軟調の中では、比較的堅調な動き。「孤独のグルメ」をはじめとしたピンポイントのツボな要素が底支えをしているのだろうか。

↑ SPA!印刷実績
↑ SPA!印刷実績

軟調感も2012年に入るとぴたりと止まり、以降はほぼ横ばい、わずかな上昇の気配すら見せている。何かきっかけが一つあれば、グンと伸びるだけの要素は秘めている。

二極化の様相があちこちで見られる育児系など


続いて育児系雑誌。現在8誌の動向を追いかけているが、前年同月比ではベビモとプレモがそこそこ、それ以外は軟調な状況が続いている。

↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)

少子化が叫ばれそれを裏付ける調査結果が相次ぎ報告されているが、子供が突然いなくなるわけでは無い。当然、子育て関連の情報への需要は継続する。むしろ核家族化や地域コミュニティにおける孤立化・疎遠化、さらには世代間ギャップの広がりなどを受けて、育児関連の情報需要は高まる一方。ただしインターネットの普及と子育て家族への浸透も同時に進んでおり、情報需要の多分はデジタル系に吸い取られている。それだけに、紙媒体でしか得られない、紙媒体(=物理媒体)ならではの需要に応える雑誌作りが求められている。

今ジャンルで注目したいのが「ベビモ(Baby-mo)」。「ベビモ(Baby-mo)」は季刊誌の育児専門誌。今回該当期も出版は1誌のみ。前回試みとして行われた、ミニサイズ・付録無しのハンディ版は、今号では実施されなかったようだ。子育て世代の女性にはハートをわしづかみ状態となる、子供をあやすためのくまモンのパペットが付録として用意されており、大いに売上に貢献したようだ。雑誌不況、そして育児系雑誌全般の不調という環境の中、これだけの持ち直し、成長を見せるその動きには、感心するばかりである。

↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績
↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績

続いて食・料理・レシピ系雑誌。節約志向に加え、食の安全への傾注や健康志向など、自前で調理する料理(に関する情報)に対する需要は高まり続ける一方。ただしインターネット上の情報提供はレシピとの相性が極めて良いため、既存の専門雑誌の需要すらインターネットにシフトする感が強い。

↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)

↑ (参考)レタスクラブ/栗原はるみ haru mi 印刷実績。2014年7-9月まで
↑ (参考)レタスクラブ/栗原はるみ haru mi 印刷実績。2014年7-9月まで

今回計測四半期では「栗原はるみ haru mi」と「きょうの料理ビギナーズ」がプラス領域、他の3誌はいずれも前年同期比でマイナス。これは前四半期と変わらない。上記のいくつかの雑誌ジャンルでも触れたが、今四半期は諸雑誌ジャンルの多くで前四半期からあまり状況変化が見られない結果が出ており、「凪」的な雰囲気を覚えさせる。「レタスクラブ」と「きょうの料理」は1割を超える大幅なマイナスを示したのも前四半期同様。

料理系雑誌では数少ない勝ち組となりつつある「栗原はるみ haru mi」。雑誌のメインといえる栗原はるみ氏のカリスマ性、ネームバリューの大きさ、さらに紹介される料理の独自性、つまり「どこにでも見受けられる一般的な料理」では無く「はるみ氏ならではの料理」が読者のハートを仕留めているのだろう。ほぼ同数の部数で推移している「栗原はるみ haru mi」「レタスクラブ」両誌の動向をここ数四半期に渡り追いかけているが、この1年ほどの間は追いつ追われつの状態が続いている。今四半期では再び「栗原はるみ haru mi」が「レタスクラブ」を追い越す形となった。

エリア情報誌は真紅状態


エリア情報誌。再編成をはじめとするさまざまな施策が打ち出されているが、状況を変えるだけの効果は見られない。

↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)

今四半期も前四半期に続き、対象全誌が5%以上の下げ。しかも「東京ウォーカー」以外はすべて10%を大きく超える下げ幅となってしまっている。前四半期比でも1割超の下げが2誌、3割超が1誌というさんさんたる状況であるが、事態打開策を見出すことは難しい。

ペットとしてはもっともメジャーな犬と猫を取り扱った、専門誌として知名度の高い「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。本屋のレジでサンプルを見かけるが、実売はしていない。これは通販専用の専門誌だからに他ならない。

↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)

↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2014年7-9月期まで)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2014年7-9月期まで)

【世界の「いぬ」「ねこ」どちらが好きか勢力マップ】で解説の通り、ペット数としては日本では猫よりも犬の方が多い。複数飼う事例もあろうが、飼い主数も犬の方が多くなることは容易に想像できる。結果として専門誌への需要も犬向けの方が多くなるのは物の道理と言える。

もっとも今四半期においては「いぬのきもち」「ねこのきもち」双方とも尋常ならぬ下げ幅・下げ率を示している。これは同時期に発生した、発行元のベネッセにおける大規模情報漏洩事件が影響している可能性がある。因果関係までは立証できないが、少なくとも相関関係はあり、連想も容易に出来るのが悲しいところ。

子供達も付録に夢中な小学生など向け雑誌


最後に小学生向け雑誌「など」。「小学●年生」スタイルの雑誌は現在「小学一年生」と「小学二年生」のみとなってしまったため、幼稚園向けの雑誌も合わせて精査している。今ジャンルも普段なら下げ率の大きな雑誌ばかりで、色合いも赤系統のグラフが生成されるのだが……。

↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2014年7-9月、前年同期比)

該当5誌のうち3誌までがプラス。しかもいずれも10%超の大幅増。何度か数字を見直したが、入力などのミスでは無い。

何か突発的な事案でも生じたかと該当期間の各誌を確認したところ、これが先行する少年・男性向けコミック誌同様、「妖怪ウォッチ」、さらには「烈車戦隊トッキュウジャー」による特需であることが判明した。大きく売り上げを伸ばした各誌では、この2作品に関する特集を大きく展開するだけでなく、付録でもそれらを用いたアイテムを展開し、子供から羨望の眼差しを受ける形となった。

特に幼稚園2014年8月号の「トッキュウジャー ディーゼルレッシャー クリアバージョン」は非常に高い人気を集めている。また小学一年生2014年10月号付録の漢字辞典は、「妖怪ウォッチ」でも「烈車戦隊トッキュウジャー」でもなく、小学生向けの小型漢字辞典の出来栄えが非常に良く、高い評価を得ている。幼児向け雑誌の購入者が保護者であることを考えれば、ポイントの高い付録といえよう。



未精査のジャンルは多々あるもの、取り急ぎではあるが大まかな範囲での雑誌動向を確認した。動きとしては大きく「前四半期から大きな変わり映えは無し」「特定作品の特需効果」の2点に絞られる。前者は他の雑誌分野でもいくつか見受けられた傾向で、次四半期の動向が気になるところだ。気になるといえば、ベネッセの騒動で影響を受けた可能性がある「いぬのきもち」「ねこのきもち」も気に留まる動きではある。

後者に関しては正直意外としか表現のしようがない。これまでも小学生・幼稚園向けの雑誌でも、子供向け漫画やアニメ、戦隊物の作品を対象にした付録や特集は展開されていたはずだが、今四半期ではここまで大きな持ち上げ効果を得られることになるとは。まさに「妖怪と列車のしわざ」ということになるのだろうか。

特定作品のブームがいつまでも続くことは考えにくい。読者層に合った時代の流れ、流行りすたりを敏感につかみ、柔軟に、素早く対応することが、雑誌の生存確率を高める秘策なのかもしれない。

……考えてみればごく普通の、当たり前の話ではあるのだが。


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