一強他弱時代へ!?…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2014年7月-9月)

2014/11/02 10:00

瞬時に行きかう情報の中で素早い判断が求められるビジネス、特にマネー業界だが、インターネットの普及に伴いそのスピード感はこれまでとはケタ違いのものとなった。仕事やお金に直接係わりあいのある情報のやり取りなだけに、少しでも速さ、そして正しさへの需要が強いこの業界では、スピードの加速化はある意味当然の話。それに伴い紙媒体で提供される関連情報の立ち位置も、大きな変化が求められている。このように他の業界専門誌と比べ、インターネットの影響を強く受けやすい「ビジネス・マネー系専門誌」はいかなる現状におかれているのか。社団法人日本雑誌協会が2014年10月27日付で発表した、第三者による部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から確認していくことにする。

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「プレジデント」の一強感強まる


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」をはじめとした用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。

それではまず最初に、直近にあたる2014年の7-9月期とその前四半期に該当する、2014年4-6月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2014年4-6月期と2014年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2014年4-6月期と2014年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今四半期では休刊、新創刊などによる増減誌は無し。ただし例外として不定期刊状態と化した「¥en SPA!」が、前回登場から転じて今回は印刷部数が公開されない状況となった。バックナンバーなどを確認すると、最後に出た最新号は2014年6月28日付のもの。7月から9月には一冊も出ておらず、これでは印刷部数が提示できないのも仕方がない。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から続いてトップ。グラフを見れば分かる通り、次点の「週刊ダイヤモンド」にほぼ2倍の部数差異をつけており、並大抵のことでは順位変動は起きそうにない。しかも今四半期では前期から部数を伸ばしている。後述するようにこの大きな伸びは四半期ごとに繰り返す振幅運動の一環でしかないのだが、その過程の中で漸次増加を示しており、今後さらに「週刊ダイヤモンド」の差は開くものと思われる。

それ以外では少なくとも絶対部数では、さほど大きな変化は無し。「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」の下げ幅がやや大きいように見える程度だろうか。

切り返しを見せ大幅高のトップ誌……前四半期比較


続いて各誌における四半期間の販売数変移を算出してグラフ化、状況を確認する。つまり直近と3か月前との値を比較し、どのような変化が生じたかをチェックしていく。季節の違いに伴う需要変化のぶれは避けられないが、直近における各雑誌の胎動を聞くことはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2014年7-9月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2014年7-9月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は「PRESIDENT」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」の3誌。誤差を考慮すると実質的な上昇を示したのは「PRESIDENT」のみ。今ジャンル記事ではその成長ぶりに注目していた「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」だが、今四半期では最大の下げ幅。両誌の動向に違和感を覚える向きもあるだろうが、中朝的な流れを見ると、なるほど感を覚えさせられる。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2014年7-9月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2014年7-9月期まで)

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2014年7-9月期まで)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2014年7-9月期まで)

「PRESIDENT」は前四半期において比較的大きく減少した分の反動によるところが大きい。ただ反動を別にしても、この2年ほどの間に比較的大きな上下運動を繰り返しながらも上昇機運に転じているのが分かる。他の雑誌にありがちな減少傾向も2011年末ぐらいまでで終了し、2年ほどは充電期間、そして去年末あたりから再起動の時期に突入した……と解釈すれば道理は通る。今後が楽しみなグラフ。

一方で「COURRiER Japon」は2012年中盤以降大きな上昇の流れを見せたものの、2013年末にはブレーキがかかり、天井感を覚えさせた。前四半期の記事ではそれ以降を「安定期」と表現したが、今回小さからぬ下げ幅を示したことで、「天井期」と表現を変えた方が適切かもしれいないとらえ方ができるチャートとなってしまった。天井感を示したあたりから感想の言及に内容の変化を懸念するものがちらほらと見受けられたのは事実なので、編集方針の変化が雑誌のセールスに微妙な影響を与えたのかもしれない。

前年同期比動向でもあの雑誌は突出


続いて前年同四半期の算出とグラフ化を行う。今四半期なら2013年7-9月の値との比較を示したもの。季節による販売状況の変化を考えなくても良い、年ベースでの推移を見たもの。タイミングにもよるが、雑誌によっては年1割から2割の増加・減少を示す事案もあるのだが。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2014年7-9月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2014年7-9月、前年同期比)

そもそも論として年通しで部数を追跡できるビジネス・マネー系雑誌が7誌しか残っていないのは寂しい話。当ジャンル記事では当初もう2誌ほどあったのが、いずれも休刊してしまったのが惜しまれる。また本屋で精査すれば他にも定期発刊の関連雑誌は見つかるかもしれないが、印刷証明部数に値を提示してくれないことには、実情を把握できない。

さて今四半期における前年同期比としては「PRESIDENT」の健闘ぶりは変わらない。むしろ一層際立っている。他方「COURRiER Japon」は下げ気味。両誌とも上記中長期的な変移の折れ線グラフを確認すれば、その現状はすぐに理解できるはず。

マイナス幅の大きいのは前四半期に続き「THE21」「PRESIDENT」とコンセプト的には近しいものがあるのだが、タイトルのメジャー度や記事構成のターゲティングの良し悪しが、部数動向に差をもたらしてしまったのだろう。テーマそのものは悪くない、むしろツボ的なものではあるのだが、あえて言えば汎用性に過ぎて、雑誌では無く文庫本や単発刊行の雑誌で読みたい類のものが多いのが難点か。その点、「PRESIDENT」は的の絞り方が巧みな感はある。

「THE21」の中長期的動向を見ると、他の典型的な低迷誌同様の右肩下がりの動きを示している。

↑ THE 21 印刷証明付き部数(2014年7-9月期まで)
↑ THE 21 印刷証明付き部数(2014年7-9月期まで)

そろそろ下げ止まりの雰囲気も見られるが、むしろその状況のうちに現状打開の策を打つべきなのかもしれない。



スピード第一のビジネス・マネー業界向け専門誌の中で、上昇機運を維持し続ける「PRESIDENT」の現状は、素直に賛美に値する。「COURRiER Japon」もかつてはその傾向があったのだが、昨今では陰りが見えてきたことは否めない。複数の読者が示した「何か変わってきた」の予見が正しかったのだろう。ファンだからこそ分かるかすかな違いが、数字となって表れつつある……と考えるのは、あまりにも物語的過ぎか。2012年末からの大きな上昇を示した過去を思い返し、再び右肩上がりの動きを見せてほしいものだが。

一方でビジネス業界は今後ますますスマートフォン・タブレット型端末をはじめとしたインターネットとのつながりを密としていく。スピード感では絶対にかなわない紙媒体が、どのようにして生き残りの道を探っていくのか。コミック誌のように流行の媒体との連動企画も望めない以上独自に事態打開の道を探るしかない。

紙媒体だからこそ出来る物事、インターネットがどれほど浸透しようとも、情報のスピード感がますます進んでも、紙媒体にしかできないこと、紙媒体だからこそありがたく思われるもの。そこにヒントが隠されているに違いない。


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