中休み状態か、それとも凪か…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2014年7月-9月)

2014/11/01 10:00

スマートフォンやタブレット型端末が若年層の間に急速かつ広域に普及するに連れ、家庭用ゲーム機業界は大きな試練にさらされつつある。また、彼ら・彼女らを主要ターゲットとするエンタメ系業界も小さからぬ影響を受けていることは否めない。当然それらの業界を主導する、あるいは良きガイダンス的立場にあった専門雑誌にも、その時代の流れを覚えさせる風が、それこそ暴風雨のような様相で襲いかかりつつある。今回は社団法人日本雑誌協会が2014年10月27日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版となる、2014年7月から9月分の値を元に、ゲーム専門誌などで構成されるゲーム専門誌、さらには声優・アニメを取り扱ったエンタメ専門誌などを合わせた「ゲーム・エンタメ系」関連の最新データを取得精査し、業界誌の状況を把握していくことにする。

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Vジャンントップ変わらず、だが部数は大きく落ちる


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の内容に関する説明、読む際の諸般注意事項、さらには類似記事のバックナンバー一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらを確認のこと。また記事のカテゴリ名をクリックしてたどれる同一カテゴリ一覧からも、印刷証明付き部数関連の記事の過去のものを確認することはできる。

まずは最新値にあたる2014年の7-9月期分と、そしてその直前期にあたる2014年4-6月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2014年の4-6月期と2014年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2014年の4-6月期と2014年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今四半期では脱落・追加誌は無し。前四半期で脱落したが「当時」雑誌の休廃刊は成されていなかった「マック・ピープル」だが、今回該当期にあたる2014年9月29日発売の11月号をもって休刊と相成った。前四半期におけるデータ掲載の取りやめも、あるいはこれを見越しての措置だったのかもしれない。

ゲーム・エンタメ系の専門雑誌の中でも、パソコン・インターネット向けのものは特に内容の点でインターネットとの相性が良いこともあり、紙媒体での展開が難しい。スピード感ではとても太刀打ちできないからだ。通信スピードが遅く、表示能力も今一つだった昔なら付録に光媒体をつけてダウンロードのサポートをするという切り口もあったが、今やブロードバンドが当たり前、動画表示もまるで映画のようなものを気軽に楽しめるとなれば、わざわざ紙媒体で情報を調達する意義は無くなってしまう。今件主旨の記事も以前はパソコン関連の雑誌が多数該当していたのだが、一誌無くなり二誌が消え、今や週刊アスキーを残すのみとなった。

発想次第で色々と工夫も出来ると思われるが、このような現状では生き残り自身が難しい話ではある。最近では紙媒体とデジタル媒体を同時発売し、紙媒体をデジタル媒体利用の解読キー的なものとして取り扱う雑誌も出てくるほどだ。

プラスは実質ゼロ…前四半期との相違確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変移を算出し、グラフ化による状況精査を行う。季節変動、例えば季節の違いで雑誌の売れ行きに変化が生じ、ぶれが起きることもあるが、直接的な部数動向はこれで把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2014年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2014年7-9月期、前期比)

プラス領域を示したのは「電撃PlayStation」のみ。これも実際には0.03%の伸びに過ぎず、正直誤差の範囲。一方でマイナス領域はそれ以外全部。誤差範囲である5%ポイントを超えた下げ幅は5誌。特に「ファミ通DS+Wii」「ニュータイプ」の2誌が10%ポイント超えと大きな下げ幅を示している。

「進撃の巨人」特集やそれ以前からの独自路線による堅調な伸びを示し続けている「PASH!」も、今四半期では残念ながらマイナスに転じた。とは言え状況的には十分持ち直しが期待できるレベルである。むしろ「進撃の巨人」特需が無いものとして考えれば、ほぼ右肩上がりの領域内。

↑ PASH!印刷実績(部)
↑ PASH!印刷実績(部)

他方、同じように特需的売上のアップで底上げされることが多い「ファミ通DS+Wii」の下げっぷりも気になる。同誌は「PASH!」とは逆に右肩下がりの状況下にあり、ここ一年の間は漸減を続けている。任天堂系のゲームによる特需効果も次第に小さなものとなり、中期的な下げ方の補てんが段々難しくなっている雰囲気である。

↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)
↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)

今回取り上げている雑誌の中ではもっとも大きな部数を誇る「Vジャンプ」は、今回マイナス6.2%の下げ幅。誤差の範囲を超えた大きな動きである。同誌もまたゲーム系・エンタメ系の他誌同様、特需的タイトルで部数が底上げされることが多いが、この数年の間に部数動向の上ではボックス圏そのものの領域を一度下げるなど、勢いの減退感は否めない。そしてここ一年は大きな上昇も見られない状態が続いている。

↑ Vジャンプ印刷実績(部)
↑ Vジャンプ印刷実績(部)

前年同期比はさらに下げ幅拡大の動き


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのためやや大雑把なものとなるが、季節変動の考慮が要らなくなるので、より正確な流れが把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2014年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2014年7-9月期、前年同期比)

前四半期比では唯一プラスを示した「電撃PlayStation」に加え「Vジャンプ」がプラス。もっとも両誌とも誤差の範囲で、「かろうじて」という程度のもの。

一方下落雑誌では10%超えが6誌。中でも「ファミ通DS+Wii」の下げ幅が3割近くに及んでいる。これは上記の通り、中長期的な下落傾向のさなかにあるため、四半期ごとの下げ幅が蓄積した結果といえる。つまり継続的な減少。他方「PASH!」も上記グラフの通り、中長期的な流れとしては上昇機運のさなかにあるが、前年同期で「進撃の巨人」特需による上昇が生じていたため、その反動により大きなマイナス幅を示す結果となった。

元々似たような系列の雑誌として知られており、関連方面のファンからは「三大アニメ誌」とも呼ばれている「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」。3四半期前にそのうち「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起き、大いに注目を集める形となった。今四半期では順位に変化は無いものの、両誌の差は前四半期からいくぶん縮まり、まさに激しいデッドヒート状態にある。

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年7-9月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年7-9月期まで)

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年7-9月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年7-9月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)

直近値では「ニュータイプ」6万1300部、「アニメージュ」5万4300部、「アニメディア」5万1700部。各誌とも中期的には漸減傾向なのに変わりはないものの、「アニメージュ」がこの2年ほどは横ばいに推移し、下げ幅がややキツメな「アニメディア」との間に、順位変動が起きた様子が分かる。もっとも今四半期では「ニュータイプ」も壮絶な下げ幅を示したため、三誌間の差があまり無くなってしまったのが注目に値する。この状況が次期も継続すれば、さらなる順位の変化が生じる可能性はある。出来ることなら部数の増加による順位の競り合いを見たいものだが。



先行記事【少年・男性向けコミック誌部数動向】で触れている通り、少年向けのコミック雑誌では人気ゲームソフト「妖怪ウォッチ」の特需効果が継続しており、一部雑誌で大きな伸長が確認されている。同じ家庭用ゲーム機ソフトジャンルを専門とするゲーム専門誌、特に「ファミ通DS+Wii」が振るわない結果に終わっているのは、連動企画の内容、特に付録周りによるところだろう。同誌はこれまで「ポケットモンスター」シリーズなど任天堂発のタイトルでは積極的な記事展開を果たし、売り上げのアップを見せて来ただけに、今回「妖怪ウォッチ」特需が無かったのは、さまざまな事情があるにせよ、残念でならない。

その特殊事情を脇に置くとしても、今四半期においてゲーム・エンタメ系ジャンルにおける雑誌全体の低迷感は否めない。特に年ベースで10%超えの下げ幅を示す雑誌が6誌、9.7%とほとんど2ケタに近い誌も合わせると7誌におよぶ現状には、危機感を覚えないわけにはいかない。ゲーム誌に限っても、上記「妖怪ウォッチ」以外に「大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS」が対象時期に発売されており、ミリオンセラーとなるほどの好調なセールスを示していることから、雑誌での盛り上がりぶりもあってしかるべきなのだが、それを果たせていない。アニメにしても良作は続々登場しているものの、雑誌の売上はその恩恵を受けていない。

紙媒体としての雑誌そのもの、市場全体の軟調さの流れには逆らえないだけなのか、それとも各雑誌それぞれの方法論が現在の市場との間で歯車のずれを生じ、それが大きくなりつつあるのか。いずれにせよ、抜本的な仕切り直しが求められていることは言うまでもない。


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