前月比では穀物以外は大よそ下げる(2014年12月分世界食糧指数動向)

2015/01/09 15:00

原材料の価格高騰に加え、為替の変動、エネルギーコストや人件費の上昇などを受け、食料品販売大手や外食チェーン店が続々と価格引き上げを発表する中、食料品の国際価格に対する注目はこれまでにない高まりを示している。その価格変動に関し、概略的ではあるが現状を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月公開している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2015年1月8日に発表された現時点で最新版の値となる、2014年12月分の値を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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短期はやや下落、中期は食肉上昇、乳製品や油脂が大きく下落


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらのページで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2014年12月分を含めた取得可能なデータを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。いわゆる「ざっと見」用の図である。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年12月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年12月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、その内部的な実情は知らなくとも、大きく価格が変化することは多くの人が見聞きしている(店頭で並ぶキロ単位の袋詰めの砂糖価格はそのような変動はあまり無く、価格は比較的安定しているのでご安心を)。その実情をこのグラフから知ることが出来る。他の食品項目は大よそ2005年位まではさほど大きな動きを示していないが、砂糖だけが大きく動いており、別物の動向のように見える。

一方2005年終盤以降になると、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が変化、しかも上昇方向に動き始める。その後直近の数年に渡る(ある意味現在も続いている)金融危機の引き金となる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きると共に、大きく上向きの流れを見せる。

これらの動きは、主に株式市場の暴落を原因とする。要は投資市場の資金が暴落した株式市場から逃げ、その行く先に商品先物市場が目を付けられたということ。そして市場規模は商品先物市場の方が小さいため、過剰な資金流入と共に全体の価格が底上げされ、それは実商品価格の上昇をも招くこととなる。

その後は「リーマンショック」(2008年9月以降)を起因とする市場の騒乱を経て大きく乱高下を成したあと、現在の高値安定状態に移行している。この数年は各食品項目とも200から250位の領域で小幅な値動きに終始しているのが分かる。ほんの10年ほど前の水準であった100前後と比べ、約2倍から2.5倍の領域である。もっともここ数か月に限れば、おおむね下落基調の中にあり、油脂や乳製品のような150位に手が届きそうな動きを示しているのもある。

次に示すグラフは、上記グラフの横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月にしたもの。2007年といえば7月・8月から、「サブプライム・ローン」問題がぼっ発(露呈)し、市場は大変動の動きを示した年。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく知ることができるグラフとなっている。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年12月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年12月)

興味深いのは上記でも言及している通り、「サブプライム・ローン」問題のぼっ発「以前から」、食料品価格はやや高値に動き始めていたこと。一般に同問題が知られる前より食料市場は「知っていた」のか、それとも人口増加に伴う消費増加による、中期的な食糧需給の変化が市場に反映されていたのか、それともその双方なのか。残念ながらこのデータからのみでは判断は出来ない。

もっとも名目GDPの動きを見る限り、新興国の経済発展が加速度的な動きをしめはじめたのは2005年頃から。その動きと各指数の上昇タイミングはほぼ一致している。「知っていた」では無く、人口増加による需給バランスの変化が指数の底上げの主要因だったと見た方がよさそうだ。

期間軸を短くしても、砂糖価格の変動が激しい事実に変わりは無い。一方で食肉価格が他の食品と比べて確実に、じわじわと上昇一本やりで、しかもこの一年ほどの間は上げ幅を増していたことが確認できる。それと共にその食肉以外は下げ基調にあることも見て取れる。特に乳製品の下げ方が著しい。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するために、各指標の時系列データを抽出し、「前年同月比」と「前月比」を独自に算出。その数字の変移が分かりやすいように棒グラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年12月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年12月)

総合指数は前月比でマイナス1.7%、前年同月比はマイナス8.5%。いずれもマイナス値を示しており、前月比がマイナス幅は小さめであることから、全体的には食料価格はこの一年間内ではやや安値向きの安定志向にあることが分かる。

個別項目を見ると前月比では穀物がわずかに上げたのみで他は下落、前年同月比では食肉のみが大きく上げてそれ以外は下落、特に乳製品と油脂の下げ方が著しい。この動きから、食料価格は食肉以外はこの一年で下げ、現在もいくぶん下げ基調が続いていることが確認できる。ただし食肉はこの一年で大きな上昇を示し、昨今では安定、やや下落的な値動きに移行している。

大きな下げ基調を示し、特に前年同月比では3割強もの下げ幅を見せた乳製品に関し、その事由をリリースから読み解くと、輸入量の大幅増加が価格引き下げのけん引力となり、さらに価格高騰の主要因だった中国とロシアにおける輸入拡大ペースが止まり、逆に縮小に転じたことが挙げられている。またもっとも値下げ幅が大きかったのは粉ミルクで、バターとチーズが続いているとのこと。

農林水産省の最新レポートで現状を確認


今記事で毎月連動性のある、付随的資料として精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、2014年12月25日に更新された2014年12月分をざっとではあるが確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、小麦・とうもろこしで生産量が増加するものの、大麦・米で減少。前年度は下回る見込み(24.727億トン)。他方、消費量は大麦で減少するものの、小麦・とうもろこし・米では増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.532億トン)。そして生産量が消費量をほんのわずかだが上回ることから、期末在庫量見込みは前年同度比で上昇する傾向を示している(5.212億トン、生産量比で21.2%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

昨今ではいくぶん鎮静化の動きを見せつつあるものの、今なお地政学リスクにおいて食料供給面でもっとも影響を与え得るウクライナ地方だが、資料の上では今のところ大きな動きは指摘されていない。ただ、例えばウクライナは世界の小麦輸出量の7%、とうもろこしの15%など大きなシェアを持つため、その動向の成り行きには注目をせざるを得ない。

一方気象状況においては、ロシアやウクライナにおける積雪の薄さが懸念材料として持ち上げられており、好ましい状況とは言えないなどの言及がなされている。そのロシアだが、昨今の原油価格の下落に伴う経済の低迷、さらにウクライナ情勢に伴うEUの経済制裁の長期化によって、ドル建て決済の国際穀物価格取引に引きずられる形で穀物価格が上昇、インフレの材料となっている。さらにロシア東部における不作もあり、食料としての穀物不足が懸念されており、国内市場の充足のためロシアが穀物の輸出制限をするのではないかとの懸念が広まっている。この懸念が小麦を中心とした国際穀物市場に影響を与えるかもしれないとの説明があるが、実際今回月でも前月比で穀物のみがプラスの動きを示しており、予断を許さない状況には違いない。

日本国内に限れば(世界全体の生産量には関係はほとんどないものの、日本国内の価格動向には大きく影響を及ぼす)、エネルギーコスト(化石燃料や電気代)の高騰が農家に大きな影を差している。また、食料品の加工や輸送にも小さからぬ負担となることから、市場価格の上昇があちこちで伝えられている。食料品価格は食料需給そのものだけでなく、燃料動向にも小さからぬ影響を受けるとの点で、合わせて注視をしたいところではある。

また乳製品に関しては需要が伸びるクリスマスシーズンを終え、ようやく需給バランスの点で安定の方向へと向かいつつあるものの、慢性的な品不足はまだ継続しており、店舗によっては購入制限を設けている場面も見受けられる。全体的な生産体制の見直しが求められるのかもしれない。


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