三社とも客数減少・客単価上昇で売上はプラス…牛丼御三家売上:2014年12月分

2015/01/06 11:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2015年1月5日付で、吉野家における2014年12月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によれば既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス0.2%となった。これは先月から続き、5か月連続のプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業においては、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年12月における売上前年同月比はプラス0.6%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス3.5%との値が発表された。今回月は幅の違いこそあれど、3社とも売上をプラス化する結果となった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。

↑ 牛丼御三家2014年12月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年12月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2013年12月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス1.7%。同社では主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落の影響が2013年12月の時点でもまだ続いていた(客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月の値下げ以降1年間、つまり2014年3月まで継続している)。昨年牛丼業界に大きな嵐を巻き起こした「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は12月の登場で、その影響もあり随分と底上げはされたものの、プラスにまでは至っていない。

従って今回月は「牛丼値下げによる客数増加・客単価減少、そして鍋特需が生じた上での前年同月」との比較となる。結果として客数は前年同月が鍋特需で大きく伸びたことの反動でマイナス、客単価は牛丼値下げの反動影響でプラス、売り上げはトントンという形となった。「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の影響を詳しく精査すると、客数が減っていることから集客効果は昨年と比べていくぶん落ちたものの(昨年同様の客引きの威力があるのならマイナスは生じない)、商品単価が上乗せされた分客単価が上がったように見受けられる。「牛すき鍋膳」は前年分と比べてコストの増大に伴う値上げを行っているが、客数と客単価の上下で売上を維持できた結果は、及第点を与えてもよいのだろう。

なお吉野家では2014年12月9日付で牛丼などの価格引上げを発表している(【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】)。売上に大きく影響する鍋メニューの展開時期のため判断は難しいが、この値上げもいくぶん客数の減少・客単価の上昇に影響したようだ。それでもなお、前々年同月比を試算すると、客数・客単価ともにプラスを示しており、この1、2年の施策は総合的にはポジティブなものと解釈できる。

↑ 牛丼御三家2014年12月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年12月営業成績(既存店)(前々年同月比)

松屋の豚テキ定食などのポスター続いて松屋。最近は特に牛めしは副次的なメニューで、定食こそが本髄的な商品展開を行っていることで注目を集めている。いわば携帯電話における音声機能が、松屋の牛めしのような、「メインではないが欠かせない存在」感がある。その状況を裏付けるかのように、今回月では新商品として「鶏のチリソース定食」「キムチ牛めし」の発売の他に、12月4日から発売を開始した「豚テキ定食」が大きくセールスを伸ばし、一部店舗で販売休止・販売時間制限つきの展開に至っている。さらに年末年始では食材の安定供給確保が困難なことから、一時的に販売休止措置が取られるほどだった。

これら定食の好調さが大きく影響する形で、客単価はプラス6.0%(前年同月ではプラス1.9%を示しており、前年同月の反動ではなく、純粋な底上げ)と大きく伸び、客足の減退を補う形となっている。

鍋メニューの即興的な投入、人員リソース不足の絶望的なまでの顕著化、求人の積極攻勢も成果が出ずに人材を確保できず一時閉店が相次ぎ、内部的な問題を解決するために第三者委員会が立ち上げられ、その精査を経ての内部施策の改善模索が成されるという、波乱にとんだ一年を経験したすき家。今冬ではオペレーションを改善して店員の負担を極力軽くし、メニューも1つに集約する形で再び牛すき鍋の提供を開始している。その効果は抜群で、客単価を前年同月比で1割も押し上げる形となった。もっとも集客効果は得られず、逆に客数を落としている。前年同月の客数はマイナス5.5%であることから、昨年の堅調さの反動では無く、客の減退が継続していることになる。

すき家では該当月は他に新メニューの展開は無く、「牛すき鍋定食」一本で攻勢をかけた形となったが、結果としては客数の引きが気になるものの、客単価を押し上げたことで売上はプラス。それなりの成果を収めた形となった。もっとも前々年同月比における売上ではマイナスを示したことからも分かる通り、中期的な客数の減少には目を背けるわけにもいくまい。

なおすき家では今なお少なからぬ店舗でリニューアル工事などを進めており、一時休業している店舗は今値(前年同月比・既存店)には計算上含まれていない。仮に全店舗で計算すると前年同月比はマイナス4.0%となる。すき家そのものの全体的な売上としては、減退を継続している点には注意を払う必要がある。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年12月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年12月)

↑ すき家業績推移(売上高、全店)(前年同月比)(2007年4月-2014年12月)
↑ すき家業績推移(売上高、全店)(前年同月比)(2007年4月-2014年12月)

最後の最後で吉野家が切り札を出した2014年


先月の今件記事では「2014年は12月頭の時点で牛丼チェーン店業界のニュースは出揃った感がある。もう一つ松屋から何か話が出ても面白いのだが」といったコメントをしたが、その直後に上記の通り吉野家がメインメニューの牛丼の値上げを発表し、とんだサプライズを示す形となった。鍋定食との絡みもあるため単独でどこまで営業成績に影響しているか見極めが難しいが、現時点ではこの値上げにより売上が落ち込むようなマイナスの動きは見られないようだ。

松屋といえば久々に「売れすぎてネタ不足」的な話が豚テキ定食で生じている。セールスが堅調なのは喜ばしい話に違いなく、また名前そのものからも「トンだサプライズ」には違いないが(笑)、牛丼業界全体を揺るがすような話にはならなかった。

今回月に限らず牛丼チェーン店では、外部要因、主に競合他勢力の成長を受けて客数の減退が続いており、吉野家の「牛すき鍋膳」のようなホームラン級のメニューが展開しない限り、客を呼び戻すのは難しい状態にある。売り上げは客数×客単価で計算されること、そして客単価の引き上げは多分に客数の減少を伴うことを考えれば、客単価の引き上げだけで売り上げを維持するのにも限界がある。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年12月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年12月)

「牛丼御三家」である以上、三社ともに牛丼をメインに商品展開をしていることに違いは無いが、松屋の「豚テキ定食」の人気ぶり、吉野家の「吉呑み」のような居酒屋的新業態へのアプローチなど、吉野家・松屋は新たな方向性を見出すべく模索を続けているように見える。先日試食レポートを【松乃家の「ロースかつ定食」を試食してきました】で挙げた松乃家もその一様式で、松屋の店舗全体数はほぼ横ばいを維持しているものの、牛丼の松屋はむしろ減退し、松乃家は少しずつ数を増やしている次第。中には牛丼の松屋から松乃家へと転換する店舗もあるという。

今年は去年以上に、消費の多様化に合わせた仕切り直し、かじ取りが、牛丼チェーン店業界にも求められることになる。消費者は安心・安全な定番の食事を求める一方、「新しくて美味い」
ものを渇望しているのもまた事実。それら基本的な需要と、変わりつつある外部環境の双方にマッチした施策を、3社がそれぞれどのような形で体現化していくのか。今後の展開に注目したいところだ。


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