アマゾンドットコムの売上推移などをグラフ化してみる(2014年)

2014/10/25 14:00

文房具や書籍、各種玩具、さらには飲料食料品や大型動物の実物大模型に至るまで、多種多彩な商品を取り扱い、条件が合えば注文翌日どころか当日に商品を入手できる通販サービス「アマゾン」。その浸透ぶりに「konozama」をはじめ多種多様な造語も使われるようになったが、今や多くの人にとって欠かせないインフラの立ち位置にある事実は、誰一人として否定は出来ない。今回はそのアマゾンについて、日本国内だけではなく世界全体の同社における財務状態の推移を、アメリカの電子開示システムを用いて各種データを取得し、眺めることにした。

スポンサードリンク


累乗的に伸びる売上、営業利益は2002年からようやく黒字に


アメリカでは電子開示システムEDGAR(Electric Data Gathering、Analysis and Retrieval)で、1995年以降の各種財務データを誰でも自由に入手することができる。改定文書削減法(The Document Reduction Act of 1995)で、アメリカの公文書の電子化が義務付けられたからだ(無論インターネット上での公開なので、今件のようにアメリカ国外からでも取得可能)。

【公開場所はここ。SEC Filings & Forms】。この場所から【Search for Company Filings】、さらに【Boolean and advanced searching, including addresses】を選択していく。そして検索キーワードには「amazon com inc 10-K」を入力。ちなみに「10-K」とは「年次報告書」を意味する。アメリカ以外の企業なら「20-F」、四半期報告書は「10-Q」、臨時報告書は「8-K」。また、アマゾンドットコムは12月末決算なので、現時点では2013年分まで年次決算データが用意されている。

アマゾンドットコムのデータは1999年3月5日提出のものが最古となる。このデータには1994年以降のものも掲載されているが、初年度は立ち上げ時期なこともあり、売上がゼロなので、これは省略。1995年以降のものを抽出し、グラフを生成する。最新のデータは上記の通り2013年分。2013年分までの年次決算データを逐次引き出し、必要な計算を行い、値を算出する。

なお日本の企業と比較する際には、それぞれの年の為替レートを考慮する必要がある。しかし今回はアマゾンドットコムそのものの推移を見るので、ドルベースのままで問題ない。一方、グラフの構成上、営業利益率の動向がやや見づらい形となるので、同項目がプラスに転じた2002年以降に限定したものも合わせて作成する。

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2002年以降)
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2002年以降)

営業利益率」とは「売上高営業利益率」のこと。つまり売上と営業利益の関係を示している。計算方法はシンプルで「総売上を営業損益で割ったもの」。この値で「本業の稼ぎにおける効率の良さ・悪さ」が分かる。高い方が効率よい本業をこなしていることを意味し、マイナスならば本業が赤字を出している。

グラフの動向からも分かるように、売上高は累乗的に増加する一方、営業利益率は1999年に一度落ち込み(営業費用の大幅な増加が原因)、2001年まではマイナスのまま推移。2002年にはようやくプラスに転じている。しかしそれ以降、大きな上昇を見せることなく、営業利益率は横ばいを続けている。

2007年以降は4%台、直近の2013年にいたっては1.0%しかなく、日本の一般小売店とさほど変わりがない値を示している。アマゾンドットコムが大きな黒字額を計上するニュースを見聞きした記憶がある人は多いだろうが、これは「利益率の高いビジネスをしているから」ではなく、「スケールメリットを活かした」結果、言い換えれば「規模の大きなビジネスをしている・薄利多売だから」得られたものであることが理解できる。

また、2010年以降営業利益率は減退傾向を続けている。2011年以降は額面上の営業利益、そして純利益まで減少している(2012年は純損失が発生している始末)。これは先の【Apple、Google、Amazon…デジタル技術分野での三大企業の売り上げ動向などをグラフ化してみる(2012年版情報通信白書より)】でも解説しているが、アマゾンでは「電子書籍端末のKindleの開発・販売も手がけており、同端末は競合するiPadなどに比べて、機能を絞り込み価格を抑える一方、アメリカ国内では通信コストは同社が負担するなど普及に向けた取組を進めて」いるのが原因。また2012年における損失の原因の一つである、2010年に出資したLivingSocial(クーポン共同購入サイト)の損失に代表されるように、社内外を問わずに投資案件を積み上げ、領域拡大を推し量っており、その影響から利益が圧縮されている。現時点では「電子書籍事業をはじめとする新事業への投資に注力する時期にある」と見た方が納得はしやすい。

各種営業指標をグラフ化


良い機会でもあるので、アマゾンドットコムの1995年以降における「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」の推移もグラフ化し、状況を確認する。

↑ アマゾンドットコム「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」推移
↑ アマゾンドットコム「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」推移

「総売上」と「売上原価」の差、つまり「粗利」が小さく、さらに営業費用が加わることで利益が食いつぶされ、売上と比べれば利益が非常に小さいことが見て取れる。ただし割合としては小さくとも、規模そのものが大きいので、結果的にダイナミックな額の利益を確保できる次第である。

また、2007年から営業費用が急激に上昇しているのが確認できる。これは2011年提出分から計算様式が少々変わり、売上原価を営業費用に計上したため。提出された書類から、確認可能なものまでさかのぼり、グラフには反映させている。アマゾンの財務体質に根本的な変化が生じたわけではない。



アマゾンでは当初立ち上げ時から5年位の間は、利益が十分にあがらないだろうことを前提に戦略を組んでいたとの話もある。実際には利益を出すまでさらにもう数年の月日を要したわけだが、赤字の間にも(ご承知のとおりその期間にはいわゆる「ITバブル崩壊」の時期も含まれる)自らの戦略を信じ、売上と規模を拡大し続けた努力と強い意志があったからこそ、今の地位を築くことができた。

アマゾンドットコムイメージ何しろ昔のことなので番組名も含め詳しいことは失念してしまい、記録も見つけられなかったが、あるビジネス番組に登場していたアマゾンの関係者は「予定よりは遅れているが、必ずこのビジネス(アマゾン)は成功する」と確信を持って答えていた。そのシーンがグラフを見るたびに思い起こされる。

現在ではアマゾンは、インターネット上の通販ビジネスで世界ナンバーワンの地位を占めている。そして昨今では電子書籍・リーダーの世界にも乗り出し、関連事業も含め、確実に躍進を続けている。確固たる意志とそれを体現化するための絶え間ない努力、そして関係者の協力が、今の状況を作り出していることは間違いない。

昨今の電子書籍リーダー「Kindle」への注力ぶり、そして「営業利益率を下げてでも注力する価値のあるもの」という同社の方針も、同社の中長期的なかじ取りの一環と見れば、十分理解できるというものだ。

なお先日各報道で伝えられている通り、アマゾンの2014年における第3四半期の決算においては赤字幅が大幅に拡大し、純損益で4.37億ドルの赤字を計上してしまった。売上は上昇を続けているが、各種費用、特にFire Phoneの販売促進費用などが響いている。

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2014年、Q単位)
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2014年、Q単位)

第4四半期でどこまでこの状況をくつがえせるか、来年の決算発表を楽しみにしたいところではある。


■関連記事:
【ツイッターの売上推移などをグラフ化してみる】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー