高校2年生に聞いた、アルバイトの就業実態(最新)

2018/10/27 05:10

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2018-1018非正規雇用に該当するため雇用関連の統計では何かと誤解を受けやすい就業形態の一つ、アルバイト。中学生ではさすがに学校も許可を出さず、求人側も拒否してしまうが、高校生になると一定のルールを設けた上で、学校側から許可される事例が増えてくる。学費を稼ぐため、携帯電話代の補てんとして、あるいは自分の趣味のため、恐らくは人生で初めての経験となる、他人に指図された上での就業と、その対価としての報酬の獲得。多面的な観点で大いに人生の糧となるに違いないアルバイトについて、今回は国立青少年教育振興機構が2018年8月22日に発表した「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告書の結果から、状況を確認していくことにする(【「青少年の体験活動等に関する実態調査」(平成28年度調査)報告書】)。


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アルバイト経験者は年々減少中


今調査の調査要項については先行記事【果物の皮を包丁でむいたり、ぞうきんを絞ったり…いまどきの子供事情を探る】を参考のこと。

冒頭で解説した通り、多様で貴重な経験となるであろうアルバイトについて、今までにしたことがあるか否かを尋ねた結果が次のグラフ。なお今調査の調査対象母集団は小中高校生だが、アルバイトの許可が下りるのは大抵の場合は高校生以上であることから、回答対象も高校生に限定されている。

↑ アルバイトをしたことがあるか(高校2年生)
↑ アルバイトをしたことがあるか(高校2年生)

直近の2016年度では28.5%がアルバイト経験あり、7割強が無しと回答している。具体的なアルバイトの内容は今調査では尋ねていないが、ファストフードやコンビニの店員、荷物運び、新聞配達など多様な職種が容易に想像できる。年始における郵便局の配送業務を経験した人もいるだろう。夏休みや冬休みのような長期休業時期に、学生らしさを見せる店員が働いている姿を見た人も多いはず。

経年変化を見ると、おおよそアルバイトの経験者は減る傾向にあることが分かる。2006年度時点では42.7%もいたが、2016年度では28.5%と1割以上も減少。ここ数年では減少の動きが底を打った感はあるが、下げるタイミングがほぼ金融危機に始まる不況動向と一致するため、単に求人不足のためにアルバイト経験者が減っている可能性もある。

しかし2014年度(2015年2月から3月実施)ではすでに景況感は回復し、何よりアルバイトも合わせた求人枠の大幅増加に伴う労働市場における人手不足が生じている。そしてその状況は2016年度でも変わらない。単なる求人不足が最近のアルバイト率減少の原因ならば、2014年度は増加に転じていなければならないはずだが、その予想に反して減少の結果が出ている。単なる統計上のぶれか、あるいは高校生において学業により専念するため、アルバイトを避ける傾向が生じているのかもしれない。

これを男女別に見ると、意外な結果が出ているのが分かる。

↑ アルバイトをしたことがあるか(高校2年生、「ある」回答率、男女別)
↑ アルバイトをしたことがあるか(高校2年生、「ある」回答率、男女別)

全般的に男子よりも女子の方がアルバイト経験率は高い。女子の方が接客系のアルバイトの求人が多いからか、それとも成長が早くアルバイト経験を求める意欲も高まるからだろうか。

直近となる2016年度では男子は1/4ほど、女子は3割強が、高校2年生時点でアルバイト経験を持っていることになる。アルバイト経験率の動向として、女子は漸減のように見えるが、男子は2010年度に底を打った感はある。

アルバイトとの相関関係はいかに


よい機会でもあるので、クロスデータを取得し、いくつかの事象とアルバイト経験との相関関係を確認しておく…のだが、現時点では最新値となる2016年度分に関してはまだ公開されていない。そこでクロスデータが公開された最新調査分となる2012年度分で精査を行う。あくまでもこれらの動向は相関関係で、因果関係を証明するものではないが、検証の材料には役立つ。

まずは携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方を含む。2012年度時点では多分に従来型携帯電話)の所有動向とアルバイト経験との関係。

↑ アルバイトをしたことがあるか(高校2年生、自分用の携帯電話を持っているか否か別)(2012年度)
↑ アルバイトをしたことがあるか(高校2年生、自分用の携帯電話を持っているか否か別)(2012年度)

携帯電話を持っている人は約3割、持っていない人は2割強がアルバイト経験を有している。携帯電話の利用で必要となる電話料金などが全額保護者負担ならばともかく、一部は自分の稼ぎで負担するようにとの教育方針を採用している家庭があることを考えると、携帯電話所有者の方がアルバイト経験率が高いのは納得がいく。

もう一つは自主的勉強時間。

↑ 学校の授業や学習塾以外に勉強すること(高校2年生、アルバイトの経験の有無別)(2012年度)
↑ 学校の授業や学習塾以外に勉強すること(高校2年生、アルバイトの経験の有無別)(2012年度)

アルバイトをすればその時間分だけプライベートな時間が減るため、学校や塾以外の自主的な勉強の機会が減る。当然と言えば当然だが、それを裏付ける具体的データが今グラフ。アルバイト経験がある人は半数近くが自主的勉強時間はゼロ、1時間未満は3割強。アルバイト経験が無いと、ゼロは3割足らず、1時間未満は3割強。ゼロの部分だけを見ても、明らかにアルバイトをしていると自主的勉強時間が減ってしまうことになる。

繰り返しになるが、今件は相関関係を示すものの、因果関係までも説明するものではない。設問中に「携帯料金のためにアルバイトをしている」「アルバイトで忙しいので勉強に時間が割けない」などは無い。しかし一定部分はそのような因果関係の結果としてこれらの数字が出ていることは、容易に想像できよう。

2016年度分では多分にスマートフォンの普及が進んでいるため、注力時間の増加と経済的負担が増していることから、相関関係にも大きな変化が生じていることが予想される。クロスデータの公開による、その実情を早く確認したいところではある。


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