有料の電子新聞、新規購読希望者は1割足らず(最新)

2018/01/24 05:11

2018-0123新たな情報発信・受信可能なメディア、インターネット。その急速な普及に伴い、一方向的に情報を提供することでビジネスを展開してきた複数のメディアが需要の減退に直面し、その様態の変更を余儀なくされつつある。特に一方向性が強い紙媒体は、インターネットのあおりを強く受けている。そこでそのネットメディアに乗る形で、従来紙媒体上に展開していた各種情報を言葉通り「のせて」、電子新聞として販売する動きが積極化しつつある。ビジネスモデルは大きく「無料で閲覧・広告収入など第三者ルートで経費回収」「購読希望者のみに閲覧させ、課金で直接回収」の2通りに分けられるが、新聞各社としては紙媒体の新聞販売に近い後者の方を望む意志が強い。今回は財団法人新聞通信調査会が2018年1月8日に発表したメディアに関する全国世論調査の結果をもとに、現状における有料の電子新聞の認知度、そして利用意向を確認していくことにする(【発表リリース:第10回メディアに関する世論調査結果】)。

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有料購読ポテンシャルは1割足らず


今調査の調査要綱は先行記事【じわりと下がるメディアへの信頼度、ようやく下げ止まりか(最新)】を参照のこと。

先行記事【インターネットでニュースはどの程度閲覧されているのだろうか】などで解説しているが、今調査対象母集団では7割足らずが頻度は問わず、そして毎日ならば4割強がインターネット経由でニュースを閲覧している。

↑ インターネットニュースの閲覧状況(再録)
↑ インターネットニュースの閲覧状況(再録)

この「ニュース」とは有料・無料を問わず、また新聞社配信のニュースとは限らない。そこで、有料かつ新聞社配信のものとなる、有料の電子新聞を知っているか、そして読みたいか・すでに読んでいるか否かを聞いた結果が次のグラフ。あくまでも有料版に限定した話であることに注意。

↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2017年度、属性別)
↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2017年度、属性別)

現在利用している人は2.1%。今後利用したいと考えている人は9.5%。一方で利用したくないとの意見は65.5%。知らない人も2割強存在する。元々興味関心が薄いことから気にも留めていなかった人が多分にいるのだろうが、仮に現在「知らない」に該当する人の半数が好意派に転じても、現状では全体の2割強しか有料電子新聞を用いる・用いたい人がいない計算になる。何らかの仕組みの変化や工夫を凝らさずに、仮に紙の新聞を全廃し、電子版のみに切り替えたら、どれだけ「購読者」は残るだろうか。朝刊や夕刊の閲読者率(68.9%)をそのまま新聞購読者率と仮定した場合には、およそ1/3に減少する計算となる。

属性別に見ると、男女別では男性の方が積極的、そして年齢階層別では20代から50代までは押し並べて同じような動きを示している。恐らくは仕事で使う機会が多いことが主要因だと考えられる。もっとも見方を変えると、認知度がそれなりに高いこれらの年齢階層でも、現状では1割強しか利用に好意的な人がいないことになる。

経年推移を見ると


電子新聞の認知度、利用意向について経年推移を確認したのが次の図。ただし読み方に注意が必要となる。

↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)
↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)

グラフ題名に注意書きがあるが、2012年度までは単に電子新聞との設問だったのに対し、2013年度からは有料の電子新聞に限定した問いとなっている。そのため2013年度からは「現在非利用だが利用したい」の回答率が大きく落ち、その分「利用したくない」人が増えている。

単なる電子新聞と有料の電子新聞との仕切り分けには留意が必要だが、それでもなお認知度の上では着実に世の中に浸透を続けているのが分かる(ここ数年では「知らない」が減少せず、頭打ちの感はあるが)。他方、有料版と明記した上での設問はまだ5年分なのでぶれが生じている可能性はあるが、利用したくない人の値の増加と、利用したい人の減少がほぼ同時期に起きており、有料の電子新聞でも「新聞離れ」が生じているのが分かる(「利用したくない」は「知らない」ではなく、知った上で拒否をしていることに注意)。これでまだ「現在利用中」の人が増えていれば救いはあるのだが。

「知らない」人が存在を知れば利用意向を持つようになるのではとの考えもある。しかし繰り返し有料電子版の存在の周知が行われている現状で、なおその存在を知らない人は、元々有料コンテンツ、新聞記事にはさほど興味が無く、たとえその存在を知ったとしても、「利用したい」「利用中」に移行する可能性はさほど高く無い。

紙の新聞とのセット価格で考えると


有料の電子新聞の販売スタイルとしては、現在紙の新聞を購読している人にも手をつけやすいよう、新聞の新規購読検討者にはお値打ち感をアピールできるよう、「紙の新聞と一緒ならば、有料の電子新聞は安く提供します」との様式が主流となっている。有料の電子新聞は物理的な形として残らないので、紙の新聞と同額では損をしているように思えることからの配慮もあるのだろう。

そこで、紙の新聞とのセット価格として、有料の電子新聞はいくら上乗せするスタイルなら購読してもよいと考えられているのだろうか。上記にある「有料の電子新聞は知らない」とした人も含めた、全員に聞いた結果。

↑ (有料の)電子新聞の許容購読料(紙の新聞とセットで購読する場合)(2017年度)
↑ (有料の)電子新聞の許容購読料(紙の新聞とセットで購読する場合)(2017年度)

「無料」、つまり紙の新聞を購読すれば無料で本来は有料の電子新聞も購読できるという選択肢があるにも関わらず、購読したくないとの意見が過半数を占めている。新聞そのものを購読していない人に加え、電子新聞になじめない人も多分にいるのだろう。無料なら権利だけでももらっておいた方が、と考える人はもう少しいるような気もするのだが(今調査対象母集団では月ぎめで紙の新聞を購読している人は70.6%なので、「すでに紙の新聞を購読しているが、本来有料の電子新聞を無料で利用できるとしても、必要無いと考えている人が1割以上いることになる」)。

無料ならと考える人は18.6%、何らかの金額を上乗せすれば紙の新聞とセットで有料の電子新聞を購読してもよいと考えている人は21.1%。非常に厳しい結果に違いない。

ならば紙の新聞の購読は考慮せず、有料の電子新聞単独での購読の場合、いくらぐらいまでは出せると考えられているのか。

↑ (有料の)電子新聞の許容購読料
↑ (有料の)電子新聞の許容購読料

2016年度分は設問自身が無かったので回答値が無いが、その代わりに「月額2000円」との固定額での設問があった。新聞業界側としてはその額が思惑的な額面なのだろう。しかしその額で購読を望む人は1.7%でしかない(2000円台に3000円台、4000円以上も合わせた値)。さらに「(有料ならば)購読したくない」とする人が72.8%もおり、この値は年々増加する傾向にあるのも注目に値する。

紙の新聞が全廃されれば、もう少し有料電子新聞に移行する、それなりの対価を支払っても読みたいとの人の割合は上昇する可能性が高い。しかし1社のみが実行したのでは、他社の紙の新聞を代わりに購読するのみに留まるのは容易に想像できる。現状では発行する新聞のすべてを電子版にシフトすることは、経営的にはまず不可能と見て間違いはなかろう。


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