有料の電子版新聞、新規購読希望者は1割台(2016年)(最新)

2016/11/07 05:18

新たな情報発信・受信可能なメディア、インターネット。その急速な普及に伴い、一方向的に情報を提供することでビジネスを展開してきた複数のメディアが需要の減退に直面し、その様態の変更を余儀なくされつつある。特に一方向性が強い紙媒体は、インターネットのあおりを強く受けている。そこでそのネットメディアに乗る形で、従来紙媒体上に展開していた各種情報を言葉通り「のせて」、電子新聞として販売する動きが積極化しつつある。ビジネスモデルは大きく「無料で閲覧・広告収入など第三者ルートで経費回収」「購読希望者のみに閲覧させ、課金で直接回収」の2通りに分けられるが、新聞各社としては紙媒体の新聞販売に近い後者の方を望む意志が強い。今回は財団法人新聞通信調査会が2016年10月24日に発表したメディアに関する全国世論調査の結果をもとに、現状における有料版の電子新聞の認知度、そして利用意向を確認していくことにする(【発表リリース:2016年メディアに関する世論調査結果】)。

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有料購読ポテンシャルは約1割!?


今調査の調査要綱は先行記事【じわりと下がるメディアへの信頼度、震災以降加速化か(2016年)(最新)】を参照のこと。

先行記事【インターネットでニュースはどの程度閲覧されているのだろうか(2016年)(最新)】などで解説しているが、今調査対象母集団では7割近くが頻度は問わず、そして毎日ならば4割強がインターネット経由でニュースを閲覧している。

↑ インターネットニュースの閲覧状況(再録)
↑ インターネットニュースの閲覧状況(再録)

この「ニュース」とは有料・無料を問わず、また新聞社配信のニュースとは限らない。そこで、有料かつ新聞社配信のものとなる、有料電子新聞を知っているか、そして読みたいか・すでに読んでいるか否かを聞いた結果が次のグラフ。あくまでも有料版に限定した話であることに注意。

↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2016年度、属性別)
↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2016年度、属性別)

現在利用している人は3.0%。今後利用したいと考えている人は10.7%。一方で利用したくないとの意見は63.4%。知らない人も2割強存在する。元々興味関心が薄いことから気にも留めていなかった人が多分にいるのだろうが、仮に現在「知らない」に該当する人の半数が好意派に転じても、現状では全体の1/4程度しか有料電子新聞を用いる・用いたい人がいない計算になる。何らかの仕組みの変化や工夫を凝らさずに、仮に紙版の新聞を全廃し、電子版のみに切り替えたら、どれだけ「購読者」は残るだろうか。朝刊や夕刊の閲読者率(70.9%)をそのまま新聞購読者率と仮定した場合には、およそ1/3に減少する計算となる。

属性別に見ると、男女別では男性の方が積極的、そして年齢階層別では若年層から中堅層までは押し並べて同じような動きを示している。恐らくは仕事で使う機会が多いことが主要因だと考えられる。もっとも見方を変えると、認知度がそれなりに高いこれらの世代でも、現状では2割足らずしか好意派が居ないことになる。

経年変化と「月2000円」ならどうするか


電子新聞の認知度、利用意向について経年変化で確認したのが次の図。ただし読み方に注意が必要となる。

↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)
↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)

グラフ題名に注意書きがあるが、2012年度までは単に電子新聞との設問だったのに対し、2013年度からは有料の電子新聞に限定した問いとなっている。そのため2013年度からは「現在非利用だが利用したい」の回答率が大きく落ち、その分「利用したくない」人が増えている。

単なる電子新聞と有料の電子新聞との仕切り分けには留意が必要だが、それでもなお認知度の上では着実に世の中に浸透を続けているのが分かる(直近ではいくぶん前年から「知らない」が増えてしまったが)。他方、有料版と明記した上での設問はまだ4年分なのでぶれが生じている可能性はあるが、利用中・利用したくない人の値の増加と、利用したい・知らない人の減少がほぼ同時期に起きており、「利用したい人が実際に利用し始める」「知らない人は多分に利用したくないに移行する」実情が透けて見えてくる。

繰り返し有料電子版の周知が行われている現状で、なおその存在を知らない人は、元々有料コンテンツ、新聞記事にはさほど興味が無く、たとえその存在を知ったとしても、「利用したい」「利用中」に移行する割合はさほど多くないと考えた方が納得はしやすい。

また、無料かそれに近い形での情報露出手段の増加に伴い、対価を支払った上での電子新聞の購読への魅力が(相対的に)減退している可能性も否定できない。実際、対価の観点でも、年々「電子新聞を購読するか否かを判断する場合、この金額ならばOK」との許容購読料(月額)は漸減し、対価を支払ってまで電子新聞は読みたくないとの意見も増加している。

今調査では前年度まではいくつかの金額の仕切り分けで有料電子新聞の購読料金の許容額を確認していたが、今年度からは「月額2000円」との具体例を挙げて「購読したいか否か」を訪ねている(恐らくは新聞業界側の希望金額的なニュアンスがあるのだろう)。前年度までの動向も興味深い動きであり、今回は双方のグラフを掲示する。

↑ 電子新聞の許容購読料(-2015年度)
↑ 電子新聞の許容購読料(-2015年度)

↑ 電子新聞の購読意向(単独購読料2000円/月を想定、2016年度、属性別)
↑ 電子新聞の購読意向(単独購読料2000円/月を想定、2016年度、属性別)

直近2016年度では月額2000円との想定において、現在利用中(質問用紙が非公開なので「月額2000円ぐらい、あるいはそれ以上の料金支払いですでに購読中」「金額はともかく有料電子新聞を購読中」のいずれかの判断は不可能)は1%にも満たない。現在購読していないが、今後利用したいとの人も5%足らず。意見留保が4割近いが、明確な否定意思を持つ人も5無を超えている。

「分からない」の回答率が高いのは、支払い方法の煩雑さや、対象となる電子新聞がその対価に値する内容なのか否かに関して具体的な例を挙げていないのが多分な理由だろうが、見方を変えればそのような条件設定でも過半数が明確な拒否反応を示しているのは注目に値する。前年度までの仕切り分けによる調査結果動向を見ても、月額2000円ではハードルが高いとの判断であることは容易に理解ができる。一方で「紙版の新聞を購読するので、金額がいくらだろうと電子新聞を購読するつもりは無い」との意図を持つ人も多分にいるだろう。

ちなみに今調査対象母集団における月極の新聞購読率は73.0%、月ぎめ以外の購入や購入せずに読むルートも含めた朝刊閲読率は70.4%・夕刊は23.7%。無論紙媒体版が全廃すれば、もう少し有料電子版に移行する、月額2000円でも許容する人の割合は上昇する可能性が高いが、1社のみが実行したのでは他社紙媒体版を代わりに購読するのみに留まるのは容易に想像できる。現状では発行する新聞のすべてを電子版にシフトすることは、経営的にはまず不可能と見て間違いはなかろう。


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