4マスでは新聞のみマイナス、ネットは大きく伸びる(経産省広告売上推移:2014年12月発表分)

2014/12/12 11:00

経済産業省は2014年12月11日、「特定サービス産業動態統計調査」に係わる2014年10月分となる速報データ(暫定的に公開される値。後程確定値で修正される場合が多々ある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によると2014年10月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス3.7%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)においては「新聞」がマイナス3.6%と、唯一下落している。それ以外の項目はすべてプラス値だが、その中では「インターネット」が最大の上げ幅となるプラス14.9%を示す形となった(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マスでは新聞が唯一マイナス、ネットはグンと伸びる


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通した部分の解説は、記事を集約したページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

まずは主要5項目の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年9月-2014年10月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年9月-2014年10月)

今件データは前年同月比を示したもの。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年9月分のデータと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表される、確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門も多々ある。今回は速報値から確定値に至る際に上方修正された項目が多く、全体値もプラス1.2%からプラス1.6%へ、0.4%ポイント引上げられることとなった。

今回月では4マスは「新聞」のみマイナスで、それ以外はプラス。新聞の軟調ぶりは相変わらずではあるが、テレビはともかく雑誌やラジオがプラスを示しているのは珍しい。もっとも両者とも前年同月においては、前年同月比の値がマイナス5%台だったことから、多分に反動によるプラス化と見ることもできる。ちなみに前々年同月比を試算するとそれぞれマイナス4.2%・マイナス3.2%となり、なるほど感を覚えさせられる。

確定報で修正した上で前月からの動きを見ると、反動によるものとはいえ、雑誌やラジオがプラス化したのは喜ばしい話に違いない。また、新聞にしてもマイナスである事実は否定できないものの、下げ幅を縮小していることから、一定の評価はできる。金額が大きいテレビはプラス幅を拡大しており、インターネットも上昇幅を2倍以上のものとしている。動きぶりは項目によりけりだが、概して堅調な流れであることは好感できよう。

今回計測分となる月、つまり2014年10月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する項目の動きを確認すると、「新聞が不調」「雑誌が復調」「インターネットが堅調」などとある。また、ラジオは一部でプラス、テレビは両社ともプラス値を示しており、大よそ今回の経産省発表データと流れを同じものとしていることが分かる。

なお4マスとネット以外の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。今項目はイレギュラー的な動きをすることが多いため、グラフの形状がかなり雑な形となる場合があるのだが、今回月もそのパターンによる結果となってしまった。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年10月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年10月)

今回月は「海外広告」が大きく伸び、前年同月の2倍以上の額面を示したため、突出する形となった。ただし額面は他項目と比べてさほど大きいものでは無く(44億8500万円)、例えばインターネット広告の1/8足らず。そのため、全体に与える影響もわずかなものでしかないのも事実。

一方、電通・博報堂の最新の月の記事でも言及している通り、広告媒体の多様化に伴い、既存の区分ではカバーしきれない、「その他」に収めざるを得ない広告が増えている。今回月は1056億7900万円で、その額はすでにラジオや雑誌、新聞の額を抜き、インターネット広告すら飛び越え、テレビ(1255億7500万円)に迫る勢いを見せている。やはりこちらでもそろそろ「その他」の細分化が必要なのかもしれない。

100億円に迫る新聞とインターネット広告の差額


今回も該当月(2014年10月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化によって、状況の確認を行う。各項目の市場規模を俯瞰的に推し量ることができる。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手ではあるが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されているわけではないので、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。あくまでも項目部類の相対的関係における参考指針程度。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(2014年10月、億円)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(2014年10月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向ではまだまだ「新聞」が優勢ではあるが、それ以外の広告代理店も含めた今件データでは、インターネット広告を中心に取引する企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の順位上の立ち位置が逆転する現象が生じている。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)】で示した通り。今のところ2014年1月が最後で、それ以降は「新聞」が「インターネット広告」を超えた月は確認されていない。

今回月では両者の金額差は80億円に近づくほどの値となった。ほぼ「新聞」と「雑誌」を足して「インターネット広告」に相当する額となり、単月ならば従来型メディアの紙媒体全体の広告費が、インターネット広告費とほぼ同額という結果となる。ある意味、時代の流れを象徴する図式ではある。

一方で「インターネット広告」は中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっているが、その機動性の高さゆえに、金額の浮き沈みが大きいのも特徴の一つ。2011年以降は3月と12月に大きく伸びるのがパターンとして表れているが、これは年末と年度末の調整に、インターネットを用いた広告が多用されている事が想定される。広告出稿側の立場になって考えれば、それは容易に想像できる。あるいはかきいれどきに集中投下されているのかもしれない。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年10月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年10月)

2011年以降はくっきりと、3月・12月のピークにおける大きな上振れのようすが描かれている。見方を変えれば、2011年以降はインターネット広告の投下に関して、一つのパターンが業界・市場の上で形成されたと見ても良いだろう。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。従来型広告、特に上で解説している通り「その他」が大きく動き、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降であることから、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年10月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年10月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額そのものが継続的に減っていることを意味する(前年同月比の値のため)。少なくとも広告費の観点ではあるが、両メディアの低迷が短期的なものでは無く、「インターネット広告」に注目が集まり始めた以降の長期的なものであることが分かる。そして「メディア力(りょく)」の低下は、広告費の減退として表れることが思い返される。公知効果の低いところに多額の広告費を支払う酔狂な広告主はあまり無い。

雑誌と新聞、両媒体ともに「紙」で構成される共通性があるが、デジタル系メディアの伸長を見るに、その影響であることは否定し難い。他方、一部はウェブマガジンや大手新聞社のように、コンテンツが紙からデジタルに移行し、それに合わせて広告もシフトした事例も想定できるのがまだ救われる。

濃い藍色で記された「ラジオ」は、「新聞」や「雑誌」よりも低迷度が大きい。具体的には「0%」より下の領域が定位置化している。これは前年同月比でマイナスが続いている、言い換えれば売り上げが紙媒体以上に減少し続けている。ただしグラフ動向をよく見直すと、2014年に入ってからはカーブが上向きとなり、復調傾向にシフトしている様子が見受けられる。これが単なる前年同月がマイナスであることの反動なのか、本格的なメディア力=広告費の回復基調の表れなのか、現時点では判断が難しい。広告費全体に占める割合は大きなものでは無いが、興味深い動きとして今まで以上に注目したい。

また、2012年以降はインターネット広告をはじめ、各広告費の動向があまりぶれなくなり、前年同月比の振れ幅がプラスマイナス10%のボックス圏内に留まるようになったのも興味深い。最近ではインターネットがやや上振れしているが、大よそこの領域内に留まっている。広告費における投入先に関するクライアント側の試行錯誤がある程度終えんを迎え、微調整の段階に入ったのかもしれない。

もっともこのままの状態が固定化すると、マイナス基調の新聞や雑誌は目も当てられない状態が確約されてしまう。どうにかして復権を望みたいところではあるし、そのための施策も欠かせない。とりあえず成果が出そうな、前世紀までの手法としては有効だったかもしれないが、今世紀に入ってからでは効果よりも実害の多い、いわゆる炎上商法が紙媒体で目立つようになったが、この状況に対する焦りが見せた結果と考えれば、道理は通る。

もちろんそのような手法は個々の媒体だけでなく、同業他社にとってもマイナスとなる。ドーピング的な対処療法では無く、長い目で見た戦略の上での施策による、根本的な構造改革が求められよう。


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