落ち続ける新聞への信頼感、その理由は(2016年)(最新)

2016/11/02 05:14

情報を伝える媒体としてのメディアに対する信頼度は、欧米諸国だけでなく日本においても漸減する傾向にあることは、既に多数の調査結果から明らかにされている。先に【じわりと下がるメディアへの信頼度、震災以降加速化か(2016年)(最新)】で伝えた通り、財団法人新聞通信調査会が発表したメディアに関する全国世論調査の2016年度版でも、その実態は明確な数字の形として確認できた。それではこの1年間で各メディアへの信頼感は、どのような変化を見せているのだろうか。その内情、特に新聞に関する動向を見ていくことにするる(【発表リリース:2016年メディアに関する世論調査結果】)。

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全メディアで「信頼下落」>>「信頼上昇」


今調査の調査要綱は先行記事「じわりと下がるメディアへの信頼度、震災以降加速化か(2016年)(最新)」を参照のこと。その先行記事の通り、主要情報配信メディアに対する信頼度は漸減する傾向にある。新聞に関しては直近年度は前年度と比べて0.8ポイント下落し、他のメディア同様に中長期的に見れば減退傾向にあることは否定できない。

↑ 各メディアの信頼度(100点満点)(経年別)(再録)
↑ 各メディアの信頼度(100点満点)(経年別)(再録)

そこで直近の2016年度において、この1年間で各メディアに対して信頼感は変化したのか否かを尋ねた結果が次のグラフ。2013年度以降分における同様の設問の結果を合わせて生成している。また、少々冗長になった感もあるため、「上昇」から「下落」の値を引いたDI値を算出し、その値のみの動きも合わせてグラフ化した。プラスならば上昇と考えた人が多く、マイナスならば下落と考えた人が多い。それぞれの方向の絶対値が大きいほど、その思いが強いことになる。

↑ 各メディアへの信頼感は変化したか(前年度と比べて)
↑ 各メディアへの信頼感は変化したか(前年度と比べて)

↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった−低くなった)
↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった−低くなった)

信頼感の上下度合は回答者それぞれで一概には言えないが、大よそ「上昇」が「下落」より多ければ信頼度は増加し(DI値はプラス)、逆なら減少(DI値はマイナス)と見ることができる。その観点で結果をチェックすると、全メディアで信頼度は減少していることになる。何しろDI値のグラフでゼロを超える値が存在しないのだから。

メディア毎の動向を見ると、特に新聞、民放テレビ、雑誌において、「下落」が「上昇」を大きく上回る結果が出ている。信頼感が損なわれた、失望した人が多かった次第である。直近年度では雑誌のDI値がマイナス12.8%、民放テレビがマイナス10.4%との結果が出ており、権威が大きく損なわれていることが確認できる。またこの両メディアは少なくともこの4年間、大きなマイナス幅を計上し続けており、信頼感の著しい下落ぶりが継続していることがうかがえる。

NHKテレビでは前年度に大きな下落の回答率を計上し、DI値もマイナス幅を拡大した。これは例えば2015年4月末における報道番組「クローズアップ現代」に関するやらせ問題で、総務省からの行政指導文書の受け取りを一時的ながらもNHK側が拒否したことをはじめ、国内外の事案に係わる誤報や不祥事的な報道や、その事案に対する姿勢への問題がいくつか想起される。今年度はいくぶんながらもDI値のマイナス幅を縮小したが、それ以前の信頼感の回復までには至っていないことが分かる(そもそもDI値はマイナスのままなので、回復も何もあったものではないのだが)。

新聞のDI値におけるマイナス幅は年々縮小しているが、まだ2014年度に生じた大幅下落の影響は続いている。2014年度の急落は、いうまでもなく朝日新聞における誤報・捏造・誤報に対する再精査への意図的な無作為による放置の数々が取りざたされたことである。直接事案による不信感は時の流れと共に薄れつつあるが、一向に改善しない体質に、信頼感のDI値をプラスに押し上げるまでの環境は期待できそうにもない。

新聞ってどうよ? そしてその理由は??


直近では新聞の信頼感が増した人は4.3%、下落した人は6.9%との結果が出ている。それぞれの回答者に、なぜそのような選択をした・思ったのかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者、択一)

↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者、択一)

新聞をより信頼するようになった人の理由だが、情報の正確さや公正・中立さへの評価、根拠に基づく情報を報道したことが主なものとなっている。ドラマや映画で新聞社に勤める主人公が語りそうな「政府や財界に迎合しない」との意見は直近年度では2.8%でしかない。

前年度との比較では、情報の正確さが上昇する一方で、公正・中立な立場での報道や根拠に基づく情報の報道の値が減少している。特に後者に関しては少なくとも4年連続の減少傾向にあり、ゆゆしき問題ではある。「何となく」が7.0%と小さからぬ値を計上するようになったのも「新聞を信頼するに足る具体的な要素が見つからない」との解釈をすれば、小さからぬ動きではないことは容易に理解できよう。

他方信頼が損なわれたと感じる人のトップ意見は「特定勢力に偏った報道」で29.7%。ただし設問、報告書ではどの方面、対象の特定勢力とは書かれていない。色々な解釈ができそうだが、いわゆるダブルスタンダード的な報道が日常茶飯事化しているとの指摘も多々ある現状では、無視できない動きには違いない。ただし別選択肢に「政府・財界の主張通りに報道するだけ」がある以上、それと同じ方面に優遇した上で偏った報道との読み方は難しそうだ。

同様の問題として「報道側のモラルが低下した」の回答率が大きく増加し第2位についたのも注目すべきではある。これは新聞報道に携わる一人一人のモラル、そして新聞社、さらには新聞業界全体のモラルの問題でもあろう。

「誤報があった」は直近では9.6%で前年度の3割近くからは大きく減っている。前年度・前々年度の大きな値は言うまでもなく朝日新聞の複数事案が大きく影響したものだが、今年度では優先順位は下げられたと認識できる。とはいえ、話題性はともかく問題の重要性の観点では肩を並べるほどの誤報はそれそこ日々のごとく量産され、その状況に対する新聞社側の姿勢も改善を期待できるようなものでは無いのも事実ではある。

特定の勢力に偏った報道をしているからとの意見も多く、1/4に届いている。今件は択一回答のため、誤報選択肢に大きく数字を吸い取られた形となったが、モラル低下や政府・財界の主張通りのみとの意見も少なくない。



新聞は主要メディアの中ではNHKテレビに次いで高い信頼度を有しているが、それは多分にこれまでの先人諸氏の努力によって構築された「信頼」と名付けられた資産を食いつぶして、ようやく維持していると表現できる。その現状を認識し、行動を律する事が出来なければ、「信頼感は下落した」との回答者率は、来年度以降も高い値を維持したままとなるに違いない。果たして新聞に携わる人のどれだけが、その事実を理解しているだろうか。


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