安定やや値下がりの動き、穀物はいくぶんの上昇、乳製品は前年同月から3割近い下げ(2014年11月分世界食糧指数動向)

2014/12/06 14:00

原材料の価格高騰に加え、為替の変動、エネルギーコストや人件費の上昇などを受け、食料品販売大手が次々に来年春からの価格引き上げを発表する中で、食料品の国際価格に対する注目はこれまでにない高まりを示している。その価格変動について、概略的ではあるが現状を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月公開している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2014年12月4日に発表された現時点で最新版の値となる、2014年11月分の値を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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短期は安定、中期は食肉上昇、乳製品や油脂が大きく下落


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらのページで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2014年11月分を含めた取得可能なデータを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。いわゆる「ざっと見」用の図である。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年11月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年11月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、その内部的な実情は知らなくとも、大きく価格が変化することは多くの人が見聞きしている(店頭で並ぶキロ単位の袋詰めの砂糖価格はそのような変動はあまり無く、価格は比較的安定しているのでご安心を)。その実情をこのグラフから知ることが出来る。他の食品項目は大よそ2005年位まではさほど大きな動きを示していないが、砂糖だけが大きく動いており、別物の動向のように見える。

一方2005年終盤以降になると、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が変化、しかも上昇方向に動き始める。その後直近の数年に渡る(ある意味現在も続いている)金融危機の引き金となる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きると共に、大きく上向きの流れを見せる。

これらの動きは、主に株式市場の暴落を原因とする。要は投資市場の資金が暴落した株式市場から逃げ、その行く先に商品先物市場が目を付けられたということ。そして市場規模は商品先物市場の方が小さいため、過剰な資金流入と共に全体の価格が底上げされ、それは実商品価格の上昇をも招くこととなる。

その後は「リーマンショック」(2008年9月以降)を起因とする市場の騒乱を経て大きく乱高下を成したあと、現在の高値安定状態に移行している。現在は各食品項目とも200から250位の領域で小幅な値動きに終始しているのが分かる。ほんの10年ほど前の水準であった100前後と比べ、約2倍から2.5倍の領域である。

次に示すグラフは、上記グラフの横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月にしたもの。2007年といえば7月・8月から、「サブプライム・ローン」問題がぼっ発(露呈)し、市場は大変動の動きを示した年。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく知ることができるグラフとなっている。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年11月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年11月)

興味深いのは上記でも言及している通り、「サブプライム・ローン」問題のぼっ発「以前から」、食料品価格はやや高値に動き始めていたこと。一般に同問題が知られる前より食料市場は「知っていた」のか、それとも人口増加に伴う消費増加による、中期的な食糧需給の変化が市場に反映されていたのか、それともその双方なのか。残念ながらこのデータからのみでは判断は出来ない。

期間軸を短くしても、砂糖価格の変動が激しい事実に変わりは無い。一方で例えば今回の記事タイトルで言及しているように食肉価格が他の食品と比べて確実に、じわじわと上昇一本やりで、しかもこの一年ほどの間は上げ幅を増していたことが確認できる。それと共にその食肉以外は下げ基調にあることも見て取れる。特に乳製品の下げ方が著しい。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するために、各指標の時系列データを抽出し、「前年同月比」と「前月比」を独自に算出。その数字の変移が分かりやすいように棒グラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年11月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年11月)

総合指数は前月比でマイナス0.1%、前年同月比はマイナス6.4%。いずれもマイナス値を示しており、前月比がマイナス幅は小さめであることから、全体的には食料価格はこの一年間内ではやや安値向きの安定志向にあることが分かる。

個別項目を見ると食肉・穀物・油脂が上昇、乳製品と砂糖が下落。前年同月比で下げ幅は大きく、前月比では上下の動きも大人しめな状態。この動きから、食料価格は食肉以外はこの一年で大きく下げたものの、直近では安定的な値動きに転じたことが確認できる。ただし食肉だけは逆で、この一年で大きな上昇を示し、昨今では安定的な値動きに移行している。

大きな下げ基調を示し、特に前年同月比では記事題名にもある通り3割近い下げ幅を見せた乳製品に関し、その事由をリリースから読み解くと、これまでの価格高騰の主要因だった中国とロシアにおける輸入拡大ペースが止まり、逆に縮小に転じたことが挙げられている。

農林水産省の最新レポートで現状を確認


今記事で毎月連動性のある、付随的資料として精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、2014年11月28日に更新された2014年11月分をざっとではあるが確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、小麦・とうもろこしで生産量が増加するものの、大麦・米で減少。前年度は下回る見込み(24.687億トン)。他方、消費量は大麦で減少するものの、小麦・とうもろこし・米では増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.508億トン)。そして生産量が消費量をほんのわずかだが上回ることから、期末在庫量見込みは前年同度比で上昇する傾向を示している(5億2010万トン、生産量比で21.2%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

生産量に関して減少が予想される大麦と米について詳しい状況を確認すると、大麦はトルコやカナダ、オーストラリア(干ばつやヒョウの被害)での減収が原因、米はアメリカのカリフォルニア州における干ばつ、インドにおけるモンスーン到来の遅延などが影響しているとある。

昨今ではいくぶん鎮静化の動きを見せつつあるものの、今なお地政学リスクにおいて食料供給面でもっとも影響を与え得るウクライナ地方だが、資料の上では今のところ大きな動きは指摘されていない。ただ、例えばウクライナは世界の小麦輸出量の7%、とうもろこしの15%など大きなシェアを持つため、その動向の成り行きには注目をせざるを得ない。一方気象状況においては、先月から続きアメリカ本土でカリフォルニア州における干ばつによる米の、南部地域での寒波や乾燥で小麦の育成への影響が懸念されている。またインドではモンスーンの到来が遅れ、これにより作付けの遅延が発生し収穫面積が減少するとの影響が記されている。その上オーストラリアでも乾燥による生育への影響懸念が言及されている。

気象に大きな影響を与え得るエルニーニョ現象については、2014年11月10日発表時点では「エルニーニョ現象の状態に近づいたが、依然としてエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態が続いている」「今後、平常の状態が続く可能性もあるが、冬にはエルニーニョ現象が発生している可能性がより高い」と、微妙な表現での説明がなされている。

日本国内に限れば(世界全体の生産量には関係はほとんどないものの、日本国内の価格動向には大きく影響を及ぼす)、エネルギーコスト(化石燃料や電気代)の高騰が農家に大きな影を差している。また、食料品の加工や輸送にも小さからぬ負担となることから、市場価格の上昇があちこちで伝えられている。食料品価格は食料需給そのものだけでなく、燃料動向にも小さからぬ影響を受けるとの点で、合わせて注視をしたいところではある。


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