客単価は三社とも堅調、客数は吉野家が群を抜く…牛丼御三家売上:2014年11月分

2014/12/06 11:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2014年12月5日、吉野家における2014年11月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。それによると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス19.5%となった。これは先月から続き、4か月連続のプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業としては、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年11月における売上前年同月比はマイナス0.9%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス1.5%との値が発表されており、今回月は吉野家が群を抜く売り上げの堅調さを示す形となった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。

↑ 牛丼御三家2014年11月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年11月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2013年11月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス1.5%。今月はそこから大きく跳ねて19.5%のプラスを示している。同社では主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落の影響が2013年11月の時点でもまだ続いており、客単価はマイナス7.1%を示していた(客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月の値下げ以降1年間、つまり2014年3月まで続いている)。一方で昨年牛丼業界に大きな嵐を巻き起こした「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は12月の登場で、11月時点ではまだ発売されておらず、客単価の上昇は生じていない。

従って、今回月は牛丼値下げによる客数増加・客単価減少の前年同月との比較が行われる環境下で、「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の再登場に伴う客数増加・客単価上昇が起きており、客数の前年同月比は前年ほどの勢いこそないものの確実に上昇する一方、客単価は大きく跳ね上がり、結果として売上も目覚ましい伸びを見せることとなった。

牛すき鍋膳ちなみに前々年同月比を試算すると、実質的客単価はプラス3.1%に留まっているが、客数はプラス17.6%と大幅に伸びている。鍋膳の勢いがいかに営業成績に貢献しているかがうかがえる。

同期間の吉野家においては、特に新しいメニューの発表・展開は無い。「牛すき鍋膳」と「牛チゲ鍋膳」の新着だけで店舗側もお客もお腹いっぱいというところなのだろう。

↑ 牛丼御三家2014年11月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年11月営業成績(既存店)(前々年同月比)

続いて松屋にスポットライトを当てる。牛丼ならぬ牛めしはむしろサブ的なメニューで、定食こそが松屋の醍醐味であるとの意見も多く、新作・リバイバル的な定食を続々と送り出す松屋ではあるが、今回対象月も期待にたがわず、続々と新定食メニューを投入している。前月末に投入を開始した「スタミナ豚バラ生姜焼定食」をはじめ、「香味野菜のミートソースハンバーグ定食」、そして「豆腐キムチチゲセット」など、まるで定食メニューの宝石箱的な様相を示している。いずれも高単価、しかも「豆腐キムチチゲセット」はそのメニュー特性からカルビ焼とのセットも提案するなど、お客に高品質なひと時を提供しようとする強い意気込みを覚えさせる。

しかしながら他社の鍋攻勢には一歩及ばず。客単価はプラス6.4%に留まり、客足は軟調なことから、売上では唯一前年同月比でマイナスに終わってしまっている。

鍋メニューの即興的な投入に始まり、人員リソースの絶望的な不足、求人がかなわず一時的閉店が相次ぎ、第三者委員会による精査を経ての内部施策の改善模索という、表現の上では「鍋旋風」には違いないものの、痛みを伴う事象が展開された今年一年間となりそうなすき家。今回は大幅にオペレーションを改善し、品目も1つに絞る形で鍋定食を再開し(【すき家でも今年も登場牛すき鍋、店舗の手順は効率改善】)、その成果の一部が出始めている(発売開始は11月27日のため、11月分の営業成績には4日分のみ反映されることになる)。

すき家では11月は他に新メニューの展開は無く、前年同月の営業成績は客数プラス2.5%、客単価マイナス3.0%だったことから、前年同月の反動は大きな影響は無いように見える。客数は三社中もっとも大きく減ったものの、客単価は吉野家と肩を並べる形でプラス11.0%。前々年同月比でも客単価の高さが売り上げをけん引、客数の減退をカバーし、売上そのものはかろうじてプラスを示している。来月分12月は丸々一か月「牛すき鍋定食」のセールスが反映されるため、大きな値の向上が期待できる。

なおすき家では今なお少なからぬ店舗でリニューアル工事などを進めており、一時休業している店舗は今値(前年同月比・既存店)には計算上含まれていない点に注意する必要がある。、仮に全店舗で計算すると前年同月比はマイナス8.1%となる。すき家そのものの全体的な売上としては、小さからぬ減退を示している点は留意しておく必要がある。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年11月)

今年はこのまま年末までゴールしそうな雰囲気


昨年2013年は吉野家の鍋定食の登場という、思いっきり豪速球なラストスパートで幕を閉じた牛丼業界だったが、今年はすでに吉野家、そしてすき家も鍋メニューを投入済みで、新たなサプライズ的メニューの展開や、今年のすき家における労働施策問題のような問題が新たに生じる気配は無く、このまま年末まで歩みを勧めそうな感はある。もっとも松屋がまだ大きな動きを示しておらず(12月6日時点)、もう一波乱が松屋からの材料であっても良い気がする。

節約志向やコンビニ・スーパーの提供食材の充実ぶり、消費者の消費性向の変化を受け、外食産業は一部を除き、厳しい状態が続いている。特に牛丼チェーン店と立ち位置が類似しているハンバーガーチェーン店の苦境ぶりは、皆が知るところ。牛丼チェーン店業界でも客足の遠のきぶりは中期的な動向を見れば明らかで、震災前後の動向を抽出して確認すると、震災をトリガーとしてトレンドが変化し、客が遠のいていく様子が手に取るように分かる。唯一吉野家が、逐次サプライズを呈することでプラスの時期を生み出している程度である。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年11月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年11月)

ハンバーガーチェーン店の不調ぶりも内情を精査すると、価格帯の上では廉価的イメージが強いチェーン店の低迷ぶりが顕著であること。吉野家は牛丼価格こそ値下げによるものだが、鍋定食は高品質・高単価を求め、ファスト(fast)からスロー(slow)への流れに沿った商品であること。さらに外食産業の中でも比較的堅調なファミリーレストランでは複数人数、特に家族連れに対する「場の提供」を重視する施策を打ち出していること。そして何より【日高屋とちょい飲みと・外食産業よもやま話】【「日高屋」で飲む人が増えたのは何故だろう...「日高屋とちょい飲みと・外食産業よもやま話」後日談】でも説明している通り、外食産業において既存の仕組みを活用した「居心地の良い場所のそこそこな対価での提供」的な切り口が成功を収めている点を合わせ見ると、これまでのデフレ感覚を強調した施策では無く、新たな消費者の需要に応える商品開発や業務施策が求められている感はある。

無論全面的な方針の変更は、既存の牛丼チェーン店そのものを否定することになる。それは事実上無理というもの。むしろ「牛すき鍋膳」の提供のように、既存のスタイルの中で手を加え姿形を変えていく、「進化」のような動きが求められる。その進化の中で、例えば「吉呑み」のような新たな種ともいえる業態も誕生していくのだろう。


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