低迷化顕著か、マイナス幅2ケタ台継続…2014年10月新設住宅戸数12.3%減

2014/11/28 16:00

国土交通省は2014年11月28日付で同省公式サイトにおいて、2014年10月の新設住宅戸数の動向(建築着工統計調査報告)を各種データと共に発表した。それによれば2014年10月の新設住宅着工戸数は前年同月比で12.3%減の7万9171戸となり、先月から継続して8か月連続の減少を示したことが分かった。着工床面積は9か月連続・17.6%の減少となっている。なお今回月の発表においては先月同様特記事項として、消費税率引き上げ適用直前の特需発生の反動影響の無い前々年同月比も掲載されているが、その値は6.0%の減少だった(【国土交通省:発表リリース一覧ページ】)。

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数字上、中期的な流れの解説


戸数増加の具体的な内訳では持家が28.6%と9か月連続の「減少」、貸家は4.1%の「減少」、分譲住宅は1.6%の「増加」。今回月は先月から継続する形で持家と賃貸が減少したが、分譲住宅は9月ぶりの増加を示す形となった。現状では持ち家のうち民間資金によるものが28.8%減ともっとも大きな下げ幅を示し、分譲住宅のマンションが23.3%増となりもっとも大きな上げ幅を示している。

社会問題化し世間に喧噪を巻き起こした「耐震偽装問題」をきっかけに、大きな論争を経て実施された2007年の「改正建築基準法」。しかしその施行時において行政側による対応の手際の悪さや準備不足(確認用ソフトウェアですらまともに整備されていなかった)、そしてほぼ同時に顕在化した世界規模の金融危機・不況により、不動産市場は大いに萎縮する。さらに2008年秋に始まるリーマンショックを起因とする、追い打ちをかける不況が襲い掛かる。

それらの苦境を経て、2011年に入ると一部で状況好転の兆しも見られたが、同年3月に発生した東日本大地震・震災が再び市場へ冷や水を浴びせる形となる。その上以前から一部露呈していた「当時の」政府の失策・無策ぶりが、震災という非常事態において多方面で暴露される形となり、消費者の住宅需要に多用な変化をもたらすこととなった。

また、その震災に伴う消費者需要の変化に対応し、新しい需要の取り込みを狙った商品開発・展開も行われ、その動きに合わせて既存の仕組みも連動する形で、進歩発展の動きを示している。そして昨今では景気回復期待・回復感もあり、不動産業界でも景況感の持ち直しが見受けられた。

実際、2014年2月分までの18か月は連続して新設住宅着工戸数が前年同月比でプラスを示していた。これもその景況感の回復の表れと言える。12か月=1年を超えたため、単純な「前年がマイナスだったので、その反動としてのプラス化」を超えた上昇機運であることは間違いない。一方で今回月は2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要の時期を過ぎ、その反動や景気停滞感から、8か月連続で前年同月比ではマイナスを示す形となった。

前回発表の2014年9月分は、1年前の2013年9月が消費税率引き上げ適用直前の特需の最終月となったため、大きな反動が生じており、特需周りの影響を勘案しなくても済む前々年同月比では、プラス2.3%との結果が出ていた。ところが今回月の10月は、余韻こそあれども特需のピークが終わった後の月にも関わらず、前年比だけでなく前々年同月比でもマイナス6.07%となり、マイナス値を示してしまっている。消費税関連の特需による上下をのぞいた上でも、状況の悪化が懸念される。

↑ 新設住宅戸数の変遷(-2014年10月)
↑ 新設住宅戸数の変遷(-2014年10月)

↑ 新設住宅戸数の変遷(2012年10月-2014年10月)
↑ 新設住宅戸数の変遷(2012年10月-2014年10月)

↑ 新設住宅戸数の変遷(前々年同月比)
↑ 新設住宅戸数の変遷(前々年同月比)

改正建築基準法の施行と金融不況のはじまりによる各値の下げ、リーマンショックによる下げ、合わせて2段階の下落を経験したのち、東日本大地震・震災以降は下落、リバウンドによる上昇を繰り返していた。2012年の夏に数か月に渡る下落を記録してからは、昨年の下落の反動を受けての底上げも合わせ、プラスの動きを示している。2012年10月に直近のピークを迎え、それ以降はプラスの幅は縮小していた。

ところが2013年5月からは直前の動きから転じて、プラス幅も大きなものとなった。本格的な住宅市場の活況化が体現化したといえる。また2014年4月からの消費税率引上げに伴い、引渡しや代金支払い(の一部)が2014年4月以降にずれこんでも、2013年9月末までに工事請負契約を締結していれば、適用税率は5%のままという経過措置が取られたことで、2013年9月までの数か月間は「駆け込みラッシュ」的な動きが見られた。

実際適応期間の最期の月2013年9月は大幅増のプラス19.4%、その翌月10月はプラス7.1%と上げ幅を縮小。その次の月にあたる11月はさらに上げ幅を縮小するとの懸念もあったが、フタを開けてみれば再び大幅増と相成った。そしてそれ以降もプラス圏での推移は続いていたが、2014年2月には失速する形でプラス1.0%に留まり、そして3月にはついにマイナス2.9%に転じてしまった。以後、4月から今回月の10月に至るまでマイナスは継続している。

今回月は前回月からややマイナス幅を縮小したものの、上記説明にある通り、前々年同月も加えて勘案すると、逆に値は悪化している。特需とその反動を抜きにした、市場動向の悪化が想定できる。

・耐震強度偽装問題を踏まえた
「改正建築基準法」施行(2007年6月)

・「新築」住宅市場大規模収縮
低迷期
・2008年夏で底打ち
 「前年比」でプラスに
・2008年10月再び下落・失速へ
(リーマンショックの影響)

2009年3月以降低迷、その後回復へ。

震災発生で不透明感。
消費者マインドの変化に応じた
新たな需要の発生。
消費税率引上げの駆け込みと
反動を乗り越え、
現在は景況感の実体化によるプラス、
そして消費税率引上げを受けて
状況悪化、マイナスへ。
純粋に数字的な流れを追うと、2012年10月分(プラス25.2%)をピークとし、上げ幅が縮小する動きが起きていた。2013年2月には底にあたるプラス3.0%となり、その後6月に天井の15.3%を付けた後は緩やかな上昇幅の縮小を示していた。そして消費税率関連の節目となる10月で上昇幅の縮小の直近ピークを迎え、それ以降は堅調な(10%ポイント以上の)プラス圏での推移が続いていた。それが3月には19か月ぶりにマイナスに転じてしまった。今回月も引き続き、その流れが継続している。

前年同月を考慮すると2013年は1月から4月、8月、10月以外は2ケタ台のプラスを示していた。2013年10月はプラスではあったもののプラス7.1%と、1ケタ台に留まっており、その中での前年同月比でら、マイナス値を示してしまっている。市場全体の低迷感が抜けない限り、少なくともプラスが継続された2014年2月の1年後、つまり2015年2月までは前年同月比でマイナスが続くかもしれない。

昨今の動向・斜め読み


不動産全般の視点で昨今の動きとして目に留まるのは、「耐震・免震性」「節電・創電」など、震災の経験を元に大きな注目を集めているテーマを捕えた住宅が通常化しつつあること。「住宅新築の際には、可能ならばエネルギー関連に配慮した設備を取り入れたい」との意思を持つ住宅購入希望者は多く、売り手側としても絶好の機会到来となる。元々これらの機能は住宅向けサービス・オプションとして存在していたが、震災をきっかけに加速度的に浸透を深めつつある。

関連する新商品や関連サービスも続々と開発・展開され、さらに昨今では景気回復感への期待から、不動産業も活況の気配を見せ、資金と商品が回り始めている。住宅の建て替え、整地を経ての新設なども以前と比べて増加しているのが実感できる。

新築分譲中昨今の住宅建設市場に対するマイナス要因として考えられるのは、消費心理そのものの低下(家計事情の変化が起因、就業継続の不安によるローン構築への疑念、消費税率の引上げ)、購入を検討していた地域不動産における、地震などの天災リスク再検討に伴う購入留保の動き。【15年間のマンション販売戸数と平均単価をグラフ化してみる(最新)】で確認した限り、2013年は堅調な動きを示し、2014年もそれなりに成長過程の中で市場は推移しそうに見えるが、状況が怪しくなってきたことは否めない。

消費税率改定を経て、住宅関連の各指標は急成長から横ばい、そして低迷感に移行したが、その後の回復が見えてこない状況が続いており、不安を覚えさせる。昨今では昔の建築様式による住宅で、税金の問題から仕方なく存続させているものの、空き家状態が続いている廃墟的な物件の増加が問題視されており、これにまつわる行政の施策を促進する特別措置法「空家等対策の推進に関する特別措置法」が2014年11月19日に成立している。今後この方の適切な運用により、住宅事情に刺激が与えられる可能性もある(【空家数増加の実態をグラフ化してみる】【空家等対策の推進に関する特別措置法が無事成立】)。

また【都市部在住の人に聞きました「地方移住はアリ?」4割は「考えてもいいカナ」】などでも解説しているが、将来の人口漸減、地方の過疎化問題に関し、都市部在住者の地方移住啓蒙策や、地域の居住地域に関する都市計画の見直しも検討されており、中長期的に住宅事情が大きく変動する可能性もある。

震災をきっかけに消費性向、人々の生活スタイル・考え方が、震災以前と比較すると保守的・中庸的・地域コミュニティを重視する動きを見せている。そして高齢化社会・核家族化の加速化で、物理的な行動範囲の狭いシニア層比率が増えたのも、保守化志向・地域社会重視の原因の一つに他ならない。それら人々の「心の動き」「自分が住む周辺地域に対する評価の再確認」が、住宅需要の変化をもたらしている。

住宅を提供する側も、その変化に対応した取り組みが求められる。住宅そのものだけでなく、バリアフリー、買物困難者の問題など、内部施設、地域サービスまで含めた、包括的環境整備の観点からの「住まい」の提供(狭い範囲では無く、広い範囲での「住環境」の提供)も、動きを見せてくる。そこには不動産業界だけでなく、小売、福祉など複数の業界を巻き込んだ、総合的な流れ、連携の動きが伴うことになるだろう。

昨今の低迷ぶりに関しては、インフラ周りの相場上昇に加え、消費税率の引上げそのものだけでなく、再び引上げが成されるかもしれないという不安感が、大きな心理的マイナス要因として足を引っ張っている感が強い。【「消費税増税」消費者一番の大ショックはいつ起きた?】でも分析の通り、税率の変更は変更後の影響はもちろん、状況が確定した時が一番大きなマインド上のマイナス影響を及ぼすことになることが、理解の手助けとなる。あるいはこの要因がきっかけで、景況感が回復どころか失速し、上昇のエネルギーを失ってしまった可能性すらある。

今回月の前々年同月比におけるマイナス6.07%は、消費税率引き上げ後においては最大の下げ幅となる。イレギュラー的なものか、景況感の失速を示したものなのか、もうしばらく慎重に様子を見ることが求められよう。


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