4マスでは雑誌のみプラス(経産省広告売上推移:2014年11月発表分)

2014/11/14 11:00

経済産業省は2014年11月11日、「特定サービス産業動態統計調査」に係わる2014年9月分となる速報データ(暫定的に公開される値。後程確定値で修正される場合が多々ある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2014年9月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でマイナス1.6%となり、減少傾向にあることが明らかになった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)中では「新聞」がマイナス6.6%と、一番大きな下落率を示している。またその「新聞」を含め4マスでは「新聞」以外は「テレビ」「ラジオ」がマイナス値となった。インターネット」は5項目中最大の上げ幅を記録したが、それでも今回月では6.6%と小ぶりな伸び幅に留まっている(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マスでは雑誌のみわずかだがプラス、新聞の下げ幅が大きい


今件記事で精査しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、記事を集約したページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な際にはそのページで確認を。

まずは主要5項目の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年8月-2014年9月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年8月-2014年9月)

今件データは前年同月比を示したもの。同時に前月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年8月分のデータと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表される、確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。今回は速報値から確定値に至る際に下方修正された項目が多く、全体値もマイナス0.3%ポイント引き下げられることとなった。

今回月では4マスは「雑誌」のみプラスで残りはマイナス。雑誌の堅調ぶりは珍しい話だが、前年同月における前年同月比がマイナス1.9%だったこともあり、実質的には堅調では無く復調と表現した方が正確だろう。ちなみに前々年同月比を試算するとマイナス1.5%となる。

確定報で修正した上で前月からの動きを見ると「雑誌」は持ち直しを見せたものの、それ以外の4項目はすべて前月から落ち込んでいる。下げ幅の観点では「インターネット」のマイナス13.8%ポイントがもっとも大きく、その勢いぶりが改めて分かる。とはいえ、それでもなおプラスを維持するあたりはさすがというところか。

今回計測分となる月、つまり2014年9月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する項目の動きを確認すると、「雑誌」はかろうじてプラス、「新聞」と電波メディアが不調、インターネットは電通がそこそこ、博報堂が大きなプラス。一部異なる部分もあるが、大よそ傾向としては似通っている。インターネット広告部分はネット広告でほぼ専業な代理店も多く、電通・博報堂のみの動きとは多分に異なる傾向を示す時もあるのだが、今回はほぼ連動する形となった。

なお4マスとネット以外の一般広告(従来型広告)の動向は次の通りとなる。今回月はイレギュラーが生じたため、かなりいびつなグラフとなってしまった。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年9月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年9月)

今回月はここ数か月勢いの良い「その他」以外に「海外広告」もプラス。もっとも後者は元々金額が小さく、また上下幅が大きいため、大げさな動きを見せやすいが、全体に与える影響は大したものではない。一方で「その他」は額面でも大きく、今回月では1296億6600万円となっている。これは「ラジオ」の大よそ30倍、「テレビ」をも超える額面となる。先の電通・博報堂の最新の月の記事でも触れているが、広告媒体の多様化に伴い、既存の区分ではカバーしきれない、「その他」に収めざるを得ない広告が増えていることは否めない。

100億円を超えた新聞とインターネット広告の差額


今回も該当月(2014年9月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化によって、状況の確認を行う。各項目の市場規模を俯瞰的に推し量ることができる。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手ではあるが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されているわけではないので(法的な縛りは無い)、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。あくまでも項目部類の相対的関係における参考指針程度。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(2014年9月、億円)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(2014年9月、億円)

この数年で金額ベースでの比較として、「新聞」と「インターネット」の立ち位置が入れ替わったことは、今件「特定サービス産業動態統計調査」に係わる広告業の広告費動向として、もっとも大きな出来事であり、広告業界の現状を示す一つのポイントでもある。詳しくは【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)】で随時データを更新記載しているが、昨今では2014年1月分に「新聞」が額面で「インターネット広告」を超えたのが最後となっている。それも半ば以上特異事例で、大よそ「インターネット広告」が「新聞」を超えるのが常となっている。

今回月では両者の金額差は100億を超える値に。ほぼ「新聞」と「雑誌」を足して「インターネット広告」に相当する額となり、単月ならば従来型メディアの紙媒体全体の広告費が、インターネット広告費とほぼ同額という結果となる。

ただし「インターネット広告」は中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっているが、その機動性の高さがわざわい(!?)し、金額の浮き沈みが大きいのも特徴の一つ。2011年以降は3月と12月に大きく伸びるのがパターンとなっている。年末と年度末の調整に、インターネットを用いた広告が多用されているのかもしれない。あるいはかきいれどきに重要視されている可能性はある。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年9月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年9月)

2011年以降の3月・12月のピークにおける大きな上振れのようすがキレイに描かれるグラフとなっているのが興味深い。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。従来型広告、特に上で解説している通り「その他」が大きく動き、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降であることから、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年9月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年9月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額そのものが継続的に減っていることを意味する。少なくとも広告費の観点ではあるが、両メディアの低迷が短期的なものでは無く、少なくとも「インターネット広告」に注目が集まり始めた以降の長期的なものであることが認識できる。そしていわゆる「メディア力(りょく)」の低下は、広告費の減退として表れる。公知効果の低いところに多額の広告費を支払う酔狂な広告主はあまり無い。

両媒体ともに「紙」で構成される共通性があるが、デジタル系メディアの伸長を見るに、その影響であることは否定し難い。他方、一部はウェブマガジンや大手新聞社のように、コンテンツが紙からデジタルに移行し、それに合わせて広告もシフトした事例も想定できるのが救い。

濃い藍色で記された「ラジオ」は、「新聞」や「雑誌」よりも低迷度が大きい。具体的には「0%」より下の領域が定位置化している。これは前年同月比でマイナスが続いている、言い換えれば売り上げが紙媒体以上に減少し続けている。

また、2012年以降はインターネット広告をはじめ、各広告費の動向があまりぶれなくなり、前年同月比の振れ幅がプラスマイナス10%のボックス圏内に留まるようになったのも興味深い。最近ではインターネットがやや上振れしているものの、それ以外は大よそこの領域内に留まっている。広告費の大きなシフトの動きが収まり、安定化……というよりは流れの固定化に移行したと見るべきだろうか。

もっとも下げ基調のまま固定化したと読める媒体にとっては、状況の改善、具体的には売り上げの向上(≒メディア力のアップ)による、プラス領域への移行が急務となる。もちろんドーピング的な対処療法では無く、長い目で見た戦略の上での施策による、根本的な構造改革の上で、の話であることは言うまでもない。


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【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(下)…ネット以外動向概況編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【前年比プラスの1.4%・総額5兆9762億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2014年)(最新)】

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