各社の店舗展開戦略が見えてくる…牛丼御三家の店舗数推移(2014年)

2014/06/04 14:00

当サイトでは牛丼チェーン店の大手三社である吉野家・松屋・すき家を「牛丼御三家」と命名し、各店舗の月次営業実績を基に売上や客数、客単価の動向を毎月精査している。各社の営業成績報告書にはそれらの値の他に、店舗数の推移も記載されている。店舗数の変遷は短期的にはあまり変化はないものの、中長期的に見ると各社の店舗展開戦略が透けて見える、興味深い値ではある。今回はその店舗数の推移などを確認し、状況を把握していく。

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伸びるすき家、現状維持の吉野家、そして松屋は…


今回店舗数動向の精査対象とする期間は、2006年1月以降2014年4月まで。各社の月次公開値を基に該当する値を抽出し、グラフとして生成したのが次の図。

↑ 牛丼御三家店舗数推移(2006年1月-2014年4月)
↑ 牛丼御三家店舗数推移(2006年1月-2014年4月)

2006年1月の時点では、店舗数は吉野家が一番多く、次いで松屋、すき家の順だった。それが2006年6月にすき家と松屋の店舗数が逆転し、すき家が第2位に。そして2008年9月には吉野家とすき家が逆転し、すき屋が店舗数ではトップにつくことになった。

その後、吉野家は2009年中は漸増だったが、それ以降はほぼ横ばい。新店舗が無いのではなく、採算の取れない店舗に関する整理統合・リニューアルなどを続け、あくまでも効率の良い、時勢にあった店舗の展開を維持している。要は新陳代謝を続けながら店舗数規模をキープしている次第。グラフもほぼ横に一直線のまま。

すき家は店舗数の継続的な拡大を見せており、この傾向はいまだに変わらない。ただしこの1、2年に限れば、上昇率はやや頭打ちとなっている。そして松屋は2011年半ばあたりから店舗数の大幅な拡大戦略に転じたものの、2013年に入ってからはぴたりとその動きを止め、店舗数維持政策に移行することとなった。むしろ直近1年では微減の動きすら確認できる。

この数年に限った変化を明確にするため、グラフ生成範囲を2008年以降に限定したのが次の図。縦軸の最下層を500店舗にしてあることに注意。

↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年4月)
↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年4月)

すき家の店舗数拡大戦略は相変わらず。そして上記でも触れた、「吉野家…微増から2010年頭以降は数の拡大を休止」「松屋…微増から2011年半ばから拡大ペースを加速化。2013年からは突然その動きを止めて店舗数維持」との動きがよく分かる。特に松屋はこの2、3年に大きな戦略転換を2度行ったことになる。同社内で何か指針の目まぐるしい変化があったのだろうか。

これらの動向を把握しやすくするため、各社店舗数の前月比(前年同月比にあらず)を折れ線グラフにしたのが次の図。

↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年4月)
↑ 牛丼御三家店舗数推移(2008年1月-2014年4月)

すき家は一貫してプラス1%内外を維持し、店舗数漸増の動きが良く分かる。ただし単純な店舗数グラフではつかみにくかったが、2012年に入ってから一段階、さらには2013年以降になるともう一段階の形で増加ペースを落としているのが確認できる。2013年に入ると明らかに前月比0.5%の領域に留まり、店舗数そのものの推移グラフでカーブがゆるやかになった状況が把握できる。

松屋はプラマイゼロのラインよりやや上なものの、その値もわずか。ところが2010年半ばあたりから、ややグラフの動きが上向きとなり、2012年に入ってからはむしろすき家以上の伸び率を示していた。そして2013年に入るとぴたりとその動きを止め、プラスマイナスゼロを行き来する。他方吉野家は2010年こそ大きなぶれがあったものの、2011年以降はゼロ付近でのもみ合いに終始している(=店舗総数に大きな変化が無い)のが確認できる。

そして3社とも2013年後半以降は、店舗の増減数に大きな動きは無く、収束の形を見せている。店舗数の積み上げによる拡大戦略や、リストラによる店舗数の削減ではなく、適切な新陳代謝による市場規模の維持に舵とりを変えたようにも見える。

客単価や客数推移も確認


良い機会でもあるので、月次の牛丼御三家定点観測記事ではあまり解説していない、客単価と客数推移も、直上と同じ2008年以降の分についてグラフを生成し、吟味を行うことにする。
↑ 牛丼御三家客単価推移(前年同月比)(2008年1月-2014年4月)
↑ 牛丼御三家客単価推移(前年同月比)(2008年1月-2014年4月)

↑ 牛丼御三家客数推移(前年同月比)(2008年1月-2014年4月)
↑ 牛丼御三家客数推移(前年同月比)(2008年1月-2014年4月)

まず客単価だが、2011年3月の震災前までの数年間に渡り、牛丼御三家による「ビーフならぬチキンレースの展開」とまで言われた、主力商品の牛丼における(期間限定)値引きが繰り返されたことで、大いに下落した動きが確認できる。その後は牛丼の価格がやや高めな吉野家が100%超の領域を維持し、メニューの多彩さでは御三家中一番のすき家が一時的に盛り返すもその後失速、松屋はほぼ均一を維持している形となる。そして吉野家が牛丼を値下げし、御三家の牛丼単価が横並び状態になると、吉野家がその影響を受けて大きく下落することになる(前年同月まで高値だったため)。すき家もほぼ同じタイミングで落ちているが、これは単に前年の反動でしかない。そして直近で吉野家が大きく戻しを見せているが、これは牛丼値下げ開始から1年を経過し、消費税率改定に伴いいくぶん価格を上乗せしたことも影響している。

一方客数推移だが、震災前までの「チキンレース」で大いに盛り上がったものの、その成果はすき家が1番、松屋が2番となり、吉野家はあまり大きな恩恵を受けていないことが分かる。その後、牛丼値下げ競争も終息し、震災を経て、消費者の消費マインドの変化や競合他業界のシェア浸食(例えば焼きタイプの牛丼の参入や、コンビニなどの他業種による中食の普及)により、2012年以降は客足は概して軟調。前年同月比で100%未満、つまり客数の減退が続いている。しかし吉野家は上記にある通り、主力商品の牛丼値下げが功を奏し、さらには鍋メニューの爆発的なヒットを受けて、他の2社から抜きんでる形で大いに客数を伸ばしている状況となっている。なお直近の3社の下げのうち吉野屋は、前年同月の牛丼値下げ開始による上昇の反動によるところが大きい。

3社の売上実績は?


月次の牛丼御三家の販売動向とはやや趣を異にする、直接には関係の無い話ではあるが。月次報告分析記事や今件店舗数動向記事を参照した方から、「3社の売上そのものの規模」についての問い合わせがあったことを受け、今回補てん資料の形として、3社の売上の現状をグラフに描き起こしておく。

これは3社の終了決算期の決算短信を元にした、牛丼セグメントにおける売上高を算出したもの。国外展開分は含まず、牛丼以外のセグメントも除外している。またすき家は類似牛丼分野のなか卯も含めている。

↑ 牛丼御三家売上比較(直近終了期、国内牛丼セグメントのみ、億円)
↑ 牛丼御三家売上比較(直近終了期、国内牛丼セグメントのみ、億円)

店舗数動向からある程度予想はついていたが、すき家が他の2社を大きく引き離した売り上げを示している。次いで吉野屋、松屋が続く。無論これらはあくまでも売上のみで、利益率、利益額はまた別の話であることを、念のため書き記しておく。とはいえ売り上げ規模による各社の立ち位置はある程度認識できよう。



直近の御三家月次報告を基にした定点観測記事【鍋旋風一巡、すき家には嵐の予感…牛丼御三家売上:2014年04月分】で言及しているが、4月に入り消費税改定に伴う牛丼価格の区別化や、鍋料理に対する各社の戦略の違いが明確化し、今年度は牛丼御三家各社ともそれぞれの独自のスタンスによる歩みが見られそうだ。

一方で【すき家、鍋定食などによる人手不足を公認、環境改善のため6月をめどに7地域分社化を決定】で解説している通り、すき家ではいわゆる「ワンオペ」問題に代表される労働環境を起因とする人手不足など、業務運営上の問題が露呈しており、大規模な店舗リニューアル施策の実行など、言葉通りの意味のリストラクチャリングを遂行し始めており、大きなうねりの渦中にある。先日【すき家の「全店」「既存店」売上動向から見る「リニューアル店舗」の多さ】でも指摘したが、リニューアルなどで一時休業している店舗はカウントしないことから、すき家の売上においてここ数か月の間、既存店と全店の値が逆転するという、非常に奇妙な動きも確認されているほど。

上記で「各社とも店舗数動向は収束の動き」と表現した。店舗数の動向はその企業の施策を示す一つの指針である。これが大きな動きを見せる時、その企業に新しい施策が導入されたことを感知するシグナルになりうる。今後も定期的にデータを精査し、そのシグナルをつかみ取れるように心がけたい。


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