前年からの乳製品の下落・食肉の上昇は続くも、短期的には比較的安定、砂糖がやや値上がりか(2014年10月分世界食糧指数動向)

2014/11/09 12:00

為替変動が大きなものとなり、その変動と共に輸入品価格の変化が生活にも反映される状況となりつつある。特に食料品の多くを輸入に頼っている日本では、日々の食生活の食材の数々が値を上げて、家計を支える主婦のネも上がり始めている。その食料品の国際的な価格変動について、概略的ではあるが現状を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月公開している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2014年11月6日に発表された現時点で最新版の値となる、2014年9月分の値を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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短期は安定、中期は食肉上昇、それ以外はほぼ下落


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらのページで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2014年10月分を含めた取得可能なデータを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。いわゆる「ざっと見」用の図である。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年10月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年10月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、その内部的な実情は知らなくとも、大きく価格が変化することは多くの人が見聞きしている(店頭で並ぶキロ単位の袋詰めの砂糖価格はそのような変動はあまり無く、価格は比較的安定しているのでご安心を)。その実情をこのグラフから知ることが出来る。他の食品項目は大よそ2005年位まではさほど大きな動きを示していないが、砂糖だけが大きく動いており、別物の動向のように見える。

一方2005年終盤以降になると、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が変化、しかも上昇方向に動き始める。その後直近の数年に渡る(ある意味現在も続いている)金融危機の引き金となる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きると共に、大きく上向きの流れを見せる。

これらの動きは、主に株式市場の暴落を原因とする。要は投資市場の資金が暴落した株式市場から逃げ、その行く先に商品先物市場が目を付けられたということ。そして市場規模は商品先物市場の方が小さいため、過剰な資金流入と共に全体の価格が底上げされ、それは実商品価格の上昇をも招くこととなる。

その後は「リーマンショック」(2008年9月以降)を起因とする市場の騒乱を経て大きく乱高下を成したあと、現在の高値安定状態に移行している。現在は各食品項目とも200から250位の領域で小幅な値動きに終始しているのが分かる。ほんの10年ほど前の水準であった100前後と比べ、約2倍から2.5倍の領域である。

次に示すグラフは、上記グラフの横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月にしたもの。2007年といえば7月・8月から、「サブプライム・ローン」問題がぼっ発(露呈)し、市場は大変動の動きを示した年。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく知ることができるグラフとなっている。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年10月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年10月)

興味深いのは上記でも言及している通り、「サブプライム・ローン」問題のぼっ発「以前から」、食料品価格はやや高値に動き始めていたこと。一般に同問題が知られる前より食料市場は「知っていた」のか、それとも人口増加に伴う消費増加による、中期的な食糧需給の変化が市場に反映されていたのか、それともその双方なのか。残念ながらこのデータからのみでは判断は出来ない。

期間軸を短くしても、砂糖価格の変動が激しい事実に変わりは無い。一方で例えば今回の記事タイトルで言及しているように食肉価格が他の食品と比べて確実に、じわじわと上昇一本やりで、しかもこの一年ほどの間は上げ幅を増していたことが確認できる。それと共にその食肉以外は下げ基調にあることも見て取れる。特に乳製品の下げ方が著しい。砂糖は反発機運があるものの、乳製品は下げ止まらない状態にある。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するために、各指標の時系列データを抽出し、「前年同月比」と「前月比」を独自に算出。その数字の変移が分かりやすいように棒グラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年10月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年10月)

総合指数は前月比でマイナス0.2%、前年同月比はマイナス6.9%。いずれもマイナス値を示しており、全体的には食料価格はこの一年間内ではやや安値向きの安定志向にあることが分かる。

個別項目を見ると食肉以外は一様に下落。前年同月比では大きく下げ、前月比ではほとんど横ばい。この動きから、食料価格はこの一年で大きく下げたものの、直近では安定的な値動きに転じたことが確認できる。

ただし砂糖はいくぶん値を上げており、これがイレギュラーなものなのか、あるいは再上昇開始の動きなのか、少々気になるところではある。他方乳製品は直上にある通り、ダイナミックなまでの下げ幅を見せ、さらに下落を続けている。直近では大よそ2012年半ば位の値にまで戻した形となる。

大きく下げた乳製品に関してその事由をリリースから読み解くと、チーズはほぼ横ばいに推移したものの、それ以外の乳製品、例えば粉ミルクなどが大きく下げ、全体的にはマイナス値を示したと説明されている。他方先月比でやや上昇している砂糖に関しては、主要生産地となるブラジルにおける小規模な干ばつが品不足を連想させ、価格に影響を与えているとのことである。

農林水産省の最新レポートで現状を確認


今記事で毎月連動性のある、付随的資料として精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、2014年10月31日に更新された2014年10月分をざっとではあるが確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、小麦・とうもろこしで生産量が増加するものの、大麦・米で減少。しかしながら収穫面積の増加や収穫率の向上で史上最高を示した前年度は上回る見込みだという(24.690億トン)。他方、消費量は大麦で減少するものの、小麦・とうもろこし・米では増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.520億トン)。そして生産量が消費量をほんのわずかだが上回ることから、期末在庫量見込みは前年同度比で上昇する傾向を示している(5億2280万トン、生産量比で21.3%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

生産量に関して減少が予想される大麦と米について詳しい状況を確認すると、大麦はトルコやカナダ(雨の多さによる各種病気の発生)、オーストラリア(干ばつ)での減収が原因、米はアメリカのカリフォルニア州における干ばつ、インドにおけるモンスーン到来の遅延などが影響しているとある。

昨今ではいくぶん鎮静化の動きを見せつつあるものの、今なお地政学リスクにおいて食料供給面でもっとも影響を与え得るウクライナ地方だが、資料の上では今のところ大きな動きは指摘されていない。ただ、例えばウクライナは世界の小麦輸出量の6%、とうもろこしの14%など大きなシェアを持つため、その動向の成り行きには注目をせざるを得ない。一方気象状況においては、先月から続きアメリカ本土でカリフォルニア州における干ばつによる米の、南部地域での寒波で小麦の育成への影響が懸念されている。またインドではモンスーンの到来が遅れ、これにより米の作付けの遅延が発生し収穫面積が減少するとの影響が記されている。気象に大きな影響を与え得るエルニーニョ現象については、秋から冬にかけて発生する可能性は五分五分との言及もなされている。

日本国内に限れば(世界全体の生産量には関係はほとんどないものの、日本国内の価格動向には大きく影響を及ぼす)、燃料費の高騰が農家に大きな影を差している。また、食料品の加工や輸送にも小さからぬ負担となることから、市場価格の上昇があちこちで伝えられている。食料品価格は食料需給そのものだけでなく、燃料動向にも小さからぬ影響を受けるとの点で、合わせて注視をしたいところではある。


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