3社とも客単価の底上げでそこそこ堅調…牛丼御三家売上:2014年10月分

2014/11/08 10:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2014年11月5日、吉野家における2014年10月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。それによると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス2.9%となった。これは先月から続き、3か月連続のプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業としては、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年10月における売上前年同月比はプラス2.0%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス3.3%との値が発表されており、今回月は前月に続き3社とも堅調な売り上げを示すこととなった(いずれも前年同月比・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。

↑ 牛丼御三家2014年10月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年10月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2013年10月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス3.4%。今月はそこから転じて6.5%のプラスを示している。これは同社の主力商品である牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落の影響が2013年10月の時点でもまだ続いており、その反動によるところが小さくない。牛丼チェーン店である以上、牛丼は当然主力商品で数も多く出るため、売上全体に対する影響も大きなものとなる。実際吉野家では客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月の値下げ以降1年間、つまり2014年3月まで続いている。

この反動による「ぶれ」を極力除外するため、後述の通り前々年同月比を試算すると、実質的客単価はそこそこのマイナス(マイナス3.0%)に留まっている。吉野家ではこの4月の消費税率改定に合わせて牛丼価格を引き上げているが、中期的に見れば客単価への影響はほとんど無く、上手い具合に調整が出来ているようだ。

牛すき鍋膳同期間の吉野家におけるメニューの展開ぶりを確認すると、9月25日に発売を開始した「ロース豚丼 十勝仕立て」は、実食レポートなどを見聞きする限り好調に推移しているように見える。また発売開始が10月29日のため10月分の営業成績にはほとんど影響を及ぼしていないが、【鍋の季節到来・吉野家の「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」が復活発売】にもある通り、昨年業界全体を大きく揺さぶった「牛すき鍋膳」と「牛チゲ鍋膳」が昨年よりも1か月以上前倒しする形で発売を開始している。客数は前年比では減退しているように見えるが、前々年比を試算すると大きく伸びており、客単価の下落も(上記の通り)最小限に抑えられ、業績の上では堅調さを維持していることが確認できる。

↑ 牛丼御三家2014年10月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年10月営業成績(既存店)(前々年同月比)

続いて松屋の動向を確認する。以前から他の2社より高い頻度で新メニューを投入する松屋ではあるが、いつも通りのペースの吉野家、新メニュー展開の頻度をやや落としたすき家とは対照的に、今回月も積極的な新メニューの送り出しを行っている。10月には「ハッシュドビーフ」「スタミナ豚バラ生姜焼定食」「トマチキ定食」の発売を開始し、さらに関東地区限定ではあるが店内販売用の納豆を「松屋の定食納豆」として量販店などで発売を始め、知名度の向上を推し量っている。その積極姿勢には目を見張るものがある。

客単価も堅調な値を示しているが、客数は他社同様にマイナス。結果として売上の上昇も頭を抑えられる形となってしまった。2年前同月比で見ると客単価は大きく上昇しているものの、客数の減り方も大きく、結果として売り上げはトントンという形に落ち着いている。

メニュー以外の点で注目を集めている、色々と複雑な状況にあるのがすき家。今回該当月では新メニューの展開は無く、【すき家、人材不足で1167店舗にて深夜営業を一時休止】でも報じた通り、一部店舗での夜間営業の一時休止など労働環境改善の具体的施策が大規模に行われる初めての月でもあることから、その動向が大いに注目されていた。また【すき家の牛丼、税抜き価格で20円値上げ・8月27日から】の通り8月末から牛丼価格を値上げしていることから、その影響がとれほど継続しているのかを見定める点でも、今回月の業績は注目に値する。

結果として客単価は大きく上昇し、客数はグンと減り、足し引きで客単価の上昇が貢献する形で売上高伸び率は3社中最大のものとなる。メイン商材の牛丼値上げの影響は、やはり大きなものとなったようだ。もっとも2年前比の試算では客数の減退の影響は大きく、3社中唯一の売上高マイナスを示す形となった。なおリニューアルなどで一時休業している店舗は今値(前年同月比・既存店)には計算上含まれておらず、仮に全店舗で計算すると前年同月比はマイナス7.5%となる。すき家そのものの全体的な売上としては、小さからぬ減退を示している次第である。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年10月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年10月)

荒らしの前の静けさか


昨年2013年は吉野家が牛丼価格の値下げと鍋定食の展開でポジティブな、今年2014年は消費税率引き上げとすき家の労働環境問題でネガティブなトレンドが形成されている牛丼チェーン店業界だが、11月に入ってもこのトレンドを覆すポジティブなニュースは気配を見せないことから、今年は「ネガの年」として幕が引かれそうな感はある。

同じファストフード業界として、より厳しい苦境に立たされているハンバーガーチェーン店業界ではさらに顕著に数字として表れているが、ここ数年消費者の食生活における中食・内食へのシフトが進んでいる影響を受け、客数の減退具合が著しい。いわゆる牛丼御三家でも鍋特需で盛り上がりを見せた吉野家の一時的な攻勢をのぞけば、先の震災から半年ほど経った時期以降、押し並べて客の入りはマイナスで推移している。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年10月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年10月)

食生活のトレンドの変化要素の一つに、ファスト(fast)からスロー(slow)への流れがある。中食・内食も「自宅でゆっくりと食事を味わい、楽しむ」が基調にあることから、元々スピーディーな食事を提供するのが前提のファストフードでは、状況が悪化していくのは致し方のないところ。昨年ヒットした吉野家の「牛すき鍋膳」なども、その変化に合わせた商品であると考えれば、その盛況ぶりの理由は説明はできる。

実際、先日再発売を開始した「牛すき鍋膳」などは値上げをしたものの、引き続き好調な売れ行きを示している。メインメニューの牛丼をも上回りそうな注文ぶりで、その情景には一瞬牛丼屋というよりは鍋屋に見えてしまうほど。昨年は12月からの発売開始であったことから、次回11月分の営業成績では、大きな客単価の引き上げが予想される。

また吉野家で試験運用されている居酒屋的な融合店舗「吉呑み」も堅調で、今後場所の確保と周辺環境が許せる店舗では、次々にこのスタイルが導入されそうな雰囲気を見せているのが興味深い。居酒屋チェーン店が軒並み不調にある中で、「吉呑み」に客足が集まる現状は、食生活の変化を考える上でも大きなヒントとなる。

次回の計測データは11月だが、実質的に年末商戦に突入したと評しても無理は無い。吉野家は直上の通りすでに「牛すき鍋膳」などで攻勢をかけており、その成果は着実に上がっている模様。すき家も第三者委員会の提言に従い店舗営業周りの施策を断行したが、この類の施策の影響は中長期的に表れるものであり、今年中に明らかな成果を見出すのは難しそう。松屋も続々新メニューを繰り出してはいるものの、松屋自身、さらには業界全体を引っ張るような新メニュー、あるいは施策には至っていないのが現状。

果たしてこのまま今年は終わってしまうのか、それとも何かビッグサプライズ的なメニューなり施策の披露がなされるのか。11月以降の3社の動きに、大いに注目したいところだ。


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