アルバイトの時給動向をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/11/23 05:41

2016-1122雇用市場における需給関係の変化は建設業やパート・アルバイト界隈で特に活発化しており、単なる人手不足の動向に留まらず、その状況を起因としたさまざまな方面への影響が話題に登り、ニュースとして配信される。その一面は【建設業界の人手不足状況を長期的にグラフ化してみる】でお伝えしている通りだが、今回は非正規雇用の中でもメインとなるパート・アルバイトの時給の推移を通し、市場動向をかいま見ることにする。

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パートやアルバイトの時給動向に係わる定点観測データは、公的機関では残念ながら見当たらない。国税局では正規・非正規別の賃金動向を収録しているものの、こちらは2012年分以降のもののみ。今回はリクルートグループが展開している求人情報メディア「TOWNWORK」「TOWNWORK社員」「fromA navi」に掲載された求人情報をベースとして、同社が2007年以降毎月の状況を公開しているデータを用い、その動向を確認していくことにする(【リクルートホールディングス・プレスルーム】)。

直近データとなる2016年10月分では、業種別は大分類で販売・サービス系、フード系、製造・物流・清掃系、事務系、営業系、専門職系に区分されている。また地域別では主要エリア別、三大都市圏(首都圏・東海・関西)、全国の平均値などが確認できる。このうち長期時系列のデータ取得が容易な三大都市圏の分について、全体値、さらには日常生活で見聞きすることが多くしばしば話題にも登る販売・サービス系(例:レジ、販売、コンビニスタッフ、チラシやパンフ配布など)とフード系(飲食店のホールスタッフ、ファストフードなど)、そして専門職系のうち介護スタッフに焦点を絞り、値を抽出していくことにする。

なおデータの上で2011年10月までと11月以降とでは細かい業態部分の再整理における平均値算出に関して、再計算が行われた・いないの違いが生じているため、厳密にはデータの連続性は無い。もっともその影響は最小限に留められているため、大きな差異は生じていないと見ても実質的には問題は無い。

まずは全体的なパート・アルバイトの募集時における平均時給の推移を確認する。各グラフには直近月の値に加え、描写範囲内の最高額・最低額の月の具体的値などを示しておく。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、全体)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、全体)(リクルートジョブズ)

最低額は意外にも金融危機ぼっ発前の2007年4月における928円。以降900円台後半にまで上昇し、ほぼ一定額のボックス圏内で推移する。なお毎年特定の時期に大きく跳ねる様子が見られるが、これは年末(12月)におけるかきいれどきの求人で、相場が上昇する様子が表れている。

金融危機やリーマンショック(2008年9月)の影響もほとんど受けておらず、意外な感はある。ただしよく見ると、リーマンショックよりはむしろその後の震災、極度の円高による不況の影響をいくぶん受けているような雰囲気を覚える。また2013年以降は年末のピークの後の下げ方も限定的なものとなり、2014年は夏以降高止まりしているのが分かる。そして2015年は踊り場から上昇再開の動き。

最高値は昨年までは昨年末2015年12月における986円だった。毎年12月は繁忙期の真っただ中で高値を付ける傾向があるため、一段と大きな値ではあった。ところが今年に入って2016年6月には、その額すら超えた988円を計上し、記録の限りでは過去最高値を更新する形となった。今回月はさらにその額から上乗せする形で996円。もちろん記録の限りでは最高値。前年同月は977円なので19円のプラス、1.9%の上昇。

続いて販売・サービス系。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、販売・サービス系)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、販売・サービス系)(リクルートジョブズ)

最安値を付けた時期が金融危機ぼっ発前であることは全体値動向と変わりはなし。またリーマンショックの影響を大きく受けていることも良くわかる。一方で2014年までは最高値は震災のあった2011年の年末につけており、それ以降はむしろ安定の流れにあった。また毎年12月がピークとなる動きも変わりなし。ただしリーマンショック後の数年はその定石が崩れたパターンを示しており、いかにアルバイト市場に大きな打撃を与えていたかが分かる形となっている。

だが2015年に入ってからは毎年ピークになる12月に向けて上昇機運が加速し、9月の時点でこれまでの最高額となる949円を超えた950円を計上。それ以降毎月最高額を更新し続け、12月は過去最高額を更新する形で970円となった。その後いったん値は落ちるが再び上昇を再開。2016年7月は973円となり、これまでの最高額を更新。今回月はさらにそこから値を上げて、982円を示す。もちろんこちらも過去最高の値。前年同月は955円なので、プラス27円、2.8%の上昇となる。

続いてフード系。景気動向に即した、もっとも典型的な動きを示している。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、フード系)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、フード系)(リクルートジョブズ)

最安値を付けたのは震災直後の2011年4月で893円。それ以前は金融危機ぼっ発後もあまり変わらず、リーマンショック以降じりじりと下げている。そして震災以降は一様に上昇……にも見えるがよく精査し直すと2012年夏から2013年夏ぐらいまではほぼ横ばい、それ以降は再び上昇カーブを強めながら推移している。

今回月は大きく上昇する形で964円。こちらも過去最高額。前年同月の949円からは15円のプラス、1.6%の上昇となる。

最後は介護スタッフ。今項目は2012年7月から調査対象として採用されたため、グラフの生成期間もそれに従っている。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、介護スタッフ)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、介護スタッフ)(リクルートジョブズ)

ややばらつきが大きいものの、2014年末まではほぼ960円から980円のボックス圏で推移している。それが2015年に入ってから大きな上昇を見せ始め、2015年5月には初めて1000円の大台を突破した。その後少々値を落として再び3ケタ台に戻してしまったが、2015年11月ではこれまで最高額だった同年9月の1016円をさらに超え、最高額の1023円を計上。その後はしばらく値を落としていたが、今回月の2016年10月は3円ではあるが上乗せした1026円。ちなみに前年同月は1010円だったため、プラス16円・1.6%の上昇となる。



販売・サービス系ではやや異なる動向だが、全体的にパートやアルバイトの時給も少しずつ上昇傾向にある。需給の関係から考察すれば、求職者以上に求人が増え、賃金を引き上げることで求人を充足させようとする動きの中にあると見て良いだろう。他の記事で触れている「非正規雇用の就業者が増加している」実態と合わせると、少なくともパートやアルバイトの雇用市場では、就業する立場にある人から見て、情勢は好転していると見てよいのではないだろうか。

ちなみに同じくリクルートジョブズによる定期公開データから、派遣スタッフ募集時の平均時給動向を見た結果が次のグラフ(こちらも2016年10月分が最新データとなっている)。

↑ 派遣スタッフ募集時平均時給(円)(三大都市圏・全体)(リクルートジョブズ)
↑ 派遣スタッフ募集時平均時給(円)(三大都市圏・全体)(リクルートジョブズ)

金融危機ぼっ発後の下落、リーマンショックによる加速、その後の復調、震災や円高不況による低迷、そして回復基調。これまで最高値は2016年7月における1646円。直近月はそこからやや値を落として1614円。前年同月比はプラス0.1%であり、3年強ぶりに前年同月比でマイナスを計上した前回月から再びプラスに転じている。

詳細の限りではオフィスワーク系や営業・販売・サービス系、医療介護・教育系はプラスだが、IT技術系やクリエイティブ系などがマイナス。職種による特性的な動きの結果にも見える。今回月分がイレギュラーなものか、トレンドの転換の先駆けなのか、今後の動きに注目したい。


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