前年同月比プラスは化学と非鉄金属のみ(2014年9月分大口電力動向)

2014/10/25 11:00

電気事業連合会は2014年10月17日に同会公式サイトにおいて、2014年9月分となる電力需要実績の速報を公開した。その内容によれば、同年9月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で683億kWhとなり、前年同月比でマイナス8.1%となった。一方、産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス1.5%を記録し、5か月連続して前年同月の実績を下回ることとなった。このマイナスは化学と非鉄金属を除く業種において、前年同月の実績を下回ったのが原因であるとリリースでは説明している(【電気事業連合会:電力需要実績発表ページ】)。

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プラス産業は2つのみ、化学がプラ転、鉄鋼はマイ転


今調査の概要および各種用語の解説については、過去の同調査結果をまとめた定期更新記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。なお2013年10月分より後の結果に関する記事については、諸般の事情でいわゆる「上書き更新」に移行しており、内容確認の際には注意が必要となる(電気事業連合会からは毎月新規にデータ更新はなされている)。

2014年9月の大口全体としての動きは前年同月比マイナス1.5%となった。「前年同月比」における算出結果なので、季節属性(業種により商品の生産が多い季節と少ない季節が存在する)に影響を受けない数字であり、純粋に各種工場の施設の稼働で生じる電力の消費総量が前年と比べ、それだけ減った計算になる。なお消費効率は日々改善が進んでいるため、稼働率の変化そのものでは無いことに注意する必要がある(多分に連動性はあるが)。また今回月はリリースや小売業界の各業績月次報告記事にもある通り、気温が大よそ前年と比べて低かったことから冷房需要が減少し、これも電力使用量を押し下げる一因となっている。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2014年8月-2014年9月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2014年8月-2014年9月)

前回月ではプラス圏の業種は2業種(前回月の速報値からの改定結果)で、今回月も2業種と、業種数は変わらず。プラス・マイナス双方の圏域で前月から反対に転じた業種は化学と鉄鋼。それぞれがマイナスからプラス、プラスからマイナスへと移行し、差し引きゼロという形になった。また前月から引き続きマイナス圏にある産業では大よそマイナス幅を縮小しており、これが全体におけるマイナス幅を縮小させる動きにつながっている。

次のグラフは2011年3月の震災より前の状態と比較するため、4年前となる2010年9月分と比較した今回月の大口電力使用量の動向(3年前の2011年9月との比較では、震災後における電力消費減との比較となってしまう)。稼働率だけでなく、震災以降必然的に加速化した節電効果や新電力への離脱も含めた変化によるものだが、今回月でプラス値を示した化学もマイナス8.8%と大きくマイナス値を見せており、プラスは鉄鋼の2.3%のみ。昨今では稼働率の問題よりもむしろ、震災以降の節電(見なし節電含む)の成果により、震災前比でマイナス化が成されていると見ることが出来る材料ではある。

↑ 大口電力使用量産業別「2010年」同月比(2014年9月)
↑ 大口電力使用量産業別「2010年」同月比(2014年9月)

紙・パルプのマイナス値が20%超と際立っている。これは工場稼働率の低迷よりも、節電や自家発電などによる「みなし節電」によるところが大きい。詳しくはまとめ記事で説明しているが、特に紙・パルプ業では多種多様な工夫がなされており、その仕組みは注目に値する。

中長期的な動向の確認


上記の記事、グラフは単月、または短期間に限定したもの。そこで連続的な流れを確認するため、2007年1月以降・2010年7月(震災前年の夏期)以降の全産業別の前年同月比推移をグラフ化する。個々の値を細かく見定めることは難しいが、「俯瞰的動向」を知るのには適している。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2014年9月分)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2014年9月分)

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2010年7月分-)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2010年7月分-)

2008年秋に発生した「リーマンショック」の影響で大きな谷間が形成されている。一方で2010年にも大きなプラスの山が出来ているが、これは単なる前年の下落の反動で、経済・工業の急速な成長を意味するものでは無い。また、2008年秋口の下落率と翌年の反動による2009年秋口の上昇率は同程度に見えるが(もっとも大きく変動した鉄鋼でマイナス40%、プラス40%強)、同じ率で減少、増加とした場合、結果としては2年越しでは減少したことになり、回復が果たされていないことになる(例えば鉄鋼の事例なら40%減の上で40%増となっても、1.0(元の値)×0.6(40%減)×1.4(40%増)=0.84<1.0となり、現状には復帰しない)。

リーマンショックによる大幅下落とその反動の後は、比較的安定した流れを見せていたが、2011年3月に発生した東日本大地震・震災を機会に大きく下げ、そしてそれ以降は押し並べてマイナス基調で推移している。震災から一年ほどは震災による物理的な損害、そして工場稼働率の低下によるもの。それ以降は電力需給を起因とする、節電要請や電気料金の引き上げがもたらした「稼働率に大きな影響を与えない節電」(上記で触れた「みなし節電」も一例)による。もちろん節電には膨大な初期コスト、従業員の負担増など、電力消費・稼働率以外の点でコストの上乗せが生じていることを忘れてはならない。



今夏の電力需給はイレギュラー的な出来事も重なり、昨夏以上に厳しい状況を迎える予見が成されていた。詳細は【「今年も数値目標なし」…2014年夏の節電要請内容正式発表】で解説しているが、最初から東西周波数間の融通電力を含めた上で、ようやく安定供給ができるラインをギリギリ確保し、どうにか電力使用制限令の事前発動決定が回避された状態。これも震災以降の無理な電力供給側の運用など、ここ数年の無理な運用のひずみによるところに他ならない。昨年や一昨年と比べて電力関連の報道が減ったことを受けて「電力需給問題はもう安心、まったく問題ない」と語る筋もあるが、実状的には経費問題、エネルギーの安全保障問題、安定性の問題も合わせ、むしろリスクは上乗せされている。単により大きな努力が関係者によって成されているのと共に、視聴側が情報に慣れたため配信側が優先順位を下げただけに他ならない。

今冬は先日【2014年度冬の電力需給状況をグラフ化してみる】でも説明した通り、どうにか電力安定供給の最低ラインである予備率3.0%を維持できそうな状況ではあるものの、各発電所のメンテナンス状況は「全力疾走を長距離走で行っている」状態に近く、コストパフォーマンスやカントリーリスクの観点では危機的状況が続いている。また北海道電力管轄では何らかのアクシデントが発生した際には、対応し切れない可能性が生じている。

これらの綱渡り的な状況を生み出しているのは、ひとえに現在が特定発電方法の欠損をきたした状態にあるからに他ならない。このようなバランスのままで電力需給の安定状態を極力維持するため、建設当時は想定しなかったレベルでの火力発電所の稼働率の上昇、それに伴うメンテナンスなど安全保守面でのリスク増大(従来行うべきメンテナンスが十分出来ない発電所も多い)、燃料調達による余分な燃料コストは積み重なるばかり。エネルギー安全保障という観点でのエネルギー調達上の問題は、ウクライナ情勢における西欧諸国とロシアとの関連(西欧諸国は多分に天然ガスをパイプラインを通じてロシアから輸入している)が非常に良い好例となる。エネルギー対策におけるリスク分散の道を誤ると、国全体の施策すら左右されてしまう。エネルギーが国策の大きな問題となるのは、それこそ前世紀の太平洋戦争ですら好例足りうる。

そして各大口電力需要者への負担増も発生している。一般市民が直接肌身で感じないレベルで、きしみ、ゆがみは確実に増大している。一般世帯向けの電気料金の値上がりという、直接影響を受ける点もあるが、実はそれすら些細な弊害でしかない。震災からすでに3年も経過してこの体たらくな状況は、多分に震災当時の政府による政策・方針の失敗が未だに尾を引いているところが大きい。いわば「負の遺産」とでも断じるべきか。現に直近の景気ウォッチャー調査の結果における具体的コメントでも、ガソリン代と共に電気代の高騰への懸念が社会全体の不安を助長している向きを示している。さらに燃料費の上昇も間接的には、電気代の高騰をもたらす要因が少なからず影響していると見ても良い。

製造業全般の健全な維持成長と産業誘致のための魅力形成には、安価で安定した電力の供給が欠かせない。それを確保しリスクを軽減するため、行政においては偏見や非科学的な、声ばかりが大きい各種の妨害に屈することなく、これまで以上の尽力が強く求められている。


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