ラジオがプラス継続、紙媒体軟調続く(経産省広告売上推移:2014年10月発表分)

2014/10/10 11:00

経済産業省は2014年10月9日付で、「特定サービス産業動態統計調査」に関する2014年8月分となる速報データ(暫定的に公開される値。後程確定値で修正されることもある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。それによると2014年8月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス0.7%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)中では「雑誌」がマイナス8.4%と、一番大きな下落率を示している。またその「雑誌」を含め4マスでは「雑誌」以外は「新聞」がマイナス値を記録した。「ラジオ」は2012年4月にマイナス7.0%を付けて以来先月発表分で28か月ぶりのプラス値を計上したが、今回月も引き続きプラスの値を示すこととなった。「インターネット」は前月における前年同月比から続き、2ケタ台%の大きな伸びを示し続けている(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マスでは紙媒体がマイナス、電波媒体がプラス


今件記事で精査しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの記事を集約したページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な際にはそちらを参照のこと。

まずは主要5項目の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年7月-2014年8月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年7月-2014年8月)

今件データは前年同月比を示したもの。同時に前月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年7月分のデータと並列してグラフ化している。なお先月分の値については、先月記事で用いた速報値の後に発表される、確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。今回は新聞と雑誌で大幅な下方修正、テレビで上方修正が成された。テレビの絶対額が大きいこともあり、全体値では上方修正されている。

今回月では4マスは「テレビ」「ラジオ」がプラス、「新聞」「雑誌」がマイナスとなり、中見出しにもある通り「紙はマイナス」「電波はプラス」という、分かりやすい仕切り分けとなった。特に「雑誌」の下げ幅の大きさが目に留まるが、前年同月における値はプラス3.1%であることから、いくぶんはこの反動もある……とはいえ、前々年同月比を試算するとマイナス5.6%となるため、やはり下げ基調に違いは無い。

前月からの動きを見ると「ラジオ」と「インターネット広告」は上げ幅を拡大し、「新聞」は下げ幅を縮小している、つまり状況の改善が見られるが、「テレビ」は上げ幅を縮小、「雑誌」は下げ幅を拡大となり、状況の悪化が見受けられる。特に「インターネット広告」の上昇の著しさが目に留まる。

該当月、つまり2014年8月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する項目の動きを確認すると、4マスでは博報堂の「ラジオ」「テレビ」のみがプラスを示しており、「紙はマイナス」の状況における類似性を覚えさせる。またインターネット広告の突き抜けた伸び具合も同様。

なお4マスとネット以外の一般広告(従来型広告)の動向は次の通りとなる。今回月はイレギュラーが生じたため、かなりいびつなグラフとなってしまった。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年8月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年8月)

先月に続き「その他」項目のみがプラス。この項目は金額の上で他項目より1ケタから2ケタ大きく(例えば8月なら1015億6400万円。最大の下げ幅を示した海外広告は22億9800万円でしかない)、これが全体をも引っ張る形となっている。あるいは先月確認できた「FIFAワールドカップ」関連による特需的の余韻的な動きによるものだろうか。

新聞とインターネット広告の差は約100億にまで拡大


今回も該当月(2014年8月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化によって、状況の確認を行う。各項目の市場規模をざっとでは推し量ることができる。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。さらに各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されているわけではないので(法的な縛りは無い)、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。あくまでも項目部類の相対的関係における参考指針程度に見てほしい。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年8月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年8月、億円)

ここ数年の間に金額面におげる「インターネット広告」と「新聞」の間の関係が入れ替わり、「インターネット広告」は「新聞」を追い抜く形となった。最後に2014年1月分で「新聞」が額面で「インターネット広告」をイレギュラー的に抜いたのが確認されているが(【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)】も参考のこと)、それ以降は再び「インターネット広告」の優位性が継続中。前回月では差が70億円近くにまで開いたが、今回月ではさらにその差が拡大し、100億円程度のものとなった。「新聞」の額面上での下落が続き、「インターネット広告」が上昇すれば、差が開くのも当然といえる。

もっとも「インターネット広告」は中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっているが、浮き沈みが大きい機会が不定期で到来する。特に2011年3月以降は毎年3月と12月に勢いよく伸びを示す傾向がある(要は年度末と年末)。その後するりと落ちる月があるため、タイミングによっては再び「新聞」との間の順位入れ替えが起きる可能性もゼロではない。とはいえ、この1年の動向を見るに、「立ち位置の再入れ換え」という状況は、そろそろ想定の対象外としてもいいのではないかという感はある。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年8月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年8月)

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。従来型広告が大きく動き、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降であることから、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年8月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年8月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額そのものが少しずつ減っていることを意味する(マイナスが続けば全体値が削られていくのは当然の話)。少なくとも広告費の観点ではあるが、両メディアの低迷が短期的なものでは無く、少なくとも「インターネット広告」に注目が集まり始めた以降の長期的なものであることが認識できる。そしていわゆる「メディア力(りょく)」の低下は、広告費の減退として表れることを忘れてはならない。

奇しくも両媒体は紙媒体という共通性を有しているが、デジタル系メディアの伸長を見るに、その影響……というよりはシェアを食われた結果であることは否定できまい。一部はウェブマガジンや大手新聞社のように、コンテンツそのものが紙からデジタルに移行し、それに合わせて広告もシフトした事例もあるだろう。日経新聞の電子版が良い例である。

濃い藍色で記された「ラジオ」は、「新聞」や「雑誌」よりも低迷度が大きい。具体的には「0%」より下の領域が定位置となっている。これは前年同月比でマイナスが続いている、言い換えれば売り上げが紙媒体以上に減少し続けていることになる。

一方気になる動きとしては、2012年後期以降の流れに注目したい。それ以前の流れと比較すると、「インターネット広告」の激動を中心に、激しい上下感がなくなり、ゆるやかな動きに収まっている。各メディアのパワーバランスの大調整が終わり、細かな調整期に入ったのだろう。その中でも「インターネット広告」が累乗的な上昇志向を見せ、「ラジオ」が復調の動きを示し、「テレビ」がプラストレンドに座する形となりつつある動きは、今後も期待できる。他方「雑誌」「新聞」は今後も厳しい戦いを強いられそうだ。


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【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
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【前年比プラスの1.4%・総額5兆9762億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2014年)(最新)】

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