新聞と電波メディアが不調、ネットは博報堂が大いに伸びる(電通・博報堂売上:2014年9月分)

2014/10/10 14:00

博報堂DYホールディングスは2014年10月9日付で、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2014年9月分となる売上高速報を公開した。一方電通ではそれに先する同年10月7日付で、同じく同社9月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2014年9月次の売上データが出揃うこととなった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を当サイト側で独自に算出し、その値から各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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雑誌は復調、新聞不調、電波メディアも調子が悪い


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載している。必要な場合はそちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年9月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年9月分種目別売上高前年同月比

昨今の広告業界では震災による一時的な状況の変化も収まり、4マスではテレビが例外的な堅調ぶりを示す以外は大よそ不調、インターネットが好調、その他の従来型・非デジタル様式の広告はそこそこ堅調という状況が続いている。さらに従来型・非デジタル様式の広告では、ARをはじめとした各種新技術を導入し、節電志向という昨今の環境変化による波に乗るだけでなく、新たな活力を取り入れ、その勢いの原動力としている。

今回9月分では、従来型4マスでは電波メディアと新聞が不調。テレビが両社ともマイナスに振れるのは珍しい動きといえる。前年同月におけるテレビの値はそれぞれプラス7.9%、プラス4.4%だったことから、幾分はその反動によるものもあろうが、稀有な状況には違いない。似たような流れとしては新聞の大きなマイナスぶりも当てはまる。やはり新聞も前年同月ではプラス11.7%、プラス5.6%で、反動によるところが小さくない(実際、2年前比を試算すると、電通はプラス10.7%となる。もっとも博報堂はマイナス7.3%で、マイナス圏には違いない)。

インターネットの伸びだが、前年同月でも両社はプラスを示していたことから、「前年同月がマイナスだったことの反動」との説明は出来ず、純粋に、そして加速度的な成長が続いていると見ることが出来る。特に今回月では博報堂の伸びが顕著で、2年前比を試算すると実に70.3%のプラスにもなる。その伸び方には驚くばかり。

他の従来型広告ではアウトドアメディアで一部大きめのマイナス値が出ているが、全体的にはそこそこ堅調と評価できる。

↑ 参考:電通2014年9月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年9月度単体売上(前々年同月比)

電通で前々年同月比を試算したが、新聞は堅調なものの雑誌とラジオは不調、それ以外はおおむね好調という形になった。新聞がプラスを示したのはやや意外だが、それ以外は大よそ現状を表す形といえよう。特にインタラクティブメディアの強さを再確認させられる。

電通の各年9月における総額の過去からの推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月も含めた各年9月の広告売上総額推移を抽出し、その動向を折れ線グラフで示したもの。同じ月の経年売り上げ推移であることから、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)にとらわれることなく、年単位での売り上げ推移、そして広告市場の情勢を推し量れるものとなっている。

↑ 電通月次売上総額推移(各年9月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年9月、億円)(-2014年)

今回月は前回月(8月)のような、オリンピック招致関連によるイレギュラー的要素も無く、金融危機ぼっ発以降の下げ、リーマンショックでの底値までの下落、その後の復調と震災による後退、その後の回復という一連の流れが良くわかるグラフとなっている。一方で今年2014年分は前年とほぼ同じ値。昨今の景気の停滞感をうかがわせる動きとの解釈もできるため、留意が必要といえよう。

今件記事では日本の大手広告代理店として電通と博報堂2社の動向を精査している。もっとも両社は同じ規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。それぞれの社内の動向を併記していることから、両社の「前年同月比」がそのまま「金額そのものの差異」のように読めてしまうかもしない。例えば今回月ではインターネットの伸び率が博報堂は電通の10倍なので、「博報堂のインターネット広告の金額は電通の10倍ぐらい?」と勘違いしてしまうかもしれない。

そこで次にいくつかの項目における具体的金額を提示する。上記で触れている通り、インターネット分野の成長ぶりは今後も期待できる勢いに違いないが、金額の上では今なおテレビの数分の一でしかない。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年9月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年9月における部門別売上高(億円、一部部門)

同一社内の項目間だけでなく、企業間でも当然差異は生じている。電通と博報堂間では売上総額で約2倍、インターネット部門でも2倍前後の差が生じている。両社間での営業部門をはじめとする各部門の得手不得手、営業領域・地域の対応度合いなどもあり、部門によってはこの差がさらに大きいものもある(例えば「その他」は10倍以上の差が開いている)。前年同月比が同じでも、変化をしている金額は異なることを認識しておく必要はある。



経産省発表の広告費動向ではすでに新聞を追い抜いたインターネット広告だが、こちらの電通・博報堂ではまだ新聞の方が優勢。博報堂では新聞が44.78億円・インターネットが33.84億円、電通では新聞85.45億円・インターネット64.17億円となり、両社とも新聞優性の状況が続いている。とはいえ、広告業全般の動向を見るに、電通や博報堂でもじきに同じような立ち位置となることは容易に想像できる。単に早いか遅いかの違いに過ぎない。

今回の公開値に関する精査で特に気になる動きとしては、やはり電通の9月分の動向グラフが挙げられる。前年からほとんど動かず、成長が止まっている。博報堂も全体額での伸び率がプラス1.0%でしかなく、ほぼ足踏み状態。今回月分に該当する景気ウォッチャー調査の分析記事【2014年9月景気ウォッチャー調査は現状横ばい・先行き下落】にもある通り、ガソリンや電気代の高騰に加えて消費税率再改定に対する消費マインドの低迷が、経済全体に冷や水を浴びせる形となっており、この低迷感が広告市場にも影響している可能性を考える必要がある。コストの削減は広告費から行われることが多いからだ。

広告費動向は今後の景気動向を占う要素の一つとして、実は結構有効な指針足りうる。経産省の広告業動向同様、今件の電通・博報堂の売上推移にも、大いに注意を払いたい。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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