フジ・テレ朝・NHKは順調、日テレ・TBS・テレ東は軟調…主要テレビ局の直近視聴率をグラフ化してみる(2020年3月期下半期・通期)
2020/05/21 05:06


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全日・プライムともに日テレトップ
日本国内のテレビ局における視聴率は以前【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】で解説したように、現在ではビデオリサーチ社のみが計測を実施している。上場テレビ局・企業では各社が程度の差はあれど投資家への経営の状況判断材料として、短信資料で視聴率の提示を行っている。しかしいずれの資料もビデオリサーチ社提供の値を基にしているため、基本的に同じものとなる。
なお【タイムシフト視聴率の採用と、それ以外のテレビ閲覧方法と】などにある通り、2017年秋からは視聴率に関してはこれまでのリアルタイム視聴による視聴率に加え、本放送から一週間以内に視聴した場合の視聴率「タイムシフト視聴率」、さらにはリアルタイムとタイムシフトを合わせ、少なくともどちらか一方でも視聴していればカウントする「統合視聴率」の概念が導入されている。しかしながら今回の各種資料では単に「視聴率」として言及されていることから、これまで通りリアルタイムによる視聴率が提示されているものと考えられる。なお一部局資料では特定期間におけるタイムシフト視聴率も併記しているものが確認されている。
まずは現時点で直近にあたる2020年3月期通期の、キー局の視聴率をグラフ化する。データは【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】内にある「2020年3月期決算説明会」および【東証開示資料】における「2019年3月期 決算資料」から取得した。また下期単独のデータは非公開だが、上期の値は存在するため、そこから逆算して算出し、こちらもグラフ化している(解説は通期の値で行う)。なお「キー局」と表現した場合、NHKは含まれないが、よい機会でもあるので併せてグラフに収めておく。

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2020年3月期・下期)

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2020年3月期・通期)
テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているものの、他の4局と比べれば放送エリアの問題や放送内容の特異性の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが主要キー局では視聴率が一番低迷している。これは同年上半期から変わらない。数年前まではフジテレビとTBSの立ち位置が逆だったことを思い返せば、フジテレビの凋落ぶりがよく分かる。
視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19-22時)とプライムタイム(19-23時)。その時間帯で10%を切っているのは(テレビ東京以外では)、TBS、フジテレビ、NHK(プライムタイムのみ)。
今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が大きいのが目に留まる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22-23時の夜間における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっているのが分かる。もっともこれは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方がない話ではある。
ゴールデンタイムで視聴率動向を見るとトップは日本テレビ、次いでテレビ朝日、NHK、TBS、フジテレビの順。プライムタイムで比較すると、トップにはやはり日本テレビが付き、次いでテレビ朝日、TBSとNHKが同率、フジテレビが収まることになる。ゴールデンタイムとプライムタイムとの間で、各局の視聴率の順位に大きな違いはない。
他方、それぞれの局のゴールデンタイムとプライムタイムの視聴率を比較すると、おおよその局でプライムタイムの方が低い値を示しているが、唯一テレビ朝日だけが高い値となっている(TBSは同率)。これは22時から23時の時間帯で放送される番組の人気が影響を与えていると見てよい。具体的には同局の「報道ステーション」がプライムタイムの値をけん引しているのだろう。
前年同期からの変化で各局の勢いを推し量る
通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次の通りになる。比較対象は当然、前年の2019年3月期通期のもの。

↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2020年3月期・通期)
昨今巷で話題に上っている、各キー局のすう勢が色々とにじみ出る結果が出ている。堅調なのはフジテレビとテレビ朝日とNHK、軟調は日本テレビとTBS、テレビ東京。
日本テレビは前年度に続き、通期における前年度比の視聴率動向ではマイナスを記録。同社の決算時の公開資料で確認すると、今年度は個人視聴率の3冠を獲得した、広告主の需要が高い若年層へのウケがよかったなどの話はあるが、視聴率そのものは低迷中(今記事で取り扱っている視聴率は世帯視聴率)。もっとも現在進行年度の編成方針としても、引き続き個人視聴率に重視を置く、若年層へのアプローチを積極的に行う「次世代視聴者開拓」、地上波中心に「マルチプラットフォーム戦略」を推進するなど、将来を見据えた方向性を打ち出しているのが目に留まる。一方で番組制作費は前年度比でマイナス2.5%の削減を示しているなど、リソース面の注力の仕方が気になるところ。

堅調さを見せたテレビ朝日だが、開局60周年ということもあり「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(平均視聴率18.5%)「相棒season18」(平均視聴率14.8%)など数々のドラマを投入し高視聴率を確保、また大型特番や大型スポーツ中継が好評だったことに加え、レギュラー番組では「報道ステーション」が好成績をはじき出したとのこと。他方、同局の番組制作費は前年比でマイナス3.0%とマイナスを示しており、不安要素が無いとは言い切れないのも気になるところではある。
経年変化で視聴率動向を見ると、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている雰囲気がある。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が収まらない。例えばかつてのTBSにおける「半沢直樹」のように、一時的な躍進を後押しする特異点が生じることもあるが、体制そのものの変化や時節の動きが無い限り、中期的な変化にはつながらない。食生活そのものを改めなければ、一時的な断食で体重が減っても、すぐに元に戻ってしまうのと同じである。
4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ存在としての自覚の上で、各局がいかなる姿勢を見せ、それが視聴率の動向に結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。
なお各社の決算短信および補足資料では、複数社において現在進行期の業績予想について、新型コロナウイルス流行の影響によって合理的な予想は不可能として、未定とする発表をしている。視聴率にはどのような影響が生じるのか、今後の動向が気になるところだ。
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