TBSは堅調、フジは大軟調…主要テレビ局の直近視聴率をグラフ化してみる(2016年3月期下半期・通期)

2016/05/17 05:19

従来型4マス、つまりテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中では最大の広告市場規模と媒体力を誇り、昨今の広告市場動向を見るに唯一復調の兆しを示しているのがテレビ。そのテレビにおいて、各局の権威、メディア力、力量を推し量る一つの指針となるのが「視聴率」。雑誌や新聞なら購読者数に該当するこの値は、テレビ全体のすう勢と共に、各局のパワーバランスを見決めるのにも欠かせない。今サイトではテレビ局のうちキー局でもあり上場を(直接、あるいは間接的に)果たしている企業の(半期)決算短信資料などを基に、ほぼ半年間隔でキー局の動向を確認している。今回は2016年5月付で発表された各社の決算短信資料を基に、2016年3月期(2015年4月から2016年3月)における下半期、そして通期の視聴率動向をチェックしていく。

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全日・プライム共に日テレトップ、テレ朝が続く


日本国内のテレビ局における視聴率は以前【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】で解説したように、現在ではビデオリサーチ社のみが計測を実施している。上場テレビ局・企業では各社が程度の差はあれど投資家への経営の状況判断材料として、短信資料で視聴率の提示を行っている。しかしいずれの資料もビデオリサーチ社提供の値を基にしているため、基本的に同じものとなる。

まずは現時点で直近にあたる2016年3月期通期の、キー局の視聴率をグラフ化する。データは【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】内にある「2016年3月期決算説明会」および【東証開示資料】における「2016年3月期 決算資料」から取得した。また下期単独のデータは非公開だが、上期の値は存在するため、そこから逆算して算出し、こちらもグラフ化している。なお「キー局」と表現した場合、NHKは含まれないが、良い機会でもあるので合わせてグラフに収めておく。

↑ 2016年3月期・下期視聴率(2015/9/28-2016/4/3、週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2016年3月期・下期視聴率(2015/9/28-2016/4/3、週ベース、ビデオリサーチ)

↑ 2016年3月期・通期視聴率(2015/3/30-2016/4/3、週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2016年3月期・通期視聴率(2015/3/30-2016/4/3、週ベース、ビデオリサーチ)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているものの、他の4局と比べれば放送エリアの問題や放送内容の特異性の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが主要キー局では視聴率が一番低迷している。これは同年上半期から変わらない。前年同期ではフジテレビとTBSの立ち位置が逆だったことを思い返せば、フジテレビの凋落ぶりがよく分かる。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その双方で、10%を切っているのは(テレビ東京以外では)フジテレビとTBS(NHKはプライムタイムだけが10%割れ)。上位陣では日本テレビとテレビ朝日が競り合い、その後をNHKが追いかけ、TBSが続く形。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が大きいのが目に留まる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22時から23時の夜間における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっているのが分かる。もっともこれは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方がない話ではある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると(以後通期で確認)トップは日本テレビ、次いでテレビ朝日、NHKの順となる。プライムタイムで比較すると、トップにはやはり日本テレビが付き、次いでテレビ朝日、そしてTBSが収まることになる。かつてはプライムタイムではテレビ朝日の方が上位につく動きを示していたのだが(22時から23時の時間帯で放送される各局の番組の人気が影響を与えている。テレビ朝日の「報道ステーション」が同局のプライムタイムの値をけん引していたのだろう)、今期ではそうはならなかった。同局のプライムタイムの視聴率はゴールデンタイムと比べて0.2%ポイント高いため、それなりの堅調な値を示しているものと思われるが、かつての勢いはないようだ。

前年同期からの変化で各局の勢いを推し量る


通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次の通りになる。比較対象は当然、2015年3月期通期のもの。

↑ 2016年3月期通期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2016年3月期通期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)

昨今巷で話題に登っている、各キー局のすう勢が色々とにじみ出る結果が出ている。健闘組はTBS。やや軟調は日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京、NHK。残念組はフジテレビ。

やや軟調組の中でもいくぶん下げ幅が大きい日本テレビだが、これは多分に前年における伸びぶり(全日で0.5%ポイントのプラス、ゴールデン・プライムで0.7%ポイントのプラス)の反動によるもの。2年前との比較ではまだプラスを維持しているため、一時的なものと考えられる。

TBS上半期決算説明会資料より唯一堅調さを示したTBSだが、通期決算説明会の資料はまだ公開されていないものの、決算短信や上半期の決算説明会資料などを読み解く限りでは、「爆報!THEフライデー」「ぴったんこカン・カン」などのバラエティ番組の堅調さが大いに貢献したものと考えられる。さらにドラマ「下町ロケット」「天皇の料理番」などもヒットが続々登場し、同社の視聴率アップに貢献する形となった。資料の限りでは同社の番組制作費は前年比でマイナス0.26%に留まっており、事実上横ばい。予算上の制約があまり無かったのも、ヒット作を生み出した一因かもしれない。

フジテレビ決算説明会資料より他方、視聴率のダイナミックな減少を呈したフジテレビだが、各種決算関連資料に目を通すと、まずは番組制作費が大きく減っているのが目に留まる。前年比でマイナス7.5%。売上低迷のため経費削減の必要性が高まったための措置ではあるが、お財布事情が番組の品質を下げ、それが視聴率の足を引っ張るという、マイナススパイラルに陥った感はある。

視聴率の低迷に関しては、バレーボールやサッカー、プロ野球などのイレギュラーなスポーツものでは健闘したが、「視聴率で苦戦したレギュラー番組」との表記にある通り、レギュラー番組全体で低迷感を覚える実態が出てしまっていることが分かる。同局では今回検証している終了年度だけでなく現在進行年度でも「キッズ、ティーン、20代-40代から高い支持を獲得する番組」をスローガンに掲げ、若年層から中堅層までに受け入れられるような番組構成を目指しているようだが、少なくとも数字の上ではその目標からはむしろ遠のいているのが実態。

さらに現在進行年度では「タイムテーブル強化を最優先に収益向上を図る」「効率的に費用をコントロール」が目標の主軸として挙げられている。解決策として、生放送の強化を目的とした番組編成を実施するとともに、「番組情報の発信にSNS等も活用、話題の拡がりを担う」としている。視聴率アップは売上、収益の向上につながるため、結局のところ視聴率の底上げが何よりも現状の打開となるのだが、これらの施策が番組の周知度、魅力度、品質のアップにつながるか否か、注目されるところではある。思惑通りに事が進めば、今後のフジテレビの視聴率は回復を示すに違いない。

経年変化で視聴率動向を見ると、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている雰囲気がある。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が収まらない。例えばかつてのTBSにおける「半沢直樹」のように、一時的な躍進を後押しする特異点が生じることもあるが、体制そのものの変化や時節の動きが無い限り、中期的な変化にはつながらない。食生活そのものを改めなければ、一時的な断食で体重が減っても、すぐに元に戻ってしまうのと同じである。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ存在としての自覚の上で、各局がいかなる姿勢を見せ、それが視聴率の動向に結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。


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