TBSは堅調、フジは大軟調…主要テレビ局の直近視聴率をグラフ化してみる(2017年3月期下半期・通期)

2017/05/15 05:21

従来型4マス、つまりテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中では最大の広告市場規模と媒体力を誇り、昨今の広告市場動向を見るに復調の兆しを示しているのがテレビ。そのテレビにおいて、各局の権威、メディア力、力量を推し量る一つの指針となるのが「視聴率」。雑誌や新聞なら購読者数に該当するこの値は、テレビ全体のすう勢と共に、各局のパワーバランスを見決めるのにも欠かせない。今サイトではテレビ局のうちキー局でもあり上場を(直接、あるいは間接的に)果たしている企業の(半期)決算短信資料などを基に、ほぼ半年間隔でキー局の動向を確認している。今回は2017年5月付で発表された各社の決算短信資料を基に、2017年3月期(2016年4月から2017年3月)における下半期、そして通期の視聴率動向をチェックしていく。

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全日・プライム共に日テレトップ、テレ朝が続く


日本国内のテレビ局における視聴率は以前【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】で解説したように、現在ではビデオリサーチ社のみが計測を実施している。上場テレビ局・企業では各社が程度の差はあれど投資家への経営の状況判断材料として、短信資料で視聴率の提示を行っている。しかしいずれの資料もビデオリサーチ社提供の値を基にしているため、基本的に同じものとなる。

なお【タイムシフト視聴率の採用と、それ以外のテレビ閲覧方法と】などにある通り、2017年秋からは視聴率に関してはこれまでのリアルタイム視聴による視聴率に加え、本放送から一週間以内に視聴した場合の視聴率「タイムシフト視聴率」、さらにはリアルタイムとタイムシフトを合わせ、少なくともどちらか一方でも視聴していれば計上する「統合視聴率」の概念が導入されている。しかしながら今回の各種資料では単に「視聴率」として言及されていることから、これまで通りリアルタイムによる視聴率が提示されているものと考えられる。なお一部局資料では特定期間におけるタイムシフト視聴率も併記しているものが確認されている。

まずは現時点で直近にあたる2017年3月期通期の、キー局の視聴率をグラフ化する。データは【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】内にある「2017年3月期決算説明会」および【東証開示資料】における「2017年3月期 決算資料」から取得した。また下期単独のデータは非公開だが、上期の値は存在するため、そこから逆算して算出し、こちらもグラフ化している(解説は通期の値で行う)。なお「キー局」と表現した場合、NHKは含まれないが、良い機会でもあるので合わせてグラフに収めておく。

↑ 2017年3月期・下期視聴率(2016/10/3-2017/4/2、週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2017年3月期・下期視聴率(2016/10/3-2017/4/2、週ベース、ビデオリサーチ)

↑ 2017年3月期・通期視聴率(2016/4/4-2017/4/2、週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2017年3月期・通期視聴率(2016/4/4-2017/4/2、週ベース、ビデオリサーチ)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているものの、他の4局と比べれば放送エリアの問題や放送内容の特異性の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが主要キー局では視聴率が一番低迷している。これは同年上半期から変わらない。数年前まではフジテレビとTBSの立ち位置が逆だったことを思い返せば、フジテレビの凋落ぶりがよく分かる。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その双方で、10%を切っているのは(テレビ東京以外では)フジテレビとTBS(NHKはプライムタイムだけが10%割れ)。上位陣では日本テレビとテレビ朝日が競り合い、その後をNHKが追いかけ、TBSが続く形。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が大きいのが目に留まる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22時から23時の夜間における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっているのが分かる。もっともこれは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方がない話ではある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見るとトップは日本テレビ、次いでNHK、テレビ朝日の順となる。プライムタイムで比較すると、トップにはやはり日本テレビが付き、次いでテレビ朝日、そしてNHKが収まることになる。プライムタイムではテレビ朝日の方がNHKよりも上位につく動きを示しているが、これは22時から23時の時間帯で放送される各局の番組の人気が影響を与えている。テレビ朝日の「報道ステーション」が同局のプライムタイムの値をけん引しているのだろう。

前年同期からの変化で各局の勢いを推し量る


通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次の通りになる。比較対象は当然、前年の2016年3月期通期のもの。

↑ 2017年3月期通期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2017年3月期通期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)

昨今巷で話題に登っている、各キー局のすう勢が色々とにじみ出る結果が出ている。大奮闘はNHK、健闘組はTBS、やや軟調は日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京。残念組はフジテレビ。この状況は上半期からほぼ継続した流れではある。

大きな下落を示したフジテレビだが、この傾向は数年来継続しており、フリーホール状態にある。これを受けてだろうか、先日フジ・メディア・ホールディングスでは大規模な上層部の人事改変を行っている(【代表取締役の異動及び役員の異動に関するお知らせ】(2017年5月11日))。

フジテレビの営業利益
財務的な中身を見ると、フジ・メディア・ホールディングスでは副事業的な都市開発事業は売り上げで前年比24%増、その他事業も12%増と大きく伸びているにも関わらず、放送、制作、映像音楽、生活情報事業といった基幹事業は売上が低迷。全体の売上増は副事業で支えている状態。またフジテレビに限ってみても、売上はマイナス3.2%、その内部の放送事業収入はマイナス4.8%。さらに番組制作費はそれ以上のマイナス5.4%。番組制作費だけが視聴率動向を左右する要因ではないが、色々と考えさせられる値動きではある。

なお現在進行期の予想では、売上減を想定した上で「コスト運用を継続(して増益を目指す)」とあり、さらに番組制作費が削られる可能性は高い。

民放局では一番の成長ぶりを見せたTBSでは制作費は前年からほぼ変わらないものの、前年では前々年から大きく底上げが成されていた。他方今回年では設備投資を大きく積み上げており、制作環境の改善を継続的に施行していることがうかがえる。

日テレの番組制作費やや軟調な視聴率動向を見せた日テレは番組制作費の上乗せを継続中。2009年度で大きく落として以降、少しずつ積み戻す状態が続いている。またレギュラー番組の内容強化やブランディングの再構築、タイムテーブルにおいて一番の肝となる21時代の番組の強化、日曜日に続き視聴率の伸長が期待できる月曜日の改善策を実施、ドラマのコンセプトを再設定して強化するなどの目標を現在進行期で掲げ、実施している。やる気は十分にあるようだ。

一番の伸長を見せたNHKでは総括として

今年度は、新しいサービスも含めた放送・サービスの充実、営業業績の向上、NHKグループの効率的な業務運営などの点で、3か年経営計画を大きく進展させた。放送では、5月の伊勢志摩サミットや米国オバマ大統領の広島訪問、11月のアメリカ大統領選など、視聴者の関心が高いニュースを丁寧に伝えたほか、4月の熊本地震をはじめとする災害報道、防災・減災報道に全局一丸となって取り組み、公共放送の使命を果たした。また、大幅な番組改定を行った総合テレビでは、新設・移設した番組がより広い視聴者層の獲得に貢献した。

とまとめており、特に報道方面での拡充が功を奏したと評価している。他方中央番組審議会の意見として

これまでのリアルタイムに加え、録画によるタイムシフトも視聴率分析に加味されるようになった。これを受けて、「放送全体にとって大きなトレンドになるのではないか。あえて録画して見ようというインセンティブが働かないとタイムシフト視聴に繋がらない。番組内容や予告の仕方が一層問われることになる」という意見が出された。また、世界の日本に対する関心が高まるなか、「インターネットを使った取り組みに注目している。

NHKピックアップなる言及をしており、タイムシフト視聴率やネットとの連動性にも意欲を見せている。さらに地域性を活かした番組構成が評価されたとして特記事項に挙げており、幅広い方面への意気込みが感じられる。他方、報道・教養(系)番組における少なからぬ問題内容に関わる言及は無く、問題内容の指摘が今後の番組制作に反映される気配が無いのが気がかりではある。

経年変化で視聴率動向を見ると、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている雰囲気がある。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が収まらない。例えばかつてのTBSにおける「半沢直樹」のように、一時的な躍進を後押しする特異点が生じることもあるが、体制そのものの変化や時節の動きが無い限り、中期的な変化にはつながらない。食生活そのものを改めなければ、一時的な断食で体重が減っても、すぐに元に戻ってしまうのと同じである。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ存在としての自覚の上で、各局がいかなる姿勢を見せ、それが視聴率の動向に結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。


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