日テレとTBSは順調、フジ・テレ朝・NHKは軟調…主要テレビ局の直近視聴率をグラフ化してみる(2018年3月期下半期・通期)

2018/05/13 05:06

2018-0512従来型4マス、つまりテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中では最大の広告市場規模と媒体力を誇り、昨今の広告市場動向を見るに復調の兆しを示しているとも評されているテレビ。そのテレビにおいて、各局の権威、メディア力、力量を推し量る一つの指針となるのが「視聴率」。雑誌や新聞なら購読者数に該当するこの値は、テレビ全体のすう勢とともに、各局のパワーバランスを見決めるのにも欠かせない。今サイトではテレビ局のうちキー局でもあり上場を(直接、あるいは間接的に)果たしている企業の(半期)決算短信資料などを基に、ほぼ半年間隔でキー局の動向を確認している。今回は2018年5月付で発表された各社の決算短信資料を基に、2018年3月期(2017年4月から2018年3月)における下半期、そして通期の視聴率動向をチェックしていく。

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全日・プライムともに日テレトップ


日本国内のテレビ局における視聴率は以前【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】で解説したように、現在ではビデオリサーチ社のみが計測を実施している。上場テレビ局・企業では各社が程度の差はあれど投資家への経営の状況判断材料として、短信資料で視聴率の提示を行っている。しかしいずれの資料もビデオリサーチ社提供の値を基にしているため、基本的に同じものとなる。

なお【タイムシフト視聴率の採用と、それ以外のテレビ閲覧方法と】などにある通り、2017年秋からは視聴率に関してはこれまでのリアルタイム視聴による視聴率に加え、本放送から一週間以内に視聴した場合の視聴率「タイムシフト視聴率」、さらにはリアルタイムとタイムシフトを合わせ、少なくともどちらか一方でも視聴していれば計上する「統合視聴率」の概念が導入されている。しかしながら今回の各種資料では単に「視聴率」として言及されていることから、これまで通りリアルタイムによる視聴率が提示されているものと考えられる。なお一部局資料では特定期間におけるタイムシフト視聴率も併記しているものが確認されている。

まずは現時点で直近にあたる2018年3月期通期の、キー局の視聴率をグラフ化する。データは【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】内にある「2018年3月期決算説明会」および【東証開示資料】における「2018年3月期 決算資料」から取得した。また下期単独のデータは非公開だが、上期の値は存在するため、そこから逆算して算出し、こちらもグラフ化している(解説は通期の値で行う)。なお「キー局」と表現した場合、NHKは含まれ無いが、よい機会でもあるので併せてグラフに収めておく。

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2018年3月期・下期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2018年3月期・下期)

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区2018年3月期・通期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2018年3月期・通期)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているものの、他の4局と比べれば放送エリアの問題や放送内容の特異性の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが主要キー局では視聴率が一番低迷している。これは同年上半期から変わらない。数年前まではフジテレビとTBSの立ち位置が逆だったことを思い返せば、フジテレビの凋落ぶりがよく分かる。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その双方で、10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBS、フジテレビ、テレビ朝日(ゴールデンタイムのみ)、NHK(プライムタイムのみ)。上位陣では日本テレビが群を抜き、テレビ朝日とNHK、TBSが後を追う形。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が大きいのが目に留まる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22時から23時の夜間における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっているのが分かる。もっともこれは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方が無い話ではある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見るとトップは日本テレビ、次いでNHK、テレビ朝日・TBSの順となる。プライムタイムで比較すると、トップにはやはり日本テレビが付き、次いでテレビ朝日、そしてTBSが収まることになる。プライムタイムではテレビ朝日の方がNHKよりも上位につく動きを示しているが、これは22時から23時の時間帯で放送される各局の番組の人気が影響を与えている。テレビ朝日の「報道ステーション」が同局のプライムタイムの値をけん引しているのだろう。

前年同期からの変化で各局の勢いを推し量る


通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次の通りになる。比較対象は当然、前年の2017年3月期通期のもの。

↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2018年3月期・通期)
↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2018年3月期・通期)

昨今巷で話題に上っている、各キー局のすう勢が色々とにじみ出る結果が出ている。堅調なのは日本テレビとTBS、テレビ東京、軟調はフジテレビ、テレビ朝日、NHK。特にNHKの凋落ぶりが著しい。

フジテレビの営業利益軟調さを示したフジテレビだが、この傾向は数年来継続しており、フリーホール状態にある。財務的な中身を見ると、フジ・メディア・ホールディングスでは副事業的な都市開発事業は売上で6.3%のプラス、その他事業もプラス6.4%と大きく伸びているが、放送、制作、生活情報事業といった基幹事業は売上が低迷。しかしコスト管理を徹底したことで、生活情報事業以外は軒並み営業利益がプラスとなっている。視聴率の低迷は続いているが、ビジネスとしては上手く行っているとの評価となる。

フジテレビに限ってみると、売上はマイナス7.1%、その内部の放送事業収入はマイナス5.2%。さらに番組制作費はそれ以上のマイナス8.5%。番組制作費だけが視聴率動向を左右する要因では無いが、色々と考えさせられる動きではある。

なお現在進行期の予想では、フジテレビの業績予想において売上減を想定した上で「放送収入の減収を見込むが、収益拡大と効率的なコスト運用を継続し、増益を予想」とあり、さらに番組制作費が削られる可能性は高い。

民放局では一番の成長ぶりを見せたTBSでは制作費は前年比でプラス1.6%、現在進行期ではプラス2.7%を予想している。また現在進行期では大規模な設備投資の上乗せを予定しており(前年比で約8割増)、制作環境の改善を継続的に施行していることがうかがえる。

テレ朝の実績民放では一番の軟調を示したテレビ朝日(全日ではプラスではあるが)だが、フジテレビ同様に番組制作費の減少が目に留まる。通期の前年同期比はマイナス3.0%。もっとも、タイム・スポット収入は減ったものの、BS・CS収入やその他収入が増えたこともあり、テレビ放送全体の売上は増加、営業利益は大幅に増加している。パターンはフジテレビと似ており、こちらも考えさせられる動きではある。

一番の軟調さを見せたNHKでは視聴率の減少に関する言及は無く、むしろ「28年度は、総合テレビの平日夜間を中心に大幅な番組改定を行い、多くの番組が前年度の平均世帯視聴率を上回った」と説明するほど。ただし同時に「59歳以下の幻影世代の接触の低下傾向は継続課題である」とし、「若者のテレビ離れ」的な実情をうかがえるコメントが確認できる。

経年変化で視聴率動向を見ると、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている雰囲気がある。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が収まらない。例えばかつてのTBSにおける「半沢直樹」のように、一時的な躍進を後押しする特異点が生じることもあるが、体制そのものの変化や時節の動きが無い限り、中期的な変化にはつながらない。食生活そのものを改めなければ、一時的な断食で体重が減っても、すぐに元に戻ってしまうのと同じである。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ存在としての自覚の上で、各局がいかなる姿勢を見せ、それが視聴率の動向に結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。


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