すき家の牛丼値上げ効果がありありと…牛丼御三家売上:2014年09月分

2014/10/08 11:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2014年10月6日付で、吉野家における2014年9月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。それによると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス1.6%となった。これは2か月連続してのプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業としては、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年9月における売上前年同月比はプラス2.4%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス6.6%との値が発表されており、今回月は前月に続き3社とも堅調な売り上げを示すこととなった(いずれも前年同月比・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

スポンサードリンク


前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。

↑ 牛丼御三家2014年9月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年9月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まずは吉野家の状況の確認を行う。昨年同月(2013年9月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス8.4%。今月はそこから転じて6.4%のプラスを示している。これは同社の主力商品である牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落(2013年9月)の反動によるもの。牛丼は主力メニューで多くの人が注文するため、その影響はしばらく継続しており、当然その翌年は反動が続くことになる(実際吉野家では客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月以降1年間続く)。

この反動によるぶれを極力除外するため、後述の通り前々年同月比を試算すると、実質的客単価はわずかなマイナス(マイナス2.5%)に留まっている。吉野家ではこの4月の消費税率改定に合わせて牛丼価格を引き上げているが、中期的に見れば客単価への影響はほとんど無く、上手い具合に調整が出来ているように見える。

牛バラ野菜焼定食同期間の各種メニュー戦略を確認すると、9月25日からは【吉野家からロース豚丼十勝仕立てが登場】で紹介したように人気の「ロース豚丼 十勝仕立て」の展開が始まっているが、期間的に大きな影響はない。客数でいくぶん減少は見えるが、客単価が大きく伸び続けているのは、今なお発売継続中の「牛バラ野菜焼定食」をはじめ、単価の高いメニューへの引き合いが強いことが貢献している。客が減った分を客単価の上昇でカバーし、売上の点ではプラスを維持することができた。

↑ 牛丼御三家2014年9月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年9月営業成績(既存店)(前々年同月比)

続いて松屋の動向を確認。今回対象月でも「ネギ塩豚カルビ丼」「豚バラ焼肉定食」の復活発売、さらには【関東限定、松屋の「ネギ塩豚カルビ丼」「豚バラ焼肉定食」復活発売開始】の通り関東限定ではあるものの「ネギ塩豚カルビ丼」「豚バラ焼肉定食」を復活して発売するなど、積極果敢に新規メニュー展開を続けている。客単価の引き上げ効果もそれなりにあったはずだが、今回月ではむしろ客の引き留め効果の方が強かったようで、客単価の上昇ぶりは3社の中でもっとも低いものの、客数の減少ぶりは最小限に留まることとなった。この客足の引き留め具合が売上へも影響し、吉野家よりは上のプラス2.4%という値を導く結果となった。

ある意味御三家では一番のスポットライトがあてられているすき家。「炭火豚丼」の新規発売、「炭火旨だれやきとり丼」「白髪(しらが)ねぎ牛丼」の復活発売などメニューへの注力に余念がない一方、【すき家、人材不足で1167店舗にて深夜営業を一時休止】でも報じた通り、第三者委員会の提言に基づき夜間ワンオペ脱却のための人員手配が出来なかった店舗1000店以上の夜間営業を一時休止するなど、大鉈を振るう対策を講じつつある。一方で【すき家の牛丼、税抜き価格で20円値上げ・8月27日から】の通り8月末から牛丼価格を値上げしており、これが同社の9月における大幅な客単価増につながることとなった。客数はその分減っているものの、客単価の増大ぶりは大きな影響をもたらし、売上高も3社中では最大値を示している。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年9月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年9月)

まずはすき家が動いた


昨年2013年は牛丼価格を値下げし、さらに鍋トレンドを創り上げた吉野家により、牛丼チェーン店業界は大きく盛り上がった形となったが、今年は消費税率の引上げにはじまり、すき家の人事問題で大きく揺れ動いているのが現状。人員不足は同業界に限らず小売店全体の現状ではあるが、すき家の問題がクローズアップされることで特に注目を集めることとなった。

そのすき家だが、上記の説明にもある通り、事前の公約を果たす形でワンオペ解消が出来なかった店舗の夜間営業を休止しており、ある意味驚きをもってその結果が関係方面に受け入れられている。第三者委員会が指摘している他の問題についても、同様の改善施策がなされる可能性が多分に出てきた。ただしこれが同社の売上、さらには営業成績にプラスとなるか否かはまだ未知数であり、仮に影響が出るとしても短期間ではなく、中長期にかけてその実績を積み上げていかねばならない類のものであるだけに、道のりはまだまだ先が長いものに違いはない。

そのすき家も含め、吉野家は昨年の鍋攻勢による反動が多分を占めているものの、3社いずれとも客入りの動きはあまり良いとはいえない。ここ数か月は松屋・すき家共に再び前年同月比でマイナス圏に落ちてしまっており、低迷感は否めない。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年9月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年9月)

このグラフからも分かる通り、吉野家の鍋定食のようなよほど大きな集客力のある商品開発がなされないと、客足の漸減傾向を押しとどめるのは難しいのが牛丼チェーン店業界の現状。外食産業全般の中期的動き、具体的には品質を求め、時間の経過と家族などとのコミュニケーションを重視する食事のスタイルが評価をされつつある。ファミリーレストランや焼き肉店などは堅調さを示すものの、牛丼と似たようなポジションにあるハンバーガーチェーン店も、その多く、特にこれまでのファストフードのイメージが強い「そこそこの価格とそこそこの品質」に重点を置いていたチェーン店は苦境の中にある。

さらに食のシフトの行き先としてコンビニが猛威を振るっており、その影響も無視できない。地域社会全体の消費を囲いつくしてしまうかのような攻勢ぶりは、牛丼チェーン店と競合しうる部分だけでも、カウンターフードの注力化、ドリップコーヒーの提供開始、さらにはイートインコーナーの拡充が挙げられる。直接比較し連動性を証明する調査データは無いものの、動向を精査するとほぼ同時期につながりがあるように見られる動きを示していることから、少なからぬ影響は与えているものと考えて良い。

このような動きを受け、先月も言及したが吉野家では、通常の吉野家の上階に居酒屋的なスペースを設けて飲酒ができる業態店舗「吉呑み」の実証実験を始めている。これは利用客の需要を見事に捕える形となり、大きな成果を上げていると伝えられている。場所の確保や人材の配置など課題も多いが、無理をすることなくシステム化できれば、地域密着型の「大人の憩いの場」としての立ち位置を確保し、本業の吉野家そのものへの好影響も期待できる

次の計測データは10月分。年末商戦や冬の到来に合わせ、さまざまな商品展開が予想される。昨年の吉野家の鍋メニュー投入のような、業界そのものを大きく奮い立たせる(すき家が影響されて鍋メニューを投入し、リソース不足が明確化され人材不足の決定的な要因となり、それがきっかけで第三者委員会が設立されて状況改善が図られつつある現状を見るに、結果論ではあるがすき家にとっても「奮い立たせる」出来事だったには違いない)動きが今年もあるのだろうか。現状ではその兆候は見えてこない。

吉野家の鍋メニューに新作が加わるぐらいまでは予想できるが、それではお客の「新しくて旨いものが食べたい」という根本的な需要を十分に満足させるには少々物足りない。一方、去年、今年とダイナミックな動きという観点では出遅れ感が否めない松屋においても、何らかの大きな話が出てくることを期待したいものではあるのだが。


■関連記事:
【各社の店舗展開戦略が見えてくる…牛丼御三家の店舗数推移】
【ロイヤルホストが全席禁煙化・9割近くの店舗で独立した喫煙ルーム設置】
【各社の店舗展開戦略が見えてくる…牛丼御三家の店舗数推移(2013年)(最新)】
【朝食メニュー・値下げ・そして「はやい」から「ごゆっくり」に…今年一年の牛丼御三家動向を振り返ってみる】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー