付録・特典でかさ上げ!?…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2014年4月-6月)

2014/08/03 10:00

家庭用ゲーム機業界がスマートフォンやタブレット型端末などのモバイル系端末との間で激しいつばぜり合いを続け、やや劣勢の戦いを強いられる中、前者と深い関わり合いのあったゲーム・エンタメ系の雑誌にも小さからぬ変化が生じている。無論映画やテレビなどとの連動性の深い、人気のあるメディアミックス系コンテンツをターゲットに据えた雑誌は、多数の支持を集めることになるが、そのつながり方も一様では無く、中にはこれまで以上に積極的な、一体化したかのような姿勢を見せる事例も多々見受けられる。今回は社団法人日本雑誌協会が2014年7月28日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版、2014年4月から6月分の値を元に、ゲーム専門誌などで構成されるゲーム誌、そして声優・アニメを取り扱ったエンタメ誌などを合わせた「ゲーム・エンタメ系」関連の最新データを精査し、状況を把握していくことにする。

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Vジャンプの一強、部数はさらに伸びる


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般の注意事項、さらには類似記事のバックナンバー一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらを確認のこと。

まずは最新値にあたる2014年の4-6月期分と、そしてその直前期にあたる2014年1-3月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2014年の1-3月期と2014年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2014年の1-3月期と2014年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今四半期では「マック・ピープル」が脱落している。確認したが同誌は休廃刊の話は無く、最新号もしっかりと発刊されているので、何らかの事情で印刷証明部数を非公開化したものと考えられる(同誌は以前、一度非公開化し、再び公開化に踏み切っただけに、色々と想像してしまうものである)。今カテゴリ記事の数字推移を逐次入力しているデータファイルには、休刊してしまった雑誌、データを非公開化した雑誌の名前がずらりと並んでおり、今やそれら「数字の追加が成されない雑誌名」と現存誌の数が同じとなってしまった。

元々ゲームやエンタメ系ジャンルはマルチメディアが前提のため、デジタル系との相性が良く、インターネット媒体に利用客が流れやすい。雑誌としての市場規模縮小度合いも他ジャンルより大きなものがあり、より厳しい状態に置かれていることは否めない。中には紙媒体版の発売と同時にデジタル版を公表し、紙媒体版購入者限定で無料閲覧が可能な施策を取るなど、工夫を凝らしている雑誌もある(今件では公開されていないが)。いわば紙媒体がデジタル媒体の公開キーのようなもので、発想の転換的なアイディアともいえる。

PASH!は反動、Vジャンプは伸長…前四半期との相違確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変移を算出し、グラフ化による状況精査を行う。季節変動(季節の違いで雑誌が売れる・売れない場合もある)などによるぶれが生じることもあるが、直接的な部数動向はこれで把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2014年4-6月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2014年4-6月期、前期比)

幅の大きな上昇を示したのは「Vジャンプ」と「PASH!」の2誌。このうち「PASH!」は前四半期で大きく落ち込んだ(「進撃の巨人」特集記事展開の反動)状態から復帰し、これまでの中長期的な漸増傾向に復帰した結果といえる。「進撃の巨人」特需のような大きな上振れがあった場合、時としてその反動の影響で中期的な成長すら止まってしまう事態が生じることもあるのだが、「PASH!」の場合はそのような悲劇はおきなかったようだ。

↑ PASH!印刷実績(部)
↑ PASH!印刷実績(部)

このままのペースが続けば、2年から3年で、「進撃の巨人」特需で達した4万部の天井を超えることも十分期待できる。

部数が一番大きな「Vジャンプ」はプラス11.0%。同誌は前四半期の4月号(2月21日発売号)で雑誌としては珍しく重版が決定し、大きな話題を集めていた。これは付録の豪華さ(「遊戯王」カード、「黒子のバスケ」のファンブック、「ドラクエXオンライン」や「ドラクエモンスターズ2」などの特殊アイテム用デジタルコード)によるもので、久々のクリティカルヒット的なセールスとして話題を呼んだ。

これが一つのトリガーとなったようで、今回の四半期ではデジタル系特典(ドラクエ系のゲームで特殊アイテムなどが手に入るQRコード)や「遊戯王」などの特別付録カードなどをこれまで以上に積極的に提供している。例えば8月号では、全部で18タイトルものゲームソフトに関するデジタル特典コードを添付しているのが確認できる。今回前四半期比で1割以上もの上昇を示したのも、この積極的な特典攻勢によるところが大きいと考えられる。

前年同期比で年単位での動きを探る


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのためやや大雑把なものとなるが、季節変動の考慮が要らなくなるので、より正確な流れが把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2014年4-6月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2014年4-6月期、前年同期比)

上記で解説した通り、中長期的な成長を続ける「PASH!」が一番の成長頭。次いで「声優グランプリ」が続いているが、こちらはたまたま前年同期で少し大きな落ち込みがあったがための反動に近い。

一方下落雑誌では10%超えが5誌。中でも「Vジャンプ」の下げ幅が著しい。もっともこれは「声優グランプリ」と逆で、たまたま前年同期で大きな伸びがあったことの反動が出ているもの。中長期的には漸減、ボックス圏の下方修正から底打ちの動きを示している。

↑ Vジャンプ印刷実績(部)
↑ Vジャンプ印刷実績(部)

微妙な勢力ポジションの変化がリアルタイムで生じていることもあり、今件カテゴリー記事ではしばらくの間連続して細かい動向を追いかけている、三大アニメ誌の動向。2四半期前に「アニメージュ」と「アニメディア」の順位入れ替えが生じ、「ニュータイプ」の次に「アニメージュ」、そして「アニメディア」という序列に変わる、大きな「変化」が生じた。今四半期でもその順番に変化は無く、むしろ「アニメージュ」と「アニメディア」の差異はほんのわずかだが拡大してしまっている。

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年4-6月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年4-6月期まで)

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年4-6月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2014年4-6月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)

直近値では「ニュータイプ」7万2300部、「アニメージュ」5万8200部、「アニメディア」5万3300部。各誌とも中期的には漸減傾向なのに変わりはないが、「アニメージュ」がこの2年ほどの間はほぼ横ばいにトレンドが変わったのに対し、「アニメディア」は下げ基調が止まらないため、このような順位変動が生じた次第。「アニメディア」の下落は止まる様相を見せないことから、今後もさらに差は開くことが予想される。「アニメディア」の起死回生策を待ち望みたいところだ。



先行記事【「進撃の妖怪ウォッチ」的状況…少年・男性向けコミック誌部数動向(2014年4月-6月)】では少年向けコミック誌部門において、人気ゲームソフト「妖怪ウォッチ」シリーズのマルチメディア展開による相乗効果が大きくプラスに働いた現状を解説したが、それに近い動きが(規模こそ小さいものの)「Vジャンプ」でも生じている。今四半期からデータを非開示化した「マックピープル」周りの言及で触れている「雑誌購入が雑誌の中身そのものはもちろんだが、デジタル系の特典における公開キーの役割をも果たしている」という観点での「特典」を設け、そのデジタルコンテンツの人気の波に乗ろうという切り口である。

この手法は一歩かじ取りを誤ると音楽業界の動向のように「商品本体と特典のどちらがメインなのか」という本末転倒的な問題に陥りかねないことに注意が必要となるが、うまく切りもりをすれば安定的な底上げが期待できる。対象となるゲーム側も「雑誌で話題の云々」との形でプロモーションが出来るため、皆がハッピーとなれる次第。メディアの融合化が推し進められる中では、このような手法も、雑誌市場における起死回生の手口の一つなのだろう(大人向けの雑誌で時計や調理器具、美容用品などが付録につくのと、考え方は同じである)。

すべてのゲーム・エンタメ系雑誌にこの手法が通用するとは限らない。しかしスマートフォンやタブレット型端末の普及率が急上昇している昨今においては、雑誌単体で終わりではなく、その購入をトリガーとしてさらなる世界の広がりが待っている環境の提供を、読者に行うのも一つの手では無いだろうか。


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