都市部在住の人に聞きました「地方移住はアリ?」4割は「考えてもいいカナ」

2014/10/31 11:34

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先行記事【東京への一極集中どう思う? 高齢者ほど「良くないね」の意見増加】などでも解説しているが、現在の日本では人口の減少や高齢化に伴い、都市部、特に東京への一極集中化が進んでいる一方、それを良い状況とは思わない人が多数を占めている。その状況を解消する手段の一つが、都市部に住む人たちの地方への移住となるわけだが、その「移住」という考えについて都市部在住の人たちはどのような想いを抱いているのだろうか。内閣府大臣官房政府広報室が2014年10月20日に発表した「日本の将来像に関する世論調査の結果」を元に、実態を確認していくことにする(【発表リリース:人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査】)。


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公的機関の整備や安い土地住居が必要


調査要件は先行記事の【歳を経るほど「日本は成長しなくてもいいヤ」「縮小もアリだね」と思う人が増える現実】を参考のこと。

冒頭で解説の通り、東京などの都市部への人口や各機能の集中化を解消するための切り口の一つとして挙げられるのが、都市部に住む人の地方への移住。今調査対象母集団ではほぼ1/4の人が自分を都市に住んでいると答えている(前提として「都市は人口規模が大きく、経済活動が活発な地域であり、地方はそれ以外の地域」との説明が行われている)。

↑ 自分が住んでいる地域は都市だと思うか地方だと思うか(2014年)
↑ 自分が住んでいる地域は都市だと思うか地方だと思うか(2014年)

この「都市」「どちらかといえば都市」の回答者に、地方に移住しても良いと思うか否かを聞いた結果が次のグラフ。全体では4割ほどが移住しても良いと回答している。

↑ 地方に移住しても良いと思うか(都市・どちらかといえば都市回答者)(2014年)
↑ 地方に移住しても良いと思うか(都市・どちらかといえば都市回答者)(2014年)

男女別では男性の方が、世代別では大よそ若年層の方が、移住に肯定的な人が多い。身の回りの軽さ、地域との密着性の薄さなどが影響しているものと思われる。

特に「思わない」の値は特徴的で、年齢別では50代以降に急激に回答率が増加し、70歳以上では4割を超える。これは現在居住地域の公共インフラなどの利用のし易さに加え、周辺住民とのコミュニケーションが断ち切られることへの懸念が強いからだと想像できる。実際、高齢者が住まう場合が多い古い集合住宅の立ち退きで問題視されるのは、この点であることが多いからだ。

もっとも見方を変えれば、世代を問わず都市部にすむ人の1割強は地方に移住しても良いと積極的な意思を持ち、それも合わせて少なくとも3割程度は移住に肯定的な意見を持っていることになる。

都市部から地方への移住、何が必要、何が欲しい?


都市部に住む人のうち、約4割ほどの「地方に移住することを好意的に思っている人」に、具体的にどのような条件が提示されれば、地方移住をしても良いと考えるようになるか、その条件を複数回答で聞いた結果が次のグラフ。前提条件として地方移住そのものには好意的な人が対象なので、提示されることで地方移住への後押しをしてくれそうな条件を意味する。なお元データには世代別の回答も用意されているが、世代によっては該当数が少なく、ぶれが大きくなるため省略してある。

↑ 地方に移住する条件(都市・どちらかといえば都市回答者で、地方への移住をしても良いと思う・どちらかといえば思うと回答した人限定、複数回答)(2014年)
↑ 地方に移住する条件(都市・どちらかといえば都市回答者で、地方への移住をしても良いと思う・どちらかといえば思うと回答した人限定、複数回答)(2014年)

最多条件は「教育、医療、福祉などの利便性が高いこと」で5割強。要は公的インフラが整備されていること。見方を変えれば今の地方において、もっとも求められている内容でもある。次いで「移住に必要な家屋や土地が安く得られること」で5割近く。都市部と比べれば不動産相場は低めであるとはいえ、それなりの金額が必要となる。安価に入手ができるのなら、ハードルも低くなるのは当然の話。

興味深いのは「買い物などの生活の場や文化イベント、趣味の場などが充実していること」の回答率が第3位にあること。引越しは安く済んだ、公的機関は充実している、しかし日々の生活用品の入手に難儀したり、生活にメリハリが得られないようでは、魅力を覚えないということか。

他方、職に関する要望はさほど多くない。「今の職場より魅力的な職場があること」は3割足らず、「今の職場が地方に移転すること」は1割強に留まっている。また「今の職場を退職すること」は回答者自身の問題であり、これは行政などでは対応は不可能。

男女別では概して女性の方が回答率が高く、地方移住の際の要望が強い、多彩に及んでいるのが分かる。特に上位3項目はほぼ同率で過半数に届いており、少なくとも3条件が揃わなければ都市部から地方への移住に首を縦に振ってそうにはないようだ。



都市部在住者のうち地方に移住しても良いと考えている人は39.7%。いくつかの条件が整備されれば、具体的にアクションを起こしてくれそうな人もかなりの割合に登る。しかし実際に提示されている条件を見直すと、地方でこれだけの好条件を揃えた場所はなかなか見つかりそうにない。環境整備のためにはリソースが必要だが、現在の地方の多くは人口不足や産業の不振で、そのリソースが不足してる状態だからである。

何か良い発想はないものか。知恵物のアイディアを待ち望みたいところではあるのだが。


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