総計30.5万台・前年同月比マイナス22.6%、大型テレビがかろうじてトントン(薄型テレビ出荷動向:2014年8月分)

2014/09/29 08:00

2014年9月26日付で電子情報技術産業協会(JEITA)は同協会公式サイト上において、【民生用電子機器国内出荷統計】の最新値となる、2014年8月分のデータを公開した。その公開値によれば2014年8月の薄型テレビの出荷台数は30.5万台となり、前年同月比ではマイナス22.6%となった。小型・中型テレビは売れ行きが大きく落ち込んだが、大型テレビはかろうじて下げ幅を最小限のものに留めている。

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純粋出荷数、前月・前年同月比の確認


データ取得元の詳細やデータ内容に関する諸注意、「出荷数」の定義は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:薄型テレビなどの出荷動向(電子情報技術産業協会(JEITA))】に掲載している。必要ならばそちらを参照のこと。なお2013年11月分以降は諸般の事情で、一部の記事ではいわゆる「上書き更新」の形で記事展開を行っているので注意が必要となる(JEITA側では毎月データを更新発表している)。

最初にグラフ化・精査するのは純粋な出荷台数。直近2014年8月分の出荷台数、そして過去の公開値を基に当サイトで算出した前月比・前年同月比によるもの。テレビは季節(さらにいえば月)による売行きの変化が大きく、単純な前月比よりも前年同月比の方が、全体的な出荷すう勢を推し量りやすいため、前年同月比も合わせて掲載している。なお2014年4月分以降、出荷台数の区分について、基データでは大型(37型以上)が「37型から49型」「50型以上」の2区分に分割掲載されているが、今件記事では過去からの継続性を維持するため、「37型以上」の区分で算出するよう、当方側で各種再計算を行っている。

↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(万台)(2014年8月分、JEITA発表)
↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(万台)(2014年8月分、JEITA発表)

↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(前月比・前年同月比)(2014年8月分、JEITA発表)
↑ 薄型テレビ・BD国内出荷実績(前月比・前年同月比)(2014年8月分、JEITA発表)

2014年8月における薄型テレビの日本国内出荷台数は30.5万台。前月の39.5万台と比べれば大きな数の減退が起きている。前年同月比でもマイナス22.6%と大幅減であり、状況的にはネガティブなものであることに違いはない。

サイズ別に動向を見ると、前月比・前年同月比双方で、全サイズがマイナス。一方で小型・中型の下げ幅は2割から3割と大きなものなのに対し、大型は前年同月比でマイナス1.5%と事実上トントンな状況となっている。昨今の薄型テレビの需要トレンド「小型から大型へ」のシフトが継続中であることに違いはない。

8月は小売各業界が天候悪化で売り上げ不振に悩まされているが、テレビの販売動向が天候に左右されることは考えにくい(販売店への来客機運の減退はありえるが……)。小型・中型の大幅減は、単純に先月のボーナス商戦の結果による伸びの反動が多分にあるものと考えられる。

一方、上記にある通り今記事では大型テレビを基データからひとまとめにした形で算出しているが、基の区分値を見ると「50型以上」の超大型サイズでは前年同月比で4割以上(45.8%)のプラスを示している。薄型テレビ全体が不調の中で、高値・大型のテレビのみへの特化の動きも垣間見られる。

台数そのものと前年同月比の変化


【カラーテレビの買い替え年数をグラフ化してみる】で全般的な傾向値が出ている通り、テレビの買い替え間隔は大体8年から10年(直近の2014年では消費税率改定前の駆け込み需要が影響して6.3年とやや短め)。1年や2年のような短期間で「地デジ特需」の反動が収まるとは考えにくい。極端な話、7年から9年先の需要を先取りしてしまう事例もありえる。

次のグラフは薄型テレビの出荷台数、さらには台数の前年同月比の推移を算出したもの。「停波前特需、特に年末・年度末」「停波直前の駆け込み型特需」「停波後の年の年末に慌てて購入」の3期間で販売台数は上乗せされ、それ以降は軟調な動きで推移しているのが把握できる。さらに昨今のトレンド転換が確認しやすいよう、一部で対象期間を変えた(短くした)グラフを併記しておく。

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、万台)(-2014年8月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、万台)(-2014年8月)

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(-2014年8月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(-2014年8月)

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(2012年1月-2014年8月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(型別、前年同月比)(2012年1月-2014年8月)

グラフ中に吹き出しを用いた「アナログ波停止」(2011年7月)までは小型(青線)・中型(赤線)の方が値は高く、出荷台数が多い=良く売れていた。とりわけ停波による切り替えまで一年未満となった2010年末から、その傾向が強くなる。そしてアナログ波が終了し、デジタル波への移行が完全実行された2012年以降においては、これまでとは正反対に大型(緑線)が伸びはじめる。前年同月比ではいずれもマイナスだが、線の上下関係には明らかな違いが生じている。停波によりトレンドの転換が起きた形である。

この動きは、切り替え前は「テレビが視聴できなくなるのが困る。『テレビ視聴環境が無くなる』のを避けるため、まずは1台調達」、そして切り替え後は「末永く使うのを前提に、少々高くても大型のものを調達」といった形における消費者側の心理が反映され、売れ筋が変化したと判断できる。

同時に地デジ導入後に顕著化した薄型テレビの需要低迷によって、販売価格が大幅に下落。その結果、大型テレビの購入ハードルが下がったのも、大型テレビの実績堅調化の一因。上記で記した通りテレビの買替年数は8年から10年であり、サイズによる価格差もそれほど大きくはないのなら、大きなサイズで良好な環境を長期にわたり楽しみたいとする流れは、納得の行く推定ではある。

注目すべきは「前年同月比」のグラフの動向。地デジ切り替え後に需要が大幅に減った2011年夏以降、急降下の後、各項目ともマイナスが続いていた。これは直前の特需の反動が主要因(震災起因は無い。もし震災によるものなら、もう数か月前に始まっていたからだ)。しかしその下落から1年経過した2012年秋を過ぎても、状況は回復せずにマイナスが続いている。これは単なる「計算上の反動」だけでなく、1年を超える期間における需要減退が起きていることを意味する。「地デジ化特需」が先取りしたテレビの需要は、1年分だけでなく、数年分まで及んでいる。

一方で前年同月比のグラフにもある通り、2012年夏以降、マイナス幅は少しずつ小さくなっている。先取りした需要の先取り分が漸次消化され、従来の状況への回復過程にある。全サイズでプラス化を果たした2013年9月から再び一部で失速したものの、大型テレビはプラスを維持していた。

2013年末から2014年の春までは、2014年4月の消費税率改定を前に、税率が引き上げられて支払金額が増える前にテレビを前倒して購入してしまおうという「駆け込み需要」もプラスに作用し、各サイズとも出荷数は順調に伸びた。ところが2014年3月以降は一転して大きく出荷実績を減じている。一般顧客向けの販売市場では3月の時点で駆け込み需要は続いているが、出荷ではすでに4月以降を見据え、市場の需要減退に備えて大幅に出荷数が減らされた次第である。

4月に入り実際に税率が改定されると、出荷台数はますます減り、グラフも大きなマイナス局面に転じることとなった。しかし小型と大型は5月の時点で一時的に盛り返しを見せ、中型も5月以降は下げ幅を縮小し、復調基調にあった。そしてここ1、2か月は小型が失速、中型以降が盛り返しを見せるなど、消費税率改定以前の各サイズごとのパワーバランス的なポジションが復活しつつあるように見えていた。

それだけに今回月となる8月の、全サイズの失速は衝撃的といえる。前年同月で大きな伸びを見せ、その反動ならばまだ理解はできるが、その傾向も無い。純粋に売り上げが急速に減退している。昨今のトレンドをも崩しかねない流れなだけに、注視すべき動きといえる。

月ごとの販売動向を経年で


最後に季節変動を考慮せず、特に月次の販売動向の確認ができる、別の切り口によるグラフを生成、精査を行う。このスタイルは当サイトでやはり毎月更新している定点・逐次更新上書き型の観測記事「たばこの販売実績」でも用いているもので、個々月の動向を経年で比較している。このように月単位の動きを重ねると、「毎年年度末と年末が季節上の特需時期となる」「その翌月は反動で販売台数が大きく落ち込む」のように、テレビ販売のパターンが読める。

↑ 薄型テレビ国内出荷実績(万台)(-2014年8月)
↑ 薄型テレビ国内出荷実績(万台)(-2014年8月)

月単位で確認しても地デジ化直前の2010年(青)-2011年(赤)をピークに、それ以降は減少が続いているのが、流れとして把握できる。その一方、2011年から2012年にかけての下げ方と比べれば、2012年から2013年への下げ幅はわずかなもので、下げ止まりの時期に突入しているのが分かる。そして2014年は現時点で7月分まで進んでいるが、上記の通り消費税率改定に振り回される形で、2月までは大幅上昇、3月までは下落の流れを示しているのが確認できる。もっとも5月ではほぼ前年同月分まで戻し、6月以降は超えた値を示している。ところが8月では大きく下げており、直上でも触れた「衝撃的」なまでの下げっぷりが把握できる。

消費税率改定前の駆け込み需要による特需の反動だが、先の地デジ後の反動のように数年に渡る長期化は生じないと考えて良い。地デジ化で多数のブラウン管テレビは薄型テレビへの買い替えを果たしているし、それ以降もブラウン管テレビを所有し続け、消費税率改定の際に買い替えた層はさほど多く無く、いわゆる「需要の先取り」も少数・短期間分に限られると推定するのが妥当だからだ。消費税率改定による駆け込み需要は、あくまでも寿命間近、形式が古く、どの道数年内に買い替えが必要と思われるテレビに限られる。地デジ切り替えの時のような、多数のテレビが「買い替えないと視聴できなくなる」という半ば強制力のある買い替えでは無い。

今回の8月分に関しては、超大型の50型以上は4割以上の伸びだが、それ以外はマイナス、特に小中型は前年同月比で2割から3割と、明らかに売上の減退を示す値が出ている。ボーナス商戦の反動、天候不順(特に西日本)による外出を控える動きに伴う購入機会の損失など、影響を与えるイレギュラー的要素はいくつか想定できるが、それ以外に消費税率の引き上げに伴う消費性向の減退が、ここに来て本格化した可能性も否定できない。超大型のみプラスでそれ以外は大きくマイナス、ただし旧来の区分で見ると大型はほぼトントンとの動きを見ると、買い手が購入を絞り込み、本当に欲しい人だけが手を出した、見方を変えると買い手側が購入決断のためのハードルをグンと跳ねあげた感がある。

いずれの推測が正しいのかを判断するのには、天候要素やボーナス商戦の反動が影響しなくなる次回月、つまり2014年9月分の動きを見る必要がある。仮に9月も今回8月同様の軟調ぶりが続くのなら(ただし2013年9月は大きな伸びが確認されており、その反動が出る可能性もある)、「地デジと消費税特需の反動による低迷の終息宣言」どころではなく、消費税率引上げによる消費後退を示す一指針として検証をする必要すら生じてくる。

今後も薄型テレビ市場そのものはもちろんだが、景気動向全体を推し量る指針の一つとの観点でも、今後もテレビの出荷実績を追いかけていきたいところだ。また、シニア層などを中心にインターネットへのアクセス端末の一つとして注目を集めているインターネットテレビの出荷動向も、折に触れてデータを更新し、状況を確認していくことにしよう。


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