出版物の書店立地条件別での売上変化をグラフ化してみる(2013年)

2013/10/16 08:00

最近では住宅地域や地方にある昔ながらの書店が次々に閉店へと追いやられる一方、駅周辺の一等地にある大型書店がさらに盛況を見せている。また近郊部に配された、レンタルショップやゲームソフト販売店などと機能を融合した複合的なエンタメサービス提供ショップ的な書店がよく目に留まるようになった。今回はそれら立地条件により、書店の売上がどのような違いを見せているのか、【出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)】でも取り上げた、日販による『出版物販売額の実態』最新版(2013年版)のデータを基に、精査を行うことにした。

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まずは立地別の売上高前年比。「SC」とは「ショッピングセンター(Shopping Center)」のことを指す。「商店街」や「駅前」と比べて、「郊外」の下げ方が無難な線で収まっているのは、いわゆる複合店が郊外に多いからではないかとの推測も成り立つ(これについては後程さらなる分析を加える)。また「ビジネス街」については「ビジネス書」と「専門誌」が堅調なため、それなりの下げ方で済んでいる。

↑ 立地別売上高前年比(2012年)
↑ 立地別売上高前年比(2012年)

2011年と比べると「ビジネス街」はさらに状況の悪化に歯止めがかかった雰囲気があり(前年は2倍近い下げ幅だった)、「駅前」もやや持ち直し。しかし「商店街」や「郊外」、「SC内」は多少ながらも状況が悪化している。

そこで今回は多少ながらも持ち直しを示した「ビジネス街」、そしてビジネススタイルとして特徴的な「郊外」について、細かい分類別を見ていくことにする。まずは今回の区分では一番下げ幅が小さい、この数年間においては少しずつ復調の兆しを見せる「ビジネス街」。

↑ 分類別売上高前年比(2012年、ビジネス街)
↑ 分類別売上高前年比(2012年、ビジネス街)

「総記」の下げが著しいが、これは場所別区分でも最大の下げ。「辞典、事典、日記、手帳、その他」が該当するが、普段ならこれらは多くの需要が見込める「ビジネス街」で売り上げを落としている。デジタル化、具体的にはスマホ化が進んだのが一因か。

一方「ビジネス」そのものはプラスマイナスゼロ、「文庫」はプラス1.2%、「専門」に至ってはプラス7.7%と大健闘を示している。「専門」のプラス化は「ビジネス街」のみで、注目すべき動向といえる。去年後半の景況感の回復ぶりに支えられたのだろうか。

続いて特徴的なビジネススタイルを持つ「郊外」。

↑ 分類別売上高前年比(2012年、郊外)
↑ 分類別売上高前年比(2012年、郊外)

「ビジネス街」では大いに下げていた「総記」がそこそこの下げ幅で留まっている一方、「文芸」の下げ方が著しい。また「文庫」「学参」など若年層から中堅層向けの分野ではプラス、あるいは最小限の下げ幅で済んでいる。

これはいわゆる「大手の郊外複合店」によるところが大きい。隣接する、あるいは内包されている娯楽系店舗への来店も兼ねて書店に足を運び、これらの書籍を手にし、購入していく。親子連れで時間つぶし、気分転換に来店する事例も多く、結果として「文庫」「学参」が買われていく。いや逆に、「学参」を購入がてらに娯楽系店舗にも立ち寄るパターンもあるだろう。「児童書」の下げ幅も小さめなのは、親子連れの来店頻度の高さを予見させる。

さて、その「郊外」も含め、立地条件別における書店の動向はどのようなものなのか。書店では額面上大きな売上を占める3大分類「雑誌」「コミック」「文庫」(全体ではこの3区分で売上全体の約2/3に達する)、それに加えて「ビジネス」と「児童書」の計5区分を抽出したのが次のグラフ。上記に挙げた「ビジネス街」と「近郊」の特性が良くわかる。

↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2012年)
↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2012年)

「ビジネス」は「ビジネス街」が唯一マイナス値を脱しており、「児童書」では「近郊」が一番マイナス値が低い。また「文庫」ではその2か所でプラスを示しており、特性を持つ場所の書店での堅調さは、その地域に合った出版物が(比較的)売れたのが要因であることが明らかに分かる。



今回分のデータは震災による直接・物理的な売上のダメージが大きかった2011年分との比較のため、それなりに反動でプラスに転じるものがあってもおかしくはなかった。しかし現実としてはむしろ、その震災で出版不況が加速化した感は否めない。かろうじて直上で指摘したように、場所の特性にマッチしたジャンルの書籍がそれなりに健闘したのが幸い。

来年発表されるデータ、2013年分では、震災による直接的な影響はほぼなくなっているものの、デジタル化の普及に伴う出版物離れが明らかに加速した状況でのものとなる。特にスマートフォンやタブレットの普及率の向上、電子書籍の本格的な展開が始まるにつけ、地域によって書店にはどのような影響が生じていくのか。注目したいところだ。

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