出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)(2013年)

2013/10/15 14:00

昨今は「出版不況」「書籍不況」なる言葉も日常化し、紙媒体においては書籍に限らず新聞、そして手帳などの文房具も、厳しい状態が続いている。これもひとえにデジタル機器の普及に伴う、利用者側の購入性向の変化によるもの。今回はその中から特に景況感の上で取り上げられることが多い出版物の売上状況について、主要種類別、そして書店の規模別に区分した動向を、日販の『出版物販売額の実態』最新版(2013年版)を基に確認していくことにする。

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全種類、全規模でマイナス


まずは出版物の分類別、売上高の前年比。前年2011年と比較するとプラス項目数はゼロ。前年2011年では2項目だったので、状況は悪化していることになる。下げ幅では「文庫」「学参」は大人しいが、「文芸」が目を覆わんばかりの状況にあるのが分かる。

↑ 分類別売上高前年比(2012年)
↑ 分類別売上高前年比(2012年)

なお項目中「実用書」は「旅行地図」も含んでおり、辞典(「学参」には集計されない)・事典・日記・手帳・その他をまとめて「総記」と呼んでいる。

【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】でも解説しているが、出版物の売上高は漸減傾向にある。当然2011年と比べて2012年の売上高もマイナスだが、「出版物の分類によってその減少ぶりには違いがある」こと、そしてその一方で「今年は全分類でマイナス」な実態も見て取れる。特にマイナス値が大きいのは上記に挙げた通り「文芸」。また「新書」のように昨年はプラスを示していた分類の、大きなマイナス値が目に留まる。

他方、書店の規模別に売上高の動向を見ると、いくつかの特徴を見い出すことができる。

↑ 店舗規模別売上高前年比(2012年)
↑ 店舗規模別売上高前年比(2012年)

もっとも注目したいのは「500坪以上」の区分。明らかに他の区分よりも低い絶対値(=売上減退率が低い)を示している。いわゆるスケールメリットが活きている証といえる。一方で「200-300坪」という中堅どころもそれなりに(他と比べれば)健闘しており、単純に極大化を目指すのではなく、地域によってはこの程度の規模の書店が理想となるパターンもあるのかもしれない。

「書店規模」と「分類別売上高前年比」を掛け合わせると……


次に「書店規模」と「分類別売上高前年比」をクロスさせ、傾向を見て行くことにする。大きく「大規模書店ほど好業績」「小規模書店ほど好業績」の2区分に該当する、出版物分類項目をそれぞれ抽出し、グラフ化を行う(双方に該当せず、下記2つのグラフには登場しない分類もある)。

最初は「大規模店舗ほど好業績」の分類。「好業績」とはいえ、「前年比マイナスの値が小さい」ものには違いない。表現としては「悪くない」「業績悪化度が小さい」とした方が妥当。ともあれ、スケールメリットが効いている領域。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2012年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2012年)

ややイレギュラー(上記で触れた中堅どころの書店での奮闘)な動きが「コミック」「実用書」「総記」(辞典、辞書、日記、手帳、その他)の分類で見られる。都市近郊でよく見受けられる、子供もよく足を運ぶ、地域を支えるエンタメ色の強い総合店的な店舗によるところだろうか。カードゲーム機の1つや2つも置いていそうだ。その動きをのぞけば、概して整った形で右肩上がりの状態となっている。

「小規模店舗ほど好業績」な分類もある。「好業績」というよりは「悪化度が小さめ」でしかないのだが。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績項目)(2012年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績項目)(2012年)

2012年における「小規模店舗ほど好業績」の該当分類は、「細かいところまで手が届く」と「子供が小さな時からお世話になっている」的な、まさに地域密着型のタイプといえる。あるいは昔から定期的に予約を継続しており、常連となっている状態だろうか。ただしそのような「有利そうな状況」を想定できる小規模な書店でも、前年比の売上がマイナスに落ち込んでおり、業界全体の不況ぶりの深刻さが再認識できる。



2011年から2012年への推移概要としては「全般的な軟調さの加速化」「スケールメリットを活かせる大規模店ですらも売り上げを落とす状況」とまとめることができる。昨年まで言及していた「児童書の大型店優位性継続」も、今年は無くなってしまった。スケールメリットも単に下落スピードをゆるやかにさせるブレーキでしかなく、プラス化を見出すエンジンには成り得ていない状況だ。

他方、本文中で少し触れているが、立地場所によっては単に「書店は大きければよい」というものでも無い様子がうかがえる。好業績を挙げるには大きさ以外に地域特性の見極め、隣接あるいは出店している本店舗(例えばデパートに出店している書店など)との連動性など、包括的な「市場対策」が求められる。これはどのような商売でも必要な要素なのだが、小規模書店では限界があり、大規模過ぎると小回りが利かずに他店舗との連動性を検討しにくい。中規模書店が一部分類で健闘しているのは、その連動性が活かされているからなのかもしれない。


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