書店の売上高などをグラフ化してみる(2013年)

2013/10/15 11:00

インターネットの通販を用いて書籍を購入する機会が増え、地元の小規模書店が次々に別店舗へと業種替えをしたり姿を消す昨今だが、書店がいまだなお、出版物を調達するための重要な存在であることに違いは無い。今回はその書店の売上動向について、先日発売された日販の『出版物販売額の実態』最新版(2013年版)から取得した最新値を元に各種グラフを作り出し、状況について精査を行うことにする。

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紀伊國屋書店、ジュンク堂書店が上位…売上高ランキング


まず売上について上位20社のものをそのままグラフ化する。

↑ 書店売上高ランキング(億円)
↑ 書店売上高ランキング(億円)

以前見かけた店舗がいくつか確認できないと首を傾げる人もいるだろうが、今年度は元資料においてカルチュア・コンビニエンス・クラブは連結発表のため(書店以外の業種決算も多分に含まれるため)除外、そしてブックオフコーポレーションとヴィレッジヴァンガードコーポレーションは説明無しに除外されている(恐らくは販売業態上、書店とは言い難い状況のためと推測される)。また下位の3社は新登場のため前年度データそのものが存在しない。

昨年は前年度比はマチマチだった動向だが、今年も同じような状況。特筆すべき劇的な動きは見られない。前年度比マイナス書店は10、プラスは6で、前年度のそれぞれ5・10と比べるとやや悪化している感はある。

上位20位内では紀伊国屋書店、ジュンク堂が相変わらず上位を占め、さらには虎の穴、八重洲ブックセンターなど、一部地域・一部趣味趣向の人にはなじみ深い書店も確認できる。

続いて売上高について、前年度比を計算し、その上で高い順から並べてみる。トップは虎の穴、そして精文館書店、未来屋書店の順。

↑ 売上高前年比(2012年度)
↑ 売上高前年比(2012年度)

虎の穴は売上高そのものは最初のグラフにある通り中堅レベルにあるが、今年度の前年度比売上高上昇率では8%近い値を占め、群を抜く結果となっている。未来屋書店(新規出店数は16店で第1位)などは店舗数の増加が寄与するところも大きいが、精文館書店などのように店舗数はむしろ減少しているにも関わらず売り上げを伸ばしている書店も確認できる。

他方、丸善書店は10%近い下げ。店舗数そのものも減っているのも一因だが、気になる動きではある。

ビジネスの上での動向は? 店舗単位売上と売上高経常利益率


次に、店舗数と売上高が把握できるのを利用し、その値から「店舗当たりの売り上げ」を単純計算したものをグラフ化する。書店によって業態は異なり、中には出版物以外の売り上げも含まれている書店もあるが、「複合店も合わせ書店として展開しているお店の売上」として認識すると共に、参考値のようなものと見定めてほしい(もっとも、多分に業態が異なる数社は上記にある通り除外されているので、以前と比べるとそれほど「比較が困難な」グラフでは無くなっている)。

↑ 店舗当たり売上(2012年度、億円)
↑ 店舗当たり売上(2012年度、億円)

紀伊国屋書店、八重洲ブックセンター、いまじん白揚などがトップ3を占めている状況は昨年度と変わらない。店舗内における出版物の販売比率などもあるが、大体店舗規模の世間一般的なイメージと売上高は比例している感がある。紀伊国屋書店、八重洲ブックセンターなどが好例だ。

最後に「売上高経常利益率」。これは「その会社の本業と副業を合わせた事業の利益率」を意味する。シンプルに一例を挙げると、この値が10%なら、1000円の商品を売ると100円の儲けが出ている計算になる。この値が大きいほど「賢い・割の良い商売」をしている。逆に言えば売上高経常利益率が低いほど、何らかのトラブルが生じた時に金銭的な対応が難しくなる。大きなお金が行き来しているのに、自分の手元に残るのは少額でしかないからだ。

↑ 売上高経常利益率(2012年度、上位6位)
↑ 売上高経常利益率(2012年度、上位6位)

上記にある通り今年度からヴィレッジヴァンガードコーポレーションは業態上の関係で除外されてしまったため、同社の群を抜く状況は無くなってしまっている。今年度では精文館書店が3.3%でトップ、次いでフタバ図書、トップカルチャーが続いている。トップカルチャーは第4位のオー・エンターテイメントと同じように、単なる書店では無く雑貨や各種近接メディア(ゲームやCD、DVDなど)までをも取り扱う、総合エンタメ雑貨店的なのが特徴。書籍のみの取扱い店と比べて利益率が高いのが特徴だが、今回は昨年の3.2%・第2位から後退してしまっている。

今回は元データの都合上、上位6位のみのグラフとなっているが、その第6位・紀伊国屋書店ですら0.8%という状況を考えると、他の書店は規模の大小にかかわらず、厳しい商いの状態にあることが察せられる。



メインが出版物・文具の店舗では「規模の拡大(店舗数、1店舗当たりの売上)」で経営基盤を維持しているのに対し、「書籍・文具”も”取り扱う」企業は1店舗あたりの規模が小さくとも高い収益率を挙げている場合が多い。これは別業態の話になるが、【CDレンタル店舗数をグラフ化してみる】で解説した、CDレンタル店の動向と変わらない。

書店の業績不振云々の話について見直すと、元々出版物や文具の収益構造の根幹にある「販売規模が大きくないと儲けにくい」「他業種との兼業で無いと利益をあげにくい」という要素は前々から存在している。それが昨今においては競争の激化で、目立ち始めただけの問題ともいえる。

また、規模の拡大などで昨今の難局を乗り切ろうとしている書店も、過去の類似記事と比較すると、その多くで収益率が減少しているのが分かる。これは【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】でグラフ化しているように、出版物の種類数がやみくもに増えていくことで需要が分散、減退化し、回転率を上げなければビジネスにならなくなりつつある出版業界の現状の一端を見せている。

書籍の種類は増え続けている。お客の需要を来店時に確実にとらえるためには、種類を豊富に取りそろえねばならないが、そのためには店舗を巨大化するしかない。来店した時に欲しい本が無ければ、昔は在庫が無くとも「それなら注文。来たら連絡をくれれば取りに来店する」で済んだが、今は「それならネットで買う」「ならは買うの止めた」となる。

運よく対応できても、さらに増加する出版物を有限の面積内に収めるには、人気の無い・動きの鈍い書籍はすぐにでも退場(≒返本)してもらい、回転率を上げるしかない。それらの書籍の姿はまるで、次から次へと新しいお皿に追いやられて、店内内部で「回収」される運命を待つ、回転寿司の上に載せられたお寿司達のようである。

さらに昨今では出版社側も1書籍あたりの印刷部数を減らす傾向にある。当然、書店あたりに配本される書籍の数は減り、在庫切れ、元々入荷しない状況が増加する。それは物理的店舗としての書店の利便性を減少させ、さらに書店の競争力は減退してしまう。

またインターネット通販の利用率はその利便性や配送スピードの向上を受けて増加を続け、「電子書籍」も急速にその影響力を増大しつつある。書籍や文具を販売物の一要素としてとらえている企業や、グループ会社全体の店舗内に出店して「本屋」では無く「書籍販売コーナー」のような立ち位置を確保する場合が多い未来屋書店などのような書店はともかく、その他の「書籍販売をメインとしている書店」は、今この時点で起きている環境の変化に、適切な対応、言い換えれば「進化」が求められている。あるいはコペルニクス的転回すら必要かもしれない。


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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください

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