オリンピック招致の反動で「その他」が大きく下げる(電通・博報堂売上:2014年8月分)

2014/09/10 11:00

博報堂DYホールディングスは2014年9月9日付で、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2014年8月分となる売上高速報を公開した。一方電通ではそれに先する同年9月6日付で、同じく同社8月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2014年8月次の売上データが出揃うこととなった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を当サイト側で独自に算出し、その値から各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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紙媒体は不調継続、ネットは好調、電通「その他」が反動で激下げ


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録済み。必要な場合はそちらで確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年8月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年8月分種目別売上高前年同月比

震災による特異な状況下での影響もほぼ鎮静化し、現在はそれ以前から継続している広告業界の変化の流れが確認できる状況となっている。その特徴をまとめると「デジタル系の伸長」「旧来4マスの軟調化」「テレビは高齢化の恩恵を受けて例外的に堅調」「4マス以外の従来型・非デジタル系広告は順調」という具合。最後の「4マス以外の広告」は、震災に伴う電力需給問題が浅からぬ影響を与えているのに加え、デジタル技術の進歩に伴いARやトレインチャンネルのような融合的な広告展開が後押ししているのも一因。

今回8月分では、従来型4マスでは博報堂のラジオとテレビのみがプラスで、それ以外はすべてマイナス。特に雑誌は電通・博報堂共に1割を超える不調ぶりを見せており、グラフの吹き出しにもある通り紙媒体全体としての軟調ぶりの象徴のようだ。もっとも博報堂に限れば、前年同月の雑誌はプラス16.1%の値を示していることから、その反動も少なからず生じているとの解釈もできる。

インターネットの伸びだが、前年同月でも両社は2割近い上昇だったことから、「前年同月がマイナスだったことの反動」との説明は出来ず、純粋に、そして加速度的な成長が続いていると見ることが出来る。後述する通り絶対金額はテレビには手が届かないが、成長率の観点では今後も大いに期待ができる。

そして今記事タイトルでも言及している「その他」項目、特に電通の大きな下げが目立っている。前年同月の値を見ると、電通は実に68.7%のプラス。無論詳細は知る由もないが、東京へのオリンピック・パラリンピックの招致関連の広告費の動きが観測されており、その影響で大きく底上げされた前年の反動によるものと考えれば道理は通る。電通の「その他」区分の詳細は「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他」とのことだが、そのうちメディアプランニングあたりが深く影響しているのではないだろうか。

他の従来型広告も電通は複数項目でマイナスの値が出ている。これも多分に前年同月の反動によるところが大きい。博報堂の健闘が逆に目立つほどではある。

↑ 参考:電通2014年8月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年8月度単体売上(前々年同月比)

もっとも、前々年同月比を算出しても「その他」の項目はマイナスのまま。単純に前年の反動だけでは説明が付きにくい。金額も後述の通りインターネット広告より大きな規模を示していることから、単純なぶれの範囲では無く、明確な調査の悪さを示していると見た方が無理はなさそう。

電通の各年8月における総額の過去からの推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月も含めた各年8月の広告売上総額推移を抽出し、折れ線グラフにしたもの。同じ月の経年売り上げ推移であり、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)にとらわれることなく、年単位での売り上げ推移、そして広告市場の情勢を推し量れるグラフとなる。ただし何らかのイベントが生じた場合はイレギュラー的な動きを示す……が、それはどのような場合にでも起きるので、避けようがない。

↑ 電通月次売上総額推移(各年8月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年8月、億円)(-2014年)

金融危機ぼっ発までの経済の復調、金融危機後、特にリーマンショックでのどん底ぶり、そこからの回復基調、そして再びの復調。今世紀以降の経済動向をそのまま投影したような動きを示している。ただし震災周りの減退は、8月では観測されなかった(2011年8月が前年比で下げていない)。

また上記にある通り、2013年8月はオリンピック招致関連で売上を大きく伸ばした「らしい」ことが観測されており、値も跳ねている。その反動からか、前年比では急降下に至ってしまったことが良くわかる。本来ならば点線のような漸次増加の動きを示していたはず、と考えれば納得はできる。一方、その場合、8月分ベースでは金融危機ぼっ発以前の水準にはまだまだ届いていないということになるのだが。

今件では日本の大手広告代理店として電通と博報堂2社の動向を精査している。もっとも両社は同じ規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。それぞれの社内の動向を併記しているため、やもすると両社の前年同月比がそのまま金額そのものの差異のように、例えば今回月ではインターネットの伸び率が博報堂は電通の2倍強なので、実金額の上昇額も2倍以上も博報堂の方が大きいと勘違いしてしまう人もいるかもしれない。しかし実際はそうではない。

次に示すのは金額面から見た、いくつかの項目の具体例。上記で触れている通り、インターネット分野の成長は今後も期待できそうな流れではあるが、金額の上では今なおテレビの数分の一に留まっている。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年8月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年8月における部門別売上高(億円、一部部門)

同一社内の項目間だけでなく、企業間でも当然差異は生じている。電通と博報堂間では売上総額で約2倍、インターネット部門でも2倍前後の差が生じている。両社間での営業部門をはじめとする各部門の得手不得手もあり、部門によってはこの差がさらに大きいものもある。前年同月比が同じでも、変化をしている金額は異なることを認識しておく必要はある。直上の例なら、博報堂は前年同月比の伸びが電通の2倍ほどだが、金額では逆に電通の方が2倍近く上となっている。



前月が「サッカーに持って行かれた」のなら、今回月は「オリンピック招致の反動に持って行かれた」感があるグラフの形状ではあるが、インターネット広告の健闘ぶりも注目に値する。元々金額がさほど大きいものではないが、例えは電通ならすでに4マスのうち新聞やラジオを追い抜き、新聞に肉薄する水準に達しているし、博報堂でもほぼ同様のポジションにあることが確認されている。経産省の広告業の売上動向ではすでにインターネット広告が新聞を抜いていることから、電通・博報堂双方でも同じ順位づけになるのもそう遠い日の話ではあるまい。

今回月分に該当する景気ウォッチャー調査の分析記事【現状DIは水準値の50を再び切る、先行きは燃料費・電気代高騰懸念で下落継続…2014年8月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落】にもある通り、消費税改定による消費萎縮の動きはほぼ無くなったものの、ガソリン代・電気代の高騰、消費税率の再度改訂への不安、そして8月に限れば天候不順が景気の足を引っ張っている。コストの削減は概して広告費から行われるため、広告市場の頭が抑えられる可能性は低くない。

今後の景気動向を占える要素の一つとして、実は結構有効な指針足りうる広告費動向について、経産省の広告業動向同様、今件の電通・博報堂の売上推移にも、注意を払いたいところだ。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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