ラジオが28か月ぶりに前年同月比プラスに(経産省広告売上推移:2014年9月発表分)

2014/09/11 08:00

経済産業省は2014年9月9日付で、「特定サービス産業動態統計調査」に関する2014年7月分となる速報データ(暫定的に公開される値で、後程確定値で修正される場合が多々ある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。それによると2014年7月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス5.4%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「新聞」がマイナス6.6%と、一番大きな下落率を示している。またその「新聞」を含め4マスでは「新聞」以外は「雑誌」がマイナス値を記録した。「ラジオ」は2012年4月にマイナス7.0%を付けて以来マイナス値を継続していたが、今回28か月ぶりにプラスを示すこととなった。一方「インターネット」は前月における前年同月比から続き、プラス領域のポジションを維持している(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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4マスでは新聞、雑誌がマイナス、テレビとラジオがプラス


今件記事で精査しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの記事を集約したページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

まずは主要5項目の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年6月-2014年7月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年6月-2014年7月)

今件データは前年同月比を示したもの。同時に前月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年6月分のデータ(先月記事で用いた速報値の後に発表される、確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。今回は特に新聞と全体値で大きな変更があった)と並列してグラフ化している。今回月では4マスは「テレビ」のプラス、「新聞」「雑誌」のマイナスは相変わらずだが、「ラジオ」がわずか0.7%ポイントではあるもののプラスに転じた。これは記事タイトルや冒頭でも触れた通り、実に28か月ぶりの話。前年同月における値がマイナス5.7%だったためその反動も多分にあるが、いずれにせよプラス値へ転じたことは喜ばしい。

前月からの動きを見ると「テレビ」は上げ幅を縮小したものの、それ以外はすべて前月と比べて状況が改善されている。特に「インターネット広告」の増加ぶりが著しい。

該当月、つまり2014年7月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【FIFAワールドカップで「その他」が群を抜く上昇ぶり(電通・博報堂売上:2014年7月分)】で個々の相当する項目の動きを確認すると、4マスでは「新聞」が電通のみ、「ラジオ」が博報堂のみプラスを示している。「新聞」の動きは整合性が取れないが、「ラジオ」は類似しており、納得感を覚えさせる。

なお4マス+ネット以外の一般広告(従来型広告)の動向は次の通りとなる。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年7月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年7月)

「その他」項目のみがプラスだが、この項目は金額の上で他項目より1ケタ大きく、これが全体をも引っ張る形となっている。電通・博報堂の記事で詳しく解説しているが、この動きは「FIFAワールドカップ」関連による特需的なものだと考えられる。

新聞とインターネット広告の差は70億近くにまで拡大


今回も該当月(2014年7月分)における、各区分の具体的売上「高」のグラフ化によって、状況の確認を行う。各項目の市場規模をざっとでは推し量ることができる。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。さらに各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているものの、その構成内容は業界内で完全統一されているわけではないので(法的な縛りは無い)、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。あくまでも項目部類の相対的関係における参考指針程度に見てほしい。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年7月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年7月、億円)

ここ数年の間に金額面におげる「インターネット広告」と「新聞」の間の関係が入れ替わり、「インターネット広告」は「新聞」を追い抜く形となった。最後に2014年1月分で「新聞」が額面で「インターネット広告」をイレギュラー的に抜いたのが確認されているが(【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2013年)(最新)】も参考のこと)、それ以降は再び「インターネット広告」の優位性が続いている。今回月では両者間には70億円近い差が出ている。「雑誌」「ラジオ」が大きく伸びる、「テレビ」が大きく減少する状況は考えにくいので、今後も継続的に「インターネット広告」が優勢な立場のまま、「新聞」との競争が続くものと思われる。

ただし「インターネット広告」は次のグラフに示す通り、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっているが、浮き沈みが大きい機会が不定期で到来する。タイミングによっては再び「新聞」との間の順位入れ替えが起きる可能性はゼロではない。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年7月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年7月)

次のグラフは今件記事で対象としている5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。従来型広告が大きく動き、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年7月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年7月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する場合が多い。これは金額そのものが少しずつ減っていることを意味する。少なくとも広告費の上では両メディアの低迷が、短期的なものでは無く、長期的なものであることが認識できる(そしていわゆる「メディア力」の低下は、広告費の減退として表れる)。奇しくも両媒体は紙媒体でという共通性を有しているが、デジタル系メディアの伸長を見るに、その影響を受けての動きであることは否定できまい。一部はウェブマガジンや大手新聞社のように、コンテンツそのものが紙からデジタルに移行し、それに合わせて広告もシフトした事例もあるだろう。

濃い藍色で記された「ラジオ」は、「新聞」や「雑誌」よりも低明度が大きい。具体的には「0%」より下の領域にばかり位置している。これは前年同月比でマイナスが続いている、言い換えれば売り上げが減少し続けていることになる。

一方気になる動きとしては、2012年後期以降の流れがある。それ以前と比較すると、「インターネット広告」の激動を中心に、激しい上下感がなくなり、ゆるやかな動きに収まっている。各メディアのパワーバランスの大調整が終わり、細かな調整期に入ったと見るべきだろう。その中でも「インターネット広告」がじわじわと増加率を増し、「ラジオ」が復調の動きを示し、「テレビ」がやや波はあるもののプラストレンドに座する形となりつつある動きは、今後も期待できる。他方「雑誌」「新聞」は今後もマイナス圏での苦行が続きそうだ。


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【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(下)…ネット以外動向概況編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【前年比プラスの1.4%・総額5兆9762億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2014年)(最新)】

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