現状DIは水準値の50を再び切る、先行きは燃料費・電気代高騰懸念で下落継続…2014年8月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2014/09/09 13:00

内閣府は2014年9月8日付で、2014年8月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月から転じて4か月ぶりに下落し、水準値50.0を下回り47.4となった。一方先行き判断DIは先月から続いて3か月連続で下落したものの50.4となり、水準値の50はかろうじて上回る状態を維持している。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、前月よりも軟調な動きを示すこととなった。基調判断は先月と変わらず同じ文言「景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある」に続く形で「ただし、天候要因の影響がみられるほか、先行きについては、燃料価格等の上昇への懸念等がみられる」が追加され、景気回復の先行きに懸念が多分に生じている状況をうかがわせるものとなっている(【平成26年8月調査(平成26年9月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状指数は再び下落、先行き指数は燃料高騰が痛手


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2014年8月分の調査結果はまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス3.9ポイントの47.4。
 →4か月ぶりの下落。「やや良くなっている」が大幅に減り、「変わらない」「やや悪くなっている」が大きく増加している。
 →家計、企業共に4月の消費税率改定に伴う駆け込み需要とその反動の影響が7月同様に、幅広い分野で薄らいだものの、天候要因影響から低下。雇用は求人の増加に一服感があり、低下。

・先行き判断DIは先月比で1.1ポイントマイナスの50.4。
 →消費税率改定前の駆け込み需要の反動減の影響が薄らいでいることへの期待感は継続しているが、燃料価格の上昇が懸念視され、全部門にマイナス影響を及ぼし、低下。

4月の消費税率引き上げの際に発生した、3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの低下は5月頃から鎮静化の動きを示していたが、それも7月までにはほぼ鎮静化している。そのおかげで先月7月は現状DIでは水準値の50を回復したものの、今回8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、再び50を割り込む形となった。今春に発せられた冷夏予想が夏の到来までに秋以降へとずれこみ、期待感が大きく膨らんでいただけに、台風や前線の影響で荒れた天候が相次いだことへの失望、消費マインドの反動的低下もまた、大きなものとなったようだ。

一方で先行きDIは先月同様に燃料や電気料金の高騰に対する懸念は強く、これが多部門で足を引っ張る形となった。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状判断DIは雇用のみ下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2014年8月)
↑ 景気の現状判断DI(-2014年8月)

今回月は消費税率改定後5か月目の月。概況説明にもある通り、小売店側から見た反動に伴う影響はほぼ無くなったと見て良いが、天候と燃料費などに絡んだ影響が非常に大きく、全項目で前月比マイナス値を示す結果となった。また今件調査の回答者は一般消費者自身サイドの考えではないため言及もほとんどないが(数件「次の消費税増税に備え」「10%への引き上げが来年10月に云々」とする懸念的記述が見受けられる)【消費税率は8%に固定し、一度白紙に戻して再審議すべきという提案】でも指摘の通り、消費者レベルでの消費抑制思考が働き始めている可能性は否定できない。

今回月の減退で水準値(50)以下の項目は雇用関連以外全部となり、大きくマインドが下がった感は否めない。やはり前月比ではマイナスだが、雇用関連のみ50超を維持しているのが幸いといえば幸いか。

景気の先行き判断DIは幅広い項目でマイナス項目が示されているが、プラス項目もあり、下げ幅も限定的。

↑ 景気の先行き判断DI(-2014年8月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2014年8月)

最大の下げ幅を示したのは雇用関連でマイナス2.5ポイント、次いで製造業のマイナス2.1ポイント。下げ幅は前月よりも狭く、またプラス項目も増えている。とはいえ、全体ではマイナス基調なのに変わりはない。住宅関連は順調に戻しているものの、雇用関連や小売関連、そして非製造業がじわりと下げ基調にあるのが懸念材料ではある。

天候不順と燃料価格の上昇がプレッシャー


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・3か月前に比べると、消費税増税の影響が大きかった時計の売上が回復傾向にある。また、影響が比較的少なかったファッションアイテムは、セールでの販売は前年並みであるが、秋物は例年どおり順調な立ち上がりをみせている。特に、メンズファッションが好調である。全体的には販売量はほぼ前年並みに戻っており、天候不順の特殊事情を除くとプラスになる(百貨店)。
・中国語圏の観光客が増えたことから、売上は前年比110%となった。特に、晴天が続き、北海道らしい初秋のなか、豪華客船が9隻入港したこと、今年で5回目を迎えた地元のイベントが行われたことの効果が大きい(一般小売店[土産])。
・消費税増税の影響については、物販店、飲食店共にそんなに感じられなくなっているようであるが、苦境はなかなか解消されていない(商店街)。
・8月は稼働日数が少なく、車両販売台数が多く見込めない。前年並みの販売台数は確保できるが、単月利益は赤字になるかもしれない。景気回復は実感できない(乗用車販売店)。
・雨が続き夏とは呼べないような天気で、通常、夏の売上が一番高いが、前年比1割減で販売量が推移している(コンビニ)。
・台風の影響を受け、直近でのキャンセルが発生したこともあり、客室稼働率は、前年同月実績を下回る見込みである(観光型ホテル)。

■先行き
・10月から外国人旅行者への免税品目が拡大されるため、前年比で2けた以上の免税売上が見込まれる。そこに焦点を合わせ、外国語の話せる販売員の増員や免税カウンターの拡充などを実施している。加えて、既存客も夏以降には消費税増税の影響が更に薄まることが見込まれる(百貨店)。
・9月からは増販期に入り、商談件数の増加を期待している。新型車種の発表もあり、市場の盛り上がりを期待している。しかし、ハイブリッド車でも従来のような活発な商談は見られず、客の財布のひもは非常に固い(乗用車販売店)。
・電気料金の再値上げが発表されたこともあり、今後は客の生活防衛意識が高まり、消費に対する目がシビアになる(百貨店)。
・季節の変わり目でもあり、季節商材は一時的に上向きになることもあるが、全体の底上げまでには至らないため、しばらく同じような状況が続く(スーパー)。
・消費税増税から5か月が経過し、客の購買意欲は回復しつつある。8月のような天候不順等の特殊要因がなければ今月以上に悪くなることはない(百貨店)。

冷夏予想のずれこみや鎮静化に伴い、冷夏に対する影響懸念はほぼ無くなったものの、8月においては大雨や台風による直接的影響を訴える声が多数見受けられた。

一方で上記抽出内容にも確認できる通り、企業動向関連を中心に燃料費の高騰や電気代の引上げに伴う悲鳴が随所で確認できる。燃料費の価格上昇は輸送費のアップにつながり、それは流通される商品すべてに価格上昇のリスクをもたらすことになる。キーワード抽出を行うと「燃料」で12か所、「電気」で10か所確認でき、いずれも前月から増加している。社会全体を動かすための血液に相当する、電気や燃料の価格上昇が、景気全体の足を少しずつ、しかし確実に引っ張っているのが明確化している。

燃料価格の高騰は原油価格によるもので、海外要因が大きい。一方電気料金は一部に海外からの輸入資源価格の上昇があるが、多分に震災以降の発電様式のアンバランスな状態を起因としており、大部分の原因は国内問題によるものといえる。早期の改善が自らの手で行えうるのは後者であり、早急な対応が求められる。

家電量販店やコンビニの現状下落著しく…詳細精査


2014年4月分の公開値を基に、消費税率動向について細かい部門別に別途記事として精査をした【景気ウォッチャーの指標動向から消費税率改定後の景気行き先を推し量ってみる】の手法を用い、簡略的にではあるがしばらく継続的に現状・先行きDIの詳細動向を確認している。今回もその例にならい、8月分とその前月の7月分との差異、つまり一か月分の変化を詳しく見ていくことにする。まずは現状DIについて。

↑ 2014年7月から8月における現状DIの変動値
↑ 2014年7月から8月における現状DIの変動値

上記でも触れているが、冷夏予想がずれ込んだことで平年並みの暑さに伴う消費が期待されていただけに、相次ぐ大雨や台風の来襲による天候不順による影響は大きく、特に夏物商品のセールス時であった家電量販店と、直接の来店やレジャーなどの出先に赴く際の立ち寄り来店が期待できるコンビニにおける下落ぶりが著しい。後者はレジャー施設関連や旅行・交通関連の値も下げ方が大きいことから、裏付けが出来る。

↑ 2014年7月から8月における先行きDIの変動値
↑ 2014年7月から8月における先行きDIの変動値

↑ 2014年8月における先行きDI
↑ 2014年8月における先行きDI

現状DIと比べると先行きDIはプラス部門が多く、マイナス部門もその下げ幅は小さめ。直近の悪天候による下げでは無く、中長期的な懸念としての燃料費・電気代の上昇に伴う影響を受けての動きであることが予想される。先月同様、小売店における来場客の燃料費高騰に伴う来場機運の低下、商品価格の原材料費や配送費上昇に伴う購入性向の低下が大きな要因である。配送コストの増加は運送業だけでなく、物流に関連するすべての部門にマイナスの影響を与えるため、幅広い部門の足を引っ張ったと考えれば道理は通る。



複数の報道で伝えられている通り、今年の8月はエルニーニョ現象による冷夏こそ避けられたものの、台風や前線の影響である意味冷夏以上の悪天候を迎えることとなり、特に西日本では日照時間の短さが今後の農作物の育成動向に大きな影を落としかねないとして、不安視されるものとなっている。【気象庁の発表「8月の天候」】でも、降水量は西日本でかなり多く、17観測地点では史上最大を記録し、日照時間では東西日本で少なく、29観測地点で史上最短を記録したと報告されている。これらが現状DIに与えた影響は、決して小さくないものと見て間違いない。

一方、現状DIだけでなく先行きDIにも大きな影響を与えているのが、燃料費や電気代といった、インフラに直結するコストの増加。幅広い方向で(意識的に)マイナスを及ぼしている。消費税率の再引き上げへの不安と合わせて相乗効果的なものとなり、消費マインドの減退に拍車がかかる感は否めない。

燃料費の高騰は海外要因が大きいため、対策は打ちにくい(国内油田の開発というわけにもいくまい)。一方、電気料金周りは震災後の悪癖を引き継いだ現況が大きく影響しており、理性と知性をもってすれば必ず解決しえる問題に違いない。

とはいえ、これらの問題はいずれも1か月で解決するような話でないのも事実。大きな情勢変化が無い限り、来月もまた、天候要素が大きい現状DIはともかく、先行きDIは、似たような動きを示すのだろう。


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