吉野屋が5か月ぶりのプラスに回復、松屋はプレミアム牛めしで客単価大幅アップ…牛丼御三家売上:2014年08月分

2014/09/06 10:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2014年9月5日、吉野家における2014年8月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。それによると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス0.3%となった。これは5か月ぶりのプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業としては、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年8月における売上前年同月比はプラス3.3%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス5.6%との値が発表されており、今回月は3社とも堅調な売り上げを示すこととなった(いずれも前年同月比・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通りとなる。

↑ 牛丼御三家2014年8月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年8月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まずは吉野家の状況の確認を行う。昨年同月(2013年8月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス5.6%。今月はそこから転じて5.1%のプラスを示している。これは同社の主力商品である牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落(2013年8月)の反動によるもの。牛丼は主力メニューで多くの人が注文するため、その影響はしばらく継続しており、当然その翌年は反動が続くことになる(実際吉野家では客単価の前年同月比マイナスは、2013年4月以降1年間続く)。この反動によるぶれを極力除外するため、後述の通り前々年同月比を試算すると、実質的客単価はわずかなマイナスに留まっている。吉野家ではこの4月の消費税率改定に合わせて牛丼価格を引き上げているが、中期的に見れば客単価への影響はほとんど無いようだ。

牛バラ野菜焼定食同期間中の吉野家では新商品となる、先の冬の鍋メニューの応用版的新メニューとして満を持して登場した、【ついに出た・吉野家新作鍋メニュー「牛バラ野菜焼定食」期間限定発売】で解説した「牛バラ野菜焼定食」が7月30日から発売されている。単年ベースで見ると牛丼御三家では客単価のプラス値は一番小規模だが、ともかくプラスには違いなく、営業成績の上ではそれなりに貢献はしている模様。

客数は大きく減じてマイナス4.2%。前月のマイナス10.1%よりはやや回復基調にあるが、それでもまだマイナスには違いない。この客足の悪さにより、売上高は0.3%のプラスに留まってしまった。2013年4月の牛丼価格引き下げによる客足の底上げで生じた売り上げアップも2013年8月までにはほぼ鎮静化しており、前年同月の好調さの反動という言い訳もできない。昨月のマイナスよりはプラスに転じただけ好材料ではあるが、勢いの上では物足りなさを覚え、不安すらよぎる感は否めない。

↑ 牛丼御三家2014年8月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年8月営業成績(既存店)(前々年同月比)

プレミアム牛めし続いて松屋の動向を確認する。今回対象月では【松屋で夏のスタミナを補充・「ガリチキ定食」「うまトマハンバーグ定食」8月7日から発売】で紹介したように、夏の定番メニューとなる「うまトマハンバーグ定食」の展開にはじまり、ガリチキ定食やプレミアム牛皿月見とろろ定食、豚キムチ定食など、複数の新商品・定番商品の展開を積極的に行っており、客単価の引上げと商品ラインアップにおける魅力充実を推し量っている。さらに7月22日からは【松屋の牛めし、一部店舗で「プレミアム牛めし」に切り替え・価格は380円に値上げへ】でも伝えた、主力メニューの牛めしの「プレミアム牛めし」への切り替えも逐次実施している。これらの施策、特に「プレミアム牛めし」による客単価引上げ効果は大きくプラス6.3%、前々年同月比でもプラス7.9%と大幅な底上げを成している。ただし客の入りはそれなりに軟調化しており、売上はプラス3.3%に押しとどめられることとなった。

他方すき家では、対象期間の下旬での施行で大きな影響が出るのは来月以降となるが、【すき家の牛丼、税抜き価格で20円値上げ・8月27日から】で伝えた通りメインメニューの牛丼価格を引き上げている。またてり焼きハンバーグ定食や鉄火丼の発売も開始しており、こちらも方針的には松屋に近い動きを見せている。

さらに先日から伝えられている通り、業務体質への改善施策の一つである店舗リニューアルは着々と進められており、一部で報じられている「9月末までにワンオペ状態が改善できない店舗は業務時間の短縮を行う」など運営体制のリストラクチャリングの動き、気配もちらほらと見受けられる。店舗数も2013年9月以来ほぼ1年ぶりに2014年7月において前月比でマイナスを計上したが、8月もその状態が続いている。これまで店舗数の拡大一直線で進んできたすき家において、変化を覚える動きには違いない。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年8月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年8月)

秋冬に向けた充電期間


牛丼価格の引下げと鍋定食で、吉野家がポジティブな意味で一年間業界を振り回した2013年と比べると、今年2014年はプラス面での動きがあまり見られないのが特徴。消費税引上げに伴う値上げ、すき家の業務体質問題の露呈化とその改善方針の提示・実施など、どたばた感は否めない。客数動向を見ると松屋とすき家は昨年から少しずつ復調傾向にあるが、ここ数か月は再び失速感の気配があり、慎重さを持って今後を見守る必要が出てきた。吉野家はといえば、昨年の堅調さの反動によりマイナス圏で低迷しているものの、ここ数か月でようやく持ち直しを見せつつある……が、今なおマイナスには違いなく、こちらもまだ昨年のような余裕を持った見方は出来ない。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年8月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年8月)

前月言及した通り吉野家の「牛バラ野菜焼定食」は冬の鍋定食と比べればインパクトは弱く、熱狂的な客引き商材とまでには行かなかったようだ。今回月は実質的な投入初月なだけに、少々キツい評価かもしれないが、冬の鍋シーズン到来による切り替えまであまり間が無いことを考えると、即効性が期待されていただけに、少々肩すかしを食らった感はある。

もっとも品質そのものは評価されており、メニューのバリエーションの増強という観点では通年販売も可能であることを考えれば、むしろ鍋定食よりも汎用性は高いことから、ロングセラー的なポジションへの期待が出来る。一方で「鍋定食」は客誘因商材として極めて有効であることが実証されている以上、今年は昨年のように12月初旬からでは無く、ある程度前倒しした上での展開も十分考えられる。秋以降の動向に注目したい。

また、小規模ではあるが2階部分に居酒屋的なスペースを設けて飲酒ができる業態店舗「吉呑み」を試験運用しており、こちらも注目に値する。「吉呑み」の売上そのものが良いだけでなく、連動する形でその店舗の「吉野家」部分の売上も伸びているとの話もあり、今後さらにこの業態が浸透する可能性はある。

秋と言えば上記でも触れているが、業務体質の改善を進めているすき家もまた、9月末を一つの区切りとしているのも注目に値する。約束されている通りの変革が出来るのか否か、出来たとしてそれが業績改善にプラスとなるのか、見極めにくい点は多いものの、秋以降に小さからぬ動きが生じることは間違いない。

大きな動きは特に無く、ポジション的にはすき家と吉野家の間に挟まり、両社の良い所取りをしながらも、独自のメニュー、特に定食を続々と展開する松屋の動向も合わせ、これから年末にかけて牛丼チェーン店業界は、消費税率改定の時以上に大きな動きを見せることになりそうだ。


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