新聞の販売部数などの推移をグラフ化してみる(2016年前半期まで)(最新)

2016/08/20 11:16

主要メディアの一つである新聞は他国同様日本国内においても、大きな変動にさらされている。デジタル媒体の躍進に伴う紙媒体としての新聞の相対的重要性の低下に加え、メディア(に携わる人たち、伝えられる情報)そのものの信用性の低下と報道機関としての姿勢などが改めて問われている。日本は紙媒体の新聞の発行部数が多いことで知られているが、やはり世の中の流れに逆らうことはできず、部数を漸減しているのが現状である。今回は【新聞の発行部数などをグラフ化してみる】などで半年ごとに定点観測記事としてお伝えしている、国内主要5紙、具体的には読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞(日経新聞)・産経新聞における、朝刊の販売部数推移の精査を行うことにする。

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順位変動は起きそうにない? 主要5紙販売部数推移


最初に示すのはデータが取得できる2005年前期以降の5紙における発行部数。産経新聞は一部データが欠けているが、可能な限り補完している。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(万部)
↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(万部)

定点観測記事でも伝えている通り、読売新聞はかつて販売部数1000万部超を社是的なコピーとして掲げていたが、2011年前半期でこれを割り込み、以後復活は果たしていない。とはいえ、元々部数が多かったこともあるが、大きな変化は生じていなかった。ところがこの2年ほどの間に、小さからぬ下落が生じている。踊り場的な期間もあったが、下落傾向は継続中。他方、朝日新聞は2010年前後から、毎日新聞は2007年後半から漸次減少が起きている。特に朝日新聞はここ2年の下げ幅の大きさが掌握できる。

日経新聞は現状維持、さらには増加する機会もあったものの、2011年以降はいくぶんの下落。ただし2014年に入ってからはほぼ横ばいの動きに移行している。電子版へのシフトが比較的堅調であり、コンテンツの購読者との切り口で見れば、実質的にはむしろプラス化しているとも見なせる。

産経新聞はやや気になる動きが目に留まる。2008年後期から2009年前期にかけて、ダイナミックな下落を示している。これについては当然産経新聞側から正式な発表はないものの、いわゆる「押し紙問題」(【新聞のいわゆる「押し紙」問題を図にしてみる】)に関して、他社に先駆けて解消したのが原因であると複数の報道が伝えている。これが事実とすれば、その後の産経新聞における部数の増減傾向が、他社と異なる動きを示しているのもある程度納得が行く。

また毎日新聞も今半期は大きな凋落、前半期も小さからぬ下げ幅を示し、グラフにもその動きが表れている。ただし産経新聞の時のような「押し紙」問題の解消の話は無く、単純な読者離れの動きの可能性が高い。どのみち、「押し紙」そのものを新聞社側は否定しており、その公式な確認はできないことから(公式には行っていないことを「取りやめた」と発表できるはずは無い)、確かめようはないのだが。

前半年期比で動きを確認する


元々各紙とも販売部数が大きいため、その変移だけでは動向が把握しにくいのも否めない。そこでいくつか切り口を変え、その流れを確認していくことにする。まずは前半年期比。単半年期のグラフは半年ごとの定点観測記事で掲載しているが、その値をつなぎ合わせたものである……が、上記で触れている通り産経新聞がイレギュラー的な値を示しており、やや見難いものとなったため、産経新聞をのぞいた版も併記する。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(前半年期比)
↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(前半年期比)

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(前半年期比)(除く産経)
↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(前半年期比)(除く産経)

要は前回(半年前)販売数と比べてどれだけの割合で増えたか、減ったかを示すものだが、基準となるゼロ%より下の領域で多くの線が行き来していることから分かる通り、新聞の販売部数は総じて減少傾向にある。また個別の新聞における傾向を見ると、

・読売新聞…健闘はしていたが1000万部割れの2011年前半期以降失速へ。特に2年前に生じた下落ぶりが著しい。

・朝日新聞…2010年から下落加速化。2014年後期から2015年前期は前例のない下げ幅で、ようやく直近では加速感が収まった。ただしマイナス1%台の高い下げ率は維持。

・毎日新聞…2008年以降は下落。2010年前半期の下げが一つのピーク。最近は下げ幅縮小だったが。前半期で再び加速化、直近半期で前回ピークを上回る下げ幅を見せる。

・日経新聞…2011年前半期に一時持ち直すも再びマイナス圏に。2013年が下げ幅ピークで最近は持ち直しを見せる。

・産経新聞…押し紙制度廃止の影響(?)が極めて大きい。その後は復調・横ばい。ここ1、2年は部数上乗せの機会も

など、各紙の状況の違いが見えてくる。2年前における読売新聞の下落ぶりや、2013年後半期の日経新聞の下げ方、そして直近半期における毎日新聞の急降下ぶりなど、先の産経新聞の大きな下落同様に何らかの事案が影響したと考えられる大きな下落の動きも見られるが、現時点ではその原因は特定できない。あるいは大きな動きを示した各紙は「押し紙」に関し、何らかの施策を講じた可能性もある。ただし産経新聞の2009年における下げ方が「押し紙」制度の廃止によるものならば、他社も同レベルの下げ幅(マイナス10%超)を示してもおかしくはなく、それに届いていない実態を合わせ見るに、単なる購読者離れと見た方が道理は通る。

他方、朝日新聞における大きな下げは、2014年後半期に相次ぎ露呈した不祥事と、それへの対応・結果によるところが大きい。谷は超えたものの下げ幅が大きなままで推移しているのは、新聞の読者及び読者予備軍からの認識として、根本的な問題は解決していない、購読価値の回復はなされていないとする人が多分に及んでいるのだろう。

続いて比率では無く単純な販売部数の変移を確認する。こちらは元々部数が少ない新聞ほど増減する数も少なく、多い新聞ほど何かの影響を受けた時に増減する部数も多くなるので、一概に「変化部数が多い」=「大きな影響を受けた」とは言い切れないことに注意。元々の部数が大きければ、統計上のぶれによって生じる増減数も大きなものとなる。とはいえ、大部数を抱える新聞でも、10万単位での部数が半年で増減すれば、その絶対数に対する衝撃は小さくあるまい。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(増減部数、前半年期比、万部)
↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(増減部数、前半年期比、万部)

産経新聞の押し紙問題解消に伴うものと思われる部数減少が非常に大きかったこと(部数そのものは後の読売や朝日と同レベルだが、産経の元々の総販売部数の少なさを考えれば大きな影響であることは、上記の比率推移からも分かる)、その直後に起きている毎日新聞の部数減がかなりの規模に登ること、朝日新聞も10万部単位で部数を減らす半年期が複数回生じていること、そして2014年後期以降の朝日新聞と2014年、そして2015年前半期までに渡る読売新聞の減少部数がいかに大きいものであるかが把握できる。

そして減少した部数そのもので見れば、今半期は読売新聞も朝日新聞も毎日新聞も、実のところはさほど大きな違いは無い。元々の販売総部数において毎日新聞が読売新聞・朝日新聞と比べて少ないからこそ、下げ率が大きくなった次第ではある。

また全体的な流れとしては、産経新聞のイレギュラーな動きをのぞけば、2010年あたりから新聞の販売部数の減退傾向が起き、以降はうねりを見せながら段々とその勢いを増している雰囲気がつかみ取れる。プラスとなることはあっても、5万部を超えた増加の動きは(少なくとも今件の観測期間内では)皆無である。さらに直近に近づくにつれ、上位大手3社の減少部数そのものが大きくなっている感はある。



元々日本の主要新聞は部数が多いため、半年単位の動向精査でも部数の変動そのものにはさほど大きな違いは見られない。とはいえ経年で確認すると、少しずつ、そして確実に変化を示していることが分かる。

販売部数が減れば、世帯数が漸増しているのと合わせ、世帯普及率が減るのも当然。やや余談ではあるが、世帯普及率の推移も示しておく。なお2011年が暫定値なのは、震災の関連で世帯数が特定できないためである。

↑ 主要全国紙の朝刊世帯普及率変移
↑ 主要全国紙の朝刊世帯普及率変移

じわりじわりと、そして確実に世帯普及率が減少していく読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、やや横ばいで推移する日経新聞と産経新聞、各社の動向がよく把握できる。

また、東日本大震災が与えた影響、震災以降変化した社会動向との関連性を精査する時に必要となる可能性を考慮し、2011年後期以降に限った形で、前半年期比の部数変移をまとめておく。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(増減部数、前年半期比、万部)(震災以降)
↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(増減部数、前年半期比、万部)(震災以降)

とりわけ震災以降は新聞の存在意義そのものが問われる事案が相次いでいるが、それがどのような影響を及ぼしているのか、あるいは影響していないのか、それが透けて見えてくる、かもしれない。あるいはほぼ同時期に進行している、デジタル系の技術革新と浸透、特にスマートフォンの普及の影響の方が大きいのかもしれないが。


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