岩手・福島・奈良でプラス、関東圏で大幅減…全国紙の地域別世帯シェア動向(2013年後半期版)

2014/03/07 08:00

当サイトでは定期的に日本の新聞業界の動向を、公開値を基に精査しているが、そのうちの一つ、読売新聞社の広告ガイドページ経由・日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」の値について、先日最新値となる2013年後期分が発表された(【販売部数の公開ページ】)。そこでその公開値を基に、いつもの通り全国紙5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)の都道府県別シェアの動向を、複数の切り口で確認していくことにした。

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3県は前半期比プラスを示す


まずは「全国紙5紙の朝刊世帯普及率」(夕刊は含まれていない)を算出し、単純に合計したものを都道府県別に列挙する。なお今回のデータは上記にある通り、日本ABC協会「新聞発行社レポート 普及率」2013年7月-12月平均データを一次ソースとしている(ことになる)。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2013年後半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2013年後半期)

グラフ中の但し書きの通り、「1世帯が複数の全国紙を購読している事例も想定されるため、この値がそのまま「『いずれかの全国紙を購読している世帯普及率』では無い」ことに留意する必要がある。例えば奈良県なら96.5%との数字が出ているが、これは「奈良県ではほぼすべての世帯が、5大全国紙のいずれかを購読している」訳ではない。仮に新聞購読全世帯が5紙すべてを購読していた場合、実質世帯普及率はその1/5、20%足らずとなる。

一方、金銭的、時間的に余裕がある、大手新聞紙を複数購読し比べて内容の違いを検証する、特定の連載に目を通すために数紙を購入するという事例はあるにせよ、多くの世帯で複数の主要新聞紙を購読しているとは考えにくい。また、高い値を示している地域(関東・近畿圏や山口県)では、以前の解説記事【「全国紙」の都道府県別トップシェア新聞を地図化してみる(2010年下半期版)】で、読売新聞や毎日新聞のシェア比率が高い結果が出ており、主要紙の単純合計値でもそれなりに高い精度で状況が把握できている様子が確認できる。

また、このグラフで値が低い都道府県では多分に地方紙が多く購読されており、新聞そのものが読まれていないわけではないことが多い。例えば青森県では最大手の販売部数を誇る新聞は東奥日報、次いでデイリー東北、その次にようやく大手5紙のうち読売新聞がついている。

次に、直前期2013年前半期からの半期における差異を計算したのが次のグラフ。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2013年前半期から2013年後半期への差異)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2013年前半期から2013年後半期への差異)

前半期では全都道府県でマイナスを記録したが、今半期では岩手県、福島県、そして奈良県がプラスを示すことになった。岩手県はギリギリという感はあるが、福島県・奈良県は0.1%ポイント以上の上昇幅を示しており、誤差の範囲を超えた確実な上昇といえる。

一方で下げた地域の下げ幅を見ると、関東地域の下げ率が目立つ。前半期では関西地域でもまとまった下げ傾向が確認できたのだが、今半期では一部府県に限られ、地域レベルでの減少とまでは言い切れない。

5大紙の地域別動向を探る


続いて全国を「北海道・東北」「関東」「中部」「近畿」「中国」「四国」「九州・沖縄」のエリアに分割し、それぞれの地域別の朝刊世帯普及率を算出する。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2013年後半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2013年後半期)

人口密集地帯である関東と近畿において、大手2紙の読売新聞・朝日新聞が高い値を示しており、群を抜いているのが分かる。まだ近畿は毎日新聞がそれに続く値ではあるが、関東では他の3紙は大きく突き放されている。関東では読売と朝日の天下状態とも表現できよう。なにしろ単純計算だが2紙合計で5割近い世帯普及率を示しているのだから。

一方、「毎日新聞は近畿や中国、九州・沖縄などの西日本の方が高い」「中部地域では朝日新聞が読売新聞すら抜いてトップ、四国でも読売とほぼ変わらない値にまで肉薄している」「産経新聞は関東と近畿に特化し、特に近畿で強い」など、地域特性や各新聞社の特徴などが確認できる。特に産経新聞は関東と近畿のみ強く、他地域では1%を切っており、同社の販売促進戦略が人口密集地域へのリソース集中投下にあるものとも推測できる。

この朝刊世帯普及率について、前半期からの変移を計算した結果が次のグラフ。地域別の動向を眺め見ることができる。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2013年前半期から2013年後半期における変移)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2013年前半期から2013年後半期における変移)

まず最初に目に留まるのが、日経新聞の減少ぶり。他紙の減少幅を大きく超えている。日経新聞はどの地域でも大きな減少幅を示しているが、特に人口密集地帯の関東・近畿での下げ幅が大きく、これが部数の大幅減につながっていることが分かる(概算ではあるが東京だけで3万部ほどの減少)。

朝日新聞は特に関東での下げ幅が大きく、関東だけなら日経の下げにも肩を並べるほど。また東日本での下げ幅が大きく、西日本ではそれほどでもない。一方で毎日新聞は逆に、西日本での下げ幅の方が大きい。

部数では5紙中唯一前半期比でプラスを計上した産経新聞では、全般的に下げ幅が小さく、人口密集地帯の関東と近畿では比較的大きなプラス幅を示している。これが部数の底上げに貢献した可能性が高い。

最後に各新聞社別の普及率グラフを再構築する。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(新聞別)(2013年後半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(新聞別)(2013年後半期)

読売新聞の部数面での強さは、関東・近畿といった人口密集地帯、そして商業圏での強さにあることが分かる。朝日新聞も数字そのものはやや落ちるものの傾向としては読売に似ている。販売戦略も恐らくは同様なのだろう。産経は形状こそ読売・朝日と似通っているものの、絶対値がかなり低く、部数の絶対数の足りなさは経営リソース不足によるところが大きいものと考えられる。



先行する部数動向記事でも言及しているが、日本では「人口の減少」「一人世帯の増加」「世帯数の増加」が同時連動的に起きているため、そして一人世帯では新聞購読率が低くなるため、仮に部数が維持されても世帯普及率は減少してしまう。今記事の各値は「どれだけの割合の世帯に新聞が届いているか」という、新聞の動向を確認する指標の1つに過ぎない。

今半期においては、各紙の地域別販売戦略に大きな変化はないものの、日経、朝日、毎日の3紙でそれぞれ特徴的な地域別減少傾向が見受けられる。特に日経新聞の減り方は印象的で、関東・近畿は商業地帯でもあることを考えると、単純な部数減少以上の深刻さを覚えてしまう。

一方、減少した分はどのような理由で減ったのか、その詳細は今件公開データからは分からない。新聞購読を止めた人に、なぜ新聞をとらなくなったのかを尋ねた調査は見かけたことがないだけに、推測でしか言及しえないのが残念。今後関連性を示すデータが見つかれば、その際に改めて検証したい。


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