FIFAワールドカップで「その他」が群を抜く上昇ぶり(電通・博報堂売上:2014年7月分)

2014/08/12 15:00

博報堂DYホールディングスは2014年8月11日付で、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2014年7月分となる売上高速報を公開した。一方電通ではそれに先する同年8月7日付で、同じく同社7月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2014年7月次の売上データが出揃うこととなった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を当サイト側で独自に算出し、その値を基に各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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4マス軟調、ネットは堅調、そして「その他」がグラフ造形を乱すほどの伸び


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録済み。必要な場合はそちらで確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年7月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年7月分種目別売上高前年同月比

2011年3月に発生した震災は広告業界にも小さからぬ影響を与えたが、現状ではその影響は(一部を除いて)収まり、今は中長期的な社会の変化に従う形での変容を見せつつある。端的にまとめると「デジタル系の伸長」「旧来4マスの軟調化、テレビは高齢化の恩恵を受けて例外的に堅調」「4マス以外の広告は順調」という具合である。最後の「4マス以外の広告」については、震災に伴う電力需給問題が一部関係していることに加え、インターネット技術の進歩に伴う融合的な広告展開が後押ししているのも一因。

今回7月分では、従来型4マスでは電通の新聞と博報堂のテレビのみがプラスで、それ以外はマイナス。一方でインターネットは両社とも10%以上の伸びと、昨今の状況を反映するかのような、典型的な動きを示している。雑誌の下げ方がやや目に留まるが、両社とも前年同月は大きくプラスの値を示しており、その反動によるところも小さくない。

インターネットの伸びだが、前年同月でも両社は10%以上の上昇(電通はプラス27.3%、博報堂はプラス16.4%)だったことから、「前年同月がマイナスだったことの反動」との説明は出来ず、純粋に成長が続いていると見ることが出来る。後述する通り絶対金額はテレビにまだ及ばないが、成長度合いの著しさがうかがえる。

そして今記事タイトルでも言及している「その他」項目、特に電通の大きさが目立っている。電通はプラス252.8%。前年同月が85億円だったものが300億円にまで伸長して、ここまでダイナミックな伸び率が算出されることになった。これは「その他」区分の詳細にある「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他」のうち「スポーツ」などが該当する、詳しくは【電通の7月分広告費がグンと伸びたのはFIFAワールドカップが原因っぽい】で説明した、先日開催のFIFAワールドカップサッカーによるものと考えられる(他に納得できる事象が見つからない)。性質的に単発的なもので、来月以降もこの状況が続くとは考えにくいが、それにしてもこの類のイベントでいかに大きな金額が動くかが、あらためて理解できるというものだ。

他方、そのワールドカップサッカーの影響を受けてか、従来型広告のその他部門は押し並べて軟調。特にマーケティング・プロモーションの下げ幅が大きい。もっともグラフの上では「その他」が伸びすぎて、ほんのわずかな変移のように見えてしまうのが皮肉なところ。

↑ 参考:電通2014年7月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年7月度単体売上(前々年同月比)

電通の2年前比を算出しても、「その他」の異様な盛り上がりぶりが改めて分かる。それをのぞけばインターネット(インタラクティブメディア)の堅調さなどがうかがい知れる。

電通の各年7月における総額の過去からの推移を確認


次のグラフは電通の今世紀における、今回月も含めた各年7月の広告売上総額推移を抽出し、折れ線グラフにしたもの。同じ月の経年売り上げ推移であり、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)にとらわれることなく、年単位での売り上げ推移、そして広告市場の情勢を推し量れるグラフとなる……のだが。

↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2014年)

金融危機ぼっ発までの経済の復調、金融危機後の軟調さ、リーマンショックでのどん底ぶり、そこからの回復基調とその出鼻をくじくかのような震災による再落下、そして再びの復調。今世紀以降の経済動向をそのまま投影したような動きを示している。

もっとも今回7月分は上記で何度となく触れている通り、「その他」部門がイレギュラー要素で大きく上振れしたため、これだけを見ると「すでに広告市場、経済全体は金融危機の前まで、いやそれ以上に回復したのか」とも思えてしまうが、実のところはそうではないのは言うまでもない。2011年から2013年の上昇ぶりをそのまま延長した先にある程度の値(点線で記した部分)、つまり金融危機ぼっ発前の状態に向けて回復が続いている、と見た方が実体にマッチしている。

今件では日本の大手広告代理店として電通と博報堂2社の動向を精査しているが、両社間でも売上・取扱広告の規模は小さからぬ違いがある。それぞれの社内の動向を併記しているため、やもすると両社の前年同月比がそのまま金額そのものの差異のように、例えば今回月ではインターネットの伸び率が博報堂は電通の4倍近いので、実金額の上昇額も4倍も違うと勘違いしてしまう人もいるかもしれないが、実際はそうではない。

次に示すのは金額面から見た、いくつかの項目の具体例。上記で触れている通り、インターネット分野の成長は今後も期待できそうな流れではあるが、金額の上では今なおテレビの数分の一に留まっている。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年7月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年7月における部門別売上高(億円、一部部門)

同一社内の項目間だけでなく、企業間でも当然差異は生じている。電通と博報堂間では売上総額で約2倍、インターネット部門でも2倍前後の差が生じている。両社間での営業部門をはじめとする各部門の得手不得手もあり、部門によってはこの差がさらに大きいものもある。前年同月比が同じでも、変化をしている金額は異なることを認識しておく必要はある。



今回月はグラフの形状の異様さからも分かる通り、サッカーの「その他」にすべてを持って行かれた感はあるが、4マスの軟調、ネットの堅調などはいつも通り。従来型の軟調さはやや気になるが、これも多分に「その他」に勢いを奪われたところがあるのだろう。

今回月分に該当する景気ウォッチャー調査の分析記事【現状DIは水準値の50回復、先行きは燃料費・電気代高騰懸念で下落続く…2014年7月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落】にもある通り、消費税改定による消費萎縮の動きはほぼ無くなり、前回月の記事で懸念された「冷夏による景気縮退」は杞憂で済んだが、電力価格の上昇とガソリン代の高騰という、社会を支えるインフラ、表現を変えれば血流的なもののコストアップが大きく問題視され、景気の足を引っ張りつつある。ランニングコストの上昇は、他部門の予算圧縮につながり、予算柔軟性の高い部門として筆頭に挙げられる広告部門があおりを受ける可能性は多分にある。

次回計測月となる8月は、「その他」のようなイレギュラーな広告の動きは無く、純粋に夏の広告市場を反映したものとなる。やや暑さを覚える一方、台風の上陸が多い雰囲気はあるものの、ほぼ例年並みの気候状況を示す中で、各部門はどのような動きを示すことになるのか。大いに注目したいところではある。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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