吉野屋が反動無しでのマイナスに、松屋とすき家はプラスだが…牛丼御三家売上:2014年07月分

2014/08/06 11:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2014年8月5日、吉野家における2014年7月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。それによると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス5.1%となった。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業としては、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年7月における売上前年同月比はプラス2.3%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス7.0%との値が発表されており、両社とも堅調な売り上げを示しているように見える(いずれも前年同月比・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。

↑ 牛丼御三家2014年7月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年7月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まずは吉野家の状況の確認を行う。昨年同月(2013年7月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス6.1%。今月はそこから転じて5.7%のプラスを示している。これは同社の主力商品である牛丼を2013年4月に値下げしたことで生じた下落(2013年7月)の反動によるもの。牛丼は主力メニューで多くの人が注文するため、その影響はしばらく継続しており、当然その翌年は反動がしばし続くことになる。この反動によるぶれを極力除外するため、後述の通り前々年同月比を試算すると、実質的客単価はわずかなマイナスに留まっている。吉野家ではこの4月の消費税率改定に合わせて牛丼価格を引き上げているが、中期的に見れば客単価への影響はないように見える。

牛バラ野菜焼定食同期間中の吉野家では新商品として【夏限定、吉野屋であのねぎ塩ロース豚丼が帰ってくるぞ】にある通り夏定番の「ねぎ塩ロース豚丼」が絶賛展開中であるのと共に、先月ちらりと言及した冬の鍋メニューの応用版的新メニューとして【ついに出た・吉野家新作鍋メニュー「牛バラ野菜焼定食」期間限定発売】で解説した「牛バラ野菜焼定食」が7月30日から展開を開始している。発売タイミングの関係から今回の営業成績では貢献度合いはほぼゼロだが、次月以降の動向が気になる。

客数は大きく減じてマイナス10.1%。前月のマイナス9.8%よりやや数字も悪化し、3社間ではもっとも残念な結果となっている。この客足の悪さが売り上げの足を引っ張ることとなり(洒落では無い)、前年同月における売上もマイナスとの結果が出てしまっている。先月までは多分に前年同月の好業績における反動の部分があったが、今回月ではその反動を除外して検証できる前々年同月比を試算しても、吉野家は客数・客単価・売上共にマイナスであり、業績の上でやや不安が残る動きを示していることが分かる。

↑ 牛丼御三家2014年7月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年7月営業成績(既存店)(前々年同月比)

プレミアム牛めし続いて松屋の動向。同社ではいわゆる御三家ではもっとも積極的に新メニューを展開しており、該当期間中だけでも「山かけネギトロ丼」「キムカル丼」「新オリジナルカレー」、そして7月22日からは【松屋の牛めし、一部店舗で「プレミアム牛めし」に切り替え・価格は380円に値上げへ】でも伝えた通り主力メニューの牛めしについて一部店舗から順次「プレミアム牛めし」に切り替える施策を打ち出している。まだ切り替えの最中で一部店舗のみでの展開で、当然業績にも一部しか反映されていないことになるが、他の高単価メニューの奮戦もあり、客単価は上昇(前々年同月比でもプラスなため、純粋な上昇と見て良い)。客数はわずかに減退しているが、客単価がプラスなため、売上もプラスを維持することができた。

「すき家」の労働環境に関するアンケート調査他方すき家だが、新メニューとして【ニンニク牛丼再登場・炭火塩だれやきとり丼新発売、すき家夏の攻勢】でも伝えた通りニンニク牛丼、炭火塩だれやきとり丼を逐次投入しているが、同社では新メニューの展開よりもむしろ【すき家の第三者委員会、すき家を「ブラック」認定】【「牛すき鍋定食」が決定打になったすき家の問題と、ベンチャー的気質は巨大化した企業には通用しない件について】で概要を伝えている通り、第三者委員会による労働環境問題への指摘とそれに基づいた施策決定発表による動きが大きい。

この施策問題も多分に絡んだ同社のリニューアル作業に伴う一時的休業と開店は継続中で、休業中の店舗は計算に含まれていないことから、この数か月はすき家においては、既存店のみの売上高前年同月比が、全店の前年同月比を上回る事態が続いている。もっとも休業店も含めた全店舗での前年同月比は今回4か月ぶりにプラス(0.2%)を計上している。
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年7月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年7月)


嵐の前の……!?


吉野家は先月までは、メインメニューの牛丼値下げによる客単価減退・客数増加の反動の影響があったものの、今回月では上記にある通りその反動を考慮した上でもマイナス値を示しており、やや軟調な期間に突入した感はある。実際、客数推移を見てもマイナス圏のままで低迷しており、前年からの反動があるにしても復調基調を示す他の2社と比べると、やや焦りが見える。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年7月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年7月)

「冬場の鍋定食パワーが切れて、そろそろ次のメニュー展開の時期か」という絶妙なタイミングでの「牛バラ野菜焼定食」と相成ったわけだが、正直冬場の鍋定食投入と比べればインパクトは弱く、貢献度もそこまでは期待できない。鍋定食は冬場の寒さを大いに味方に付けることができたが、「牛バラ野菜焼定食」はスタミナをつけるためという大義名分があるとはいえ、夏場の暑さの後押しを得られるとは言い難い。「鍋の奇跡」とまで呼ばれた昨年冬のような盛況ぶりは難しい。

他方松屋もほぼ同じタイミングで主要メニューの牛めし、さらにはオリジナルカレーの切り替えを実施している。前者の値上げは大きく伝えられ、賛否両論が交わされているが、後者の実質的値下げはあまり話題に登っていない。味の変化やコストパフォーマンス、牛丼店来場者の属性とのマッチングなども合わせ、今回の決定が吉とでるか凶とでるかは判断が難しい。少なくとも一部影響が生じている今回月では前年同月比・前々年同月比共に悪くない値が出ているが、中期的な影響にも注視が必要となる。

他の2社のようにメニューでは無く、労働環境問題で大きく注目されることとなったすき家。問題視されている部分が改善されれば、店舗の一時休業や接客対応などの改善が期待でき、それは中期的には店内環境の改善につながり、同社にはプラスとなる。客単価は変わらないが、客入りの増加が期待できることになる。

ただしこの類の変化は数字に表れにくく、しかも短期間では影響は出てこない。一方でその改善施策のために生じる経費は即時に業績上に反映されることになる。今件記事で精査しているのは商品周りの売上動向なため、店の営業コストまでは検証対象外だが、コストがかさめば企業側が展開メニューにも影響を及ぼす施策を成すのは容易に想像できる。

吉野家の「牛バラ野菜焼定食」、松屋の「プレミアム牛丼」「新オリジナルカレー」よりもむしろ、すき家の「労働環境施策」の動向が、ここしばらくの牛丼御三家における大きな焦点となるかもしれない。


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