熱中症による搬送者数は1週間で5186人、前週から転じた猛暑で体調追いつかずか(2014年8月18日-8月24日)

2014/08/26 14:00

総務省消防庁は2014年8月26日、同年8月18日から8月24日の一週間における熱中症搬送人数が5186人(速報値)であることを発表した。前週の人数2269人(速報値からの改定値)と比べると2倍以上に増えている。また今年の熱中症による搬送人数は、消防庁が今年カウントを始めた5月19日以降における累計人数としては3万8712人となった。初診時に熱中症を起因とする死亡者は今回週では5名が確認され、3週間以上の入院加療が必要な重症判定を受けた人も66人に達している(【消防庁:熱中症情報ページ】)。

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↑ 熱中症による救急搬送状況(週単位・速報値・2014年・人)
↑ 熱中症による救急搬送状況(週単位・速報値・2014年・人)

↑ 熱中症による救急搬送状況(該当週・日単位・速報値・2014年・人)
↑ 熱中症による救急搬送状況(該当週・日単位・速報値・2014年・人)

↑ 熱中症による救急搬送状況(年齢区分)(2014年)
↑ 熱中症による救急搬送状況(年齢区分)(2014年)

今夏の電力事情と政府からの節電要請に関して精査した、春口に掲載した記事【「今年も数値目標なし」…2014年夏の節電要請内容正式発表】などで解説の通り、今年は当初エルニーニョ現象の発生により冷夏となる可能性が多分にあると予想されていた。しかしその後の気象庁の発表で、エルニーニョ現象の発生の可能性は引き続き高いものとされる一方、その発生時期は秋にずれ込むと修正され(【エルニーニョは発生する可能性はあるが秋にずれこみそう、そして冷夏は......】)、それに伴う形で今夏の平均気温長期予想は「8月西日本高め」「9月西日本低め」に変更されており(【今夏の平均気温長期予想が「8月西日本高め」「9月西日本低め」に......】)、電力需要の観点では以前予想より厳しい情勢となっている。なおエルニーニョ現象の発生確率は、その後さらに下方修正され(8月11日付)、現時点では今秋から今冬においても、発生する・しない確率が同程度となっている。

そして電力供給事情は昨年よりも一段と厳しいものとなっている。電気代も発電様式のバランス上のよじれから高騰を続けており、これも熱中症リスクを高める一因として懸念されている。一部で「去年より節電の声が聞かれなくなったので、もう電力需給は安心、問題は皆無だ」との意見を見分するが、公開されている各種実数値を見ればそのような話は単なる誤解でしかないことが分かる。報道されないのは「情勢が安定化した」からでは無く、事態に慣れが生じ、「視聴率に貢献しにくくなった」からに他ならない。

この動きを受け気象庁でも、従来は6月1日を含む週から熱中症による搬送者の集計を行っていたが、今年はその一週間前となる5月19日から25日の週より集計を実施している。今回発表されたのは今年の分としては第14週目のものとなる。

今回計測週では、前週における前線の停滞に伴う大雨で気温が比較的低かった状況から転じて気温が大きく上昇し、大阪・東京では共に前日が真夏日(最高気温が30度以上)を記録した。また湿度も上がり、周辺環境の急激な変化に体が付いていけない、あるいは油断したことから、多くの人が搬送されることになった。一方西日本、特に九州中国四国地方では前線や湿った空気の影響で激しい雨が降り、対照的な状況となっている。


↑ 広島では特に激し雨が降り続き土砂災害が多所で発生。「平成26年8月豪雨」と命名された。【直接リンクはこちら:犠牲者さらに増加 広島市の土砂災害 「平成26年8月豪雨」と命名 】

年齢区分別の搬送状況を見ると、7月下旬から少しずつ高齢者の割合が増加している。これは学校が夏期休業に入り、さらにお盆休みに突入して部活動も休みとなることで、子供の熱中症リスクが減少することによるもの。また今回週では成人の比率が突然大きく上昇しているが、これは昨年には見られなかった現象。直上にある通り大阪や東京など人口密集地域で気温が急激に変化したことから、外出中の出勤者によるところが大きいと考えられる。

↑ 東京都の最高気温と天候(2014年8月18日-8月24日)
↑ 東京都の最高気温と天候(2014年8月18日-8月24日)

↑ 大阪府の最高気温と天候(2014年8月18日-8月24日)
↑ 大阪府の最高気温と天候(2014年8月18日-8月24日)

↑ 熱中症による救急搬送状況(2014年8月18日-8月24日)(搬送人数上位都道府県、人)
↑ 熱中症による救急搬送状況(2014年8月18日-8月24日)(搬送人数上位都道府県、人)

今回計測週では上記にある通り東日本から近畿地方にかけて猛暑に転じたことを受け、搬送者数の上位地域もほとんどが関東地方で占められており、大雨が降った西日本地域は確認できない。実際具体的数字を見ても、兵庫県から西の地域では数人から数十人の規模で留まっている(とはいえ搬送者が居ることに違いは無い)。

大阪府や東京のような大都市圏では各自治体で、高齢者の室内熱中症の発生リスクを少しでも軽減するため、冬期の「火の用心」のように、家庭用ごみ収集車を活用して熱中症の予防啓発放送を行う試みが行われている。例えば東大阪市では8月12日から9月30日まで実施されている(【家庭ごみ収集車で熱中症予防啓発放送】)。似たような活動は東京・杉並区でも去年から行われており、こちらも自治体の熱中症対策として注目に値する。


↑ 杉並区の活動を伝える報道映像。【直接リンクはこちら:熱中症 ゴミ収集で注意呼びかけ】

厚生労働省では5月27日付で、今夏期向けの熱中症対策の広報展開として、リーフレットを配布し、周知喚起を実施している(【今年も熱中症の季節到来、厚生労働省がリーフレット公開で注意喚起へ】)。

↑ 厚生労働省が公知したパンフレット「熱中症予防のために」(一部)
↑ 厚生労働省が公知したパンフレット「熱中症予防のために」(一部)

さらに内閣府も6月10日付で「熱中症予防の7か条」なるリリースを発信し、熱中症への備えを呼びかけている(【熱中症予防の7か条、内閣府政府広報室が熱中症に関する注意喚起】)。いずれも熱中症を発症しやすい、抵抗力の低い子供やシニア層、病症者への配慮を特に考慮した内容となっている。

自治体レベルでも各自に熱中症への取り組みを行っている。例えば東京都世田谷区では、昨年の熱中症搬送者の7割ほどが室内で発見された状況を重く見て、室内での熱中症対策として、区が一人暮らしや孤立の恐れがある高齢世帯を中心に「熱中症予防シート」なるものを配布する施策を実施している(【今年度の熱中症対策  熱中症予防シートの配布(世田谷区)】)。

↑ 世田谷区が配布している熱中症予防シート
↑ 世田谷区が配布している熱中症予防シート

シートには熱中症予防に関するさまざまな知識が書かれており、さらに中央部分には周辺温度が数字で表示される液晶温度計(20度から42度が確認できる)がついている(玩具で良く見かける、特定温度の場合にのみ色が出る仕組みの数字をずらりと並べてある)。温度の数字と表示される場所でリスクをすぐに判断できるようにとの配慮がなされており、目に留まる場所に貼り付け、温度計代わりに使うと共に、常に熱中症への備えを再確認できるという、素晴らしい発想の告知シートとして仕上げられている。

高齢者は体感温度反応が鈍く、周囲、そして自分自身の温度変化への対応も鈍くなるため、温度の変化にも気が付かない場合が多い。そのため、温度に関係なく自分がいつも目を留める場所(例えばテレビや時計のそば)に貼りつけることで、リスクを減らすことができる次第である。

ヤフーも2014年7月7日から、同社が提供しているウェブサービスの一つ「Yahoo!地図」で、熱中症指数値と呼ばれる熱中症リスクをアイコン「ねつぼうくん」でビジュアル化した上で、地図上に反映した「熱中症情報」の提供を開始している(【【期間限定】Yahoo!地図で見る「熱中症情報」はじめました!】)。9月30日までの期間限定での機能実装だが、興味深い話ではある。

↑ Yahoo!地図の「熱中症情報」
↑ Yahoo!地図の「熱中症情報」

7月1日からは「数値目標を伴わない節電要請(定着節電分の確実な実施)」期間が始まっている。すでに夏休みに突入し、児童が自宅にいる時間が増えることで、室内の冷房稼働時間について気を使う保護者も増えてくる。節電のための「適度な」利用は電力需給を考慮すれば欠かせない行動ではあるが、過度の節制で高温のために体力を消耗し、さらには体を壊してしまったのでは元も子もない。また屋外での遊びや諸活動に夢中になるあまり、熱中症対策を怠る可能性も多分にある。

お盆休みも過ぎ、過去のデータや今年の気温・熱中症による搬送者数の動向を見る限りでは、どうやら最大の山場は過ぎた感がある。各コンビニでおでんや中華まんの発売が本格的に始まる時期が、ターニングポイントの目安にもなる。しかし今回週のように、急激な温度の変化に心境的な備えや体調の上での対応が追い付かず、結果的に参ってしまい熱中症に倒れる事例が多数生じる場合もある。絶対温度・湿度だけでなく、それを感じる人側の状態も重要な要素となることを忘れてはならない。

また9月に入ると学校事業が始まるために、部活動や秋の運動会に向けた練習の中で、集団で熱中症を発症する事例が発生する可能性は多分にある。

上記で触れた通り、高齢者層は温度の変化に鈍いため、状況が悪化するまで本人ですら気が付かない場合も少なくない。また子供は多少の体調の変調も無理をする、あるいは(部活動などで)させられるため、やはり倒れる事例が後を絶たない。あらためて注意喚起の各種パンフレットの内容や注意喚起の話を再確認し、基本的な要件を守り、自身はもちろん周辺の他の人に対しても配慮を欠かさず、くれぐれも油断をせずに応じてほしい。


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