前月比では食肉、穀物、油脂、砂糖が上昇(2020年8月分世界食糧指数動向)

2020/09/09 09:51

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2020-0909原材料の価格高騰に加え、為替の変動、エネルギーコストや人件費の上昇、需要の拡大などを受け、食料品販売大手や外食チェーン店が続々と価格引き上げを実施する中、食料品の国際価格に対する注目はこれまでに無い高まりを示している。その価格変動に関し、概略的ではあるが現状を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月公開している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2020年9月3日に発表された、現時点で最新版の値となる2020年8月分の値を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを作成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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前月比では食肉、穀物、油脂、砂糖が上昇


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらのページで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2020年8月分を含めた取得可能なデータを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。いわゆる「ざっと見」用の図である。

なお以前は2002-2004年の平均値を基準値の100として計算していたのに対し、2020年6月分からは2014-2016年の平均値を基準値の100として計算した結果となっている。相対的な値の変化であり、絶対値としては変わりはないのだが、昔の値だから新しい値に変えたという理由は分かるものの、2014-2016年は値が乱高下していた時期であり、なぜそのような時期のものを基準値とするのか、いささか首を傾げるところがあるのは否定できない。

↑ 各食料価格指数
↑ 各食料価格指数

おおよそ2005年位まではさほど大きな動きを示していないが、2005年終盤以降になると少しずつ価格が変化、しかも上昇方向に動き始める。その後直近の数年にわたる金融危機の引き金となる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きるとともに、大きく上向きの流れを見せる。

これらの動きは、主に株式市場の暴落を原因とする。要は投資市場の資金が暴落した株式市場から逃げ、その行く先に商品先物市場が目を付けられた次第。そして市場規模は商品先物市場の方が小さいため、過剰な資金流入とともに全体の価格が底上げされ、それは実商品価格の上昇をも招くこととなる。

その後は「リーマンショック」(2008年9月以降)を起因とする市場の騒乱を経て大きく乱高下を成したあと、高値安定状態に移行。数年にわたり各食品項目とも100前後の領域で小幅な値の動きに終始していたのが分かる。ほんの10年ほど前の水準であった60-80前後と比べ、5割増しから2倍程度の領域。

もっとも2014年夏以降に限れば、おおむね下落基調の中に。おおよそ80-100の領域内での動きとなっている。元々動きが激しい砂糖に限れば60近くまで値を下げることもある。

なお各指標が明らかに値を下げ始めた2014年夏は、原油価格が下落を始めた時期でもあり、タイミングが一致している。偶然の一致か、あるいは何らかの連動性があるのかは、今件各指標からだけでは確認ができない。昨今では世界情勢の変化と需給の変動に原油価格は敏感な反応を示しているため(【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる】)、食料価格指数との連動性を見極めるのは難しい。これら一連の動きは、中国経済の後退を予見した・連動しているのではないかとの話もあるが、あくまでも推測レベルの話に留まっている。

下落当時のFAOによるレポートにおける下落基調の理由にも、多分に同国の需要減退が挙げられており、まったくの的外れとも言い難い(同国の影響力の大きさに関しては、以前乳製品の価格が急上昇したのは、一人っ子政策の終了に伴う粉ミルクの需要急増によるところが大きいと解説されていたのが好例)。

次に示すグラフは、上記グラフの横軸における対象期間を短縮し、記述開始を2007年1月にしたもの。2007年といえば7月・8月から、「サブプライム・ローン」問題がぼっ発(露呈)し、市場は大変動の動きを示した年。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく知ることができるグラフとなっている。

↑ 各食料価格指数(2007年1月以降)
↑ 各食料価格指数(2007年1月以降)

興味深いのは上記でも言及している通り、「サブプライム・ローン」問題のぼっ発「以前から」、食料品価格はやや高値に動き始めていた事実。一般に同問題が知られる前より食料市場は「知っていた」のか、それとも人口増加に伴う消費増加による、中期的な食糧需給の変化が市場に反映されていたのか、それともその双方なのか。残念ながらこのデータからのみでは因果関係の判断は不可能。

名目GDPの動きを見る限り、新興国の経済発展が加速度的な動きを見せはじめたのは2005年頃から。その動きと各指数の上昇タイミングはほぼ一致している。「知っていた」ではなく、人口増加による需給バランスの変化が指数の底上げの主要因だったと見た方が道理は通る。そしてその仮説が主要因として事実であるとすれば、上記に挙げた昨今の各指数の減退に関する推測もまた、つじつまが合うものとなる。唯一砂糖は投機性が高く気象変動にも容易に影響を受けるため、それらの状況とはあまり関係がなく上げ下げしているとの解釈も併せてできよう。

期間軸を短くしても食肉価格が他の食品と比べてゆるやかな動きではあるが確実に、じわじわと上昇していたことが確認できる。それとともにその食肉以外は2011年前半をピークとしておおよそ下げ基調にあったと見て取れる。そして唯一値を上げていた食肉ですらも、上記にある通り2014年夏以降は下落の動きを示す形となった。何らかの確実な変化が、2014年夏あたりから生じていることを覚えさせる流れではある。

2020年3月以降はすべての指標で下げ基調に転じており、大きなトレンド転換が生じていることがうかがえる。恐らくは新型コロナウイルス流行による経済の停滞を見た上での反応だろう。もっとも6月以降では底打ち反転の動きを複数種類で示しており、経済停滞の底値を見越した動きが生じているものと考えられる。ただし食肉はむしろ下げ幅を拡大しているのが気になるところ。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値の動きを確認するために、各指標の時系列データを抽出し、「前年同月比」と「前月比」を独自に算出。その数字の変移が分かりやすいように棒グラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数(前年同月比・前月比)(2020年8月)
↑ 食料価格指数(前年同月比・前月比)(2020年8月)

総合指数は前月比でプラス2.0%、前年同月比でプラス2.2%。食料価格はこの一年間内では上昇し、昨今でも上昇の動きをしているようだ。もっともいずれもわずかな振れ幅でしかない。

個別項目を見ると、前月比では乳製品以外が上昇、前年同月比では食肉以外が上昇。底打ちから反転の動きが読み取れる。

大きく値を上げている油脂についてリリースでは「パーム油が大きく上昇したが、大豆油、ヒマワリ油、菜種油の上昇も見逃せない。パーム油の大幅上昇は主要生産国の生産量減少の見通しと、需要の増加が影響している。大豆油はアメリカ合衆国でのバイオディーゼル産業による需要が予想以上なのを反映した。ヒマワリ油は中国の需要拡大、菜種油は供給量の減少が原因」としている。他方穀物については「ソルガム、大豆、トウモロコシ、米が大きく上昇。ソルガムや大豆の上昇は中国の輸入拡大が起因。トウモロコシはアメリカ合衆国アイオワ州の作物被害による生産量の減少懸念の影響。小麦は欧州での生産量減少見通しが原因」とある。

農林水産省の最新レポートで現状を確認


今記事で毎月連動性のある、付随的資料として精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、2020年8月31日に更新された2020年8月分をざっとではあるが確認する。最新レポートによると、国際的な穀物生産に関して、とうもろこしが増加、小麦と米が減少。前月比では上方修正(27.3億トン)。他方、消費量はとうもろこしで増加、小麦と米で減少。前月比では上方修正(27.0億トン)。そして期末在庫量見込みは前月予想よりは上方修正(8.5億トン)。

日本国内に限れば昨今では原材料費の上昇が、生産各方面にボディーブローのように効き始めている。世界全体の価格動向と併せ、注視をしたい。また日本国内に限定した話だが、先の北海道における大地震(平成30年北海道胆振東部地震)により、酪農業者が大きな被害を受けている。また2019年5月の異様な暑さ、さらには同年7月の天候不順、相次ぐ台風の上陸で農作物に影響が生じたとの話もある。今年度の暖冬も影響要素としては無視できない。そして新型コロナウイルスの影響で農作業にたずさわる人の確保ができず、生産が滞るリスクも指摘されている。他方、外食需要が急減したことで需要量も大きく減っている。これらが価格にどのような影響を与えるのか、気になるところではある。


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