「妖怪ウォッチ」はなぜ子供達に受け入れられたのか(下)…子供目線での内容と「妖怪」編

2014/08/10 08:00

ジバニャン子供向けのゲームとしては久々の大ヒットとなり、周辺業界をも合わせて大きな話題に登っている「妖怪ウォッチ」。現在は続編にあたる「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」が発売中だが、同時に関連商品も盛況を博し、日々メディアで紹介も行われている。その子供達の支持ぶりについて、当方が断片的に考察した内容の再構築的なまとめの、上編にあたる「メディアミックス」に続く下編。「子供目線での内容と『妖怪』」の観点から考えてみることにする。

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子供は「自分達の世界」が欲しい


「妖怪ウォッチ」が子供から支持を集めた理由の一つとして、よくちまたで挙げられる理由が「大人の手あかがついていない」「子供達だけの世界観が楽しめる」なるもの。もっと直接的な表現を使うと「大人が顔を突っ込んでこない」。似たようなゲームとしてはすでに任天堂の「ポケットモンスター」(ポケモン)が著名で、各シリーズが世紀をこえ、世代をこえて展開中。当然初期のポケモン世代は成人化しているし、老若男女を問わず浸透している。

ところが一般化したこともあり、「ポケモン」は子供達にとっては「大人も知ってる、普遍的なもの」としての認識もしてしまう。子供は「自分達だけの、大人が手を出さない」ものを求めていたのかもしれない。そこにたまたま、あるいは狙った形で「妖怪ウォッチ」が登場し、子供達はこぞって、意識的に、あるいは無意識に「世代交代」先を見つけたことになる。

普遍的なものでない、未知なる世界を知りたい。好奇心をかきたてる点でも「妖怪ウォッチ」は格好の対象。比較対象に挙げられる「ポケモン」は、あまりにも知られ過ぎる存在となっていた。「妖怪ウォッチ」のガイドブック・攻略本を望む子供のエピソード(【「妖怪ウォッチ」が教えてくれた、子供が欲しい「ゲーム」と「攻略本」と】)「攻略情報だけではなく、イラストやコラムや妖怪のスペック詳細が分かる図鑑など、世界観そのものを知りたい」との点でも、冒険旅行のごとく、未知なる世界を切り開くわくわく感を求めていることがうかがえる。

「妖怪」の意味と、子供達にとっての「妖怪」と


「妖怪ウォッチ」に登場する「妖怪」は、昔から日本で伝承されていた、あるいは古典的な、そして近世においては水木御大が体系化したともいえる従来の妖怪(「古典妖怪」とも呼ぶそうな)とは異なるものである。多分にシャレやジョーク、時事ネタ、身近な出来事を基にしたものばかり。それに対し、反発を覚える大人もいる。

しかし本来、「妖怪」とは自分達にとって良くわからない現象、不思議な出来事、驚異的な物事、説明が出来ない状況を説明するための「仮説的存在」。日常生活内に発生する理解できない状況をそのまま放置しておくと不安にとらわれてしまうため(理由が分からない出来事ほど、人の心を不安にさせるものは無い)、その不安を解消させるために「原因」を「妖怪」として創生し、自分自身の心の安寧をもたらしている。

「なんだか分からないがこんなことが起きてしまった」よりは「妖怪●×のせいでこんなことが起きてしまった」と納得する方が、心は休まるもの。つまり「妖怪」は当時の人達における精神安定のための知恵として生まれた、表現がやや悪いが責任転嫁の対象としての創生物と見ることもできる。

ところが古典的な妖怪が想起された時代から時は流れ、理解できないものや事象が「身近な生活」にあるものでは無くなった。そしてその物事・事象を引き起こしたとされる「妖怪」も、単なる伝承的なもの、異次元的な存在としての対象に過ぎなくなった。「ゲゲゲの鬼太郎」が古典的妖怪の距離感を縮めたが、今の子供達には理解しにくいことに違いは無い。なぜその妖怪たちが存在するのか分からないし、身近なものとも思えない。現実世界とのかい離が大きく、直接の結びつきが無い。

一方、「妖怪ウォッチ」に登場する数々の「妖怪」は、過去の妖怪の創生の仕組み・フォーマットに従い、現代の世界観・周辺環境に基づき再度創生が行われている。子供が好きな噂話的なもの、都市伝説的なもの、ダジャレも多分に混じっており、現代風味にアレンジされている。下品的なものもあるのが、これもまた子供から注目を集め、受け入れられる重要なポイントに違いない。やはり子供に人気のある「おぼっちゃまくん」「クレヨンしんちゃん」的なものと表現すれば、理解もしやすい。あのエッセンスが「妖怪ウォッチ」の妖怪たちにもある。

【テレビ東京のアニメ版「妖怪ウォッチ」のキャラクター紹介公式ページ】を見れば、いかにも子供が好きそうなギャグ、ダジャレ、ちょっと下品なネタなどが、現在の時節にも合わせる形で妖怪化しているのが分かる。携帯電話の電波に関連する妖怪や、ひきこもりを誘発する妖怪など、現代だからこそ展開されうる。

「妖怪ウォッチ」についてはこんなエピソードもある。デジタルワールドで活躍するリアル僧侶として有名な蝉丸P氏がその実務装備で歩いていたところ、子供達から熱い視線を受け、「妖怪?」と小声でささやかれたというもの。

↑ 「妖怪?」と子供にささやかれた時の蝉丸P氏
↑ 「妖怪?」と子供にささやかれた時の蝉丸P氏

子供達が口にした「妖怪」とは、忌避的なもの、おぞましいものではなく、「妖怪ウォッチ」に登場する「身近にいる、普段は目に見えない、自分の知識には無い不思議な存在」的な意味として使ったのだろう。また当方自身も「あるいは遠くない将来において、リーゼントのヤンキーな方々も妖怪扱いされるのであろう」と考えていたところ、すでにそのものが存在していることを知り、「妖怪ウォッチ」における「妖怪」とは、昔の「妖怪」の創作式をそのまま現在で再発動させたものだと確信した次第である。

↑ 昔のヤンキーをほうふつさせる「ワルにゃん」。厳密にはジバニャンにグレるりんがとりついて変化している
↑ 昔のヤンキーをほうふつさせる「ワルにゃん」。厳密にはジバニャンにグレるりんがとりついて変化している

ポケモンにも一部、これらのその要素は備わっている。しかし子供の心をくすぐる刺激的なもの(特に下品に近いもの)、また上記にある「ワルにゃん」のような現代風味的なノリには欠けていた。多くの子供が「妖怪ウォッチ」に魅了された背景には、「ポケモン」に欠けていて、「妖怪ウォッチ」で見いだせた要素が大きく作用していると考えられる。すなわち「本当の意味での日常生活に身近な今風のネタ」「妖怪の本来の存在意義である『身近なフシギ』の原因となる謎の存在」の要素を持ち合わせていたからといえる。



ざっとまとめると「大人が介入しない、子供だけの好奇心を充足させる世界の提供」「自分達の生活に身近な話をベースにすることによるリアル感・親近感」「人々の心を魅了する『妖怪』創生の方程式を現代に当てはめた存在」などの要素が、「妖怪ウォッチ」をして子供達のハートをつかむ世界を創り上げたと見ることが出来る。

ある意味「妖怪ウォッチ」は「ポケモン」などの子供向け収集系ゲームと、妖怪などが登場する怪談話が今風に進化した姿なのかもしれない。


■一連の記事:
【「妖怪ウォッチ」はなぜ子供達に受け入れられたのか(番外編)…関連グッズの需給問題と転売話】
【「妖怪ウォッチ」はなぜ子供達に受け入れられたのか(下)…子供目線での内容と「妖怪」編 】
【「妖怪ウォッチ」はなぜ子供達に受け入れられたのか(上)…メディアミックス編】


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