豪雨の影響大きく…2018年7月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2018/08/08 15:54

2018-0710内閣府は2018年8月8日付で2018年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し46.6を計上、基準値の50.0は割り込む状態が継続。先行き判断DIは前回月比で下落して49.0となり、基準値の50.0を割り込む形となった。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、平成30年7月豪雨によるマインド面の下押しもあり、引き続き一服感がみられる。先行きについては、人手不足、コストの上昇、平成30年7月豪雨の影響等に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成30年7月調査(平成30年8月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2018年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス1.5ポイントの46.6。
 →原数値では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは47.5。
 →詳細項目は「小売関連」「製造業」以外が下落。「サービス関連」のマイナス6.9ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス1.0ポイントの49.0。
 →原数値では「よくなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「ややよくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは49.0。
 →詳細項目では「飲食関連」「雇用関連」以外が下落。「住宅関連」のマイナス2.6ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、2016年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ原油価格動向をはじめとする海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。また消費税率の引き上げに関連する形での消費減退の懸念も、そろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。また今回月では「平成30年7月豪雨」と命名された、西日本を中心に生じた豪雨による被害が大きな影響を及ぼす形となっている。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。昨今ではやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる動きにあるのが気になるところ。「平成30年7月豪雨」の影響はグラフ上に明確な形で現れるレベルのもので無かったのが幸いではある。

昨今では現状も先行きも軟調気味


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2018年7月)
↑ 景気の現状判断DI(-2018年7月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに4年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレルあたりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

その後は石油産出国の協調減産の動きを受け、さらに中東情勢の緊迫化もあり、原油価格は少しずつ上昇を示していた。原油価格の上昇にあわせて活動が活発化し市場の調整役・頭を押さえる役割を果たしている米国内のシェールオイルの採掘による生産量の増加も、影響は限定的。結果として日本国内のガソリンや灯油価格も上昇の動きに。米国内のシェールオイルの生産量がさらに増加を続け、1970年以来最大の量を記録したとのEIAの報を受けて原油価格は一時的に頭打ち、さらには下落の動きを示した。

しかしアメリカ合衆国の景況感の堅調さから生産量増加分も打ち消しになるのではとの思惑が強まり、さらにはシリアとイスラエルの紛争激化やアメリカ合衆国のイラン核合意からの離脱とイランへの経済制裁再開など中東情勢の緊迫化から、再び上昇の動きに転じている。増産による価格調整への動きとして7月頭を天井とし、やや値を落としつつはあるものの、高値感は継続中。

今回月の現状判断DIは総計で前回月から1.5ポイントのマイナス、詳細項目では「小売関連」「製造業」で以外で下落。もっとも大きな下げ幅は「サービス関連」が計上した6.9ポイント、もっとも大きな上げ幅は「製造業」による0.8ポイント。「サービス関連」の下げは「平成30年7月豪雨」によるところが大きい。

景気の先行き判断DIは「飲食関連」「雇用関連」のみが上げ。下げ幅は「住宅関連」の2.6ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2018年7月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2018年7月)

今回月で基準値を超えている詳細項目は「雇用関連」のみ。

猛暑のプラスも「平成30年7月豪雨」が吹き飛ばす


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・記録的な猛暑により、エアコンや冷蔵庫、洗濯機を中心に販売量が激増しており、配達が追い付かなくなっている(家電量販店)。
・異常な暑さにより来客数が減少傾向にある。ここまで暑い日が続くと体調不良を起こす人も少なくないため、外出を控える要因となっている(一般レストラン)。
・平成30年7月豪雨災害による自粛、交通機関の運休によるキャンセルが響いている。また、販売品の仕入れが間に合わないなど、間接的な影響も受けている(観光型ホテル)。
・平成30年7月豪雨以来、交通網の混乱で来客数が減少して売上も大幅に低下している。気温は非常に高く、販売量も増えない(百貨店)。

■先行き
・中国、四国、九州方面への旅行について、復興支援ツアーが増えると見込まれる(旅行代理店)。
・今後3か月の予約状況に変化はないが、「平成30年7月豪雨」の影響で自粛傾向であり、予約の伸びは鈍る。その一方で、延期されている宴席もあるので、それが実施されれば来客数は伸びる(高級レストラン)。
・「平成30年7月豪雨」や猛暑による生鮮品の相場高などの影響が、今後どのように続くのか不安が残る(スーパー)。
・天候に左右されることが多い業種であるが、今回も残暑が長引くと秋物の立ち上がりが遅れてしまうため心配している(衣料品専門店)。

今年は予想通りの猛暑が到来し、足し引きすると経済の観点ではプラスとなりやすいために景況感の観点では期待ができる状態だったが、「平成30年7月豪雨」がその期待を吹き飛ばす形となってしまった。地震や火山噴火ならまだしも、豪雨被害への自粛はどれほどの意味があるのかという感も強いが、交通網が実際に混乱した影響で人の動きが鈍くなるのなら仕方があるまい。また、暑さも度が過ぎると外出をひかえるようになり、客足が鈍る業態もあるようだ。

企業関連の景況感では堅調さを示す話がある一方、「平成30年7月豪雨」や酷暑によるマイナスの影響が見受けられる。

■現状
・自動車メーカーの北米向け販売が79か月連続で前年を超えており、カナダ向けも25か月連続で前年超えとなっている(輸送用機械器具製造業)。
・受注量に大きな変化はないが、猛暑で現業パートの出勤率が下がり、人手不足に拍車が掛かっている。募集費、人件費の高騰で収支が大きく悪化している(輸送業)。

■先行き
・円安による原油価格の高止まりがあるなか、「平成30年7月豪雨」によるJR貨物の不通が発生した。JR貨物の不通は順調に推移してきたモーダルシフトの流れが止まる可能性があり、そうなると運転手不足、車両不足に拍車が掛かる恐れがある(輸送業)。
・原料のキャベツやタマネギの価格が、大雨や日照不足による不作の影響から、今後値上がりすることが見込まれるため、景気は悪くなる(食料品製造業)。

原油価格は高止まりの中にあり、燃料費の高騰への懸念の声も見受けられる。他方、「平成30年7月豪雨」で生じた流通網の混乱や、猛暑による不作への懸念だけでなく、従業員の出勤率の低下という想定し難いマイナスの影響の声も確認できる。

雇用関連では人手不足に関わる多様な意見が見受けられる。

■現状
・予定より多くの内定を出したものの、辞退者が続出し、予定数に満たない企業が多い(新聞社)。

■先行き
・求人は高水準を維持しており、人手不足も厳しいが転職市場は活発になる(職業安定所)。

辞退者が多いのは掛け持ちの内定者が、最良の条件以外の内定を辞退してしまうためだろう。それだけ雇用市場が求職者有利な状態にある証に違いない。ほんの数年前までは内定が企業都合で取り消されてしまうという、真逆の事案が少なからずあったことが思い返される。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計31件、先行き計46件、合わせて77件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好14件、やや良好29件、不変101件、やや悪い15件 悪い11件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

人手不足を言及するコメントを精査すると、状況の深刻さを受け止めて対応を取る企業もあれば、広告費を現状維持のままにしていたり、賃上げを抑えている、求人活動に消極的との声もあり、果たして企業側の人手不足への危機感はどこまで本心なのか、疑ってしまうものもある。また、条件のよい企業に人材を奪われ、挙句の果てに労働力人口の減少や少子化に責を投げる声もある。

「働き方改革」に関しては現状のコメントで「企業幹部は役所に対して就業時間を減らす努力をうたいつつも、実質は見て見ぬふりで残業を課している、などと否定的な意見が多い」という否定的なものも見受けられるが(事実であれば役所が介入すべき事案ではある)、一方で「働き方改革や時給の上昇など、労働環境に関する報道も、消費者にとっては景気のよさを実感しているようである」「働き方改革に向けた需要が膨らんでいるようで、関連商品に対する問合せが増えている」のような声もある。

人手不足で受注できない、受注を抑えている、売上が伸びないとの意見は多い。しかし果たしてその人手たる従業員に対して、どこまで現状に対応する姿勢を示しているのか、その点までは今調査のコメントから確認できないのは残念ではある。種も蒔かずに育てもせずに肥料や手間をふところに納め、いざとなったら果実が欲しいと騒ぐのは、あまりにもむしがよい話ではある。ましてや人手不足の状況では育てられていなかったのは果実では無く、人である。また、雨が降ってきたのに「これまで晴れていたし、傘を取りに帰るのは面倒くさいし、買うのはもったいない」からと、ずぶ濡れのままで歩き続けるのは、愚か者の所業に違いない。

なお今回月では「平成30年7月豪雨」の影響が大きく、現状計173件、先行き計127件、合わせて300件(単に「豪雨」だけなら175件、132件で307件)もの関連コメントが確認できる。そのため内閣府でも特記参考資料として「景気ウォッチャー調査における「平成30年7月豪雨」の影響」なる3ページのレポートを今回発表分に提示しているほどである。

↑ 景気ウォッチャー調査における「平成30年7月豪雨」の影響
↑ 景気ウォッチャー調査における「平成30年7月豪雨」の影響

気象庁の定義【平成30年7月豪雨(前線及び台風第7号による大雨等)】では2018年6月28日から7月8日に発生した豪雨を「平成30年7月豪雨」と呼んでいる。今後インフラの被害による輸送量減少の問題、旅行・観光への自粛ムードによる消費マインドの低迷、農作物の値上がりなどが景況感に影響を与えそうだ。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。また米国の貿易政策に多くの企業が直接、間接的に懸念を持っている。双方とも景況感、消費にはマイナスに作用するだけに始末が悪い。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿になるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


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