現状判断は基準値を超える…2020年10月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2020/11/10 15:30

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2020-1110内閣府は2020年11月10日付で2020年10月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し54.5を示し、基準値の50.0を上回る状態となった。先行き判断DIは前回月比で上昇して49.1となったが、基準値の50.0を下回る状態は継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、着実に持ち直している。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、持ち直しが続くとみている」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和2年9月調査(令和2年11月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2012年10月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス5.2ポイントの54.5。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは53.6。
 →詳細項目は「住宅関連」以外のすべての項目が上昇。「住宅関連」のマイナス4.2ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でプラス0.8ポイントの49.1。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは48.4。
 →詳細項目は「小売関連」「住宅関連」「非製造業」が上昇。「飲食関連」のマイナス2.5ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「サービス関連」「雇用関連」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。今回月は前回月に続き新型コロナウイルスによる影響を受けてはいるが、持ち直しの動きを継続中で、ついに基準値を超える値を示した。新型コロナウイルス流行前の水準どころか消費税率引き上げ以前に戻ったと判断できる状態に違いない。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直し、今回月は基準値までには戻していないものの現状判断DI同様に、新型コロナウイルス流行前の水準どころか消費税率引き上げ以前に戻ったと判断が可能な値となっている。

現状・先行き判断DIともに基準値以上が複数


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2020年10月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2020年10月)

昨今では(すでに表の対象外となっているが)2020年2月以降において新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化が一気に噴き出した形となり、大きな下落。4月で景況感悪化の動きは底を打ったようで、5月以降は盛り返しを示している。今回月は前回月比においては「住宅関連」を除くすべての詳細項目でプラスとなった。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。特に「飲食関連」は60.0すら超えている。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2020年10月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2020年10月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「サービス関連」「雇用関連」の2つ。現状判断DIと比べて上昇の勢いに弱さを感じるのは、やはり新型コロナウイルスの流行に対する見通しが立ちにくいからだろうか。

Go To Travelキャンペーンの効用続くが年末に向けた不安も


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・10月からGo To Travelキャンペーンの地域共通クーポンが発行され、東京発着も対象になり、個人客を中心に例年並みの集客ができている(観光型旅館)。
・地元客に加えて、観光客も増えており、それに伴って収益が改善している(高級レストラン)。
・3か月前には開催できなかった物産催事や外商催事も開催できるようになり、好調に推移している。地域共通クーポンも土産物を中心に売上を下支えしている。大ヒット映画による集客増もあり、売上は3か月前よりも回復している(百貨店)。
・分譲マンションのモデルルームへの来場者の多くが購入に慎重であるなど、様子見の客が多い(住宅販売会社)。

■先行き
・今年のクリスマス、正月は家庭内で過ごす機会が増えるとみられるため、これからケーキやおせちなどの消費が活発になることが見込まれる(スーパー)。
・11〜12月の予約状況はよく、今後もGo To Travelキャンペーン、Go To Eatキャンペーンの効果が見込めそうである。また、宴会や会議でも予約の問合せが増えており、感染対策を万全にして開催したいという予約が増えている(都市型ホテル)。
・冬季ボーナスが減少となる見込みであり、ボーナス商戦やバーゲンセールなどは厳しいと想定される。また、年末年始は混雑を避けようという動きが見込まれ、福袋やセールでの売上確保ができるか懸念される(百貨店)。
・大阪も新型コロナウイルスの感染者が増えているため、外出が控え目になり、外食の機会も減りそうである。忘年会も企業はまだ控えているため、宴会シーズンは厳しくなりそうである(一般レストラン)。

報道の限りでは相変わらず散々な扱いを受けているGo To Travelキャンペーンだが、現場からの声は前回月同様に概して良好。東京都が対象に加わったことにも好感触。また劇場版「鬼滅の刃」らしき映画のヒットが映画館を併設している(あるいは近場にある)百貨店への集客機会となり、百貨店の売上にも貢献するという、意外な話も見受けられる。

他方、年末に向けては期待と不安が入り乱れているのが実情。新型コロナウイルスの流行状況そのものに加え、ボーナス減の見通しがあることには注目しておきたい。

企業関連でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状
・新型コロナウイルスの影響で2〜3割弱減少していた売上、受注量並びに販売量が少し戻り、売上は新型コロナウイルスによる減少前と同程度に戻ってきている(電気機械器具製造業)。
・新型コロナウイルスの影響で、客先において設備投資計画に業績不振による延期や規模縮小となる案件が散見される一方で、一部設備投資を再開する客もあり、一概に悪化しているとも言い切れない(建設業)。

■先行き
・受注が回復傾向にあり、2〜3か月先の売上も増加する見込みである。自動車産業を中心に回復基調にあると考える(鉄鋼業)。
・出勤率低下の常態化によりオフィススペースの一部解約が続く状況にある。また、飲食テナントは新規の出店希望者が全く現れず、空きスペースが埋まる見通しが立たない(不動産業)。

新型コロナウイルスの影響で停滞していた人や物の流れが復調傾向にあることがうかがえる。早くも流行前の水準に戻ったところもあるようだ。他方、新型コロナウイルスの流行で生じた在宅勤務の増加・常態化に伴い、出勤者を対象にしたビジネスに大きな影が差し込んでいることが確認できる。

雇用関連でも新型コロナウイルスの影響からの回復基調がうかがえる。

■現状
・新聞広告に旅行会社が復活した。観光業を中心に人手不足が強まり、非正規中心ではあるが募集の動きが出てきている(新聞社[求人広告])。

■先行き
・年末年始の繁忙期に向けた短期の人員依頼が増えている。インターネットショッピング関連のセールによる物流増のほか、セット組み増による物流加工作業の需要も増えている(人材派遣会社)。

雇用の観点では新型コロナウイルスの影響は否定できないものの、最悪期は脱し復調状態だとの認識があるようだ。「人手不足」という懐かしさすら覚えるキーワードも。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントで49件(前回月44件)、先行きのコメントで10件(前回月14件)の言及がある。おおよそはネガティブな話として挙げられており、心理的に足を引っ張っている。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見当たらない。なお「財政再建」は現状・先行きともに一件も言及されていない。庶民感覚で財政再建の話など出てくるはずはないとの反論もあるかもしれないが、そうであるならがそもそも論として消費税で財政再建をするから云々という発想が出てくることはあり得ない。

他方新型コロナウイルスに関しては現状で370件(前回月434件)、先行きで656件(前回月670件)。前回月と比べれば減ってはいるが凄まじい言及数で、消費税率の引き上げも米中貿易摩擦もすべて吹き飛んでしまった状態。また、直接「新型コロナウイルス」の言い回しではないものの、「緊急事態宣言」「来客数は減少したまま」のような明らかに関連する内容の表現が用いられており、実質的に新型コロナウイルスの影響がほぼすべてと見てもよい(ただし中にはデマや流言の類をそのまま信じていると推定できるコメントも見受けられる)。そして内容の性質上、ネガティブな話になるのは当然ではあるが、一部で持ち直しへの期待の声も確認できる。

なお「Go To Travelキャンペーン」「Go To Eatキャンペーン」については現状のコメントで265件、先行きのコメントで239件。肯定的な意見が多く、政策の効果の実情が確認できる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売上を伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ何らかの形で終息(効果的なワクチンや治療薬の開発、普通の風邪と同レベルまでの弱体化)とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなるのには違いない。人の動きは経済に直結することから、「また流行が拡大するかも」との懸念だけでも経済には大きな足かせとなる。世界的な規模の疫病なだけに、一刻も早い事態の終息を願いたいものだが。


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