物価上昇の懸念はまだ強いが…2022年8月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2022/09/08 14:59

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2022-0908内閣府は2022年9月8日付で2022年8月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し45.5を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して49.4となったものの、基準値の50.0を下回る状態継続。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、持ち直しに足踏みがみられる。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しへの期待がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和4年8月調査(令和4年9月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2022年8月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス1.7ポイントの45.5。
 →原数値では「変わらない」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは44.8。
 →詳細項目は「住宅関連」のみ下落。その「住宅関連」のマイナス1.5ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「雇用関連」のみ。

・先行き判断DIは前回月比でプラス6.6ポイントの49.4。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは47.6。
 →詳細項目は全項目が上昇。「サービス関連」のプラス11.0ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2022年8月では新規感染者数急増で新型コロナウイルスへの懸念は強まり、さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争などでコスト上昇が大きな影響を見せていたが、景況感はいくぶんの持ち直しを示している。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。

直近の2022年8月では原油価格の高騰、半導体をはじめとする原材料や部品の供給不足、ロシアによるウクライナへの侵略戦争に対する不安もあるが、人の流れの活性化や天候のよさなどへの期待から、景況感は回復の動きを示している。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2022年8月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2022年8月)

昨今では新型コロナウイルスの再流行が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。その後、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の影響による新規感染者数がワクチン接種の進展などで減少を示していることで、景況感の回復の動きが見られた。しかし7月に入るとロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響でコスト上昇が現実のものとなり、さらに新型コロナウイルスのBA.4およびBA.5変異株の影響による新規感染者数の急増が景況感の足を引っ張っぱり、大きな下落。今回月の8月はその大幅下落からいくぶんの持ち直しを見せる程度の結果となっている。なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「雇用関連」のみ。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2022年8月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2022年8月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」。新型コロナウイルスのBA.4およびBA.5変異株の猛威に対する不安はピークを過ぎ、半導体を中心とした部品や原材料の不足、原油価格の高騰、そしてロシアのウクライナへの侵略戦争への懸念もまた景況感の足を引っ張っているものの、人の流れの活性化や天候のよさなどへの期待から、持ち直しを示している。

人の動きの回復への期待と、コスト高への不安


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・3年ぶりに行動制限のない夏季繁忙期を迎えたことから、7月の航空需要は新型コロナウイルス感染症発生前の81%まで回復した。8月のお盆期間は帰省などの生活需要が活発であり、空港では久しぶりに家族を出迎える光景が多くみられた。空港の国内商業施設にもにぎわいが戻っている(旅行代理店)。
・今年の夏休みは子供向けイベントも復活し、家族での来店が増えるとともに、滞在時間も長くなり、にぎわいが戻ってきている(百貨店)。
・昨今の物価高の影響で、余暇、レジャー、趣味に対する消費力が弱まっていると感じる。客との会話やようすからそのような印象を受けている(通信会社)。
・食品を中心に値上げの影響があり、客の商品の買い方がシビアになっている。通常は広告を入れると、お買い得商品のほかに定番商品も売れるが、最近はお買い得商品だけを買う客が増えている。1人あたりの買上点数も落ちている(スーパー)。

■先行き
・県民の動きは予想以上のものであり、加えて観光客も増加しており、この経済の流れは今後も継続するであろうと判断する(コンビニ)。
・例年10月以降は秋の観光シーズンとなること、全国旅行支援の実施が検討されていること、インバウンドの水際対策の緩和により入国者数の増加が期待できることなどから、景気はややよくなる(都市型ホテル)。
・毎月、商材の価格が上がっているので、趣味の品等で買い控えが懸念される(家電量販店)。
・物価の上昇で家計の余裕が少なくなり、外食への支出も減少傾向が続く。新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着くまでは、厳しい状況が続くと予想される(一般レストラン)。

新型コロナウイルスの流行以降では初めて、行動制限のない夏季を迎えたことで、人の流れが活性化したことによるポジティブな影響が複数確認できる。他方、物価高による消費者の買い渋りの動きも見受けられる。

企業動向でも物価上昇・原材料不足・コスト上昇への影響が多々見受けられる。

■現状
・地震や大雨の影響が一部の土木工事現場でみられたが、大きな支障を来すことなく、全体の出来高が順調に積み上がっている。新型コロナウイルス感染症の第7波にあっても、民間建築の見積り引き合いが増えていることもプラスである(建設業)。
・受注量は堅調に推移しているが、資材が高騰する一方で販売価格を十分に上げることができず、利益率を悪化させている(一般機械器具製造業)。

■先行き
・今年は天候に恵まれていて、今のところ、ヴィンテージイヤーが期待できる。また、円安に振れており、輸入ワインの価格がかなり値上がりしているので、国産ワインには有利に働く。秋からの需要が望まれる(食料品製造業)。
・コスト増を価格に転嫁できないため、給料としての人件費の伸びがほとんど期待できない中小企業が多い。給料が上がらないと景気回復は期待できず、当面現状の景気が続く(金融業)。

物価高・原材料不足・コスト上昇が大きなマイナス要素となっている状況。また円安により相対的に優位な立場を得たところもあるようだ。

雇用関連では新しい生活様式への流れが確認できる。

■現状
・新規求人数は、飲食業のパート求人が大幅に減少した一方で、タクシー乗務員など旅客運送業の求人が増加している。新型コロナウイルス感染症が拡大するなかで、密回避の移動手段としての需要が背景にあるものと推察される(職業安定所)。

■先行き
・百貨店など今まで採用を控えていた業界が採用に動き出しているため、全体的に景気上昇に向かっていると予測できる(民間職業紹介機関)。

新型コロナウイルスの流行により人々が余儀なくされている新しい生活様式に適応する業態に、規模の拡大の気配が見られるとの話は、興味深いものではある。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが収束点として判断されるのだろう。あるいは生活様式そのものを大きく変えたまま、通常化するのかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、ワクチンなどによる平常化への動きを願いたいものだが。

さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できる類のものではない。景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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