現状は基準値割れのままだが先行きは突破、海外情勢への懸念緩和が奏功…2017年2月景気ウォッチャー調査は現状低下・先行き上昇

2017/03/09 05:29

内閣府は2017年3月8日付で2017年2月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して48.6を計上し、基準値の50.0を下回る状態となった。先行き判断DIは先月比で上昇し50.6となり、こちらは基準値の50を上回ることに。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる。先行きについては、海外情勢への懸念が和らぐ中、引き続き受注や求人増加等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年2月調査(平成29年3月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年2月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス1.2ポイントの48.6。
 →原数値では「良くなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。「やや良くなっている」「変わらない」が減少。
 →詳細項目は「サービス関連」がプラスでそれ以外は3ポイント台までの小幅な低下。基準値の50.0を超えた詳細項目は「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でプラス1.2ポイントの50.6。
 →原数値では「良くなる」「やや良くなる」が増加、「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。
 →詳細項目では「飲食関連」「製造業」が減少でそれ以外は3ポイント台までの小幅な上昇。基準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「飲食関連」「サービス関連」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

近しい環境変化を与える出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。例えばアメリカ合衆国の大統領選挙の結果を受け、今後同国の経済政策がいかなる変化を見せるのかに関して波乱を予想させる情報が相次ぎ、さらに不透明な部分は大きく、大いに気になるところ。また産油国の生産調整合意に伴い、原油価格の上昇が生じており、それを起因とする燃料コストの上昇リスクも懸念材料ではある。

とはいえ、アメリカ合衆国の政治情勢も選挙直後と比べれば落ち着きを見せ始め、原油価格も以前と比べれば高値ではあるが安定感のある値動きに移行しつつある。海外要因による日本国内の景況感への影響懸念は沈静化の方向と評価できる。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の下げ原因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。ただし今後の状況は不透明な部分が少なくないのは否めない。

現状、先行き共に小幅な値動き


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年2月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年2月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では上記の通り、産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形となっている。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示しており、輸送分野をはじめと各方面への影響が懸念される。

今回月の現状判断DIは総計で下落、詳細項目も大よそ下落の動きを見せている。先行指標の役割も担う雇用関連の下げ幅が小幅なのが幸いではある。

景気の先行き判断DIは現状とは逆に、大よその項目で小幅ながらも上昇。雇用関連の値の上昇幅がやや大きめなのが頼もしさを見せる。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年2月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年2月)

マイナスは詳細項目では「飲食関連」と「製造業」のみ。あとはすべてプラス。上げた詳細項目では「雇用関連」が一番上げ幅で3.8ポイントの上昇だが、それ以外は上げ幅・下げ幅合わせ3ポイント以内に留まっている。確かな方向性を持つ動きではなく、もみ合いの中の上昇感はある。

機構の厳しさを嘆く声と、新年度に向けた期待の声と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・今月は訪日外国人客の販売が良く、中国の春節を中心とした来日が多く含まれる。また、法人では年末からの需要が続いている(旅行代理店)。
・百貨店特有の動きかもしれないが、一部では高額品の動きが少し持ち直している。衣料品は、1月はセールの立ち上がりで多少盛り上がったが、2月はセールが一巡し厳しくなった(百貨店)。
・客の購買動向からは、価格に対するシビアさに大きな変化はみられていない。また、来客数そのものが減少傾向で推移しているため、客単価の低下も加わってますます苦戦を強いられている(百貨店)。
・当店は日本海の近くであり、前月同様に今月も平日を中心に暴風雪が多かった。そのため、客足に大きな影響が表れており、来客数は前年を下回っている(スーパー)。

■先行き
・インバウンドが来客数や売上をけん引しているが、つられて買物をする日本人の客も多くなっている。この先もインバウンド客の予約状況は好調であり、同じように日本人客の売上も伸びていく傾向があるため、景気は良くなっていくとみている(観光名所)。
・暖かくなってゴルフシーズンを迎え、予約数は順調に推移している。数字としては今よりも良くなり、業況もやや良くなる(ゴルフ場)。
・今月から始まったプレミアムフライデーを一つの起爆剤として、毎月月末の最終金曜日にちょっと良い物を客にアピールして、これを定着させたい。なんとか今の景気よりも3か月後は良くなるように、月一回のイベントを切り口としていろいろと工夫しながらやっていきたい(スーパー)。

今回月では米国の混乱も落ち着きを見せ始め、株価も安定上昇の動きを見せ出したことを受け、海外要素による不安的な意見は少なくなっている。他方、一部地域では厳寒から客足が伸び悩み、売上が低迷してしまったとの声も少なからず見受けられる。

一方で新年度をひかえ、さまざまな動きの予兆や期待の声が確認できるが、その多くはポジティブなものであり、これが先行き指数の底上げに寄与したことがうかがえる。とりわけ雇用関連では威勢の良い声が多々見られる。例えば「2017年卒業予定者を十分に採用できなかった分、2018年卒業予定者については多めに確保したいと考えている企業が多いため、学生にとっては環境が上向きになる」など。

企業の求人意欲は高まるばかりだが、求職者とのマッチングの難しさに頭を抱える意見も少なくない。「比較的就業条件の良い案件があっても、企業の求めるスキルとあわずに1案件が埋まるのに時間がかかっている。求職の動きが少し鈍っている」「有効求人倍率は上昇すると思われるが、企業は人手不足に悩まされ、求人の確保が大変である。他社との差別化を図り、人手をいかに確保するかが課題である」などの声が目に留まる。

ネット界隈の受けはさほど良くなかった「プレミアムフライデー」だが、今調査のコメントの限りではポジティブの意見が多数見受けられ、大よそ良い結果が出たような感はある。例えば「客数、客単価共に少し増加している。プレミアムフライデーと銘打ち、いくらかの特典を付けて販売したところ好調に推移している(コンビニ)」といった具合である。ネガティブの意見においても多分に該当企業や産業ベースの問題によるところが大きく、良い方向へ転じさせる機会は多々あるようだ。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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