現状も先行きも上昇。人手不足は解消の方向か…2017年4月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2017/05/11 15:28

内閣府は2017年5月11日付で2017年4月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して48.1を計上したが、基準値の50.0を下回る状態は維持された。先行き判断DIは先月比で上昇し48.8となったが、こちらも基準値の50を下回った状態が継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる。先行きについては、人手不足やコストの上昇に対する懸念もある一方、引き続き受注や設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年3月調査(平成29年5月11日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年4月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス0.7ポイントの48.1。
 →原数値では「良くなっている」「変わらない」が減少、「やや良くなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。原数値DIは50.4。
 →詳細項目はすべてで前月比プラス。上げ幅は「飲食関連」が最大の3.3ポイント。基準値の50.0を超えた詳細項目は「雇用関連」のみ。

・先行き判断DIは先月比でプラス0.7ポイントの48.8。
 →原数値では「良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少、「良くなる」「やや良くなる」が増加。原数値DIは50.4。
 →詳細項目では「飲食関連」「サービス関連」「住宅関連」がマイナス。最大の下げ幅は「サービス関連」の1.1ポイント。最大の上げ幅は「雇用関連」の2.2ポイント。基準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「サービス関連」「製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

大きな環境変化を与える近しい出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の下げ原因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。ただし最近では少しずつ低迷感を覚えさせる動きを見せており、景況感の悪化が数字となって表れてきた雰囲気ではある。

現状、先行き共に小幅な上昇


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年4月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年4月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では上記の通り、産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形となっている。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示しており、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念される。

もっとも最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、じわりと原油価格は下落の値動きに転じており、利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。

今回月の現状判断DIは総計で上昇、詳細項目もすべて上昇の動きを見せている。金額的に大きな影響を及ぼす「住宅関連」や、市民生活にもっとも身近な項目の「飲食関連」の上げ幅が大きいが目に留まる。

景気の先行き判断DIは大よその項目で小幅な上昇。下げている詳細項目も下げ幅は限定的。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年4月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年4月)

マイナスは詳細項目では「飲食関連」「サービス関連」「住宅関連」の3項目。下げ幅は「サービス関連」が最大のマイナス1.1ポイント。「雇用関連」は基準値の50.0を超えさらに上向きの気配を見せているのが頼もしい。

値上げとコスト上昇が懸念。人材不足は解消に向かうか


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・外国人観光客に引っ張られている構図は依然として変わらないが、国内の客の動きも手ごたえを感じる(都市型ホテル)。
・インバウンドの好調もさることながら、来客の固定客化が進み、来客数全体の60%を優に超えている。それに伴い、来客数が前年比で2けた近い伸びを示している(百貨店)。
・4月からエコカー減税の基準が厳しくなっており、新車の販売量が伸び悩んでいる(乗用車販売店)。
・客の商品選択が、一時期の質重視から低価格重視に移ってきている(通信会社)。

■先行き
・6月後半からはボーナス商戦が始まり良くなる(乗用車販売店)。
・現段階における予約状況から推測される今後2〜3か月先の客室稼働率は、今月より実績の前年比プラス幅が大きくなる見込みである(観光型ホテル)。
・乗務員不足による稼働率低下の影響がますます大きくなってきているため、今後も4月と同じような状況が続く(タクシー運転手)。
・人手不足や原料の仕入価格アップに対して、中長期的な有効策がない。このような状況下において、突発的な対策が売上高の維持につながったとしても利益は残らない(一般レストラン)。

前月と比べると人材不足の話は割合的には減ったものの、まだ少なからぬ数が見受けられる。ただし人材不足を語る企業が不足感にどのような対策を打った結果なのかが分からないので、判断は難しい(単純にこれまでの求人と同じような条件では、雇用市場のバランスが変化した状態においては応募者は集まらず、人材不足となるのは当然)。

企業回りの景況感では高安まちまちといったところ。業態により景気の良いところと悪いところがあるように見受けられる。またデフレ脱却の中での対応、姿勢が功を奏したか否かもありそうだ。

■現状
・積極的な設備投資、新製品開発、既存品のバージョンアップが顕著にみられている(電気機械器具製造業)。
・受注が落ち着いてきている。年度始めで、顧客も動きにくそうである。問い合わせの状況から、土地の動きもやや悪いと感じる(建設業)

■先行き
・来月から新規受注が入る予定であり、2〜3か月後に新しい機械を入れるため、受注量増加が見込まれる(出版・印刷・同関連産業)。
・主要取引先の春の定期修繕がほぼ終了し、自動車部品メーカーを中心に輸出の好調を受け、当初計画の1割相当の受注量増加となる(化学工業)。

人材に関わる面では不安要素が多かった前月と比べると、見通しは明るめに見える。

■現状
・製造業を中心に、求人数は増加傾向にある(職業安定所)。

■先行き
・前年度に新卒採用を充足できていない企業が多かったことから、企業の採用意欲が更に上向くとみられる。学生にとっては今年も追い風が吹いている(学校[大学])

雇用市場はおおむね企業側の人手不足、売り手市場状態であるのが分かる。

他方全国の雇用関連のコメント詳細を確認すると、ミスマッチの多さを嘆いたり、技術を持った人材の不足感が大きいとの話が見受けられる。失われた20年、あるいは30年において人材の層が薄くなっている年齢層があり、それが足かせとなっている様子がうかがえる。景気の足を引っ張る可能性も言及されているが、まずは求人の条件を(さらに)上げてみてからではないかとの感もあるのだが。

ネット界隈の受けはさほど良くなかった「プレミアムフライデー」だが、今回月は連休との重なりもあり、実体化した影響はさほどなく、文言が確認できたコメントはゼロだった。次回、つまり5月末においては、祝祭日が長期間存在しない期間におけるものであることから、それなりの底上げがあることに期待したい。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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