現状も先行きも上向く…2016年10月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2016/11/10 05:26

内閣府は2016年11月9日付で2016年10月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して49.3を計上し、水準値の50.0を下回る状態は継続する結果となった。先行き判断DIは先月比で上昇して51.4となり、こちらは水準値の50を上回る形に。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「持ち直している。先行きについては、一部には燃料価格などコストの上昇等への懸念があるものの、受注や求人増加の継続等への期待がみられる」と示された。なお今回発表分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成28年10月調査(平成28年11月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年10月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス3.0ポイントの49.3。
 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。「やや良くなっている」「変わらない」が増加。
 →詳細項目は「小売り関連」が大きく増加し、家計動向関連は「住宅関連」以外はプラス。企業動向関連は「製造業」「非製造業」共にプラス。水準値の50.0を超えた項目は「雇用関連」と企業動向関連の双方とも。

・先行き判断DIは先月比でプラス1.5ポイントの51.4。
 →原数値では「やや良くなる」「悪くなる」が増加。「やや悪くなる」が減少。
 →「サービス関連」のみ減少でそれ以外は増加。「飲食関連」の上げ幅が4.2ポイントで最大。水準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「飲食関連」「住宅関連」以外。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

近しい環境変化を与える出来事としては、今年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、いくぶんの持ち直しを見せている。とはいえまだ円高は続いており、海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は大きい。水準値の50.0を超えた項目がほとんど無いのも、その実情の表れではある。さらに先日実施されたアメリカ合衆国の大統領選挙の結果、激しい株安と円高が生じており、直近ではこの影響はもちろんだが、新大統領の今後の動向も合わせ、大いに気になるところではある。

なお冒頭で触れた通り、今回発表分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、イギリスショックの急落からは大よそ回復したかのようには見える。ただし今後の状況は上記の通り、不透明ではある。

水準値超えは現状、先行き共に雇用関連のみ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年10月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年10月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに2年以上が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では1バレルあたりの価格が30ドルから50ドルの間を行き来するボックス圏に移行しており、ある程度の安定感の中での、あまり安すぎず、さりとて高値ではない状態を示しているのが幸いといえば幸いではある。

他方、上記にもある通り、国民投票を受けてイギリスのEU離脱問題やそれに絡んだ同国、さらにはEU全体の政治的混乱が多方面に波及し、為替は大きく円高に振れ、株価もリスク回避の流れを受けて売り込まれて下落。それらの要素はほぼすべて、日本にとってはマイナスの要因として降りかかり、消費者の消費マインド、企業の業務見通しに大きな影を差した。もっとも現在では円高こそ続いているものの、直接のパニック的な不安感はほぼ復調し、あとは為替のゆるやかな回復(円安化)を待つ状態となっている。

今回月の現状判断DIは家計動向関連では幅こそ違えど「住宅関連」以外はプラス、企業動向は製造・非製造双方ともプラスとなり、堅調な歩みを見せる形となった。先行指標の役割も果たしている雇用関連はプラスを維持しており、水準値の50を超えているのは安心感を上乗せしてくれる。

景気の先行き判断DIは現状よりもさらにポジティブな値動き。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年10月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年10月)

家計動向関連では「サービス関連」のみがマイナス。企業動向も現状同様に双方ともプラス。雇用も上昇を継続。為替のさらなる適正値化(円安化)による底上げが望まれるところ。

景況感の良さとボーナスへの期待と天候の回復と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・例年10月は繁忙月だが、今年はインバウンドも含めた団体客が非常に多い。またインターネット予約も好調で、近年まれにみる状況となっている(都市型ホテル)。
・天候に恵まれて来客数が多く、生活雑貨関連、飲食店などはその好影響を受けている。そのため、物販関係全般に多少の明るさがみられている(商店街)。
・天候がやや落ち着いてきているため、売上が多少増えている。これがずっと続いてもらえればありがたい(南関東)。
・来客数もそれほど伸びていないうえ、成約件数が非常に伸び悩んでいるため、販売件数もおのずと減少している(住関連専門店)

■先行き
・ここ数か月先の予約状況や、周辺の飲食店の動向からは、前年に比べて早い時期からの予約が取れている。また、大型予約も入っているため、景気はやや良くなっていくとみている(高級レストラン)。
・年末の商戦期を迎えて、客からの引き合いが増えることを見込んでいる。また、今月からスタートした新サービスによって、更にそれが加速されると考える(通信会社)。
・客の財布のひもが緩む要素は見当たらないが、大手企業の冬季ボーナスが前年よりも増えるといわれているため、ボーナス商戦に期待している(家電量販店)。
・海外へ旅行するには年末年始の日並びが悪く、1月3日以降の単価の安い日に集中しそうな状況(旅行代理店)。

今回月では前月の相次ぐ台風による影響も過ぎ、その痛手は残るものの、さらなる被害の上乗せは無く、天候も回復基調に。それに伴う客足の戻り、安定化などの意見が複数寄せられている。それと共に遠出が関係する商売の堅調さが多数見られ、行動意欲の盛り上がりが感じられる。現行・先行き共にDI値が高めに動いているのも理解はできる。

他方、上記では取り上げていないが今回の現状・先行き指数の動向にもある通り、企業や雇用方面でも景気の良い声が多分に見られる。全国のダイジェスト的な一覧でも「全業種において新規求人が増えているが、中でも労働者派遣業を含む製造業や娯楽業の求人が増加している」「早くも次年度向けの就職サイトがオープンするなど、活気が感じられる」などのコメントが確認できる。

円高が落ち着きを見せ始めたようで、コメント中の「円高」の登場も減少。前回月は重複込みで6件だったが、今回は3件に減っている。



今年の動向を振り返ると、原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落、世界規模の市場下落、さらには為替の円高化、来年に迫った消費税率引上げにより、景況感は大きな減退を経験していた。

その後消費税率の引き上げ延期はなされたが、原油価格はじわりと上がり、4月の熊本地震、そして6月のイギリスのEU離脱への動きにより、為替と共に株価は大きく下落し、経済的な見通しもかなり怪しげな雲行きとなったことは否めない。今回月ではイギリスの動向そのものへの不安感はほぼなくなったが、株価の低迷と円高は続いており、これが多分に景況感の足を引っ張っている。さらに相次ぐ台風の上陸による影響、とりわけ北海道で多々伝えられている被害の大きさは、今後同地域だけでなく全国の景況感に作用している。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。昨今では可処分所得を削り取る大きな要素となる社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

なお今回の景気ウォッチャー調査からは季節調整値による各種算出と解説がメインとなっている。季節動向に合わせた景況感の変化が、より強く数字に反映されることになろう。また今回分発表日の11月9日(日本時間)ではアメリカ合衆国における大統領選挙が実施され、その動向を受けて市場は大きな変動を見せた。来月以降も選挙結果を受け、小さからぬ景況感の動きがあることは容易に想像できよう。


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