第三波の勢いと緊急事態宣言の再発出でさらに下落…2021年1月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2021/02/08 15:40

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2021-0208内閣府は2021年2月8日付で2021年1月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し31.2を示し、基準値の50.0は下回る状態となった。先行き判断DIは前回月比で上昇して39.9となり、基準値の50.0を下回る状態は継続している。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、このところ弱まっている。先行きについては、感染症の動向に対する懸念がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和3年1月調査(令和3年2月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2021年1月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス3.1ポイントの31.2。
 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは30.1。
 →詳細項目は「住宅関連」以外の項目が下落。「小売関連」のマイナス5.2ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でプラス3.8ポイントの39.9。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは41.5。
 →詳細項目はすべてが上昇。「製造業」のプラス1.3ポイントが最小の上げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、流行第三波の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降今回月も含めて下落を継続中。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。12月以降は上昇に転じているがその歩みは遅く、基準値まではまだ遠い。

現状・先行き判断DIともに全詳細項目が基準値割れ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2021年1月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2021年1月)

昨今では新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化からの回復期待で少しずつ盛り返しを示していたが、2020年11月以降は流行の第三波到来が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。今回月の2021年1月も「住宅関連」以外の全詳細項目で前回月比でマイナスとなった。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。2020年10月時点では5項目もあったのだが。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年1月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年1月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。全項目で前月比にて上昇しているが、2020年11月に生じた大幅下落からの反動が12月同様に続いている程度の勢いでしかない。

緊急事態宣言の発出が大きな影響


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・寒さのお陰で暖房商品の売行きが好調である。白物家電を中心に単価が高くなっていて、黒物家電も前年並みである。よって、前年よりも少し好調である(家電量販店)。
・緊急事態宣言の発出以降、午前中と18時以降の来客数が大きく減少している。月全体でも来客数は前年の約40%となっている(百貨店)。
・当地区は時間短縮営業の要請があり営業時間は22時までだが、実際は21時頃に営業を終えているので、来客数は通常よりも激減している(一般レストラン)。
・再度の緊急事態宣言の影響で、特に夜の人出がないためタクシー利用がなく、当社では夜間の営業を中止している。昼間は通勤に利用する程度で、例年の半分ほどである(タクシー運転手)。

■先行き
・新型コロナウイルス感染者数が大きく減少し、緊急事態宣言期間が終了すれば、来客数が少しずつ回復する。また、ワクチン接種がスタートすれば景気には追い風になる(百貨店)。
・今後も新型コロナウイルスに対する警戒が続き、内食需要は高い水準を維持する(スーパー)。
・外出自粛が影響し、新しい衣料品を購入することも減少するため、客の動きが悪い状態が続く(衣料品専門店)。
・緊急事態宣言の解除が見込めず、2-3月の学生団体などにキャンセルが出始めている。観光客の回復につながる要件も全く見当たらない(テーマパーク)。

新型コロナウイルス流行第三波の影響拡大と再度の緊急事態宣言発出で、景況感の足かせがより重たいものとなったことがうかがえる。また、早期の事態収束は難しいとの判断から、春先の予定をキャンセルする動きも出始めている。他方、緊急事態宣言の終了やワクチン接種による好影響を期待する声も確認できる。

一方で内食需要の堅調さは今後も維持されるだろうとの観測もあり、興味深い。

企業動向でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状
・一部の客は新型コロナウイルスの影響を受けて出荷数量の減少が続いているが、全体的には回復傾向にあり、特に海運関係の客は前年同時期の出荷数量を上回っている(輸送業)。
・年が明けても家庭消費向けの市販用は引き続き好調だが、2度目の緊急事態宣言の影響か、外食向けを中心に業務用が大幅に前年割れで推移している(食料品製造業)。

■先行き
・少しずつではあるが、止まっていた北米自動車向け設備投資計画も動き始めた(一般機械器具製造業)。
・すべては新型コロナウイルスの終息にかかっている。出勤率を抑えているテナントのほか、業績の悪化により事務所を解約したいと申し出るテナントが出てきそうで、この先の見通しは暗い(不動産業)。

企業動向もまた新型コロナウイルスの終息、ワクチン接種状況頼みなのが実情。他方、家庭消費向け、つまり内食の堅調さは企業動向からも確認できる。

雇用関連でも新型コロナウイルスの影響がうかがえる。

■現状
・新型コロナウイルスの影響により、周辺企業の求人は大きく減少している。介護、福祉業界では、現在でも募集広告を掲載している企業はある(求人情報誌製作会社)。

■先行き
・自動車関連の製造は求人の改善が見受けられるが、卸売や小売、飲食、宿泊業の求人が抑制されているため、景気全体としては変わらない(職業安定所)。

雇用市場は景況感を先読みする傾向があるため、現状において「周辺企業の求人は大きく減少している」との表現があるのは大いに懸念すべきもの。他方、現状・先行きともに、調子がよい業種やそうでない業種が明確化しているのが興味深い。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントで7件(前回月7件)、先行きのコメントで1件(前回月1件)の言及がある。新型コロナウイルスの第三波の影響が気になり、消費税の話など二の次になっている感はある。

他方新型コロナウイルスに関しては現状で602件(前回月620件)、先行きで917件(前回月931件)。凄まじいまでの言及数で、消費税率の引き上げも米中貿易摩擦もすべて吹き飛んでしまった状態。特に流行第三波到来と緊急事態宣言の発出で、足元に火がついている人が増えている。一方で「ワクチン」に関しては現状で7件、先行きで113件の言及があり、今後の状況好転の鍵として大いに期待されている感はある。そのものズバリ「変わらないを選んだが、新型コロナウイルスのワクチン次第であり、どちらともいえないという意味合いである」とのコメントもあるほど。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の終息とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが終息点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、終息という様式を取ることになるかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、一刻も早い事態の終息を願いたいものだが。


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