現状も先行きも水準値を下回る、海外情勢への懸念が足を引っ張る形に…2017年1月景気ウォッチャー調査は現状横ばい・先行き下落

2017/02/09 05:22

内閣府は2017年2月8日付で2017年1月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して49.8を計上し、水準値の50.0を下回る状態となった。先行き判断DIは先月比で下落し49.4となったが、こちらも水準値の50を下回ることに。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、引き続き受注や求人増加等への期待があるものの、海外情勢への懸念の高まりがみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年1月調査(平成29年2月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年1月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス1.6ポイントの49.8。
 →原数値では「良くなっている」「やや良くなっている」が減少。「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。
 →詳細項目は「小売関係」がわずかにプラスでそれ以外は1から4ポイントの減少。水準値の50.0を超えた詳細項目は「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でマイナス1.5ポイントの49.4。
 →原数値では「良くなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。
 →詳細項目では「飲食関連」のみ増加でそれ以外は減少。特に「雇用関連」の5.3ポイントの下げが大きい。水準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

近しい環境変化を与える出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は大きい。例えばアメリカ合衆国の大統領選挙の結果を受け、今後同国の経済政策がいかなる変化を見せるのかに関して波乱を予想させる情報が相次ぎ、さらに不透明な部分は大きく、大いに気になるところではある。また産油国の生産調整合意に伴い、原油価格の上昇が生じており、それを起因とする燃料コストの上昇リスクも懸念材料ではある。その上、アメリカ合衆国の選挙結果に刺激される部分もあり、欧州の政治リスクも高まりを見せており、これもまた十分以上の不安材料となっている。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の下げ原因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復したかのようには見える。ただし今後の状況は不透明な部分が多いのは否めない。

現状、先行き共に小幅な値動き


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年1月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年1月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では上記の通り、産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形となっている。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示しており、輸送分野をはじめと各方面への影響が懸念される。

今回月の現状判断DIは総計で下落、詳細項目も大よそ下落の動きを見せている。先行指標の役割も担う雇用関連が大きな下げ幅を示したのが気になるところ。

景気の先行き判断DIも現状と同じような値動きを示している。奇しくも「雇用関連」が一番の下げ幅を計上した点まで同じ。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年1月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年1月)

プラスは詳細項目では「飲食関連」のみ、あとはすべてマイナス。下げた詳細項目では「雇用関連」が一番大きな幅で5.3ポイントの下落だが、それ以外は2ポイント以内に留まっている。現状と合わせ下げたことに変わりは無いが、明らかに勢いをつけた形での動きではなく、もみ合いの中の下落感はある。

季節感のある天候は景況感には良し悪し、海外要因への懸念多し


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・気温低下に伴い、コートなどの秋冬実需商品がようやく動き出し、衣料品の売上が持ち直してきた。また株高の流れから、宝飾品の売上の減少に歯止めがかかった。インバウンドについても円安傾向が続いており、12月の最終週より、前年比増に転じている(百貨店)。
・今月は2週にわたる寒波襲来でキャンセルが多発し、予想した宿泊客数を大きく下回っている(都市型ホテル)。
・月初は気温が高めで冬物衣料クリアランスの動向が懸念されたが、順調な動きを見せ、前年超過で推移している。月末は前年より春節期間が10日程度前倒しとなり、外国人観光客の動員も順調となった(百貨店)。
・大雪の影響もあり来客数は減少している。雪の日以外の来客数には変動はない。年末年始の出費の影響からか、客が手にとるのは低単価な商品が増えている(スーパー)。

■先行き
・例年の同時期と比べて、先行受注の問い合わせ件数が多いことから、今後についてはやや良くなる(旅行代理店)。
・米国を始め世界情勢に変化が表れ始め、経済的にも不安要素が多く、自動車業界にも大きな影響がある。2月の日米首脳会談に注目している(乗用車販売店)。
・婚礼や一般宴会は、4月以降の予約が前年と比較して伸び悩んでいる。一方、宿泊需要は受注客数が好調である。円高などのリスクが顕在化しない限り、インバウンドはこのまま好調をキープすると予想される(高級レストラン)。
・税制改正により、エコカー減税の軽減率が下がるため、該当する車種の販売量の落ち込みを懸念している(乗用車販売店)。

前回月と比べて気温が平年通りに下げ始め、冬らしさを覚えさせる状況となったこともあり、季節商品の回転が良くなったとの言及が見られる一方、その寒さで客足が遠のくとの話もあり、自然には逆らい難い、人間の力の限界を重いし晒される。また株価が復調しはじめたことを受け、売り上げが伸びた、財布のひもが緩んでいるように見えるとの好意的意見は多く、一部で言われている「株価の上昇は富裕層のみにプラスへと影響する」との説は的外れであることがうかがえる。

興味深いのは雇用関連の言及で、企業の人材需要は堅調な一方で「派遣を希望する求職者が増えていない」との文言が確認できること。雇用市場を見定め、正社員としての雇用を希望する声が高まりを見せていると解釈すればよいだろうか。先行きの雇用関連で「政府の打ち出す働き方改革、同一労働同一賃金を受けて、県内大手事業所が契約社員を正社員化し、人材確保する動きがある」「労働契約法や改正労働者派遣法の影響で、徐々に直接雇用への切替えが進む可能性も高い。継続的な派遣活用が見通せなくなると企業からの派遣求人依頼数が減少し、採用時から直接雇用化を望む企業が増加してくる」などの文言が見受けられる。

他方、米国の新大統領の施策動向や、欧州情勢への不安定感による先行き不信感を覚える声も、特に企業動向関連では少なくない。例えば現状で「自動車関連を中心に動きは良いが、米国の新大統領による自動車産業への方針などに、やや不安がある」、先行きでも「米国の新大統領就任による影響を見極めたいと考える企業が多く、慎重な姿勢が大半を占め、業況感はやや低下する見通し」「米国の新大統領就任による影響で、設備投資の先行きは不透明感が高まっている」などの言及が確認できる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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