現状も先行きも上昇。人手不足はまだ継続中だが…2017年6月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2017/07/10 15:00

内閣府は2017年7月10日付で2017年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して50.0を計上し、基準値の50.0と同じになった。先行き判断DIは先月比で上昇し50.5となり、基準値の50を上回ることとなった。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いている。先行きについては、人手不足に対する懸念もある一方、引き続き受注や設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年6月調査(平成29年7月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス1.4ポイントの50.0。
 →原数値では「良くなっている」「分からない」が減少、「やや良くなっている」「悪くなっている」が増加。原数値DIは49.9。
 →詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」が小幅なマイナス。上げ幅は「雇用関連」が最大の3.0ポイント。基準値の50.0を超えた詳細項目は「住宅関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でプラス0.9ポイントの50.5。
 →原数値では「良くなる」「やや悪くなる」が減少、「やや良くなる」「変わらない」が増加。原数値DIは51.5。
 →詳細項目では「住宅関連」「雇用関連」がマイナス。最大の上げ幅は「飲食関連」の2.3ポイント。基準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

大きな環境変化を与える近しい出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今では昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化、そして朝鮮半島情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが心配される。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状、先行き共に小幅な上昇


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年6月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年6月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、さらに中東情勢の緊迫化で原油減産の協定が有名無実になるのではとの懸念もあり、じわりと原油価格は下落の値動きに転じている。少なくとも利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。

今回月の現状判断DIは総計で上昇、詳細項目では「飲食関連」「サービス関連」が下落している。しかし下げ幅は限定的で1.0ポイント未満で済んでいる。他方上昇している詳細項目はそれ以外で、「製造業」「非製造業」と企業動向が共に上昇しているのが頼もしさを覚えさせる。金額的に大きな影響を及ぼす「住宅関連」がやや大きめのの上げ幅なのも注目に値する。

景気の先行き判断DIは大よその項目で小幅な上昇。下げている詳細項目は2つだけで下げ幅は限定的。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年6月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年6月)

マイナスは詳細項目では「住宅関連」「雇用関連」だけ。「雇用関連」の下げ幅が1.8ポイントなのはやや気になるが、それでも基準値は超えている。プラスはそれ以外で、最大の上げ幅は「飲食関連」の2.3ポイント。先月から継続した上昇で、今回月ではついに基準値を上回る形となった。

景況感の良い話がちらほら


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・梅雨入り後も晴天が続き、衣料品や身の回り品に加え、お中元ギフトの受注も順調に推移しており、月末からのクリアランスセールにも期待がかかる。また、インバウンド売上も相変わらず好調である(百貨店)。
・新型車効果で、新車販売台数が堅調に推移している。今月上旬に宣伝費用をかなりかけて新型車の催事を実施した。目標以上の実績が確保できた(乗用車販売店)。
・3か月前と比べて、あるいは例年と比べても来客数が増えており、梅雨時期に入っても比較的天候が良いので持ち家を検討する客が比較的よく動いている(住宅販売会社 )。
・今まであまり売れなかった、低価格商品ばかりがよく売れている。夜もアルコールを注文する人が少なかったため、売上の伸びが芳しくない(一般レストラン)。

■先行き
ボーナス商戦時期であることや訪日外国人の消費、夏休みの旅行シーズンで航空機やホテルなどの空席が少ないことから、やや良くなる(旅行代理店)。
・予約状況から現状の売上は前年と同程度になると見込んでおり、先行きで増加となることは確実である。また、前年に比べてインバウンド予約も増えているので、それに伴った売上も増加する(一般レストラン)。
・新型車効果が続き、新車販売が好調に推移するとみている(乗用車販売店)。
・受注に関して、伸びる要因が見つからない。過去に取引があった関係先からの受注が多く、飛び込み客が少ない(住宅販売会社)。

天候の良さといった乱数的な要素以外に、ボーナスによる底上げやインバウンドによる業績の堅調さなど、景気の良い話も散在している。他方、同じ業界でも良い話と悪い話が併記されているケースもあり、環境や個別の事情で浮き沈みが生じていることもうかがえる。

企業回りの景況感では良さげな話が多く見受けられる。特需的な影響を受けている業界もある。

■現状
・2018年末から始まる4K・8Kテレビ放送に対応するため、伝送路の光化や広帯域化が必要となり、ケーブルテレビ事業者の設備投資意欲が盛んになりつつある(電気機械器具製造業)。
・倉庫関連を中心に荷動きが出ており、特に飲料系の動きが堅調になっている(輸送業 )

■先行き
・公共工事の入札案件の出足が順調であり、今後も土木工事関係の受注が期待できる(建設業)。
・新規案件が続々と立ち上がり、現在金型を製作中である。数か月後の量産に期待している(プラスチック製品製造業)。

特に倉庫周りの動きは注目すべき動きで、今夏の猛暑を予想し、飲料系の需要が高まるのではないかとの期待がされているようだ。全国の他のコメントを見ても、「このまま梅雨の晴れ間が続けば、飲料、アイスクリームなどの販売量増加が見込まれ、7-8月の盛夏への売上拡大が期待できる(コンビニ)」などとあり、飲料に限らず夏向けの冷えモノは大きな動きを見せそうではある。

人材不足の話は割合的には減ったものの、まだ少なからぬ数が見受けられる。ただし前月と比べるとネガティブな声は減っている。

■現状
新規求人数の前年比が減少傾向にあったが、直近になり増加傾向に転じている。特に福祉分野では施設の新設に伴う増員のための新規求人などもあり、補充も含めて新規求人の伸びが目立っている(職業安定所)。

■先行き
・今後の製造計画等に変化がなく、今と変わらない状況であるが、派遣単価が低く、徐々に求職者が減少し、派遣売上が減少するとみている(人材派遣会社)。

派遣関連では時給が頭打ちの値動きを見せていることも確認されており、需要の減退が推定できたが、それを裏付けるコメントではある。「相変わらず人材が足りないが、企業側も支払を変えるつもりがないため、マッチングが難しい(人材派遣会社)」などの話もあり、派遣に対してはこれ以上の対価を支払う価値を見出せないと企業側でも判断している節(つまり高額ならば正規として雇った方が良い)が見受けられる。労働需要が非正規から正規へのシフトを見せているのだろう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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