コスト高や米中貿易摩擦への懸念継続するも年末年始へのイベント期待高まる…2018年11月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2018/12/10 15:47

2018-1210内閣府は2018年12月10日付で2018年11月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し51.0を計上、基準値の50.0を上回ることとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して52.2となり、基準値の50.0を超える状態は維持する形となった。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「緩やかに回復している。先行きについては、コストの上昇、通商問題の動向等に対する懸念もある一方、年末年始のイベントなどへの期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成30年11月調査(平成30年12月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2018年11月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス1.5ポイントの51.0。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは49.0。
 →詳細項目は「非製造業」のみが下落。「住宅関連」のプラス3.8ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「小売関連」以外すべて。

・先行き判断DIは前回月比でプラス1.6ポイントの52.2。
 →原数値では「ややよくなる」が増加、「やや悪くなる」が減少、「よくなる」「変わらない」「悪くなる」が同率。原数値DIは50.4。
 →詳細項目では全項目が上昇。「飲食関連」のプラス3.2ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている項目は全項目。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、2016年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ原油価格動向をはじめとする海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。特に昨今では米中の貿易摩擦の激化が懸念材料となっている。また消費税率の引き上げに関連する形での消費減退の懸念も、消費動向に影響を与えてきそうではある(直前の駆け込み需要への期待はあるが、その期待と結果が大きいほど、消費税率引き上げ後の減退度合いもまた大きくなる)。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からはおおよそ回復している。昨今では現状判断DIにおいてやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる動きにあるのが気になるところ。

昨今では現状がやや弱め


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2018年11月)
↑ 景気の現状判断DI(-2018年11月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに4年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関する合意を受けて原油価格は上昇し、1バレルあたりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

その後は石油産出国の協調減産の動きを受け、さらに中東情勢の緊迫化もあり、原油価格は少しずつ上昇を示していた。原油価格の上昇にあわせて活動が活発化し市場の調整役・頭を押さえる役割を果たしている米国内のシェールオイルの採掘による生産量の増加も、影響は限定的。結果として日本国内のガソリンや灯油価格も上昇の動きに。米国内のシェールオイルの生産量がさらに増加を続け、1970年以来最大の量を記録したとのEIAの報を受けて原油価格は一時的に頭打ち、さらには下落の動きを示した。

しかしアメリカ合衆国の景況感の堅調さから生産量増加分も打ち消しになるのではとの思惑が強まり、さらにはシリアとイスラエルの紛争激化やアメリカ合衆国のイラン核合意からの離脱とイランへの経済制裁再開など中東情勢の緊迫化から、原油価格は一転、高値感を見せた。ところがOPECの原油生産量が軒並み増加し、さらにアメリカ合衆国も生産量を増やし、2019年以降の需要が減退するとの予測もなされたことから、原油価格は急落の動きを示しているのが現状。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から1.5ポイントのプラス、詳細項目では「非製造業」のみが下落。もっとも大きな上げ幅は「住宅関連」による3.8ポイント。「北海道胆振東部地震」「台風21号」によって大きく値を落とした2018年9月の反動がまだ続いていると解釈できる。

景気の先行き判断DIは詳細項目では全項目が上昇。上げ幅は「飲食関連」の3.2ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2018年11月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2018年11月)

今回月で基準値を超えている詳細項目はすべての項目。

年末商戦と来年の10連休に向けた期待


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・11月は晴天に恵まれ、単価も高く推移している(コンビニ)。
・平成30年7月豪雨災害の影響を受けたが、13府県ふっこう周遊割で、客が動き出した(旅行代理店)。
・観光客が戻ってきており、外国人観光客の姿もみられるようになってきた。11月は3連休があったこともプラスとなり、来客数は前年を27%上回った。また、ランチタイムの回転率を上げるために若いスタッフが取り組んでいる様々な取組の結果も実績として表れてきた(高級レストラン)。
・暖冬のせいなのか、11月は暖房機などの動きが鈍い。販売額も前年を下回った(家電量販店)。

■先行き
・これまで衣料を中心に買い控えが起こっていたこともあり、年末は前年を上回る平均支給額のボーナスが出るということで、多少は購買意欲が出てくると期待している(百貨店)。
・ゴールデンウィークの海外旅行の問合せが増えてきている。長期休暇になるので、ヨーロッパ、アメリカなど単価が高く利益率の高いものが動きそうな気配である(旅行代理店)。
・予約状況も良く年末に向けて期待がもてる。また、客からも景気低迷の話題はない(一般レストラン)。
・暖冬の予報が出ており、季節商材の動きが悪くなると業績に影響する(スーパー)。

2018年8月には「平成30年7月豪雨」、そして9月では「台風21号」「北海道胆振東部地震」と、自然災害による影響が立て続き、景況感を大きく引っ張られる形となったが、それらの被害を受けた地域の景況感の回復ぶりを感じさせるコメントが確認できる。また、来年のゴールデンウィークは10連休になることから、それに向けた動きが早くも見受けられる。一方でエルニーニョ現象が発生し今冬は暖冬になるとの予報が出ており、実際季節外れの温かい日が続いたこともあり、冬物の動きが鈍いとの話も複数確認できる。

企業関連の景況感では人材不足への懸念が続く一方で、その対応で活況となる業界の話もある。

■現状
・新酒の販売が順調に推移しているのに加え、東南アジア、ヨーロッパへの輸出が、徐々に増加し始めている(食料品製造業)。
・建設資材の価格高騰や不足が続いているほか、職種によっては人手不足も慢性化している(建設業)。

■先行き
・国内の人手不足の対応に対する投資意欲は順調で、当面は今の状況は続くと思われる(電気機械器具製造業)。
・世界情勢不安による燃油価格の高止まりもあるが、既存客を含めた物量が相対的に拡大している(輸送業)。

「人手不足の対応に対する投資意欲(電気機械器具製造業)」で活況なのはタイムレコーダー業界のことだろうか。意外なところで需要が生まれているようだ。他方、原材料価格の上昇や人件費の高騰が生じており、影響が生じているとのコメントも確認できる。全体的なコストアップが企業の思惑に影響しているようである(まさにインフレ化に向けた動きに他ならないのだが)。

雇用関連では人手不足の現状を推し量れる意見が見受けられる。

■現状
・派遣依頼数が堅調に伸びている。さらに、依頼の件数だけではなく、1件あたりの依頼人数も増えている(人材派遣会社)。

■先行き
・正式に大阪万博の開催が決定したことで、現在でもかなり多いインバウンド需要が更に増える見込みとなるため、準備のための採用募集なども増える(新聞社[求人広告])。

企業も可能ならば流動性の高い人材を欲するのは道理であり、不足する人材を派遣に求めるとの考え方は理解できる。もっとも求職する側は「正規社員としての求人が多々ある現状なら、派遣社員の選択をする必要は無い」と考えるのが実情で、人材派遣会社のやりくりも一層大変なものとなるだろう。

他方、大阪万博という大きなイベントで、さらに雇用の増加が期待できるとの言及があるのには注目したいところ。市場へ投入する資金をケチらなければ、雇用市場はさらに活性化するに違いない。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計39件、先行き計59件、合わせて98件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好14件、やや良好38件、不変90件、やや悪い19件 悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

景気の現状に関して人手不足に言及するコメントを精査すると「労働市場全体の人手不足ともあいまって、非正規から正規への動きや、年収のアップが一部で実現している」「サービス業は相変わらず人手不足であるが、同業界の採用形態はパート、アルバイト、契約社員等が多く、正規採用の企業が少ない。こういった状況の是正が必要である」「慢性的な人手不足はあるものの、機械設備の導入などにより順調に業績を伸ばしている。また、数年ぶりに新卒者の採用を見込んでおり、職場が活気付くと同時に、若い人材の育成によって、更なる生産性向上を期待している」のように、人手不足の実情を的確にとらえ、労働環境の改善を図り、業界の構造改革を推し量ろうという好ましい動きが見られる一方で、「パートやアルバイトの時給を大幅に上げて求人広告を出してみるものの、飲食業などでは全く反応がない店も多く見受けられる」「企業の採用意欲は高いが、求職者の減少もあり人手不足が深刻化している。特に中小零細企業に人が集まらないとの声を聞く」のように、業界そのものの問題なのか、それとも企業の思惑が見当違いや力不足の結果によるものなのかは分からないが、人手不足という現状に対応しきれないケースも見て取れる。

さらに「人手不足に関しても、外国人労働者の活用が目立つ」「製造業の事業所を訪問しても、いずれも外国人労働者を採用し、更に今後の増員を検討している」のように人手不足に外国人労働者の雇用で対応するというケースも目に留まるようになったが、これが単に労働市場における求職者不足のために外国人労働者にも求人対象を広げた結果によるものか、企業側が提示する労働対価が旧来のような低水準のままでも雇用できる存在だからなのか、文面からだけでは判断しかねるが、色々と考えさせられる。

コメントには人手不足の現象が多分に求職側における環境改善が求められているとの労働市場のシグナルであるにもかかわらず、雇用市場の変化に対応しようとしない、できない企業において、人手不足感が強いとの印象を受けるものが少なからず見受けられる。他方、現状を見据えた上で問題意識を明確にし、状況改善へとかじ取りをする企業の動きや状況認識もある。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで156件もの言及が確認できる。駆け込み需要への期待の声もあるが、おおよそネガティブな内容であり、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は皆無であり、これが現状なのだろう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。また米国の貿易政策、特に米中貿易摩擦の激化に多くの企業が直接、間接的に懸念を持っている。双方とも景況感、消費にはマイナスに作用するだけに始末が悪い。今回月の景気の先行きのコメントで「米中貿易摩擦」に言及しているのは7件に及んでおり、そのほとんどがマイナスの影響を懸念、あるいは実体験している。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿に変わるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


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