海外情勢や消費税率引き上げへの不安強まる…2019年7月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2019/08/08 15:30

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2019-0808内閣府は2019年8月8日付で2019年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し41.2を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続。先行き判断DIは前回月比で下落して44.3となり、基準値の50.0を下回る状態は維持されている。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「天候など一時的な下押し要因もあり、このところ回復に弱い動きがみられる。先行きについては、消費税率引上げや海外情勢などに対する懸念がみられる。」と示された。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感のネガティブさが5か月連続する形となっている。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和元年7月調査(令和元年8月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2019年7月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス2.8ポイントの41.2。
 →原数値では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは41.7。
 →詳細項目は「住宅関連」「非製造業」以外が下落。「小売関連」のマイナス4.8ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス1.5ポイントの44.3。
 →原数値では「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは43.9。
 →詳細項目は「サービス関連」「非製造業」以外が下落。「飲食関連」のマイナス8.7ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DI・先行き判断DIともに低迷傾向と表現できよう。特にここ数か月はDIの明らかな低下、つまり景況感の悪化が確認でき、報告書のコメントもそれを裏付けるようなものに変わっている。また冒頭でも触れている概況のフレーズの変化は注目に値すべきもの。景況感の回復の弱さどころか後ずさり感すら覚えるところがある。

現状・先行き判断DIともに全部の項目で基準値を割り込む


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2019年7月)
↑ 景気の現状判断DI(-2019年7月)

消費税率(2014年4月)改定からは5年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。昨今では米中貿易摩擦の激化のあおりを受ける形で、対外取引を中心に事業への不安が大きくなっている。その上2019年10月に実施予定の消費税率引き上げを前に、景況感への不安は強まるばかり(本来生じうる駆け込み需要の気配もほとんど見られない)。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から2.8ポイントのマイナス。詳細項目では「住宅関連」「非製造業」が上昇。もっとも大きな上げ幅は「住宅関連」の1.5ポイント。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。

景気の先行き判断DIでは詳細項目のうち「サービス関連」「非製造業」が上昇。上げ幅は「非製造業」の1.3ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2019年7月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2019年7月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。

国際情勢や消費税への不安強まる


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・僅かながら増税前の買換え需要を感じる。新型イベントの谷間だが、前年を超える新車受注を維持している(乗用車販売店)。
・消費税増税前の買い控えで金を使わないマインドとなっている。7月は特に天候が悪かったことも影響している(一般レストラン)。
・来客数の減少幅以上に買上客数が減少している。特に衣料品のクリアランスが不振である(百貨店)。
・今月は梅雨が長く、例年よりも気温がかなり低いため、ドリンク類、冷たい調理麺、アイスクリームなどが前年より2〜3割落ち込み、全体の売上を押し下げている(コンビニ)。

■先行き
・10月から年内は3連休が沢山あり、年末年始の大型休暇にも大きな期待をしている(旅行代理店)。
・韓国からの旅行者減少により、来館数が減少する(観光名所)。
・消費税引上げ前により、一時的に物の動きはよくなるが、その後の消費動向は鈍化する(スーパー)。
・10月の消費税の引上げにより、外食産業は悪くなるとみている(一般レストラン)。

今年は平年と比べて梅雨が長く梅雨明けも遅く、外出の足が引っ張られただけでなく、夏向け商品の売上が落ち込んでしまい、多くの小売で影響が生じたようだ。一方でさまざまな海外情勢や消費税率引き上げの影響が見られるが、押しなべてマイナス方向に生じているのが困りもの。

企業関連では米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感への不安が確認できる。

■現状
・受注が上向きに進行している状況で、夏の販売促進や各イベント情報告知案件などで対応している(広告代理店)。
・中国向け部品の一部に、米中貿易摩擦による数量の減少が出てきている(金属製品製造業)。

■先行き
・現在対応中の案件も含め、近々出件見込みの大型公共工事の結果が出てくる時期となるが、一定の受注は確保できる見込みである(建設業)。
・米中貿易摩擦や中国経済の停滞などによる先行き不透明感が影響している(一般機械器具製造業)。

米中貿易摩擦による具体的なマイナス影響の言及が複数見受けられる。他方、日本国内のビジネスの盛況ぶりが継続しているのは喜ばしいことである。

雇用関連では人材需給に変化が生じている気配が見える。

■現状
製造業向けエンジニア派遣においては、引き合い数が減少傾向にある(人材派遣会社)。

■先行き
・世界の経済情勢の不透明感から、製造業を中心に様子見感の広がりが懸念される(職業安定所)。

派遣の引き合い減少は雇用スタイルの変化(非正規雇用から正規雇用へ)が影響している可能性は否定できないが、むしろ米中貿易摩擦による売上の減少で調整が入ったと考えた方が理解はたやすい。また米中貿易摩擦に限らず世界全体の経済情勢が読みにくい、不安定要素が増えている現状では、様子見感が強まる=雇用の積極化に二の足を踏むようになるのも仕方がない。

今件のコメントで全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計23件、先行き計36件、合わせて59件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好13件、やや良好19件、不変87件、やや悪い40件 悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで556件もの言及が確認できる(前回月は450件)。駆け込み需要や景況感対策の施策への期待の声もあるが、不安や懸念といったネガティブな内容が圧倒的に多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。また駆け込み需要の類もほとんど起きていないとの報告の方が多いのも気になる。

米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で25件、「米中」で39件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業で影響が顕著化しているのが目に留まる。今後、米中間の対立が受注量にさらなる影響をおよぼすことは十分に考えられる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売上を伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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