消費税率引き上げの反動…2019年11月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2019/12/09 15:11

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2019-1209内閣府は2019年12月9日付で2019年11月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し39.4を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続。先行き判断DIは前回月比で上昇して45.7となったが、基準値の50.0を下回る状態は継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「このところ回復に弱い動きがみられる。なお、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動による影響が一部にみられる。先行きについては、海外情勢などに対する懸念もある一方、持ち直しへの期待がみられる」と示された。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感のネガティブさが9か月連続する形となっている。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和元年11月調査(令和元年12月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2019年11月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス2.7ポイントの39.4。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは39.2。
 →詳細項目は「製造業」「雇用関連」が下落。「製造業」のマイナス3.8ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でプラス2.0ポイントの45.7。
 →原数値では「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少、「よくなる」が変わらず。原数値DIは45.5。
 →詳細項目は「製造業」のみ下落。「製造業」のマイナス1.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中。今回月は前回月の消費税率引き上げに伴う景況感の悪化を受けて生じた大幅下落の反動のような動きを示している。もっとも前回の消費税率引き上げ(2014年4月)の翌月に生じた反動(2014年4月は38.4、2014年5月は43.5で、5.1ポイントのプラス)と比べると上げ幅は小さい。

先行き判断DIも海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、昨今では急速に下落していたが、前回月に続き消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さから、前回月比でプラスを示す形となった。もっとも基準値の50.0まではまだ遠い。

現状・先行き判断DI合わせて基準値以上なのは皆無


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2019年11月)
↑ 景気の現状判断DI(-2019年11月)

昨今では米中貿易摩擦の激化のあおりを受ける形で、対外取引を中心に事業への不安が大きくなり、実際に取引への影響を受ける事業者も増え、景況感は悪化中。その上2019年10月実施の消費税率引き上げに向け、不安は強まるばかり。前回月は実際に消費税率が引き上げられたことで、現状判断DIは大きな下落を示した。今回月はその反動から、それなりに上昇している。ただし前回月に生じた下落の下げ幅の10.0ポイントと比べ、今回月の上昇の上げ幅は2.7ポイントに留まっており、反動にしても弱すぎる感は否めない。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(-2019年11月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2019年11月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。「飲食関連」の8.1ポイントのプラスが最大の上げ幅だが、それでもなお基準値には届いていない。

キャッシュレス決済増え、年末商戦への期待も


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・前月に引き続きキャッシュレス決済の利用客が増加傾向にある。文房具は低価格商品が多いため、キャッシュレス決済事業者が特典として発行する「500円相当のポイント」を当店で初めて使う客が多くみられる(一般小売店[文房具])。
・3か月前に比べると売上の落ち込みは緩やかになってきている。消費税の引上げの影響もやや薄れてきている(一般レストラン)。
・消費税の引上げからほぼ2か月がたつが、宝飾品、化粧品、婦人服、紳士服などで影響がまだまだ残っている。気温が高めに推移しているので防寒用品や防寒衣料も苦戦が続いている(百貨店)。
・ポイント還元の影響により、現金支払でなく、キャッシュレス決済が増えている。しかし、消費税引上げの影響で客単価がかなり下がり、売上が前年を下回る厳しい状況が続いている(コンビニ)。

■先行き
・消費税増税直後のため、現在の販売量は底となっているが、年明けの新型車発表を控えていることから、今後は底を打ち、やや持ち直すことになる(乗用車販売店)。
・消費税増税の反動減からの回復が見込まれる。また、クリスマス、正月が近づき、消費者の購買意欲が回復する(百貨店)。
・忘年会シーズンでもあり、夜の繁華街は週末を中心に活気にあふれ、昼間の商業施設も人出が増えている(タクシー運転手)。
・客の買物の動きは更に慎重になり、12月前半は客の財布のひもが固くなる可能性が高い。また、価格に敏感に反応して無駄な買物を控える傾向が強くなるとみている(スーパー)。

前回月に続きキャッシュレス決済に関する言及が少なからず見られ、その多くはポジティブなものとなっている。経産省側では「需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め」とキャッシュレスによるポイント還元事業を展開しているが、その目論見通りの動向のようだ。もっともこの事業は2020年6月までの限定で、その後再びキャッシュレス決済離れが生じたり、景況感の後退が生じる可能性は低くない。他方、消費税率引き上げで客単価が下がるという不思議な現象もコンビニで確認できる。

企業関連では米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感が見受けられる。

■現状
・通常業務以外に災害復旧工事も始まってきており、手一杯である(建設業)
・受注状況は米中貿易摩擦の影響を受け、低迷している分野がある。また、物流費や人件費の高騰も業況に影響を及ぼしている(プラスチック製品製造業)。

■先行き
・2020年という節目、令和初の正月、東京オリンピックムードという時節が交差することを踏まえ、年末年始にかけて商戦が活性化し、物流は増加するだろう(輸送業)。
・海外需要が低迷しており、売上の増加が見込めない(一般機械器具製造業)。

景況感のよいところもあるが、海外との取引がある分野を中心に、売上が低迷しているとの声が見受けられる。また、コスト増大で業績が思わしくないとの話もある(インフレ化の傾向で一概に悪いことではないのだが)。

雇用関連では人材需給にネガティブな変化が生じている気配が見える。

■現状
・求人数はある程度みられるが、製造業を中心に、企業からはやや悪いという声が多い(職業安定所)。

■先行き
・引き続き人材不足で堅調に求人数が推移しそうである(人材派遣会社)。

人手不足は相変わらず。一方で製造業からは求人を抑える気配が見受けられる。業績悪化(を見越した上で)の動きか。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントで410件、先行きのコメントで297件もの言及がある。不安や懸念といったネガティブな内容が多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。年末商戦で景況感の悪化は吹き飛ぶとの意見もあるが、一方で年末商戦の勢いそのものが吹き飛ぶのではとの懸念も見受けられるほどである。

米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で19件、「米中」で30件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業でマイナスの影響が顕著化しているのが目に留まる。今後、米中間の対立が受注量にさらなる影響をおよぼすことは十分に考えられる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売上を伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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