一部で駆け込み需要あれど、海外情勢や消費税率引き上げ後の不安さらに強まる…2019年9月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2019/10/08 15:35

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2019-1008内閣府は2019年10月8日付で2019年9月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し46.7を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続。先行き判断DIは前回月比で下落して36.9となり、基準値の50.0を下回る状態は維持されている。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は「このところ回復に弱い動きがみられる。なお、消費税率引上げに伴う駆込み需要が一部にみられる。先行きについては、消費税率引上げや海外情勢等に対する懸念がみられる」と示された。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感のネガティブさが7か月連続する形となっている。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和元年8月調査(令和元年10月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きは下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2019年9月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス3.9ポイントの46.7。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは45.7。
 →詳細項目は「住宅関連」「雇用関連」が下落。「雇用関連」のマイナス1.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無(「小売関連」が50.0)。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス2.8ポイントの36.9。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が減少、「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。原数値DIは36.7。
 →詳細項目は「住宅関連」以外が下落。「非製造業」のマイナス4.8ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DIは特需的な回復の動きを示しているが基準値の50.0以下であることには変わらず低迷中、先行き判断DIは急速に下落し低迷感が加速の中にあると表現できよう。特に先行き判断DIはリーマンショック後の2009年11月につけた38.5を下回り、消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年4月の前月にあたる2014年3月につけた33.5に近づく勢いを示している。増税が景況感の先行きに対し、大きなマイナス要因となることを示す証拠に違いない。

現状・先行き判断DI合わせて基準値以上なのは1つのみ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2019年9月)
↑ 景気の現状判断DI(-2019年9月)

消費税率(2014年4月)改定からは5年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。昨今では米中貿易摩擦の激化のあおりを受ける形で、対外取引を中心に事業への不安が大きくなっている。その上2019年10月に実施予定の消費税率引き上げを目前に、景況感への不安は強まるばかり。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から3.9ポイントのプラス。詳細項目では「小売関連」「サービス関連」が上昇。もっとも大きな上げ幅は「小売関連」の7.4ポイント。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。詳細は後述するが、ようやく直前月になって消費税率引き上げにかかわる駆け込み需要が一部ではあるが明らかな形で発生し、それが「小売関連」などにプラスの影響を与えている。

景気の先行き判断DIでは詳細項目のうち「住宅関連」のみが上昇。「非製造業」の下げ幅が4.8ポイントと大きなものとなっているが、具体的なコメントで確認した限りでは、消費税率引き上げや米中貿易摩擦への不安が大きな要因となっているようだ。

↑ 景気の先行き判断DI(-2019年9月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2019年9月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。

国際情勢や消費税への不安ますます強まる


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・消費税の引上げ前の駆け込み需要で今月は売上が前年比150%と大幅に伸長しており、特にテレビ、冷蔵庫、洗濯機等の大型家電の伸びが高い(家電量販店)。
・消費税増税前の買い込みで、日用品、酒がよく売れている(スーパー)。
・消費税の引上げを意識した買物が増えている。特に化粧品、婦人の冬物衣料の前倒し購入や、宝飾や時計の高額品が売上を伸ばしている(百貨店)。
・分譲住宅では、9月に入っても消費税増税前の駆け込み購入はみられず、増税後の住宅取得優遇策を選択する客の方が多い(住宅販売会社)。

■先行き
・キャッシュレスポイントなどの施策があるためか、9月よりも10-11月の予約が堅調である(観光型旅館)。
・外国人観光客の動きに陰りがみられ、前年並みの来場者数となった。また、日韓関係の悪化や香港情勢などの影響により、今後、ますます来場者数が減少することが懸念される(観光名所)。
・消費税増税に関して、軽減税率や各種緩和策が講じられるが、心理的には右肩下がりになる(コンビニ)。
・9月の反動で、10月の消費税増税後の売上は期待できない(一般小売店[家電])。

今年の9月は気温の上ではあまり目立った動きは無かったものの、台風による被害が甚大なものとなったが、少なくとも全国規模では景況感に影響を与えてはいないようだ。他方、米中貿易摩擦に加え、韓国や香港での情勢不安定化によって観光などで悪影響が生じている。10月に実施された消費税率引き上げについてだが、駆け込み需要の類は一部で確認ができる。一方でむしろ10月以降における、施策によるプラスの影響への期待の声もある。

企業関連では米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感と、消費税率引き上げへの不安によって生じたものと思われる動きの実情が確認できる。

■現状
・消費税率の改定の関係で、印刷物の受注が増加している(出版・印刷・同関連産業)。
・公共工事、民間工事共に、動きが出てきた(建設業)。

■先行き
・米中貿易摩擦による影響は、底を打っている情報もあるが、中小企業へは、遅れて悪影響を及ぼされているかのように、いまだ底打ち感がない状況である(電気機械器具製造業)。
・消費税増税前の駆け込み需要がほとんどないまま、増税後には買い控えが出ると予想され、多くのメーカーでは生産調整の指示が出ている(輸送業)。

企業関連では消費税率引き上げと米中貿易摩擦でダブルパンチ状態にあるようだ。一方で現状判断の観点では特需的な動きもあるが、長続きするものでは無いのが残念なところ。

雇用関連では人材需給にネガティブな変化が生じている気配が見える。

■現状
・求人をけん引する製造業で、受注の見通し不安が続き、求人減が顕著となってきている(民間職業紹介機関)。

■先行き
・消費税増税が秒読み段階となり、求人側の採用意欲が下がっている。景気が上向く材料が見当たらない(職業安定所)。

DIの動向の限りではすでに景気のピークは過ぎたどころか不景気の中にある感は否めないのだが、雇用関連でもそれを裏付ける声が相次いでいる。景況感の先行き不安は企業の行動の足かせとなり、求人意欲を縮小させてしまうようだ。

今件のコメントで全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計20件、先行き計27件、合わせて47件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好12件、やや良好15件、不変72件、やや悪い64件、悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでもないことが統計からはうかがえる。ただこの数か月は「やや悪い」の件数が増えているのが目に留まる。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで786件もの言及が確認できる(前回月は686件)。景況感対策の施策への期待の声もあるが、不安や懸念といったネガティブな内容が圧倒的に多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。

米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で23件、「米中」で44件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業でマイナスの影響が顕著化しているのが目に留まる。今後、米中間の対立が受注量にさらなる影響をおよぼすことは十分に考えられる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売上を伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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