松屋は堅調だがすき家がマイナスに転じる、吉野家はマイナス続く…牛丼御三家売上:2017年7月分(最新)

2017/08/08 05:07

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2017年8月7日、吉野家における2017年7月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス1.2%となった。これは先月から続く形で、2か月連続のマイナスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年7月における売上前年同月比はプラス2.5%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス1.0%との値が発表された。今回月は松屋のみが前年同月比でプラスの売上を示すこととなった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。特記事項が無い限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2017年7月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2017年7月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2016年7月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス1.1%、客数はプラス3.5%、売上はプラス2.3%。よって今回月では客単価でプラス、客数でマイナスの補正(反動)が多少だが加わることになる。

沖縄タコライス、ベジ牛定食今回月においては7月3日からサラシア牛丼の全店舗での販売を開始、7月6日からは夏向けのメニューとして沖縄タコライス、ベジ牛定食の販売を開始、さらに7月26日からは麦とろ牛皿御前や麦とろサラ牛御前の販売を開始している。いずれも牛丼チェーン店のメニューとしてはやや軸から外れている感もあるが、季節感に合わせると共に昨今の健康志向にも目を向けたものとして、注視に値するものではある。

結果としては客単価は期待通りプラスの1.3%を挙げたものの、客数はマイナス2.5%なり、結果として売り上げはマイナス1.2%を示す形となった。客数は前年同月の反動があるとはいえ、思わしくない値で、これが売り上げの足を引っ張っている。

視点を変えてみると興味深い結果も導き出せる。昨今では吉野家に限らず各社とも客単価と客数が大きく動く施策(メニュー全体の価格引上げなど)が相次いでいることもあり、反動による前年同月比の変化の影響が多分に生じている。その影響を最小化するために、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。2年に渡った変化率であることから、ここから年平均を求めるにはルート換算をすれば良い。例えば松屋なら、2年前同月比の売上から年平均を試算すると4.9%のプラスとなる。

↑ 牛丼御三家2017年7月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2017年7月営業成績(既存店)(前々年同月比)

吉野家における今回月の客単価・客数・売上高の増加は、2年越しに見ると客単価はトントン、客数・売上はわずかだがポジティブな値となる。とはいえ他の2社と比べると勢いに欠けることは否めない。

前年同月比だけでなく、前々年同月比で見ても、2度に渡る主力商品の相次ぐ値上げをしている吉野家だけでなく、3社が客単価の引上げにより客数の減退を補い(あるいは客数減退を覚悟しても客単価の引き上げを模索し)、売上を維持している様子が把握できる(今回月の吉野家はいまいちな伸びだが)。中でも松屋はここ数か月、2年前同月比でも客数・客単価共にプラスを示しており、今回月ではすき家も堅調。両社とも調整を終えた感はある。

続いて松屋。今件記事、あるいは店舗数などを精査する連動記事などでも触れている通り、松屋が運用するとんかつ系の店舗松のや・松乃家・チキン亭の専用公式サイトを2016年7月末にオープンして本腰の入れ具合を改めてアピールする一方で(今記事における松屋の既存店のデータに関しては、2008年4月以降はとんかつ事業、鮨事業、その他業態の既存店は除いてある)、今回月では7月4日から毎年夏恒例の山形だしとろろプレミアム(小)牛皿セットの販売を開始、11日からはうまトマハンバーグ定食、25日からは肉野菜の鉄板焼き定食の販売を開始するなど、夏向けのメニューとしてあっさり・こってりの両サイドから攻める施策を取り入れている。

結果として7月の業績は客単価がプラス1.5%、客数はプラス1.0%となり、売上はプラス2.5%を計上。プラスには違いないもののやや伸びが弱い……ように見えるが、これは2年前同月比の結果を見れば分かる通り、多分に前年同月の好調さの反動を受けた結果。

最後にすき家。新しいメニューとしては7月5日からしじみ汁、彩り野菜のスパイシーチキンカレーの販売を開始、12日からは「うな牛4兄弟」の販売を始めている。結果として客単価はプラス0.2%とわずかだが増加、客数はマイナス1.3%と多少ながらもマイナスを見せ、売り上げはマイナス1.0%を示してしまった。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2017年7月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2017年7月)

売上高の中期的動向としては、ここ数年に限れば、すき家の人員不足騒動や吉野家の鍋旋風でそれぞれぶれが生じているが、それ以外は大よそ横ばいに推移している。少なくとも震災前のような大幅な上下感は確認できない。ただし吉野家に限ると(鍋以外でも)単月で大きくぶれる傾向があり、全体的にもマイナスの領域にいる機会が増えてきた。経営施策の上で安定感にやや欠けると解釈することもできる。

客数の減少・客単価の増加は戦略転換によるものに違いなく


次に示すのは各社の客数動向。ここ数年において何度か生じている小規模な跳ね方は、何らかのイベントによるもの。2015年10月の松屋とすき家は牛めし・牛丼の期間限定の値引き、2016年10月の吉野家の急上昇はソフトバンクとのタイアップ企画の成果によるもの。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2017年7月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2017年7月)

低迷していた客数が前年同月比でプラスに戻り始めたのは、吉野家が2016年2月から、松屋が2015年10月からとなっている。他方すき家は2016年に入ってからは上げ下げが続いており不安定感は否めなかったが、2017年に入ってからはプラス圏へと浮上の動きを見せている。他方吉野家は2016年の後半以降、大きな上下を繰り返しており、2017年に入ってからはマイナス圏に沈んでおり、同社の売上の軟調ぶりは主に客入りがいまいちさに起因していることがうかがえる。

中期的な流れを見ると、単純な前年同月比だけでなく、2年前同月比の試算結果でも、各社とも規模、結果に違いがあれど、客単価増・客数減となる方向性を示して「いた」。客数だけを見ればゼロ以下の薄いオレンジ色の領域にある機会が多かったことから「低迷していた」との判断に至るが、売上は横ばい、客単価は上昇との情報を合わせると、新たな側面、具体的には客数と客単価における新たなバランスへのシフトの動きも見えてくる。

松屋は2015年の末辺りから、客数・客単価共に大きな幅では無いもののプラスを計上し続けている。1年以上も経過していることから単なる反動の領域はすでに超えている。「バランス調整」を終え、次なるステップに歩みを進めているようにみえる。すき家もここ2、3か月ぐらい前からは松屋に続き、その流れにシフトした可能性はある。

他方吉野家は客数の変動が大きく、客単価と客数のバランス調整に苦慮しているようだ。相次ぐ大型タイアップ企画やご当地鍋の内容差し替えに代表されるように、何とかリカバリーをしようと多種多彩なイベントを繰り出している感は強い。

その吉野家では2017年2月1日から、高齢者向けとして介護施設を対象とした業務用商品「吉野家のやさしいごはん」の提供を開始する(店頭販売は無し)。四方八方を尽くして邁進しようとする姿勢が見受けられる。今後十年単位で介護向け食材は一定規模の市場を期待でき、現役世代に牛丼の味を覚えた人が高齢化して同じ味を求めると考えれば、大きな需要も容易に推測が可能なものとなる。具体的な動向には注目したい(決算短信などの説明でその実情をうかがい知ることができよう)。

卵が先か鶏が先かの問題に近いものだが、震災以降顕著化している消費者の消費性向の変化に伴う、廉価スタイルの外食産業全般からの客足の遠のきに対し、各社とも価格面で一歩上のステージに上がることにより、時代の変化に対応しようとしている。これまで同様に廉価外食店の様式では客数が減るばかりで、客単価がそのまま維持されたのでは、当然厳しさを増してくる。ならば客数の減少が一時的に加速化しようとも、営業様式の格付けをアップし、売上の点で帳尻を合わせようとするものである。逆に品質の高いブランド化が成されれば、新規層の開拓につながる可能性もある。

客単価の引き上げで客数の減りをカバーして売上、利益を維持する場合、これまでの「薄利多売」と比べて客数が減った時の売上の減退リスクは大きくなる(同じ人数が減った時の、売上の減少額が大きくなる)。しかし店員の接客時における負担は軽減される。間接的にサービスの品質向上も期待できる。商品在庫のリスクや物流コストも圧縮されうる。

類似業界として良く比較されるハンバーガーチェーン店では、かつて方向性の確定に苦慮していたマクドナルドが苦戦を強いられていた。最近ではようやく独自色の軸(具体的には定番メニューを廉価で提供すると共に、高単価で魅力的な期間限定メニューを相次ぎ投入する)を確立し、迷走を終え、強い歩みを見せている。

吉野家はまだ四苦八苦の中にあるようだが、松屋、そしてあるいはすき家も、に見られるリバランスが済んだように思える昨今の動向は、次なる施策を踏み出すタイミングであることを意味している。数字の限りでは客単価を維持しつつ企画を多様化し、客数を伸ばす姿勢のようだ。店舗数動向においても、松屋では牛丼専門店はほぼ横ばいのまま、フライ系店舗を漸増させており、店舗業態の上でも多様化の方向性にあるようにみえる。あるいはフライ系店舗への注力増加こそが、次なる施策なのかもしれない。

吉野家の夏の健康志向的な攻勢はいまいちな結果に終わりそうだが、次の一手はどのようなものになるのか。高齢者・介護方面への気配も見せているが、恐らくはそれだけに限らず、複数のカードを胸に秘めているに違いない。またすき家も数年前の「ワンオペ問題」から立ち直り、数字の上では決して悪くない動きを示している。こちらもエネルギーを貯め込み、それを吐き出す形での画期的な商品展開、施策を見せる可能性は否定できまい。松屋も最近では少しずつ、持ち帰り形式で自社商品の家庭への浸透を推し量る商品展開を進めているのが目に留まる。それぞれにおける、今後切られるカードが楽しみだ。


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