全般的に軟調の中、突出する一誌…少女・女性向けコミック誌部数動向(2017年1月-3月)

2017/05/25 04:45

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2017年5月16日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2017年1月から3月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも嬉しい話には違いない。

↑ 2016年10-12月期と最新データ(2017年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2016年10-12月期と最新データ(2017年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.5倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。以前話題に登ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。【直接リンクはこちら:ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱】

第2位の「りぼん」と第3位の「別冊マーガレット」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。実際、前四半期では順位は逆だった。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がほぼ同数で続き、その他諸々が後を追いかけている。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2016年10-12月期と最新データ(2017年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2016年10-12月期と最新データ(2017年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「YOU」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けており、今四半期では「YOU」と「プチコミック」の順位が前四半期から入れ替わる形となった。

またグラフの形状から分かる通り、「フラワーズ」が異様な値動きをしている。これは入力ミスでもトラブルでもなく、同誌に特需が発生した結果によるもの。詳細については次の項目で解説していく。

女性向けコミック誌で特需によるグラフ変調…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2017年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2017年1-3月期、前期比)

プラス領域は2誌、「ちゃお」と「Sho-Comi」。プラスマイナスゼロは「別冊フレンド」と「ベツコミ」でこれは前四半期から変わらず。それ以外はマイナス圏。誤差の5.0%幅を超えているのは「別冊マーガレット」。

マイナス1.8%と小幅なマイナスを計上した「別冊花とゆめ」だが、かつて同誌をけん引していた「ガラスの仮面」は今なお連載を再開していない。

↑ 別冊花とゆめの部数推移(2017年1-3月期まで)
↑ 別冊花とゆめの部数推移(2017年1-3月期まで)

同誌は美内すずえ先生の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお発売は未定のまま)。他方面への展開は積極的になされており、たとえばアニメ版の「ガラスの仮面」エイケン版がブルーレイ化して特設ページも開設されたり、スピンアウト作のアニメ「3ねんDぐみガラスの仮面」の新作アニメが劇場上映されるなど多様な動きが見られるのだが、肝心の本編に動きは無い。

多方面の展開はありがたい話には違いないが、本編の連載再開を待ち望んでいるファンは複雑な心境に違いない。

続いて女性向けコミック。1誌が飛びぬけた上昇ぶりを見せ、グラフ全体の体裁がおかしな形となっている。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2017年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2017年1-3月期、前期比)

「フラワーズ」はプラス142.4%、つまり前四半期比で部数を2.4倍に増やした計算になる。3四半期前にも大きな上昇を見せたが、その原因は【月刊フラワーズ増刷、「ポーの一族」続編が人気】で伝えた通り、人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」がスタートしたことによるものだった。同誌では2017年4月号で吉田秋生先生の「海町diary」が掲載されるなど、他にも部数底上げの要因は考えられるが、「ポーの一族 春の夢」の連続連載が2017年3月号からスタートしたのが主要因と考えて間違いない。

↑ フラワーズの部数推移(2017年1-3月期まで)
↑ フラワーズの部数推移(2017年1-3月期まで)

今印刷証明付き部数は該当期間内に複数が発刊された場合、それらの平均値が計上される。3四半期前は「ポーの一族 春の夢」は単刊での掲載だったために上昇も限定的だったが、今四半期は3号すべてで掲載されたため、ここまでの伸びとなったのだろう。

購読した読者の感想を見聞きする限り、大よそ好意的な意見で占められている。連載が継続する限り、この値は維持されるに違いない。

少女向けコミックはプラス無し…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2017年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2017年1-3月期、前年同期比)

プラスを計上したのは皆無。プラスマイナスゼロは「別冊フレンド」。それ以外はすべてマイナスで、誤差領域を超えた下げ幅を示しているのは9誌。特に「Cheese!」「ザ・マーガレット」「ベツコミ」「別冊マーガレット」「ちゃお」「マーガレット」と複数誌が1割を超えた下げ幅を示している。とりわけ「ザ・マーガレット」はここしばらくの間、大きな減退傾向の中にあり、良い状況とは言い難い。

↑ ザ・マーガレットの部数推移(2017年1-3月期まで)
↑ ザ・マーガレットの部数推移(2017年1-3月期まで)

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2017年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2017年1-3月期、前年同期比)

前四半期比のグラフ同様、「フラワーズ」の突出のためにグラフの形状がいびつになってしまった。しかしよく見ると、その「フラワーズ」以外はすべてマイナスで、1割超えの下げ幅を示したのは6誌にも及ぶ。

なお「デザート」の姿が見られないが、これは同年前期において姉妹誌の「ザ・デザート」が休刊のために脱落した際に、合わせてその四半期のみ部数計上が取りやめになったため。次四半期には再び部数を公開している。

「ARIA」はかつて「進撃の巨人」特需で大きく部数を底上げしたが、間もなく失速。その後は下落基調を示している。実部数は記録の限りではこれまでの最小値だった1万2000部すら下回る値にまで落ちており、危機感を覚える。

↑ ARIAの部数推移(2017年1-3月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2017年1-3月期まで)

再び大金星をつかみ、グラフにダイナミックな動きを示してほしいものだが。



1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えることなく、通常運転に戻っている。次なる「巨人」の気配だが、特定誌なら「フラワーズ」のような例があるが、複数誌に渡るものはまだ気配すら無い。

「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。今四半期ならば「ポーの一族 春の夢」が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。


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