全般的に軟調…少女・女性向けコミック誌部数動向(2016年10月-12月)

2017/02/13 05:17

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2017年2月7日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2016年10月から12月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも嬉しい話には違いない。

↑ 2016年7-9月期と最新データ(2016年10-12月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2016年7-9月期と最新データ(2016年10-12月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.5倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。以前話題に登ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。【直接リンクはこちら:ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱】

第2位の「別冊マーガレット」と第3位の「りぼん」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がほぼ同数で続き、その他諸々が後を追いかけている。前四半期と比べ各誌とも部数に大きな変化は無い。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2016年7-9月期と最新データ(2016年10-12月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2016年7-9月期と最新データ(2016年10-12月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「YOU」「プチコミック」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けており、今四半期では「YOU」がやや大きく落ちたものの、第3位の「プチコミック」も同じような落ち方を示し、第2位の順位は維持できる結果となった。

全誌でプラマイゼロかマイナス…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年10-12月期、前期比)

プラス領域は皆無。プラスマイナスゼロは「別冊フレンド」と「別コミ」でそれ以外はマイナス圏。誤差の5.0%幅を超えているのは3誌、「ちゃお」「ザ・マーガレット」「Cheese!」。

今回月では小さからぬマイナス値を計上した「なかよし」だが、【なかよし7月号が「CCさくら」効果で完売、3年4か月ぶりとの話】でも伝えたように、「CCさくら」の新作連載「カードキャプターさくら クリアカード編」が始まり大いに話題を集めており、同作品へのプッシュは続いている。例えば2016年12月発売の2017年1月号では単行本の発売に合わせて表紙を飾っている。またその号ではスイーツ手帳とクッキーの形をした電卓が付録についており、これもまた好評を博したようだ。

マイナス1.3%と小幅なマイナスを計上した「別冊花とゆめ」だが、かつて同誌をけん引していた「ガラスの仮面」は今なお連載を再開していない。

↑ 別冊花とゆめの部数推移(2016年10-12月期まで)
↑ 別冊花とゆめの部数推移(2016年10-12月期まで)

同誌は美内すずえ先生の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお発売は未定のまま)。他方面への展開は積極的になされており、たとえば「大人のぬりえ ガラスの仮面」の発売やスピンアウト作のアニメ「3ねんDぐみガラスの仮面」の放送など多様な動きが見られるのだが、肝心の本編に動きは無い。


↑ SD化したキャラたちがコミカルに演じるアニメ「3ねんDぐみガラスの仮面」。【直接リンクはこちら:【公式】3ねんDぐみガラスの仮面 第1話「さぁ 送信タイミングを熱くするのです」 】

「ガラスの仮面」をベースにしたギャグタッチのアニメは以前にも「ガラスの仮面ですが」などが展開されており、今回の新作(?)そのものも珍しい話ではないのだが、本編の連載再開を待ち望んでいるファンは複雑な心境に違いない。

続いて女性向けコミック。少女向けコミック同様、全誌がプラスマイナスゼロかマイナス領域。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2016年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2016年10-12月期、前期比)

半年前にはダイナミックな上昇(プラス35.4%)を示し注目を集めた「フラワーズ」だが、そのけん引役となったのは【月刊フラワーズ増刷、「ポーの一族」続編が人気】で伝えた通り、同誌で人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」がスタートしたことによるもの。当時の作品のファンがこぞって注目し買い始めたため、雑誌としては珍しく増刷が決まり、報道もなされるようになった。しかしながら作品の継続掲載は今期ではまだなされていないため(不定期連載)、前四半期の下落から動きも無し。

↑ フラワーズの部数推移(2016年10-12月期まで)
↑ フラワーズの部数推移(2016年10-12月期まで)

しかしながら【「ポーの一族」新作連続掲載決定で「月刊flowers」は来年頭からもりもり売れそうな予感】で伝えている通り、2017年1月発売号から「ポーの一族 春の夢」の連続掲載が始まっている。該当期間は次四半期になるが、連載再開初号は大きな盛況を見せ、掲載内容への感想も大よそ好印象であることが確認されていることから、次の印刷証明付き部数では良い数字が期待できそうだ。それだけの力を「ポーの一族」は有している。

軟調誌多し…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年10-12月期、前年同期比)

プラスを計上したのは「LaLa DX」のみ。同誌は1、2年の間に自主企画のヒットが続き上昇機運に一時的に転じるなど大きな躍動を見せ、その失速後も減少幅を最小限に留めている。少なくともこれまでのように下落一方の動きからは脱しているように見える。

↑ 雑誌印刷実績変化率(LaLa DX)(2016年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(LaLa DX)(2016年10-12月期、前年同期比)

他方、下落誌は12誌で、誤差領域を超えたのは9誌。特に「ザ・マーガレット」「ベツコミ」「別冊マーガレット」の3誌は1割を超える下げ幅を示しており、やや強い危機感を覚えさせる。とりわけ「ザ・マーガレット」はここしばらく似たような立ち位置を維持しており、非常によろしくない状況に違いない。

↑ ザ・マーガレットの部数推移(2016年10-12月期まで)
↑ ザ・マーガレットの部数推移(2016年10-12月期まで)

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2016年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2016年10-12月期、前年同期比)

プラス圏にあるのは「YOU」1誌のみ。「ARIA」の大きな下落が目に留まるが、これは「進撃の巨人」特需とその反動による変動を経て、再び下落基調を示したことによるもの。実部数は記録の限りではこれまでの最小値だった1万2000部すら下回る値にまで落ちており、危機感を覚える。

↑ ARIAの部数推移(2016年10-12月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2016年10-12月期まで)

再び大金星をつかみ、グラフにダイナミックな動きを示してほしいものだが。



1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えることなく、通常運転に戻っている。次なる「巨人」の気配だが、特定誌ならばいくつかその芽生えがあるものの、複数誌に渡るものはまだ気配すら無い。

「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。


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