ほとんどマイナス…少女・女性向けコミック誌部数動向(2018年10-12月)

2019/03/09 05:10

2019-0307加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2019年2月28日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2018年10-12月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

スポンサードリンク


トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付き部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い年齢階層、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2018年7-9月期と2018年10-12月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2018年7-9月期と2018年10-12月期)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に2.5倍ほどの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4-6月期の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。

第2位は「りぼん」、第3位は「別冊マーガレット」。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「なかよし」「Sho-Comi」がそれほど差異の無い部数で続き、その他諸々が後を追いかけている。

「別冊花とゆめ」は【別冊花とゆめが休刊】にもある通り、2018年5月26日発売の7月号で休刊を発表、当然印刷証明付き部数も計上されていないが、非公開化は2018年1-3月期からだった。

↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)

「別冊花とゆめ」の部数は2016年4-6月期に「ガラスの仮面」50巻収録予定のエピソードの一部を小冊子に付けた号でやや部数を底上げして以降、特に2017年に入ってから失速状態にあった。このままでは同誌で話題の「ガラスの仮面」の連載再開の前に、プラットフォームの立ち位置そのものが危なくなる可能性も否定できない…との言い回しはここしばらくテンプレート化していたのだが、それがまさに体現化してしまった。「ガラスの仮面」はどの雑誌で連載を再開することになるのだろうか(休刊から1年近くが経過した記事執筆時点においても未発表)。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしく無い雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年7-9月期と2018年10-12月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年7-9月期と2018年10-12月期)

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がトップ、「プチコミック」「Kiss」が続く。上位陣、具体的には「office YOU」までは各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができている。ただし「Kiss」と「プチコミック」はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを示しているのが興味深い。

部数順位では下の方ではあるが「MELODY」が前期から大きく落ちているのが確認できる。これについては次の項目で解説する。

プラスは1誌のみ…四半期変移から見た直近動向


次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

まずは少女向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2018年10-12月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2018年10-12月期)

プラス圏は皆無、プラスマイナス誌も無し、つまり全誌がマイナス。誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが5誌、それを超えた下げ幅は8誌。ここまで一様に下げているのは珍しい。前期比で1割以上の下げも2誌確認できる。

続いて女性向けコミック。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年10-12月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年10-12月期)

「MELODY」は大きく落ちているが、次の項目で示す前年同期比では少女向けコミック・女性向けコミック合わせて唯一プラスを計上している。前期において同じ出版社から発行されていた「別冊花とゆめ」の休刊に伴い、今誌への移籍が決まっていた日渡早紀氏の「ぼくは地球と歌う」の連載再開が始まっており、これが前期の部数を引上げた。今期は前期の勢いの反動によって落ちたと考えられる。

↑ 印刷証明付き部数(MELODY、部)
↑ 印刷証明付き部数(MELODY、部)

部数動向は2017年10-12月期を底に反転上昇の動きを示している。長期連載のパラレル江戸ドラマ「大奥」も表紙に取り上げられるなど好評を博している。「ぼくは地球と歌う」の連載再開で部数上昇への勢いがつけばよいのだが。

唯一マイナスとならなかった「フラワーズ」だが、2018年5月発売の7月号から「ポーの一族」の新シリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が始まったものの、前期の2018年7月発売の9月号でいったんお休みとなり、2019年春に再開予定。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

月刊flowers(フラワーズ) 2019年05月号予告グラフを見れば分かるように、「ポーの一族 ユニコーン」などの特需で大きく部数が跳ねる時期以外はおおよそ3万3000部を維持するという安定ぶり。

なおその「ポーの一族 ユニコーン」だが、2019年3月末発売号から再開することが発表されている。次期は2019年1-3月なので、ぎりぎり該当することになるため、部数は再び大きく跳ねることだろう。どこまで伸びるかが楽しみではある。

プラス1誌のみ、誤差領域超えの下落多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2018年10-12月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2018年10-12月期)

プラス計上は皆無。プラスマイナスゼロも無く、全誌マイナス、誤差領域を超えた下げ幅は11誌におよぶ。2割以上の下げ幅を示したのは「ベツコミ」「Cheese!」「Sho-comi」「別冊マーガレット」「ザ・マーガレット」の5誌。特に「ザ・マーガレット」はここしばらくの間、部数を大きく減らす傾向の中にあり、よい状況とは言い難い。

↑ 印刷証明付き部数(ザ・マーガレット、部)
↑ 印刷証明付き部数(ザ・マーガレット、部)

続いて女性向けコミック。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年10-12月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年10-12月期)

前述の通り、唯一「MELODY」が前年同期比でプラス。少女・女性向け合わせて唯一のプラス誌となった。「フラワーズ」は上記の通り特需以外は鉄板の部数計上をしているため、プラスマイナスゼロ。

それを別にすると、1割以上の下げ幅は7誌、2割超えの下げ幅も「FEEL YOUNG」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。



1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今期では残り香すら覚えること無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性は否定できない。もっとも少女向けコミック誌の場合、付録にも訴求性があることから、その影響は最小限に留まっているのだろう。女性向けコミック誌においても、男性向けのように通勤時の購読というメリットを得る機会が少ないため、需要はそれほど大きく無いのかもしれない。


■関連記事:
【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】
【ツイッター44%、LINE38%…若年層のソーシャルメディア利用動向】
【男性は女性コミック誌は読まない、しかし女性は……】
【紙媒体販売実績が過去最大の落ち込みに、という話】

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2019 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー