前期比・前年同期比合わせてプラス誌3誌のみ…少女・女性向けコミック誌部数動向(2020年7-9月)

2020/11/12 05:04

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2020-1110加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2020年10月30日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2020年7-9月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付き部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い年齢階層、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2020年4-6月期と2020年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2020年4-6月期と2020年7-9月期)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に2倍以上もの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4-6月期の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。

第2位は「りぼん」、第3位は「花とゆめ」。そしてその後に「LaLa」「別冊マーガレット」「なかよし」「Sho-Comi」が続いている。部数動向としては「ちゃお」が前期比で大きく減っているのが見て取れる。

「別冊花とゆめ」は【別冊花とゆめが休刊】にもある通り、2018年5月26日発売の7月号で休刊を発表、当然印刷証明付き部数も公開されていないが、非公開化は2018年1-3月期からだった。

↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)

「別冊花とゆめ」の部数は2016年4-6月期に「ガラスの仮面」50巻収録予定のエピソードの一部を小冊子に付けた号でやや部数を底上げして以降、特に2017年に入ってから失速状態にあった。このままでは同誌で話題の「ガラスの仮面」の連載再開の前に、プラットフォームの立ち位置そのものが危なくなる可能性も否定できない…との言い回しがテンプレート化していたのだが、それがまさに体現化してしまった。「ガラスの仮面」はどの雑誌で連載を再開することになるのだろうか(休刊から2年以上も経過した今記事執筆時点においても未発表)。なお【「ガラスの仮面」公式サイト】では塗り絵や日めくりカレンダーなど関連グッズの宣伝が大盤振る舞い状態だが、単行本はいまだに49巻までのままであり、また掲載誌に関する情報も無い。作者自身は「必ず最終巻まで描き続けます」とコメントしているのだが(【該当ツイート】)。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容は実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミック誌と比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2020年4-6月期と2020年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2020年4-6月期と2020年7-9月期)

「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がトップ、「Cocohana」「プチコミック」が続く。各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べると比較的整った傾斜ができている。ただし部数そのものは数万部の単位のため、ヒット作が生まれることで雑誌が大盛況となれば順位が大きく変動する可能性はある。また今期では多くの女性向けコミック誌で部数が前期から落ち込んでいることが確認できる。

「FEEL YOUNG」は今期から部数を非公開化している。
↑ 印刷証明付き部数(FEEL YOUNG、部)
↑ 印刷証明付き部数(FEEL YOUNG、部)

「FEEL YOUNG」は「おしゃれな恋愛コミック誌」がキャッチコピーの月刊女性向けコミック誌。読者ターゲットは「おしゃれゴコロを忘れない女性たちが中心読者層」とのこと。連載陣としては安野モヨコ先生の「後ハッピーマニア」などが知られているが、部数動向は正直なところ芳しくない状態が続いていた。発売そのものは継続中で休刊のお知らせも確認できないことから、部数の非公開化は単純に編集部あるいは出版社の方針によるものらしい。

プラス誌は3誌のみ…四半期変移から見た直近動向


次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

まずは少女向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2020年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2020年7-9月期)

プラス誌は1誌「りぼん」のみ。前期から部数変わらずが「LaLa」「マーガレット」「ザ・マーガレット」の3誌で、それ以外はすべてマイナス。誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが4誌、それを超えた下げ幅は5誌。前期比で1割以上の下げも1誌確認できる。

「ちゃお」の前期比マイナス12.8%は非常に大きな減少のように見えるが、実のところは大きく増加した前期からの反動でしかない。

↑ 印刷証明付き部数(ちゃお、部)
↑ 印刷証明付き部数(ちゃお、部)

該当期間に発売されたのは3誌。中でも2020年8月号における付録の扇風機に対する評価は高い。人気が無いなどの理由で部数が落ち込んだわけではなさそうだ。

一方で中長期的に見れば部数は漸減中であることもまた事実。何らかの施策でこの動きを止め、反転させる時期に来ていると見た方がよいだろう。

続いて女性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2020年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2020年7-9月期)

今期ではプラス誌は2誌「MELODY」「フラワーズ」。それ以外は全誌がマイナスで誤差領域を超えた下げ幅は2誌。

今期は前期比でプラス1.4%を示した「フラワーズ」だが、部数底上げの立役者的存在「ポーの一族」について、前期該当分の2020年8月号(2020年6月売り)から新シリーズ「ポーの一族 秘密の花園」の連載を開始。該当期間の3誌で今連載分は終了する形となった(次シリーズの連載開始日は未定)。その終了回掲載号となる2020年11月号では「ミステリと言う勿れ」が100ページにわたり一挙掲載、巻頭カラーで波津彬子先生の「ふるぎぬや紋様帳」の新連載とインタビュー記事が掲載されるという豪華な構成となっている。これらの要因が部数のアップに貢献したのだろう。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

今期部数は2万4000部。前期比ではプラスを示したものの、部数動向全体としてはあまり思わしくない状況にある。「ポーの一族」掲載などで跳ね上がる期以外はおおよそ3万3000部を維持していたのだが、2018年後半あたりからその原則が崩れてしまっており、今期の盛り上がりも大勢には影響がないような状態にある。

全誌マイナス、誤差領域超えがほとんど…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2020年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2020年7-9月期)

プラスは皆無。プラスマイナスゼロも無く、1誌「りぼん」を除いた全誌マイナスで誤差領域を超えた下げ幅。1割を超えた下げ幅を示しているのは10誌。3割以上の下げ幅は5誌。5誌については1年間で部数が3割以上減った計算になる。いずれも掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。

続いて女性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2020年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2020年7-9月期)

全誌がマイナスで、しかも「office YOU」以外はすべて誤差領域を超えた下げ方を示している。一番大きな下げ幅は「Kiss」でマイナス22.4%。次いで「BE・LOVE」がマイナス21.3%、「プチコミック」がマイナス20.3%、「Cookie」がマイナス20.0%と、4誌もが2割以上の部数減少を示している。起死回生の手立て、例えば状況を打開するヒット作の登場が強く求められる状況と判断せざるを得ない。



かつてあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今期では残り香すら覚えることなく、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」が好例(影響力は限定的だが)。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性は否定できない。ここ数期では多くの雑誌が大きな部数の減少を示しており、電子版に読者がシフトしたとの推測以外の原因が見つからない。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念ではある。


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