休刊でまた一誌退場…少女・女性向けコミック誌部数動向(2018年4月-6月)

2018/08/31 05:01

2018-0830加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2018年8月27日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2018年4月から6月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付き部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い年齢階層、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2018年1月-3月期と2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2018年1月-3月期と2018年4月-6月期)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に3倍近くの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年第2四半期の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。

第2位の「りぼん」と第3位の「別冊マーガレット」は部数の点では僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がさほど違いの無い部数で続き、その他諸々が後を追いかけている。

今グラフには登場していないが「別冊花とゆめ」は【別冊花とゆめが休刊】にもある通り、2018年5月26日発売の7月号で休刊を発表、印刷証明付き部数も前期から非公開としている。

↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)

「別冊花とゆめ」の部数は2016年第2四半期に「ガラスの仮面」50巻収録予定のエピソードの一部を小冊子に付けた号でやや部数を底上げして以降、特に2017年に入ってから失速状態にあった。このままでは同誌で話題の「ガラスの仮面」の連載再開の前に、プラットフォームの立ち位置そのものが危なくなる可能性も否定できない…との言い回しはここしばらくテンプレート化していたのだが、それがまさに体現化し休刊と相成った次第ではある。「ガラスの仮面」はどの雑誌で連載を再開することになるのだろうか(いまだ未発表)。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしく無い雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年1月-3月期と2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年1月-3月期と2018年4月-6月期)

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けている。

今期では「YOU」が部数公開から脱落。【バーズにYOU、相次ぐ雑誌休刊のお知らせ】で解説の通り、2018年10月15日発売の11月号で休刊することを発表している。今期でも発売は継続しているが、休刊が決定した以上部数公開の意義は無いとの判断によるものだろう。

↑ 印刷証明付き部数(YOU、部)
↑ 印刷証明付き部数(YOU、部)

報道によれば休刊の理由として「女性読者のコミックス志向、デジタル志向が進み、漫画雑誌離れに歯止めをかけることができませんでした」とある。時代の流れに乗ることができなかったということか。

他方、部数順位では下の方ではあるが「フラワーズ」が前期から大きく伸びているのが確認できる。これについては次の項目で解説する。

プラスは1誌ずつ…四半期変移から見た直近動向


次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2018年4月-6月期)

プラス圏は1誌「LaLa」のみ。誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが5誌、それを超えた下げ幅は6誌。「ちゃお」「ベツコミ」の下げ幅が1割超えで気になるところ。

続いて女性向けコミック。こちらは1誌、健闘している状況が確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年4月-6月期)

唯一のプラス計上誌「フラワーズ」だが、2018年5月発売の7月号から「ポーの一族」の新シリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が始まり、その号では表紙も飾ったこともあり、大きな部数飛躍を果たしている。また8月号では「海街diary」が最終回を迎えており、こちらも部数けん引に一役買ったものと思われる。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での部数上昇(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は通常部数から7000部ほど上乗せした形。前回の特需と比べるとやや弱い動きなのが気になるところ。

プラス無し、誤差領域超え多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2018年4月-6月期)

プラス計上は皆無。全誌マイナス、しかも誤差領域を超えた下げ幅を示している。2割の下げ幅を示したのは「ベツコミ」「ザ・マーガレット」「Cheese!」の3誌。特に「ザ・マーガレット」はここしばらくの間、部数を大きく減らす傾向の中にあり、よい状況とは言い難い。

↑ 印刷証明付き部数(ザ・マーガレット、部)
↑ 印刷証明付き部数(ザ・マーガレット、部)

続いて女性向けコミック。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年4月-6月期)

「フラワーズ」は前期比では大幅なプラスだったが、前年同期比では誤差領域を超えた下げ。「ポーの一族 春の夢」特需発生時の部数と比べると、今回の「ポーの一族 ユニコーン」の特需はやや弱めであることが改めて分かる。一方で1割以上の下げ幅は6誌、2割超えの下げ幅も「Cookie」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。



1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今期では残り香すら覚えること無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルに関わる記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性は否定できない。もっとも少女向けコミック誌の場合、付録にも訴求性があることから、その影響は最小限に留まっているのだろう。女性向けコミック誌においても、男性向けのように通勤時の購読というメリットを得る機会が少ないため、需要はそれほど大きく無いのかもしれない。


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