前期比・前年同期比合わせて部数プラスは1誌のみ…少女・女性向けコミック誌部数動向(2021年4-6月)

2021/08/18 03:13

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2021-0816加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2021年8月10日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2021年4-6月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付き部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い年齢階層、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2021年1-3月期と2021年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2021年1-3月期と2021年4-6月期)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に5割以上増しの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4-6月期の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。

第2位は「りぼん」、第3位は「花とゆめ」。そしてその後に「LaLa」「別冊マーガレット」「なかよし」「Sho-Comi」が続いている。部数動向としては「ちゃお」が前期比で大きく減っているのが見て取れる。

「別冊花とゆめ」は【別冊花とゆめが休刊】にもある通り、2018年5月26日発売の7月号で休刊を発表、当然印刷証明付き部数も公開されていないが、非公開化は2018年1-3月期からだった。

↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)

「別冊花とゆめ」の部数は2016年4-6月期に「ガラスの仮面」50巻収録予定のエピソードの一部を小冊子に付けた号でやや部数を底上げして以降、特に2017年に入ってから失速状態にあった。このままでは同誌で話題の「ガラスの仮面」の連載再開の前に、プラットフォームの立ち位置そのものが危なくなる可能性も否定できない…との言い回しがテンプレート化していたのだが、それがまさに体現化してしまった。「ガラスの仮面」はどの雑誌で連載を再開することになるのだろうか(休刊から3年が経過した今記事執筆時点においても未発表)。なお【「ガラスの仮面」公式サイト】では塗り絵や日めくりカレンダーなど関連グッズの宣伝が大盤振る舞い状態だが、単行本はいまだに49巻までのままであり、また掲載誌に関する情報も無い。作者自身は「必ず最終巻まで描き続けます」とコメントしているのだが(【該当ツイート】)。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容は実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミック誌と比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2021年1-3月期と2021年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2021年1-3月期と2021年4-6月期)

「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がトップ、「Cocohana」「プチコミック」が続く。各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べると比較的整った傾斜ができている(今期では「プチコミック」と「Cocohana」がほぼ同数となったが)。ただし部数そのものは数万部の単位のため、ヒット作が生まれることで雑誌が大盛況となれば順位が大きく変動する可能性はある。

「FEEL YOUNG」は4期前から部数を非公開化している。

↑ 印刷証明付き部数(FEEL YOUNG、部)
↑ 印刷証明付き部数(FEEL YOUNG、部)

「FEEL YOUNG」は「おしゃれな恋愛コミック誌」がキャッチコピーの月刊女性向けコミック誌。読者ターゲットは「おしゃれゴコロを忘れない女性たちが中心読者層」とのこと。連載陣としては安野モヨコ先生の「後ハッピーマニア」などが知られているが、部数動向は正直なところ芳しくない状態が続いていた。発売そのものは継続中で該当期はもちろん記事執筆時点でも休刊の確認はできないことから、部数の非公開化は単純に編集部あるいは出版社の方針によるものらしい。

プラス誌皆無…四半期変移から見た直近動向


次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに部数推移を知ることはできる。

まずは少女向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2021年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2021年4-6月期)

プラス誌は皆無。「マーガレット」「りぼん」がプラスマイナスゼロで、それ以外はすべてマイナス。誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが7誌、それを超えた下げ幅は4誌。前期比で1割以上の下げも1誌確認できる。

下げ幅は誤差領域内にとどまったものの、部数そのものは少女向けコミック誌でトップの「ちゃお」は、大きな減少が続いている。

↑ 印刷証明付き部数(ちゃお、部)
↑ 印刷証明付き部数(ちゃお、部)

該当期間に発売されたのは3誌。それぞれ読者層に合わせた魅力的な付録(パステルミラー・ブラシ、Bigトートバッグ、ミルキーBABYマルチケース)が高評価を受けている。連載陣にもファンは多く、編集部の方針変更や掲載作品の人気が無いなどの理由で部数が落ち込んだわけではなさそうだ。

一方で中長期的に見れば部数は漸減中であることもまた事実。4期前に一時的に部数が回復の動きを見せたものの、すぐに失速してしまったのは残念。むしろそれ以降部数の下落度合いが加速しているようにすら見える(今期ではややおとなしくなったが)。少女向けコミック誌での部数トップの威厳を維持してほしいものだ。

続いて女性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2021年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2021年4-6月期)

少女向けコミック誌同様、前期比で部数プラス誌は無し。プラスマイナスゼロが1誌、それ以外は全誌がマイナスで誤差領域を超えた下げ幅は1誌「Kiss」。

今期は前期比でマイナス1.4%と誤差領域内のマイナスを示した「フラワーズ」だが、部数底上げの立役者的存在「ポーの一族」について、2020年8月号(2020年6月売り)から新シリーズ「ポーの一族 秘密の花園」の連載を開始。3期前分で今連載分は終了していた。該当期では2021年6月号(4月28日発売)から連載が再開されており、多くのファンから注目を集めている。また、人気連載陣の「ミステリと言う勿れ」のテレビドラマ化が決定するなど、盛り上がる要素は多数あったのだが、それでも部数の回復には至らなかった。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

今期部数は2万3000部。部数動向全体としてはあまり思わしくない状況にある。「ポーの一族」掲載などで跳ね上がる期以外はおおよそ3万3000部を維持していたのだが、2018年後半あたりからその原則が崩れてしまっており、新しい維持ラインとして2万4000部が設定された感はあった。しかし前期に続き今期もその維持ラインすらキープできなかったのが現状。しかも「ポーの一族」の連載が再開されたにもかかわらず、である。

プラスは1誌のみ、誤差領域超えがほとんど…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2021年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2021年4-6月期)

プラスは「りぼん」のみで、それ以外は全誌マイナス、しかも「LaLa」以外のマイナス誌はすべて誤差領域を超えた下げ幅。1割を超えた下げ幅を示しているのは10誌。いずれも掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。今期で唯一前年同期比プラスを示した「りぼん」にしても、前年同期の部数がたまたまイレギュラー的に少なかったことの反動以上のものではない。

少女向けコミック誌全体において、起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。新型コロナウイルスの流行が部数減少傾向に拍車をかけた可能性は否定できないが、それを裏付けるものは無い。

続いて女性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2021年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2021年4-6月期)

全誌がマイナスで、しかも「office YOU」「MELODY」「フラワーズ」以外はすべて誤差領域を超えた下げ方を示している。一番大きな下げ幅は「Kiss」でマイナス15.0%。10%台の下げ幅を示しているのも5誌ある。起死回生の手立て、例えば状況を打開するヒット作の登場が強く求められる状況と判断せざるを得ない。とりわけ「Kiss」は部数の落ち込み具合が急なのが気になる。

↑ 印刷証明付き部数(Kiss、部)
↑ 印刷証明付き部数(Kiss、部)

2018年7-9月期に大きな落ち込みを見せてから、部数減少のスピードが速まった感はある。ようやく前期で底に達したような雰囲気が見られたが、今期では再び加速したようにも見える。漫画単行本レーベル「講談社コミックスKiss」の基幹誌でもあるだけに、何らかのテコ入れが必要不可欠だとは思われるのだが。



かつてあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今期では残り香すら覚えることなく、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能ではない。最近ならば「ポーの一族」が好例(影響力は限定的だが)。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性は否定できない。ここ数期では多くの雑誌が大きな部数の減少を示しており、電子版に読者がシフトしたとの推測以外の原因が見つからない。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念ではある。


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