全般的に軟調…少女・女性向けコミック誌部数動向(2016年7月-9月)

2016/11/09 10:30

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2016年10月28日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2016年7月から9月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

スポンサードリンク


トップは少女向けはちゃお独走、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも嬉しい話には違いない。

↑ 2016年4-6月期と最新データ(2016年7-9月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2016年4-6月期と最新データ(2016年7-9月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.6倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。先に話題に登ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。【直接リンクはこちら:ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱】

第2位の「別冊マーガレット」と第3位の「りぼん」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「なかよし」「Sho-Comi」がほぼ同数で続き、その他諸々が後を追いかけている。前四半期と比べ各誌とも部数に大きな変化は無い。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2016年4-6月期と最新データ(2016年7-9月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2016年4-6月期と最新データ(2016年7-9月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「YOU」「プチコミック」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けており、今四半期では「YOU」がやや大きく落ちたものの、第3位の「プチコミック」も同じような落ち方を示し、第2位の順位は維持できる結果となった。

すでに以前の記事で解説しているが、「ザ・デザート」は【THEデザートについてのお知らせ】にもある通り、2015年10月10日発売の11月号をもって休刊するとの話が公式に発表され、すでに休刊してしまっている。当然「ザ・デザート」は部数の計上がされなくなったが、さらに姉妹誌の「デザート」も紙媒体版が刊行中ではあるものの一時的に同じタイミングで非公開となってしまった。何かの配慮があったのかもしれないが、その後再び値を計上するようになり、一安心ではある。

女性向けは全誌でマイナス…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年4-6月期、前期比)

プラス領域は「なかよし」「りぼん」「ちゃお」の3誌(「別冊フレンド」は表記上プラスとなっているが実数字はプラスマイナスゼロ)だがすべて誤差領域(振れ幅5%以内)、マイナス誌は10誌だが誤差領域を超えた確定的な下げを示したのは「ベツコミ」「LaLa DX」「別冊花とゆめ」「ザ・マーガレット」の4誌。

プラス領域にある「なかよし」だが、【なかよし7月号が「CCさくら」効果で完売、3年4か月ぶりとの話】でも伝えたように、「CCさくら」の新作連載が始まり大いに話題を集めたが、この影響がなお継続している。該当期間内では9月号の付録に「ケロちゃんスプラッシュシステム」なるものもつけられ、同誌が本腰を入れているようすがうかがえる。

他方、大きなマイナスを示した「LaLa DX」だが、これは多分に前四半期で複数の要素による値の引き上げの反動によるもの。

↑ LaLa DXの部数推移(2016年7-9月期まで)
↑ LaLa DXの部数推移(2016年7-9月期まで)

前四半期では人気作品の「恋だの愛だの」が完結に向けた盛り上がりを見せ、最終回掲載号ではアイナナSSRのコードが付録として用意された。またそれと前後して「ヴァンパイア騎士」の続編「ヴァンパイア騎士 memories」がスタートするなど、手持ちの人気作品に係わる大きな動きがあり、それが部数のけん引役となった。今四半期ではその大きな上昇が力尽き、失速したような値動きとなっている。

ただしグラフを読みなおすとこの一年ほどの間にトレンドを上向きに転換させているのが分かる。他の業界によるビッグウェーブに乗る形で無く、自ら波を創って様になる動きを見せるのは、一番効率が良く、大きな機運をつかむことができるため、それが可能であればもっとも望ましい形には違いない。やや焦ったような動きの反動によるマイナス値だが、2四半期前と比べれば部数は同数。再び上昇機運に乗る、あるいは作り上げてほしいものである。

マイナス6.6%を計上した「別冊花とゆめ」だが、こちらは「ガラスの仮面」50巻の一部を先読みできる小冊子が付録の号によりプラス化した前四半期の反動によるところが小さくない。

↑ 別冊花とゆめの部数推移(2016年7-9月期まで)
↑ 別冊花とゆめの部数推移(2016年7-9月期まで)

同誌は美内すずえ先生の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお「発売延期となりました。申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください」の説明がなされている)。他方面への展開、例えば該当期でも一心堂本舗から北島マヤと月影千草をモチーフにしたフェイスシートが発売されるなどの動きもあるが、肝心の本編がいまだにストップしたままなのが現状。それゆえに、前四半期の小冊子による上昇機運はほどなく失速してしまった(連載が再開されていないのだから当然の話ではある)。

続いて女性向けコミック。全誌がマイナス領域。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2016年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2016年7-9月期、前期比)

前四半期ではダイナミックな上昇(プラス35.4%)を示した「フラワーズ」。これは【月刊フラワーズ増刷、「ポーの一族」続編が人気】で伝えた通り、同誌で人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」がスタートしたことによるもの。当時の作品のファンがこぞって注目し買い始めたため、雑誌としては珍しく増刷が決まり、報道もなされるようになった。しかしながら作品の継続掲載はなされていないため(不定期連載)、今回は勢いがそのまま失速する形となった(実部数は2四半期前と同数)。

↑ フラワーズの部数推移(2016年7-9月期まで)
↑ フラワーズの部数推移(2016年7-9月期まで)

しかしながら【「ポーの一族」新作連続掲載決定で「月刊flowers」は来年頭からもりもり売れそうな予感】で伝えている通り、来年1月発売号から「ポーの一族 春の夢」の連続掲載が決定している。該当期間は2四半期先になるが、その時期(以降)は再び「フラワーズ」の部数は大きな盛り上がりを見せるに違いない。それだけの力を「ポーの一族」は有している。

軟調誌多し…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年7-9月期、前年同期比)

プラスを計上したのは「LaLa DX」のみ(「別冊フレンド」は表記上プラスとなっているが実数はプラスマイナスゼロ)。前年同期比でプラスを示したのは、前四半期比で説明の通り、自主企画のヒットが続き上昇機運に転じた効果が出ているため。他方、下落誌は12誌で、誤差領域を超えたのは6誌。特に「ザ・マーガレット」「ベツコミ」「なかよし」の3誌は2割を超える下げ幅を示しており、やや強い危機感を覚えさせる。とりわけ「ザ・マーガレット」はここしばらく似たような立ち位置を維持しており、非常によろしくない状況に違いない。

↑ ザ・マーガレットの部数推移(2016年7-9月期まで)
↑ ザ・マーガレットの部数推移(2016年7-9月期まで)

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2016年4-6月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2016年4-6月期、前年同期比)

「フラワーズ」は実数としてはプラスマイナスゼロなので、プラス圏にあるのは「YOU」1誌のみ。「ARIA」の大きな下落が目に留まるが、これは「進撃の巨人」特需とその反動による変動を経て、再び下落基調を示したことによるもの。実部数は記録の限りでは最小値をわずかに50部上回る値にまで落ちており、やや危機感を覚える。

↑ ARIAの部数推移(2016年7-9月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2016年7-9月期まで)

再び大金星をつかみ、グラフにダイナミックな動きを示してほしいものだが。



半年前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えることなく、通常運転に戻った感は強い。

このような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。


■関連記事:
【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】
【ツイッター44%、LINE38%…若年層のソーシャルメディア利用動向】
【男性は女性コミック誌は読まない、しかし女性は……】
【紙媒体販売実績が過去最大の落ち込みに、という話】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー