低迷感否めず…少女・女性向けコミック誌部数動向(2017年10月-12月)

2018/03/02 05:13

2018-0301加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりで無く、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2018年2月20日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2017年10月から12月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い年齢階層、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも朗報には違いない。

↑ 2017年7-9月期と2017年10-12月期における少女向けコミック誌の印刷証明付き部数(万部)
↑ 2017年7-9月期と2017年10-12月期における少女向けコミック誌の印刷証明付き部数(万部)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に2.8倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。

第2位の「りぼん」と第3位の「別冊マーガレット」は部数の点では僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がほぼ同数で続き、その他諸々が後を追いかけている。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしく無い雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 女性向けコミック誌の印刷証明付き部数(2017年7-9月期と2017年10-12月期)(万部)
↑ 女性向けコミック誌の印刷証明付き部数(2017年7-9月期と2017年10-12月期)(万部)

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けている。

プラスは皆無…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌)(2017年10-12月期、前期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌)(2017年10-12月期、前期比)

プラス圏は皆無。プラスマイナスゼロが「マーガレット」のみで、誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが7誌、それを超えた下げ幅は6誌。

マイナス5.2%と誤差領域を超えたマイナスを計上した「別冊花とゆめ」だが、かつて同誌をけん引していた「ガラスの仮面」は今なお連載を再開していない。

↑ 別冊花とゆめ印刷証明付き部数(部)
↑ 別冊花とゆめ印刷証明付き部数(部)

同誌は美内すずえ先生の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお発売は未定のまま)。「ガラスの仮面展」の開幕式の中で先生によるラストの言及(具体的な内容は一切明らかにしなかったがすでに構想済みとの話)や、作中舞台劇「忘れられた荒野」の舞台化決定、ココアとのコラボ、さまざまな公演の展開など多様な動きが見られるのだが、肝心の本編に動きは無い。本編の連載再開を待ち望んでいるファンは複雑な心境に違いない。

「別冊花とゆめ」の部数も2017年に入ってから失速状態にある。このままでは連載再開の前にプラットフォームの立ち位置そのものが危なくなる可能性も否定できない。

続いて女性向けコミック。こちらも状況にあまり変わりは無い。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック)(2017年10-12月期、前期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック)(2017年10-12月期、前期比)

「ARIA」「Cookie」両誌は1割を超える下げ幅。「ARIA」は直近部数が8467部と1万部を切る実情のため、多少の部数増減で大きな振れ幅が生じることによる結果だが、「Cookie」は3万6000部。

↑ Cookie印刷証明付き部数(部)
↑ Cookie印刷証明付き部数(部)

踊り場を経ながらゆるやかな下落傾向の中にあったものの、今期では大きな下落。起死回生策が求められる状況ではある。

マイナス2.9%に留まった「フラワーズ」だが、【月刊フラワーズ増刷、「ポーの一族」続編が人気】でも伝えた、2四半期前にスタートした人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」の特需が、今期で完全に消え去った形となった。

↑ フラワーズ印刷証明付き部数(部)
↑ フラワーズ印刷証明付き部数(部)

「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での底上げ(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は平常運転に戻した結果。今春には新しいシリーズがスタートするとの告知もされており、予定通りならば次回か次々回には再び特需による盛り上がりが期待できよう。改めて「ポーの一族」のけん引力の大きさを知ることができる動向には違いない。

プラス無し、誤差領域超え多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌)(2017年10-12月期、前年同期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌)(2017年10-12月期、前年同期比)

プラス計上は皆無。全誌マイナスで、誤差領域を超えた下げ幅を示しているのは11誌。2割以上の下げ幅を示した「ザ・マーガレット」はここしばらくの間、大きな減少傾向の中にあり、よい状況とは言い難い。

↑ ザ・マーガレット印刷証明付き部数(部)
↑ ザ・マーガレット印刷証明付き部数(部)

続いて女性向けコミック。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌)(2017年10-12月期、前年同期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌)(2017年10-12月期、前年同期比)

「フラワーズ」は「ポーの一族 春の夢」特需発生前の部数に戻った状態で、プラスマイナスゼロ。それ以外はすべてマイナスで、1割以上の下げ幅を示したのは6誌に及ぶ。

前期比の項目でも挙げた「ARIA」だが、かつて「進撃の巨人」特需で大きく部数を底上げしたが、間もなく失速。その後は下落基調を示している。部数は記録の限りではこれまでの最小値だった1万2000部すら下回る値にまで落ちており、今四半期ではついに4ケタ台に突入。危機感を覚える。

↑ ARIA印刷証明付き部数(部)
↑ ARIA印刷証明付き部数(部)

再び大金星をつかみ、グラフに巨人のごとき動きを示してほしいものだが。



1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えること無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。すでに第二期の実放送も始まっており、それに向けた企画記事なども見受けられる。部数の点でも盛り上がりを見せてもよいはずなのだが。

「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族 春の夢」が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルに関わる記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減退している可能性は否定できない。もっとも少女向けコミック誌の場合、付録にも訴求性があることから、その影響は最小限に留まっているのだろう。


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