紙面刷新で飛躍中の雑誌あり…諸種雑誌部数動向(2017年7-9月)

2017/11/13 04:42

2017-1112小規模・個人経営の書店が経営者の高齢化、インターネット通販の普及、高収益を見込める雑誌の売れ行き減退、少子化に伴う顧客減少で閉店した上で他業種店舗、あるいは一般住宅への改装が相次ぎ、それと共に雑誌などの供給場として注目を集めるようになったのがコンビニエンスストア。しかし、雑誌の集客効果は媒体力の下落と共に落ち、コンビニでもその領域と取扱い雑誌数は減っていく。雑誌コーナーは縮小され、その場にはイートインコーナーや電子マネーの販売スタンドなど、時代の需要に合わせた設備が配されていく。大型書店も最近は数的に縮小傾向にあり、雑誌を店舗で手に取り購入する機会は減り、雑誌業界そのものも元気を無くしつつある。このような状況の中で、各分野の雑誌のうち一部ではあるが、複数の分野に関し、社団法人日本雑誌協会が2017年11月9日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値から、雑誌の部数における「前年同期比」を算出し、その推移を確認していくことにする。

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対象雑誌は前年同期比でマイナスのみ…一般週刊誌


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語が意味するもの、諸般注意事項、類似記事のバックナンバーは一連の記事をまとめ収録した【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にある。詳しくはそちらを参照のこと。

まずは一般週刊誌のジャンルに該当する雑誌。写真を中心に記事を展開する、いわゆる写真週刊誌も含む。

↑ 一般週刊誌印刷印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷印刷証明付き部数(2017年7-9月、前年同期比)

↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2017年7-9月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2017年7-9月)(万部)

今四半期では幸いにも脱落・追加雑誌は無し。また、印刷証明付き部数を収録している雑誌に限定しているとはいえ、最低でも10万部の印刷部数は確保されている……との言い回しがしばらく前まではテンプレート化されていたが、まず「サンデー毎日」が10万部を割り込んでしまい、その状態が今四半期も継続している。そして「AERA(アエラ)」も「10万部割れ倶楽部」の仲間入りをすることになった。特に「AERA(アエラ)」の衰亡ぶりは著しく、部数がほぼ一直線に減っている状態。

↑ AERA印刷証明付き部数
↑ AERA印刷証明付き部数

ここ数四半期はようやく底値を打ち、今回は前四半期比ではプラスを計上したが、これが踊り場的な動きなのか、あるいは本格的な反転の予兆なのか、現時点では見極めは不可能。10万部への回復への足掛かり的な動きならばよいのだが。

それ以外の雑誌は、相応の需要は「今のところ」維持されていることになる。想定購読層が幅広い一般週刊誌ならではの値といえる。「SPA!」もやや危うい部数だが、同誌の部数は横ばいを維持しているので、こちらは「10万部割れ倶楽部」への入会はなさそう。

↑ SPA!印刷証明付き部数
↑ SPA!印刷証明付き部数

前年同期比でプラス領域にあるのはゼロ誌。他方、マイナス誌は13誌全誌、5%内(誤差領域)を超えての下げ幅を示しているのはそのうち9誌。あまりよい状況とは言い難い。かつては新聞同様、電車やバスなどの通勤・通学時の合間には欠かせない存在だった一般週刊誌も、その需要は確実にスマートフォンなどに奪われ、肩身の狭い想いをしている、さらに継続的なプレッシャーを受けていると見てよいだろう。ただし先行記事で言及の通り、少なからずは同時に電子雑誌版も刊行しており、その値は今件では計上されていないため、そちらに読者を奪われている(=雑誌としてのコンテンツ力・訴求力は失われていない)可能性は否定できない。

昨今何かと世間を騒がせている「週刊文春」だが、前年同期比でマイナス2.7%、前四半期比ではマイナス2.4%。誤差領域内の動きであり、健闘しているとの好意的な見方もできる。しかしながら絶対部数の多さに支えられてはいるものの、中長期的な低迷感の中にあることに変わりはない。

↑ 週刊文春印刷実績
↑ 週刊文春印刷実績

↑ 週刊文春印刷実績(過去5年間、万部)
↑ 週刊文春印刷実績(過去5年間、万部)

昨今の動向はある意味、低迷のテコ入れ的な活動との解釈もできるが。

大きく落ち込んだ雑誌のラインアップを再確認すると、「週刊現代」「週刊ポスト」「週刊大衆」「週刊朝日」「週刊アサヒ芸能」といった、男性向けの大衆誌、あるいはゴシップ系雑誌が多分に及ぶ。似通った内容に個性を出しにくくなってしまったのか、あるいは対象年齢階層の趣向そのものに変化が生じているのかもしれない。

意外な動きが…育児系など


続いて育児系雑誌。以前は8誌の動向を追いかけていたが、「edu(エデュー)」が脱落し、都合7誌となってしまう。これは【小学館の子育て雑誌「edu(エデュー)」が休刊していたでござるの巻】でも伝えた通り、2016年2月発売の3/4月号で休刊宣言が出されたことを受けてのもの。一方で祥伝社の「nina's(ニナーズ)」を新たに「動向を追いかける該当誌として」加えている。

同誌は10代後半向けの女性ファッション雑誌「Zipper(ジッパー)」の増刊として発行されたものが元となった主婦向けのライフ&ファッション誌。2005年12月からの創刊されている、偶数月発売の隔月誌。印刷証明付き部数のデータベースでは「マタニティ・育児誌」に仕切り分けされ、部数は2016年第3四半期分から収録されている。

前年同期比では1誌がプラス圏、6誌が誤差領域を超えた大きなマイナス。

↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近に居る育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時にインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末を利用した主婦層による利用の普及が進んでおり、子育て世代に向けた情報・コミュニティサービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。

盛況を博していた「ベビモ(Baby-mo)」だが、最近は姉妹誌の「プレモ(Pre-mo)」と共に低迷気味。同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めていた。「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示していた。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじることなく常に改善を模索し、それが功を奏していたように解釈できる。しかしながら2015年後半から大きな失速を見せ、その後も部数は横ばい(今四半期では前四半期比ではプラス)。何らかの方針転換がなされ、それが読者の動きにつながったのだろうか。

他方、「初めてのたまごクラブ」は大きなプラスを計上。

↑ 初めてのたまごクラブ印刷証明付き部数
↑ 初めてのたまごクラブ印刷証明付き部数

「初めてのたまごクラブ」は季刊誌で該当発行誌は1誌。「妊娠がわかったばかりの「わからないこと」「不安なこと」を解消する情報をこの1冊にぎゅっとまとめました。医師監修の信頼できる情報満載で、あなたの妊娠生活を応援します」のコピーにある通り、不安を持つことの多い妊娠したばかりの女性に様々な観点から情報の提供を行っている、教本的な存在。通常版は電子版も展開し、またハンディサイズ版(B5変型判、内容は同じ)も存在する。特別付録の母子手帳ポーチやマタニティマークストラップも嬉しいところ。

部数動向の限りでは2016年第3四半期で大きく上昇を示し、それ以降は安定した部数動向に移行している。何らかの方針転換があり、それが功を奏しているのだろうか。掲載情報への評価が極めて高いことから、口コミでよさが広まっているのかもしれない。

続いて食・料理・レシピ系雑誌。健康志向の強まり、一人暮らし世帯の増加、食の多様化に伴い、レシピや家事テクニックの情報需要は増加しているはずだが、インターネットの普及浸透、料理系をはじめとする家事情報に関するサイトの乱立により、紙媒体の専門誌の立場は思わしくない。しかし今四半期では前四半期に続き興味深い動きも確認できる。

↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)

今四半期ではプラス圏は2誌で「レタスクラブ」と「きょうの料理ビギナーズ」。特に「レタスクラブ」は6割近い伸びを示している。

↑ レタスクラブ印刷証明付き部数
↑ レタスクラブ印刷証明付き部数

「レタスクラブ」の伸びの原因に関しては、詳細は【紙の雑誌の可能性を使い切れ!3号連続完売『レタスクラブ』復活の舞台裏(AdverTimes)】にある通り、人事刷新に伴い内容の大幅な刷新を行ったことによるもの。改変後の内容については賛否両論があるが、雑誌作りの正攻法で部数を伸ばす結果を出したことは、大いに評価ができる。

同誌はグラフからも分かる通り、毎年第4四半期(10-12月)に付録のスヌーピー家計簿カレンダーによる特需が生じている。今四半期はその特需期にあたるためか、前四半期からさらに部数を底上げする形となった。ただし、そのけん引役のスヌーピー家計簿カレンダーは今回大きくリニューアルしたようで、評価が今一つ二つ状態なのが確認できる。これが今後の部数にどのような影響を及ぼすのか、大いに気になるところだ。

まだまだ厳しいエリア情報誌


エリア情報誌。スマートフォンのGPS機能を活用して地図を確認しながら、さまざまな周辺環境の状況を確認していくのが当たり前となった昨今では、かじ取りが極めて難しい状態。

↑ エリア情報雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)

↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2017年7-9月期まで)
↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2017年7-9月期まで)

今四半期では全誌がマイナスで、誤差領域内の下げ幅は「東海ウォーカー」「関西ウォーカー」。四半期単位の動向を見るに、「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」は2015年に入ってから下げ幅を縮小した、横ばいに転じたそぶりも見せているが、低迷感は否定できない。特に「東京ウォーカー」はこの2四半期で再び下げに転じたようにも見える。今後観光に係わる動機づけがプラスの方向に働くのは容易に想像できるので、紙媒体ならではのメリットを活かす施策を盛り込めば、あるいは状況の回復も有り得よう。見方を変えれば、この好機を逃せば、中長期的な回復は難しいともいえる。編集・取材の経費が多額に及ぶ雑誌のスタイルを鑑みると、存続そのもの危機ですらある。

なおウォーカーシリーズはすでに電子化されており、そちらに読者の一部を食われている可能性はある。利用便宜性を考えれば、電子版の方がはるかに使いやすいこともあり、是非とも利用者数を知りたいところなのだが。

他方「福岡ウォーカー」だが2四半期前から印刷証明付き部数の公開が無くなった。雑誌の休刊や不定期刊化の動きは確認ができないのだが、部数が低迷していたのは事実で(2016年第4四半期時点で2.9万部)、色々な状況の判断から非公開化したのかもしれない。

愛玩動物として筆頭に挙げられる、犬と猫をテーマにしたペット専門誌「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。書店での一般売りは無く、通販専用の雑誌。書店のレジでサンプルが配されていることが多く、その表紙からわきあがる愛らしさに惚れた人も多いはず。

↑ 犬猫雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月、前年同期比)

↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2017年7-9月期まで)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2017年7-9月期まで)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」発行元のベネッセにおける大規模情報漏えい問題に絡み、部数を大きく減らした2014年からはすでに数年が経過している。「ねこのきもち」はほぼその時の下げを回復するレベルにまで復調したが、「いぬのきもち」はリバウンド後に失速し、さらに部数を減らしている。犬猫で大きく異なる結果が出てしまっている。下手をすると次四半期には縦軸の最少値を1万部分下げねばならないほど。

以前【国内のペット数、犬は減少・猫は微増で同数に迫る】でも伝えたように、関連団体による試算ではあるが、日本国内のペット数動向では犬が減少し猫が増加するとの結果が出ている。両誌の動向もそれに合わせた動きと考えれば納得がいく。2016年第3四半期で部数上の序列が入れ替わったあと、その差はさらに開きつつある。

直近では「いぬのきもち」が7.3万部、「ねこのきもち」が8.8万部。ペットとしての犬猫の需要にも浅からぬ関係があるだけに、大いに注目したい。

残るは一誌…幼稚園・小学生向け雑誌


最後に小学生向けなどの雑誌。「小学●年生」スタイルの雑誌は半年前の時点では「小学一年生」と「小学二年生」のみだった。かつて存在していた「小学三年生」などはすでに休刊。そして【小学二年生の休刊が公式に発表、残るは小学一年生のみ】でも伝えたが、2016年12月発売号をもって「小学二年生」が休刊となり、残りは「小学一年生」のみ。代替誌的な存在として「小学8年生」が不定期刊として発刊されているが、これは印刷証明付き部数の上で確認できていない。そこで幼稚園向けの雑誌も合わせての精査となる。

昨今では少子化に加え、競合的立場にある各種教材も合わせた通信教育的なサービスが好評を博し、厳しい値が出るのが常だったのだが、「妖怪ウォッチ」特需が発生し、各誌とも大きくプラスを計上する期が続いた。しかしその特需も終わり、今はむしろその特需の反動期が到来している。

↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月期、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷証明付き部数変化率(2017年7-9月期、前年同期比)

「幼稚園」は誤差領域内だが、それ以外は誤差領域を超える下げ。「小学一年生」に至っては3割を超える減少ぶりを示している(実部数は5万7000部)。「アイカツ!」「ポケモン」「プリパラ」など、子供達の間で話題の作品を巧みに取り込んだグッズを提供する姿勢だったが、最近では「ドラえもん」を主軸に企画展開をする傾向にシフトしている。何らかの内部的な方針転換があったのかもしれない。ともあれ、最後の砦ともいえる「小学一年生」の行く先が気になるところだ。



今記事では多様なジャンルを網羅していることもあり、多様な変動が見受けられるが、複数か所で変化を覚えさせる流れが見受けられる。その流れは多種多様だが、中期的な方向性が見える動きなだけに、今後の動向には大いに注目したい。

元々一般誌の多くはすき間時間を埋めるために用いられることが多く、現在はスマートフォンに代表されるモバイル端末に役割を奪われている。駅売店の雑誌コーナーにおいて、言葉通り飛ぶように一般週刊誌が売れ、駅ホームなどのゴミ箱や電車内の棚に読み捨てられた多数の雑誌が目に留まる情景は、もはや過去のものとなっている。

他方、本文でも言及しているが、今ジャンルでも多分に電子雑誌化が成されており、電子版に読者が奪われたため、今件の紙媒体としての印刷部数が減っている可能性はある。単に紙媒体部数が減っているだけのか、雑誌そのものの訴求力が減っているのか、見極めが難しいのが実情ではある。

ともあれ今後はそれぞれの雑誌が自らの立ち位置を明確に分析し、得意な分野、手法で読者の需要をつかんで離さず、さらにその手を広範囲に広げる発想が求められよう。


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