やはり既存のスタイルでは難しいのか…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2017年7月-9月)

2017/11/13 04:39

2017-1112インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2017年11月9日付で最新データへの更新発表を行った、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代は変わらず


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2017年の7-9月期とその前四半期に該当する、2017年4-6月期における印刷実績。

↑ 2017年4-6月期と2017年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2017年4-6月期と2017年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

「クーリエ・ジャポン」の休刊後、今カテゴリの雑誌は全部で6誌の状態が続いている。そして不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回顔を見せていない(2017年6月15日発売が発売中の号では最新号のため、今回の期間では該当しない。次号は11月14日発売予定)。何か新規雑誌を追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は他にないのが残念。

他方、月刊ビジネス誌「BIG tomorrow」が今四半期からデータを非公開化した。確認したところ【青春出版社 広告部からのご報告】にもある通り、2017年11月25日発売号で休刊とのこと。インターネットへの媒体シフトの話も現時点では見受けられず、文字通りの完全休刊となるようだ。

この度、月刊BIG tomorrowは、2018年1月号(11/25発売)、増刊は2018年1月号(12/14発売)をもちまして、休刊することになりました。

突然の休刊のご報告を深くお詫び申し上げるとともに、長年のご支援、ご協力に心より感謝申し上げます。

↑ BIG tomorrow印刷証明付き部数(2017年7-9月期まで)
↑ BIG tomorrow印刷証明付き部数(2017年7-9月期まで)

部数は下落基調にあることは否定できないものの、他雑誌と比べても下げ幅は緩やかで、2013年からはほぼ横ばいに推移。部数の低迷も一因に違いはないが、むしろリソースの効率的な投入を行うため、優先順位が低い当誌を休刊とした可能性は高い。今後の動向には大いに注目したいところ。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年第1四半期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年以降の上昇分をほとんど吐き出す形に。2013年までの沈滞期と比べれば5万分ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気だった。そして3四半期前に大きな伸びを見せ、直近でもいくぶん値を落とした程度。部数は安定的な状況になりつつある。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2017年7-9月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2017年7-9月期まで)

同誌は昨今の動向を見れば分かる通り、ヒット企画の号で大きく背伸びをし、その余韻を楽しみながら次のヒットの創生を目指すスタイルのように見える。良いパターンを見つけたのだろう。

5誌すべてがマイナス…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。なお「¥en SPA!」は今四半期には刊行されなかったため、グラフ上にはその姿は無い。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年7-9月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年7-9月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域はゼロ誌、マイナス領域は5誌。誤差領域(5%内の振れ幅)を超えたのは「THE21」と「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」の2誌。双方とも前四半期で部数を上げたため、その反動による下げが生じている。

↑ DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー印刷証明付き部数
↑ DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー印刷証明付き部数

もっとも「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」は元々部数が低迷している中で、前四半期と2四半期前にやや盛り上がりを見せ、直近期ではその反動以上の下げを示しているのが気になるところ。具体的な減少部数は1833部だが、元々の印刷実績が少なめのため、大きな変化率が生じてしまうのは痛いところではある。

「THE21」は2014年以降は6万部を目安にもみ合い的な状態が続いている。

↑ THE21印刷証明付き部数
↑ THE21印刷証明付き部数

「THE 21」は「ビジュアルな視覚に訴える確かな情報誌」なるキャッチコピーを掲げ、特集を多様な切り口からの読み物を掲載している。この切り口は方向性や方法論の違いこそあれ、どのビジネス誌でも行っている手法だが、「THE 21」ではツボをつくテーマを分かりやすい表現でアピールしているのがポイント。この特徴が部数の確保に寄与しているのだろう。

ビジネス関連誌では特に、特集記事の切り口の巧みさ、鋭さで「他誌にはないコンテンツ」を形成し、それがオンリーワン的付加価値をもたらし、売上を底上げするケースが多々見受けられるようになった。これはビジネス誌に限らず、最近の専門雑誌には特に必要不可欠な要素でもある。

プラスは2誌、マイナスは3誌…前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2017年7-9月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2017年7-9月、前年同期比)

プラスは「PRESIDENT」と「THE21」、マイナスは「週刊東洋経済」「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」「週刊ダイヤモンド」の3誌。「PRESIDENT」がずば抜けた伸びを示しているが、これは上記グラフにある通り、3四半期前に大きく伸びた部数の余韻を受けての結果。

部数そのものではトップの「PRESIDENT」に続く「週刊ダイヤモンド」は、今四半期では誤差領域を超えたマイナス。中長期的な動向としては安定期にあるが、今回の下げの動きはやや気になるところ。

↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数
↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数

「週刊ダイヤモンド」のキャッチコピーは「書店で一番売れてるビジネス週刊誌」。今カテゴリ内では「PRESIDENT」に続く部数だが、「PRESIDENT」は隔週刊誌であることから、少なくとも印刷証明付き部数が確認できるビジネス週刊誌では「一番売れている」で間違いはない。

同誌では社会生活の身近な、気になる一つのテーマに絞り、それに切り込むスタイルで特集記事を構成している。そして表紙に大きく描かれたそのテーマの見せ方が鋭く、大きな魅力となっている。部数動向は2013年以降では事実上横ばいで推移。今後大きな飛躍へと歩む期待ができよう。



内容の斬新さから注目を集めると共に部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化と共に失速し、一部有料のデジタル媒体に移行したこと(2016年4月号で雑誌媒体版としては休刊)で、印刷証明付き部数の開示が無くなってから1年以上が経過した。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しさを覚えさせる。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのだろう。

他方、今回休刊決定と部数の非公開が決まった「BIG tomorrow」は、特に雑誌の方針変更や評判が悪くなったとの話も無い。電子書籍版も展開されており、部数も極端な低迷をしていたわけでもない。それゆえに、突然の休刊には驚かされるものがある。何か内なる思惑があるのかもしれない。

コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。例えば「週刊ダイヤモンド」では現在紙媒体の本誌と同じレイアウトでページめくりをしながらの電子雑誌を読むことができ、さらにバックナンバーの記事PDFを精査できるサービスが、定期購読者向けに提供されている(【デジタルサービスとは(週刊ダイヤモンド)】)。

↑ 紙媒体としての「週刊ダイヤモンド」を定期購読している読者に提供される、各種デジタルサービス
↑ 紙媒体としての「週刊ダイヤモンド」を定期購読している読者に提供される、各種デジタルサービス

ただし今サービスはあくまでも紙媒体の読者へ対する付随サービスであり、独自のコンテンツ提供ではない(紙媒体のみ、電子媒体のみの販売スタイルではない)。「電子版を読みたければ紙媒体版を買いなさい」である。もう少し電子媒体に関わる環境に変化が生じてくれば、コミック雑誌同様に「電子媒体のみの販売」を行うビジネス雑誌も一般化することだろう。それゆえに電子書籍版も展開されていた「BIG tomorrow」の休刊決定は、つくづく残念ではある。


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