おおよそ不調…ビジネス・金融・マネー系雑誌部数動向(2020年1-3月)

2020/06/05 05:26

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020-0603インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・金融・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2020年5月28日付で最新データへの更新発表を行った、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

スポンサードリンク


「PRESIDENT」一強時代は変わらず


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2020年の1-3月期とその前期に該当する、2019年10-12月期における印刷実績。

↑ 印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌、万部)(2019年10-12月期と2020年1-3月期)
↑ 印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌、万部)(2019年10-12月期と2020年1-3月期)

「クーリエ・ジャポン」の休刊後、今カテゴリーの雑誌は定期刊行誌では全部で6誌だったが、その後「BIG tomorrow」も休刊に伴いデータの非公開化が行われ、5誌に減ってしまった。そして2018年10-12月期を最後にPHP研究所の「THE21」が姿を消してしまう。

「THE21」は現在も定期的に刊行を続けており、休刊のお知らせは公式サイトなどでは確認できない。何らかの理由により単純に印刷証明付き部数の非公開化に踏み切ったものと考えられる。

↑ 印刷証明付き部数(THE21、部)
↑ 印刷証明付き部数(THE21、部)

部数が低迷していたのは事実ではあるが、その動向を推し量るすべが無くなるのは残念な話ではある。

不定期刊化し、出入りが激しかった「¥en SPA!」は今期でも顔を見せていない。

「¥en SPA!」は2019年12月16日に発売された2020年冬号が最新号。今期の対象時期では新刊は出ておらず、部数も非公開のまま。以前は半年ぐらいごとに刊行し、部数も1期ごとに公開・非公開を繰り返していたが、2017年4-6月期を最後に公開されていないままの状態が続いている。編集部、あるいは出版社がこれまでとは方針を変え、非公開との判断を下したのかもしれない。一応確認したが、同誌公式サイトでは発行ペースについて「不定期刊」との表記が確認できる。

ともあれ「THE21」の非公開化によって、当ジャンルが全部で4誌になってしまったのはさみしい話に違い無い。何か新規雑誌を追加したいところではあるが、類似ジャンルで合致しそうな雑誌は(印刷証明付き部数が公開されている範囲では)他に無いのが残念。そもそも雑誌業界そのものの観点においても、ビジネス・金融・マネー誌系で印刷証明付き部数が公開されている雑誌が4誌しかない状況は、大きな問題ではあるのだが。

対象誌の中では「PRESIDENT」が前期から継続する形でトップの部数。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍以上もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年1-3月期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年以降の上昇分をほとんど吐き出す形に。2013年までの沈滞期と比べれば5万部ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気だった。そして2016年の10-12月期に大きな伸びを見せ、その後はほぼ横ばいのままだった。2018年4-6月期以降は減少傾向を示しているのが気になるところ。

↑ 印刷証明付き部数(PRESIDENT、部)
↑ 印刷証明付き部数(PRESIDENT、部)

同誌は昨今の動向を見る限りではヒット企画の号で大きく背伸びをし、その余韻を楽しみながら次のヒットの創生を目指すスタイルのように見える。よいパターンを見つけたのだろう。ここ数期の低迷ぶりを見るに、そろそろ新しいヒット企画が出てくる期待もあるのだが。

全誌マイナス…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手短に状態を知るのには適している。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前期比)(2020年1-3月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前期比)(2020年1-3月)

今期では4誌すべてが前期比でマイナス。誤差領域(5%内の振れ幅)を超えた下げ幅を示したのは3誌。

一番下げ幅の大きい「週刊東洋経済」だが、部数動向は緩やかな下落の動き。ここ数期において、やや下げ方に加速がついた感はある。

↑ 印刷証明付き部数(週刊東洋経済、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊東洋経済、部)

「週刊東洋経済」は週刊で畳みかけるように世の中のトレンドを捉えた経済方面の特集が多く、これが部数の安定を支えているのだろう。該当期発行号の中では「病院が壊れる」「今年こそ始めるプログラミング」「信じてはいけない クスリ・医療」「資産運用マニュアル」などが、話題性も高く評価も集めている。他方、タブロイド紙的なあおりを思わせる見せ方の記事も少なからずあり(特に公式ウェブサイトに転載されたもので多く見受けられる)、経済誌としての評価は分かれるところ。

プラスは1誌のみ、1割超の下げが1誌…前年同期比動向


続いて前年同期比を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きのためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前年同期比)(2020年1-3月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前年同期比)(2020年1-3月)

「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」が誤差領域内のプラスで、それ以外の3誌はマイナス。しかもマイナスの雑誌はすべて誤差領域を超えた下げ幅を示しており、前期比で一番大きい下げ幅を示した「週刊東洋経済」は前年同期比でも同様で、しかも下げ幅は1割を超えている。

前年同期比で唯一プラスを示した「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」だが、長期的な部数動向は緩やかな下落傾向の中にある。

↑ 印刷証明付き部数(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー、部)
↑ 印刷証明付き部数(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー、部)

「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」はグローバル・マネジメント誌を名乗る経営学誌。1922年にアメリカ合衆国のハーバード・ビジネス・スクールの機関誌として創刊された雑誌で、今では日本も含め14か国で刊行されている。該当期における刊行誌は3誌。「デュアルキャリア・カップルの幸福論」「戦略を実行につなげる組織」「女性の力」とビジネスの現状に合わせた魅力的な特集が並び、電子版も用意されている。もっとも読者の感想の限りでは、読み物としては高評価ではあるが、実用的ではない、具体的な話が無いとの意見も見受けられる。雑誌の方向性の上では難しい話に違いない。

部数動向は長期的には下落傾向に違いないが、ここ数年に限れば現状維持で持ちこたえているようにも見える。何かをきっかけに上向きへの転換ができればよいのだが。



内容の斬新さから注目を集め部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化とともに失速し、一部有料のデジタル媒体に移行したこと(2016年4月号で雑誌媒体版としては休刊)で、印刷証明付き部数の開示が無くなってから3年以上が経過している。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しさを覚えさせる。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのだろう。

他方、2017年7-9月期に休刊と部数の非公開が決まった「BIG tomorrow」は、特に雑誌の方針変更や評判が悪くなったとの話も無い。電子書籍版も展開されており、部数も極端な低迷をしていたわけでも無かった。それゆえに、突然の休刊には驚かされるものがある。何か内なる思惑があるのかもしれない。

定期刊行が続いているにもかかわらず部数を非公開化した「THE21」のケースは残念な話だが、それが編集部なり出版社の方針であるのならば致し方ない。雑誌そのものが休刊とならなかっただけよかったと思わねばならないのが現状ではある(記事執筆現在でも新刊は刊行中)。

コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の現時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。特にビジネス・金融・マネー誌は電子化との相性がよいので、読者の紙媒体からのシフトは大きな動きとなりうる。それに伴い今件「印刷」証明付き部数の動向が、その雑誌の勢いそのものを反映し難くなるのも仕方があるまい。上げ底をせずに厳密な電子版の販売数を合算した、総合的な刊行部数の公開が望まれよう。

なお少年・男性向けコミック誌部数の記事でも言及したが、今期では新型コロナウイルスの流行に伴う商業活動自粛の動きの中で、少なからぬ書店が自粛休業を行い、それに伴い書店からの注文がキャンセルされたことで雑誌発注数が減り、部数にも影響を与えた可能性がある。企業も少なからずが自主休業や社員の自宅での業務へと転じており、ビジネス街での当ジャンルの雑誌の売行きに影響を与えた可能性は否定できない。とはいえ実数を見る限りでは前期と変わらないレベルの軟調さであり、明らかに部数を引き下げたとは考えにくいのが実情だ。「週刊東洋経済」がもしかすると影響を受けたかも、という程度だろうか。


■関連記事:
【雑誌も含めて市場規模2500億円超え…「電子書籍ビジネス調査報告書2018」発売】
【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】
【就業者に読まれているビジネス・経済誌、トップは「日経ビジネス」】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2020 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS