株価同様部数増減に一喜一憂…ビジネス・金融・マネー系雑誌部数動向(2018年4月-6月)

2018/08/30 05:04

2018-0829インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・金融・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2018年8月27日付で最新データへの更新発表を行った、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代は変わらず


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2018年の4月-6月期とその前期に該当する、2018年1月-3月期における印刷実績。

↑ 印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌、万部)(2018年1月-3月期と2018年4月-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌、万部)(2018年1月-3月期と2018年4月-6月期)

「クーリエ・ジャポン」の休刊後、今カテゴリーの雑誌は定期刊行誌では全部で6誌だったが、その後「BIG tomorrow」も休刊に伴いデータの非公開化が行われ、5誌に減ってしまった。また不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今期でも顔を見せていない。

「¥en SPA!」は2018年6月28日付で2018年夏号が発売されており、今回の該当期に刊行されていることから、本来ならば部数が計上されていてもおかしくは無いが、前期に続き非公開のまま。以前は半年ぐらいごとに刊行し、部数も1期ごとに公開・非公開を繰り返していたが、2017年4月-6月期を最後に公開されていないままの状態が続いている。編集部、あるいは出版社がこれまでとは方針を変え、非公開との判断を下したのかもしれない。

ともあれ全部で5誌なのはさみしい話に違い無く、何か新規雑誌を追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は(印刷証明付き部数が公開されている範囲では)他に無いのが残念。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前期から継続する形でトップの部数。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年1月-3月期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年以降の上昇分をほとんど吐き出す形に。2013年までの沈滞期と比べれば5万分ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気だった。そして2016年の10-12月期に大きな伸びを見せ、その後はほぼ横ばいのまま。直近では前期比で少なからぬ減少を示しているのがいくぶん気になるところ。

↑ 印刷証明付き部数(PRESIDENT、部)
↑ 印刷証明付き部数(PRESIDENT、部)

同誌は昨今の動向を見る限りではヒット企画の号で大きく背伸びをし、その余韻を楽しみながら次のヒットの創生を目指すスタイルのように見える。よいパターンを見つけたのだろう。今期の多少大きな下落を見るに、そろそろ新しいヒット企画が出てくる期待もあるのだが。

1誌がプラス…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手短に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前期比)(2018年4月-6月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前期比)(2018年4月-6月)

今期ではプラス領域は1誌「週刊東洋経済」、マイナス領域は4誌。誤差領域(5%内の振れ幅)を超えた下げ幅を示したのは「週刊ダイヤモンド」「PRESIDENT」の2誌。

「週刊東洋経済」は、2013年以降は部数がほぼ横ばい、2016年頭にやや下げたが、それ以降も比較的安定した部数動向の中にある。

↑ 印刷証明付き部数(週刊東洋経済、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊東洋経済、部)

週刊で畳みかけるように世の中のトレンドを捉えた経済方面の特集が多く、これが部数の安定を支えているのだろう。該当期発行号の中では「目からウロコの日本史再入門」「AI時代に勝つ子・負ける子」「医療費のムダ」などが、話題性も高く評価も集めている。

他方、タブロイド紙的なあおりを思わせる見せ方の記事も少なからずあり(特に公式ウェブサイトに転載されたもので多く見受けられる)、経済誌としての評価は分かれるところ。

1誌のみプラス…前年同期比動向


続いて前年同期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前年同期比)(2018年4月-6月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前年同期比)(2018年4月-6月)

「週刊東洋経済」のみがプラス。それ以外は誤差領域を超えた下げ幅を示している。特に「THE21」は2割を超える減少ぶり。

「週刊ダイヤモンド」は中長期的な動向としては安定期にあるが、今期も併せ最近の動きは気になるところ。

↑ 印刷証明付き部数(週刊ダイヤモンド、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊ダイヤモンド、部)

「週刊ダイヤモンド」のキャッチコピーは「書店で一番売れてるビジネス週刊誌」。今ジャンル内では「PRESIDENT」に続く部数だが、「PRESIDENT」は隔週刊誌であることから、少なくとも印刷証明付き部数が確認できるビジネス週刊誌では「一番売れている」で間違いはない。

同誌では社会生活の身近な、気になる一つのテーマに絞り、それに切り込むスタイルで特集記事を構成している。そして表紙に大きく描かれたそのテーマの見せ方が鋭く、大きな魅力となっている。部数動向は2013年以降では事実上横ばいで推移していたが、2017年に入ってから下落が続いている。同誌は電子版も同時展開していることもあり、読者の電子版へのシフトが進んでいるのかもしれない。アマゾンの売れ筋ランキングを見るとKindle本の雑誌、ビジネス・経済カテゴリーでは上位陣によく顔を見せていることから、多くの人に購読されていることは間違いない。



内容の斬新さから注目を集め部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化とともに失速し、一部有料のデジタル媒体に移行したこと(2016年4月号で雑誌媒体版としては休刊)で、印刷証明付き部数の開示が無くなってからはや2年が経過した。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しさを覚えさせる。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのだろう。

他方、2017年7月-9月期に休刊と部数の非公開が決まった「BIG tomorrow」は、特に雑誌の方針変更や評判が悪くなったとの話も無い。電子書籍版も展開されており、部数も極端な低迷をしていたわけでも無かった。それゆえに、突然の休刊には驚かされるものがある。何か内なる思惑があるのかもしれない。

コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。特にビジネス・金融・マネー誌は電子化との相性がよいので、読者の紙媒体からのシフトは大きな動きとなりうる。それに伴い今件「印刷」証明付き部数の動向が、その雑誌の勢いそのものを反映し難くなるのも仕方があるまい。上げ底をせずに厳密な電子版の販売数を合算した、総合的な刊行部数の公開が望まれよう。


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