ダイヤモンドが健闘中!?…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2016年7月-9月)

2016/11/09 05:09

インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2016年10月28日付で発表した、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代は変わらず、だが


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2016年の7-9月期とその前四半期に該当する、2016年4-6月期における印刷実績。

↑ 2016年4-6月期と2016年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2016年4-6月期と2016年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【「クーリエ・ジャポン」が来年2月で休刊、有料会員制のウェブサービスに移行】でも伝えた通り、「クーリエ・ジャポン」が2015年2月25日発売の4月号で休刊となり、有料会員制のウェブサービスに移行した(現時点では一部記事は無料閲覧可能で有料登録すると全部閲覧できる仕組み)。2四半期前に部数開示は終了し、今記事の対象雑誌は1誌減り、全部で6誌となってしまった。ただし不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回顔を見せておらず、それが加われば全部で7誌となる。何か新規雑誌を追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は他にないのが残念。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年第1四半期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年以降の上昇分をほとんど吐き出す形となっている。2013年までの沈滞期と比べれば5万分ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気ではある。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2016年7-9月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2016年7-9月期まで)

2015年のピークに至るまで、この勢いが続けば40万部、さらには50万部へも手が届くのではないかとの希望的観測も持てたが、今回の上昇ではそこまでのエネルギーは無かったようだ。ビジネス系のトップを行く雑誌なだけに、もう少し景気の良い動きを継続してほしかったのだが。

1誌がプラス、5誌がマイナス…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2016年7-9月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2016年7-9月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は1誌、マイナス領域は5誌。誤差領域内(5%内の振れ幅)の動きが多分で、それを超えた雑誌は「THE21」のみ。なお「¥en SPA!」は今四半期内では発刊が無かったので、今グラフからは除外されている。

「PRESIDENT」はプラス0.0%とあるが、厳密にはプラス0.01%でぎりぎりのプラス。棒グラフの色もかろうじて誤差領域内のプラスを示す黄緑色となっている。上記折れ線グラフにある通り、横ばいに推移している中での動きであり、実質的には変化なしと見て良いだろう。

「週刊ダイヤモンド」は今四半期では前四半期からほとんど変わり無し。【週刊ダイヤモンドの6月18日号が重版したとのお話】でも伝えた通り、前四半期では重版号が登場するなど、小さからぬ上昇を示していた。その値からほとんど変わらずの値は大いに健闘したと見て良い。同誌は「他誌にはないコンテンツ」がオンリーワン的付加価値をもたらし、売上を底上げするケースが多々見受けられるようになったが、これは最近の専門雑誌には特に必要不可欠な要素でもある。

↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数
↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数

「週刊ダイヤモンド」は今カテゴリでは珍しく、部数低迷の度合いも緩やかで、2013年以降は事実上横ばいで推移している。市場の縮退、インターネットコンテンツへのシフトの現状を考慮すれば、大健闘に違いない。今後大きな飛躍へと歩む期待が持てる。

より厳しい前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2016年7-9月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2016年7-9月、前年同期比)

前四半期比では誤差領域内に留まる雑誌が大部分だった下げ方も、前年同期比では1誌を除いてすべてが誤差を超えた明らかな下げ方。唯一のプラスは(誤差範囲内だが)「週刊ダイヤモンド」のみ。もっとも、「PRESIDENT」は上記グラフの動向の通り、ピークから失速後の安定期に突入しており、今件値はその安定期に達する前の下落途中の値との比較となるため、大きな値が出ても仕方がない面はある。しかしそれ以外の雑誌は安穏としている状況ではない。

最大の下げ率を見せたのは「THE 21」。2014年末辺りから部数を盛り返して注目を集めていたが、その後失速している。失速から下落の動きは継続しており、今四半期では加速感ら覚える。2011年以降は安定と上昇、下落のパターンの繰り返しで、中期的には少しずつ部数を落としていることから、もう数四半期ほど部数を減らした上で、再び安定期に戻るはずなのだが。

↑ THE21 印刷証明付き部数(2016年7-9月期まで)
↑ THE21 印刷証明付き部数(2016年7-9月期まで)

部数の小さな起伏の繰り返しは、何らかの試行錯誤の繰り返しをしているようにも見える。何かきっかけがあれば大きく上昇しそうではあるのだが。そのきっかけを探し、見出すのが難しいのは「THE21」に限った話ではない。



内容の斬新さから注目を集めると共に部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化と共に失速し、一部有料のデジタル媒体に移行したことで、印刷証明付き部数の開示が無くなってから半年が経つ。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しさを覚えさせる。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのかもしれない。

書籍的な保存を半ば目論んだ企画構成の「PRESIDENT」「THE21」も、少し前までは部数を伸ばし堅調に見えたものの、昨今では今一つな状況が続いている。記事冒頭で触れている「インターネットにスピード感では絶対に太刀打ちできない、紙媒体としての専門誌の勝利の方程式」の一つに、内容の充実性、さらに突き詰めれば蓄積性、保存性の高さの強調があり、それを実践することで支持を集めてきた雑誌であるだけに、最近の軟調さは気になるところ。

元々ビジネス誌ではその編集方針として連載物、あるいは特集の記事を再構築して加筆し、書籍として再展開する傾向が強い。コミック誌における雑誌連載と、その集約+描き下ろしによる単行本のような関係ではある。雑誌の掲載時点で捨て置かれる程度のものでは無く、保存して単行本のごとく取り扱ってもらう、価値あるものとしての作りを成すのは、雑誌そのもののセールスを高める点では一つの方法論としてありうる。一冊一冊が保存に値する、少なくともその価値が見いだせる号が頻繁に登場する期待を読者予備軍にアピールできれば、定期購読を模索する人も増え、部数の安定化も確保できるのだが。

他方、コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。例えば「週刊ダイヤモンド」では現在紙媒体の本誌と同じレイアウトでページめくりをしながらの電子雑誌を読むことができ、さらにバックナンバーの記事PDFを精査できるサービスが、定期購読者向けに提供されている(【デジタルサービスとは(週刊ダイヤモンド)】)。

↑ 紙媒体としての「週刊ダイヤモンド」を定期購読している読者に提供される、各種デジタルサービス
↑ 紙媒体としての「週刊ダイヤモンド」を定期購読している読者に提供される、各種デジタルサービス

今サービスはあくまでも紙媒体の読者へ対する付随サービス。今後電子化に際し、その対価を「紙媒体の購入」で代替させる(当然その分、紙媒体の価格は引き上げられる)切り口を採用する雑誌も増えてくるのだろう。


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