客引き企画で底上げが基本か…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2018年7-9月)

2018/11/21 05:21

2018-1115ゲームそのものの楽しさの提供だけで無く、周辺の人達とのコミュニケーションのための媒介・ツールとしての役割も大きい家庭用ゲーム機とその対応ソフトは、スマートフォンの普及とそれ用のゲームアプリの大々的な展開で、大きな転換期の中にある。ただでさえインターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視されるゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる中で、二重の危機誘発要因の到来に違いない。「アプリ系ゲームの紙媒体専門誌を出せばよい」との意見もあるが、あまり上手くいった事例を聞かないのは、情報の更新伝達スピードがマッチしないことや誘導性のメディア間ハードルが高いのが主な要因だろう。まさに四方の行く手をさえぎられた状態のゲームやエンタメ系の専門誌の実情に関して、社団法人日本雑誌協会が2018年11月12日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版となる、2018年7-9月分の値を取得精査し、現状などを把握していくことにする。

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Vジャンはトップに変わり無し…部数現状


データの取得場所の解説や「印刷証明付き部数」など用語の内容に関する説明、読む際の諸般注意事項、さらには類似記事のバックナンバーの一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらで確認のこと。また記事のカテゴリ名をクリックしてたどれる同一カテゴリの記事一覧からも、印刷証明付き部数関連の記事の過去のものを確認できるので、その手段も併用してほしい。

まずは最新値にあたる2018年の7-9月期分と、そしてその直前期にあたる2018年4-6月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2018年4-6月期と2018年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2018年4-6月期と2018年7-9月期)

いくつかの雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減少している様子が分かる。他方、差異はさほどないように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、前期よりは減少している。

今期では追加・非公開化の雑誌は無し。数年前に何の前触れも無く部数公開から脱落した「週刊アスキー」と「電撃PlayStation」の復活の兆しも無し。「週刊アスキー」は現在ではデジタル媒体上での展開となっているが(今や逐次更新で「週刊」はかつての雑誌の面影以上の意味は無い)、「電撃PlayStation」は現在もなお紙媒体として新刊が定期的に発行され、さらに電子版も同時発売される体制が整っており、休刊や電子版への移行による非公開化では無い。単純に編集部、あるいは企業レベルでの都合による非公開化。

「電撃PlayStation」と似たような現象は以前「ニュータイプ」でも起きており、それも合わせ発売元であるKADOKAWAの方針の可能性は否定できない。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務は無いものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は、情報の非開示化との姿勢としては残念と評せざるを得ない。また、突然の非公開化は他の雑誌でよく生じるケース「非公開化から休刊」を想起させるため、読み手の健康にもよくない。

ともあれ現在印刷証明付き部数を計上しているゲーム・エンタメ系雑誌は、現時点で7誌にまで減少している。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している)なのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

とはいえ、類似の主旨を持つカテゴリが存在しそうに無いのも悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「Nintendo DREAM」「Megami MAGAZINE」が挙げられるが、印刷証明部数は非公開。残念ではある。

2誌がプラス…前四半期との差異確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた部数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2018年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2018年7-9月期)

プラスを示したのは「声優グランプリ」「声優アニメディア」の2誌。マイナスは5誌で、誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた下げ幅を計上しているのは4誌。

「声優グランプリ」は4.7%のプラス。誤差領域内だが最大の上げ幅を計上している。

↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)

プラスとなったのは恐らく2018年8月号の特集「『進撃の巨人 Season3』梶 裕貴×神谷浩史」によるものだろう。表紙もアイドル誌のようなスタイルで、これもまた注目を集める一因と思われる。

もっとも部数の実情を見るに前期の大きな下げの反動を超えるものでは無く、後述する前年同期比ではマイナスを示していることから、リバウンド以上の評価は難しい。むしろ誤差範囲の部数動向と見た方がよいかもしれない(だからこその「誤差領域内」なのだが)。

今ジャンルでは最大部数を誇る「Vジャンプ」は誤差領域を超える下げ幅を示した。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

同誌は特集や付録で多分の上下感を見せるものの、おおよそボックス圏(青色)内での部数を示していたが、2013年4-6月の突出した値を最後に新たなボックス圏(黄色)を形成する部数動向となった。しかし2017年1-3月期に底抜けをし、その後も回復は見せず、さらに新しいボックス圏(オレンジ色)を形成したと解釈できる動きをしている。少しずつ、確実に部数を縮小しているように見える。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいは代入できる要素=ゲームが空振り状態なのか。

アマゾンでのVジャンプなお「Vジャンプ」では電子雑誌方式に関しては、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供のため、電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減っているとの解釈は難しい。販売スタイルは今でも原則として紙媒体の雑誌のみである。

1誌のみプラスの前年同期比


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べればロングスパンの動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2018年7-9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2018年7-9月期)

プラス誌は1誌「声優アニメディア」のみ。誤差領域を超えたマイナス計上誌は5誌「アニメージュ」「PASH!」「アニメディア」「メガミマガジン」「Vジャンプ」。「メガミマガジン」以外は2割以上の減少ぶり。ただし「PASH!」は前年同期で「ユーリ!!! on ICE」祭りの余韻による増加の反動の影響が大きい。

↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)
↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)

ただし直近値の1万9333部は「ユーリ!!! on ICE」祭り以前の最少値以下の値を計上した2015年7-9月の2万3934部よりさらに低い値にある。現状において、反動以上の下落が生じている感も否めない。次期以降の動向が気になるところ。

「声優アニメディア」は2割を超える上げ幅を計上した。

↑ 印刷証明付き部数(声優アニメディア、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優アニメディア、部)

前期では通巻150号記念ということで多様な特集を展開し、また紙媒体への露出が少ない雨宮天氏が表紙・特集記事に登場して大きな評価を受け、部数を底上げした。今期でも雨宮天氏は複数号に登場し、また2018年9月号では「ラブライブ! サンシャイン!!」の特集を70ページにわたって実施している。これが部数アップに貢献したのだろう。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、今回も残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみ合いの形を維持している。最近では1年前の2016年1-3月期で両誌とも「おそ松さん」特需で跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。なおグラフ中の「Q1」とは第1四半期、つまり1-3月期を意味する。

↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)
↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)

↑ 印刷証明付き部数(アニメージュとアニメディア、部)
↑ 印刷証明付き部数(アニメージュとアニメディア、部)

直近値では「アニメージュ」2万9527部、「アニメディア」2万7733部。両誌とも部数を落としているが、前期と比べると両誌の差異は広まった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことは無い。



【CESA、2017年分の国内外家庭用ゲーム産業状況発表】にもある通り、日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。冒頭の解説の通り、少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も紙媒体としての部数低迷は続くことだろう。

動向が掌握可能な期間の限りでは「進撃の巨人」や「おそ松さん」、そして最近では「ユーリ!!! on ICE」が一部雑誌に特需をもたらした。元々部数が6ケタ台に届いていないのも一因だが、アニメ業界のトレンドに乗る形で適切な供給を行えば、大きな勢いを得られることが改めて明らかになった。

世界的に話題となり社会現象すら巻き起こした、スマートフォン向けアプリの「ポケモンGO」だが、本来は今ジャンルの各誌が対象となる。しかしスマホが対象であることから、各誌の部数動向に影響を与えたとの話は耳にしない。「ポケモンGO」のような広範囲の属性に浸透するタイプではないものの、大いに人気を博し、他分野にも影響を示すタイトルは複数存在している。例えば「Vジャンプ」のカードのように、それらアプリとの連動企画が可能なら、定期的な部数底上げが期待できるのだが。

他方先行記事の【少年・男性向けコミック誌部数動向】でも言及している通り、コンテンツを取得する媒体の多様化、具体的にはスマートフォンやタブレット型端末で電子書籍・雑誌化された内容を読むスタイルが急速に浸透しているため、今件の「印刷された」雑誌の部数が割りを食い、減少している可能性もある。実のところ今ジャンルでも電子化されている雑誌は複数ある。しかしながらコミック系雑誌と違いゲーム・エンタメ系雑誌では、大きな表示で見ることで魅力が得られるもの、そして多数の付録がセールスポイントとなる場合も多々あり、単純に電子化しただけで紙媒体版と同じ訴求力が生じるとは考えにくいのも事実には違いない。


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