前期比も前年同期比も少年・男性向けコミック合わせてプラスは1誌ずつのみ…少年・男性向けコミック誌部数動向(2018年1月-3月)

2018/05/26 05:16

2018-0522専用の電子書籍・雑誌リーダーだけで無くパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇の一途にあるとの解釈もある。一方で紙媒体を用いた本は相対的な立ち位置の揺らぎを覚え、多分野でビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。主に子供向けとして提供されているコミック誌業界においては、さらに子供の娯楽や価値観の変化も加わり、ビジネス的に厳しい立場に追い込まれ、よりリスクが低く新天地のように見えるウェブベースでの展開に移行する雑誌が相次いでいる。社団法人日本雑誌協会では2018年5月18日付で、四半期毎に更新・公開している印刷部数に関して、公開データベース上の値に最新値の2018年1月から3月分の値を反映させた。そこで今回は各雑誌が一般向けに、あるいは営業の中で提示する値よりもはるかに実態に近い、この公開された「印刷証明付き部数」を基に、「少年・男性向けコミック誌」の動向に関して複数の切り口からグラフ化を行い、現状を精査していくことにする。

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一誌ずば抜けた強さに変わりは無いが…直近四半期の動向


データの取得場所の解説、「印刷証明付き部数」など各種文中の用語の解説、諸般注意事項、同一カテゴリの過去の記事は一連の記事の解説ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明・収録済み。詳細はそちらで確認のこと。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」が群を抜いている状況は前四半期から変わらず。今記事におけるもう一つの対象ジャンル「男性コミック誌」と合わせても、唯一のダブルミリオンセラー(200万部以上の実績)誌として君臨中…だったのだが、開示されている記録の限りでは1年前にはじめてその大台を割り込み、今四半期でも挽回はならず、200万部割れが継続する形となった。次いでやや年上の少年向けコミック誌「週刊少年マガジン」、さらには小学生までの低年齢層向け(主に男子向け)コミック誌「月刊コロコロコミック」。

少し前までは「月刊コロコロコミック」「週刊少年マガジン」も合わせ3誌が100万部超えだったものの、「妖怪ウォッチ」によるけん引効果が切れ、「月刊コロコロコミック」が脱落。そして2016年第3四半期で「週刊少年マガジン」も100万部を割り込んでしまっている。今四半期では脱落、追加誌が無いのは幸いか。

↑ 印刷証明付き部数(少年向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数(少年向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)

今件「印刷証明付き部数」は現時点では2008年第2四半期以降の値が公開されている。かつては複数誌が100万部を超えていたが、「週刊少年マガジン」が100万部超えの枠組みから脱落したことで、少年向けコミック誌で(紙媒体としての)100万部超えのコミック誌は「週刊少年ジャンプ」だけとなってしまった。恐らくはこの状態が今後も継続するのだろう。やはりすき間時間の消費対象の代替的存在、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末の普及による影響は極めて大きい。

他方、唯一のミリオンクラブ会員でトップを行く「週刊少年ジャンプ」だが、直近データで確認すると印刷証明付き部数は現在176万0833部。雑誌では返本や在庫本(売れ残り)なども存在するので(返本率などは部数動向では非公開)、それを勘案すると最終消費者の手にわたっている冊数は、これよりも少なくなる。雑誌の種類やジャンルによって返本率は大きな変動があるが、暫定値として4割と試算すると(上場している取次会社の決算資料の限りでは、雑誌の返本率は大よそ4割)、実セールスは110万部足らずだろうか。あるいはジャンプだからこそもう少し返本率は低いかもしれないが、雑誌別の返本率は非開示であるため、その実情は分からない。

↑ 印刷証明付き部数(週刊少年ジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊少年ジャンプ、部)

同誌はピーク時となる1995年では635万部の値を出していた記録を目にするに、その3割足らずにまで落ちてしまった現状は、時代の流れを感じさせる。「週刊少年マガジン」の100万部割れと併せ、雑誌全体の歴史において一つの時代を刻んだ流れと考えれば、冷静に受け止めることもできるのだが。

コンビニなどでもよく見かけるメジャーな週刊コミック誌で、【週刊少年サンデーがダイナミックなリストラクチャリングをするという話】でも伝えた通り、大規模かつ大胆な組織構造改革宣言を行った「週刊少年サンデー」の部数は、今四半期では29万8333部。容易に取得可能な最古のデータとなる2008年の4月から6月期における86万6667部からは約34%にまで部数を減らしている。

↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー、部)

グラフの形状からも分かる通り、何度か大胆な改革により部数持ち直しの気配も見られたが、全体的な流れに逆らうまでには至っていない。今回の改革に関しても、現時点ではその成果は数字には現れていない。もっとも2015年8月に宣言を始めたのだから、今回の該当期間で成果を見せろとは難しい話であり、むしろ今後の動向に期待をしたいところ。

他方後ほど言及するが、コミック誌は多分に電子化が進んでおり、電子雑誌版に流れた読者が原因で、「印刷」部数が上向きになっていないだけの可能性も否定できない。

続いて男性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数(男性向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数(男性向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)

男性向けコミック誌は少年向けと比べると印刷証明付き部数の規模が小さく、また飛びぬけた値を示すコミック誌が無いため、上位陣では比較的きれいな部数の差異による傾斜のグラフが生成される。また第5位以降の部数差異はごく少数で、ちょっとしたヒット作の登場があれば、順位が塗り替えられるかもしれない。

男性向けコミック誌では今期において「ヤングアニマル嵐」が非公開化された。同誌は現時点で紙媒体版も電子版も刊行が継続されていることが確認されており、また休刊の告知も無い。公開に関する何らかの方針転換が行われたようだが、兄弟誌に該当する「ヤングアニマル」は公開継続中であり、不思議な状況ではある。

↑ 印刷証明付き部数(ヤングアニマル嵐、部)
↑ 印刷証明付き部数(ヤングアニマル嵐、部)

部数動向は下落基調にあるとはいえ、突然部数の非公開化をする理由には成り難い感はあるのだが。

前四半期比較で動向精査…少年向けでプラスが1誌


続いて公開データを基に各誌の前・今四半期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。コミック誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、コミック誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

なおデータが雑誌社側の事情や休刊などで非開示になったコミック誌、今回はじめてデータが公開されたコミック誌は、このグラフには登場しない。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)

今四半期で前四半期比によるプラス計上のコミック誌は1誌「ウルトラジャンプ」のみ。誤差(上下幅5%以内)を超えた確実なマイナスは3誌、「別冊コロコロコミックスペシャル」「コロコロイチバン!」「ジャンプスクエア」。

一番大きな下げ幅を計上した「別冊コロコロコミックスペシャル」は隔月刊誌で該当期間に刊行されたのは1誌のみ。後述する前年同期比でも大きな下げ幅を示しており、単純に前期が特殊な理由で大きく伸びたことの反動によるものでも無い。

↑ 印刷証明付き部数推移(別冊コロコロコミックスペシャル)(部)
↑ 雑誌印刷実績推移(別冊コロコロコミックスペシャル)(部)

このままの勢いで部数が減少し続けると、あまり好ましくない状況になる可能性は否定できない。

続いて男性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)

プラス計上をしたコミック誌は無し。プラスマイナスゼロが「グランドジャンプ」「モーニング2」の2誌。

他方、誤差を超えた下げ幅を示したコミック誌も無し。珍しい傾向ではあるが、「部数を減らしたとはいえ誤差範囲に留まっている」と解釈できるのは悪い話では無い。

前年同期比で検証…年ベースでプラスは1誌のみ


続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2018年1-3月分に関する検証であることから、その1年前にあたる2017年1-3月分の部数との比較となる。年ベースと少々間が空いた期間の比較となるが、コミック誌の印刷実績で季節変動を除外し、より厳密に知ることができる。数十年もの歴史を誇るコミック誌もある中で、わずか1年で数十パーセントもの下げ幅を示すコミック誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる…とはかつて用いていた表現だが、最近では「見受けられる」では無く「少なくない」と差し換えた方がよい状況となっている。1割2割は当たり前、とは少々言い過ぎかもしれないが。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)

プラスのコミック誌は1誌、「月刊コロコロコミック」のみ。誤差領域を超えた下げ幅を示したのは10誌、10%以上の下げ幅は6誌。

水曜発売の週刊誌として相並び紹介されることが多い、そして昨今では100万部割れで注目を集めた「週刊少年マガジン」と、その宿命的ライバルな存在の「週刊少年サンデー」の部数動向は次の通り。

↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー/週刊少年マガジン、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー/週刊少年マガジン、部)

「週刊少年マガジン」の方が部数は3倍近く多いが、部数の下げ方もやや急で、その差は少しずつだが縮まりつつある。このような形での競争では無く、双方とも上昇の中での競り合いを見せてほしいものだが。

もっとも両誌とも電子版を展開中で、その利用者数は少なく無いと考えられる(実数は非公開なので実情は不明だが)。紙媒体の部数のみをカウントした今値の動向は両誌の勢いでは無く、単純に紙媒体版のセールス動向を記しているに過ぎないことを注意しておく必要がある。

続いて男性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)

全誌がマイナスで誤差領域以上の下げ幅を示したのは6誌、中でも「イブニング」の下げ幅が1割強を示しており、強い危機感が改めて認識できる。他にも「ヤングマガジン」「モーニング」と名だたるコミック誌たちが大きな下げ幅を計上している。有名どころ、コンビニなどでも多々目に留まるコミック誌が軒並み名を連ねているのを見るに、もの悲しさを覚えるものがある。同時に「そういえば最近になって立ち寄り先のコンビニで見かけなくなったな」と思い返したコミック誌も複数あるだけに、複雑な心境にも追いやられる。ただし男性向けコミック誌も多分が電子化されており、電子版に読者がシフトした結果である可能性は否定できない。



本文の複数か所で触れている通り、またゲームタイトルそのものや周辺アイテムの現状からも分かる通り、一部の雑誌業界に旋風を巻き起こした「妖怪ウォッチ」の特需効果は今やその残り香を楽しむ、あるいは過去の事象としてその影響がグラフ上に表れている程度のものとなっている。シリーズ最新作も登場したが、かつてのような特需の気配は見られない。一部では特需を飲み込んで地盤固めに成功したと見られるコミック誌もあるが、多分は元ある状況に戻しを見せている。

現在は電子書籍、ウェブ漫画が浸透する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。これまでは馬車でしか行き来できなかった場所への輸送ビジネスが、バスや電車、飛行機などが登場し、馬車業界において顧客が奪われているような展開とも表現できる。

なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。【印刷証明付き部数と実売数と実展開コンテンツ数と】でも解説しているが、コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用性向も確実に上昇している。特に今記事の該当ジャンルである少年・男子コミック誌は電子化率が高く、そのため印刷証明付き部数が減少を続けても、各雑誌そのものの需要がそれと連動する形で減退しているとは限らないことは認識しておかねばならない。今件はあくまでも紙に印刷した形で提供されている雑誌に限った動向である。上記のたとえなら、馬車の利用客は減退しても、その分バスや電車の利用者が増えており、行先への来訪客数は変わらない、あるいは増えてることもあり得よう。

出版社の中には市場の需要に合わせて積極的に電子化を進め、コンテンツの提供ができれば、そしてビジネスとなるのなら、紙媒体であろうが電子版であろうが気にならないとの姿勢を示すところもある。結果として当然ながら、紙媒体の印刷数は減ってしまうが、それは雑誌全体の売れ行きが低迷したのでは無く、あくまでも紙刷りの雑誌の部数が減ったまでに過ぎない(それ自身は大きな問題には違いないのだが)。

そしてこの電子書籍・雑誌に関する発行…というよりは実売数に関しては、各社とも開示に否定的なのが現状であり、印刷証明付き部数のように定点観測的な比較対象など不可能であることを記しておく。提供される電子書籍・雑誌スタンドが多数に及んでおり、個々のスタンドでの統計を総合するのは業界単位では難しく、さりとて売上として実数を掌握している雑誌の提供元である出版社では秘匿性の高い情報として第三者への公開開示を拒んでいるのが実情ではある(現時点ではよほどセールスが大きなもので無い限り、メリットは何も無い。ゲームソフトで「ダウンロードも合わせて100万本出荷達成」といったリリースが流れることがあるが、そのような突出した好成績を挙げた時ぐらいだろう)。

利便性、利点を思い返せば、紙媒体による雑誌そのものが無くなることはありえない。しかし今後さらに紙媒体としてのビジネスの上では過酷な状況が待ち受けている。これから紙媒体の市場が広がり、売上がアップするような未来は想像しがたい。その厳しい実情の中で理性を失わず、コンテンツを提供する自らの立場を誇りとし、環境の変化に合った施策を取るか否か。その点にこそ、各雑誌社、雑誌編集部局の実力と本質が現れるのでは無いだろうか。

また、今件印刷証明付き部数の存在意義もここ数年で「コンテンツそのものの集客力、訴求力」から「紙媒体としての雑誌の集客力、訴求力」へと、随分と限定されたものとなっているのは否めない。色々と問題はあるのだろうが、出版業界のすう勢を正しく掌握できるよう、今件の印刷部数と同じように、電子書籍・雑誌版の提供部数(も合わせた数字の総括的な)公開を、日本雑誌協会のような業界団体には強く願いたいものだ。


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