付録で盛り上がる雑誌が…少年・男性向けコミック誌部数動向(2019年4-6月)

2019/09/05 11:13

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2019-0905専用の電子書籍・雑誌リーダーだけでなくパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇の一途にあるとの解釈もある。一方で紙媒体の本は相対的な立ち位置の揺らぎを覚え、多分野でビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。主に子供向けとして提供されているコミック誌業界においては、さらに子供の娯楽や価値観の変化も加わり、ビジネス的に厳しい立場に追い込まれ、よりリスクが低く新天地のように見えるウェブベースでの展開に移行する雑誌が相次いでいる。社団法人日本雑誌協会では2019年9月3日付で、四半期毎に更新・公開している印刷部数に関して、公開データベース上の値に最新値の2019年4-6月分の値を反映させた。そこで今回は各雑誌が一般向けに、あるいは営業の中で提示する値よりもはるかに実態に近い、この公開された「印刷証明付き部数」を基に、「少年・男性向けコミック誌」の動向に関して複数の切り口からグラフ化を行い、現状を精査していくことにする。

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一誌ずば抜けた強さに変わりは無いが…直近四半期の動向


データの取得場所の解説、「印刷証明付き部数」など各種文中の用語の解説、諸般注意事項、同一カテゴリの過去の記事は一連の記事の解説ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明・収録済み。詳細はそちらで確認のこと。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」が群を抜いている状況は前期から変わらず。今記事におけるもう一つの対象ジャンル「男性コミック誌」と合わせても、唯一のダブルミリオンセラー(200万部以上の実績)誌として君臨中…だったのだが、開示されている記録の限りでは2017年1-3月期にはじめてその大台を割り込み、今期でも挽回はならず、200万部割れが継続する形となった。次いでやや年上の少年向けコミック誌「週刊少年マガジン」、さらには小学生までの低年齢層向け(主に男子向け)コミック誌「月刊コロコロコミック」。

少し前までは「月刊コロコロコミック」「週刊少年マガジン」も合わせ3誌が100万部超えだったものの、「妖怪ウォッチ」によるけん引効果が切れ、「月刊コロコロコミック」が脱落。そして2016年7-9月期で「週刊少年マガジン」も100万部を割り込んでしまっている。今期では印刷証明付部数の公開が無くなった雑誌が無いのは幸いか。

↑ 印刷証明付き部数(少年向けコミック誌、万部)(2019年1-3月期と2019年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(少年向けコミック誌、万部)(2019年1-3月期と2019年4-6月期)

今件「印刷証明付き部数」は現時点では2008年第2四半期以降の値が公開されている。かつては複数誌が100万部を超えていたが、「週刊少年マガジン」が100万部超えの枠組みから脱落したことで、少年向けコミック誌で(紙媒体としての)100万部超えのコミック誌は「週刊少年ジャンプ」だけとなってしまった。恐らくはこの状態が今後も継続するのだろう。やはりすき間時間の消費対象の代替的存在、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末の普及による影響は極めて大きい。

他方、唯一のミリオンクラブ会員でトップを行く「週刊少年ジャンプ」だが、直近データで確認すると印刷証明付き部数は現在165万5833部。雑誌では返本や在庫本(売れ残り)なども存在するので(返本率などは部数動向では非公開)、それを勘案すると最終消費者の手にわたっている冊数は、これよりも少なくなる。雑誌の種類やジャンルによって返本率は大きな変動があるが、暫定値として4割と試算すると(上場している取次会社の決算資料の限りでは、雑誌の返本率はおおよそ4割)、実セールスは100万部ほどだろうか。あるいは「週刊少年ジャンプ」だからこそもう少し返本率は低いかもしれないが、雑誌別の返本率は非開示であるため、その実情は分からない。

↑ 印刷証明付き部数(週刊少年ジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊少年ジャンプ、部)

同誌はピーク時となる1995年では635万部の値を出していた記録を目にするに、その3割足らずにまで落ちてしまった現状は、時代の流れを感じさせる。「週刊少年マガジン」の100万部割れとともに、雑誌全体の歴史において一つの時代を刻んだ流れと考えれば、冷静に受け止めることもできるのだが。

コンビニなどでもよく見かけるメジャーな週刊コミック誌で、【週刊少年サンデーがダイナミックなリストラクチャリングをするという話】でも伝えた通り、大規模かつ大胆な組織構造改革宣言を行った「週刊少年サンデー」の部数は、今期では26万3333部。容易に取得可能な最古のデータとなる2008年4-6月期における86万6667部からは約30%にまで部数を減らしている。

↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー、部)

グラフの形状からも分かる通り、何度か大胆な改革により部数持ち直しの気配も見られたが、全体的な流れに逆らうまでには至っていない。今回の改革に関しても、現時点ではその成果は数字には現れていない。2015年8月に宣言を始めたこともあり、ほぼ4年がすでに経過したことになるのだが。他方、後ほど言及するが、コミック誌は多分に電子化が進んでおり、電子雑誌版に流れた読者が原因で、「印刷」部数が上向きになっていないだけの可能性も否定できない。

続いて男性向けコミック誌。こちらも今期では印刷証明付部数の公開が無くなった雑誌は無し。

↑ 印刷証明付き部数(男性向けコミック誌、万部)(2019年1-3月期と2019年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数(男性向けコミック誌、万部)(2019年1-3月期と2019年4-6月期)

男性向けコミック誌は少年向けと比べると印刷証明付き部数の規模が小さく、また飛びぬけた値を示すコミック誌が無いため、上位陣では僅差で順位を競り合う雑誌が複数見られる。ちょっとしたヒット作の登場があれば、印刷証明付き部数の順位が塗り替えられるような状況。

トップを行くのは「週刊ヤングジャンプ」の46.6万部。ついで「ビッグコミックオリジナル」の45.3万部、ヤングマガジンの32.5万部。「週刊ヤングジャンプ」と「ビッグコミックオリジナル」の部数差はわずかで、今後順位が入れ替わる可能性は十分にある。

少年向けで大きなプラス誌が…前四半期比較で動向精査


続いて公開データを基に各誌の前・今期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。コミック誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、コミック誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

なおデータが雑誌社側の事情や休刊などで非開示になったコミック誌、今回はじめてデータが公開されたコミック誌は、このグラフには登場しない。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前期比)(2019年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前期比)(2019年4-6月期)

今期で前期比によるプラスを示したコミック誌は4誌、誤差領域(上下幅5%以内)を超えた確実なマイナスは4誌。

大きな伸びを示した「別冊コロコロコミックスペシャル」だが、今期における発行誌は2誌で、そのうち2019年6月号の付録「神バディファイト52枚デッキセット・『ガルガンチュア・ナイト・ドラゴン』」が大いに人気を博し、これが部数の底上げに貢献したようだ。

↑ 印刷証明付き部数(別冊コロコロコミックスペシャル、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊コロコロコミックスペシャル、部)

最盛期の26万5000部と比べれば物足りなさは否めないが、ここ数年は部数を減らし続けていただけに、今期の結果は大いに評価できる。

前期比では最大の下げ幅を示した「月刊少年シリウス」だが、これは前期の反動によるところが大きい。

↑ 印刷証明付き部数(月刊少年シリウス、部)
↑ 印刷証明付き部数(月刊少年シリウス、部)

前期では連載中の「転生したらスライムだった件」のテレビアニメが2018年10月から2019年3月にかけて放映され、さらにその放映中の2019年3月17日には第2期の制作が決定し、その特集が該当期の発刊号でも組まれたことが大きく影響した。

今はその反動で落ち込んだことになるが、それでも後述する前年同期比では大きなプラスを示している。とはいえ、部数そのものは1万部を切ってしまっている。電子雑誌版もあるとはいえ、寂しい値に違いは無い。

続いて男性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前期比)(2019年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前期比)(2019年4-6月期)

プラスを示した雑誌は2誌、誤差領域を超えた下げ幅を示したのは2誌「月刊!スピリッツ」「アフタヌーン」。「モーニング2」は誤差領域を超えた上げ幅を示し、評価に値するが、部数そのものは1万2233部。もっとも大きな下げ幅の「月刊!スピリッツ」は5500部。いずれも少々の部数変動で比率が大きく動いてしまうのが実情ではある。

少年向けで2誌が突出…前年同期比で検証


続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2019年4-6月分に関する検証であることから、その1年前にあたる2018年4-6月分の部数との比較となる。年ベースと少々間が空いた期間の比較となるが、コミック誌の印刷実績で季節変動を除外し、より厳密に知ることができる。数十年もの歴史を誇るコミック誌もある中で、わずか1年で数十パーセントもの下げ幅を示すコミック誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる…とはかつて用いていた表現だが、最近では「見受けられる」では無く「少なくない」、それどころか「多々見受けられる」と差し換えた方がよい状況となっている。1割2割は当たり前、とは少々言い過ぎかもしれないが。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)(2019年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)(2019年4-6月期)

プラスのコミック誌は2誌、「月刊少年シリウス」「別冊コロコロコミックスペシャル」。誤差領域を超えた下げ幅を示したのは10誌、10%以上の下げ幅は9誌。

「月刊少年シリウス」「別冊コロコロコミックスペシャル」それぞれのプラス化の理由はすでに解説済みの通り。「月刊少年シリウス」は前期比では大きなマイナスだったが、それでも前年同期比ではまだ大きなプラスを示すほどの部数を維持している。

「少年サンデーS(スーパー)」の大きなマイナスぶりの理由は、前年同期において映画「ゼロの執行人」をきっかけに注目された登場人物の安室透氏に絡めた企画が功を奏し部数が大幅アップしており、その反動によるもの。

↑ 印刷証明付き部数(少年サンデーS(スーパー)、部)
↑ 印刷証明付き部数(少年サンデーS(スーパー)、部)

今期でも「名探偵コナン」やそのスピンオフなどを表紙などで大きく取り上げているが、部数の立て直しは難しいのが現状。もっとも2016-2017年の低迷期の部数と比べれば、相当持ち直してはいるのだが。

水曜発売の週刊誌として相並び紹介されることが多い、そして昨今では100万部割れで注目を集めた「週刊少年マガジン」と、その宿命的ライバルな存在の「週刊少年サンデー」の部数動向は次の通り。

↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー・週刊少年マガジン、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊少年サンデー・週刊少年マガジン、部)

「週刊少年マガジン」の方が2倍以上も部数は多いが、部数の下げ方もやや急で、その差は少しずつだが縮まりつつある。このような形での競争では無く、双方とも上昇の中での競り合いを見せてほしいものだが。

もっとも両誌とも電子版を展開中で、その利用者数は少なくないと考えられる(実数は非公開なので実情は不明)。紙媒体の部数のみをカウントした今値の動向は両誌の勢いではなく、単純に紙媒体版のセールス動向を記しているに過ぎないことを注意しておく必要がある。

続いて男性向けコミック誌。

↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)(2019年4-6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)(2019年4-6月期)

全誌マイナス領域で、誤差領域を超えた下げ幅を示したのは14誌。「アフタヌーン」「月刊!スピリッツ」「モーニング2」「ヤングアニマル」「イブニング」と名だたるコミック誌たちが1割を超える下げ幅を示している。有名どころ、コンビニなどでも多々目に留まるコミック誌が軒並み名を連ねているのを見るに、もの悲しさを覚えるものがある。同時に「そういえば最近になって立ち寄り先のコンビニで見かけなくなったな」と思い返したコミック誌も複数あるだけに、複雑な心境にも追いやられる。ただし男性向けコミック誌も多くが電子化されており、電子版に読者がシフトした結果である可能性は否定できない。



現在は電子書籍、ウェブ漫画が浸透する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。これまでは馬車でしか行き来できなかった場所への輸送ビジネスが、バスや電車、飛行機などが登場し、馬車業界において顧客が奪われているような展開とも表現できる。

なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。【印刷証明付き部数と実売数と実展開コンテンツ数と】でも解説しているが、コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用性向も確実に上昇している。特に今記事の該当ジャンルである少年・男子コミック誌は電子化率が高く、そのため印刷証明付き部数が減少を続けても、各雑誌そのものの需要がそれと連動する形で減少しているとは限らないことは認識しておかねばならない。今件はあくまでも紙に印刷した形で提供されている雑誌に限った動向である。上記のたとえなら、馬車の利用客は減退しても、その分バスや電車の利用者が増えており、行先への来訪客数は変わらない、あるいは増えてることもあり得よう。

出版社の中には市場の需要に併せて積極的に電子化を進め、コンテンツの提供ができれば、そしてビジネスとなるのなら、紙媒体であろうが電子版であろうが気にならないとの姿勢を示すところもある。結果として当然ながら、紙媒体の印刷数は減ってしまうが、それは雑誌全体の売れ行きが低迷したのでは無く、あくまでも紙刷りの雑誌の部数が減ったまでに過ぎない(それ自身は大きな問題には違いないのだが)。

そしてこの電子書籍・雑誌に関する発行…というよりは実売数に関しては、各社とも開示に否定的なのが現状であり、印刷証明付き部数のように定点観測的な比較対象など不可能であることを記しておく。提供される電子書籍・雑誌スタンドが多数に及んでおり、個々のスタンドでの統計を総合するのは業界単位では難しく、さりとて売上として実数を掌握している雑誌の提供元である出版社では秘匿性の高い情報として第三者への公開開示を拒んでいるのが実情ではある(現時点ではよほどセールスが大きなもので無い限り、メリットは何も無い。ゲームソフトで「ダウンロードも合わせて100万本出荷達成」といったリリースが流れることがあるが、そのような突出した好成績を挙げた時ぐらいだろう)。

利便性、利点を思い返せば、紙媒体による雑誌そのものが無くなることはありえない。しかし今後さらに紙媒体としてのビジネスの上では過酷な状況が待ち受けている。これから紙媒体の市場が広がり、売上がアップするような未来は想像しがたい。その厳しい実情の中で理性を失わず、コンテンツを提供する自らの立場を誇りとし、環境の変化に合った施策を取るか否か。その点にこそ、各雑誌社、雑誌編集部局の実力と本質が現れるのでは無いだろうか。

また、今件印刷証明付き部数の存在意義もここ数年で「コンテンツそのものの集客力、訴求力」から「紙媒体としての雑誌の集客力、訴求力」へと、随分と限定されたものとなっているのは否めない。色々と問題はあるのだろうが、出版業界のすう勢を正しく掌握できるよう、今件の印刷部数と同じように、電子書籍・雑誌版の提供部数(も合わせた数字の総括的な)公開を、日本雑誌協会のような業界団体には強く願いたいものだ。むしろ逆に、それができない現状こそが、出版業界全体が抱えている問題点なのだが。


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