安定感を持つ小幅な値動きに留まる(2014年6月分世界食糧指数動向)

2014/07/11 15:30

日本では冷夏リスクや昨今の台風の上陸で農作物の出来栄えが今から心配されているが、一歩視線を引いて見ると、世界各地で自然現象をはじめとするさまざまな要因により農作物の出来不出来が生じ、さらに人々の思惑も複雑に絡み、食料品価格は日々変動を重ねている。それら国際的な食料品の価格変動を、俯瞰的な視点でチェックできるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月発表している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2014年7月3日に発表された最新版の値となる、2014年6月分を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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砂糖と食肉が上昇気味だが、前月比ではほぼ横ばい


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2014年6月分を含めた収録データを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年6月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年6月)

砂糖は価格変動性が高い食料品。投機的な対象の食品(もちろん先物)として多くの作品に登場していることから、その実態を見聞きした経験がある人は多いはず。その実情、成り行きをグラフ上の動きで知ることが出来る。それ以外の食品項目は大よそ2005年位まではさほど大きな動きを示していない。値を大変動させるだけの事象が無かったことに加え、投機対象にもならなかったのが要因。

しかし2005年終盤以降になると、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が上昇し始める。その後直近の金融危機のトリガーとなる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きると共に、個々の項目は目覚めたように上昇機運を示す。

これらの動きは、主に株式市場の暴落によるもの。なぜ株価が暴落すると食料品価格が上昇するかというと、「株式市場の暴落で資金が逃げ出す」「逃げ出した投資資金の流入先として商品先物が目を付けられる」「多数の投資家が商品先物市場を投資先に選び、資金が投入されてしまう」「元々投機的な市場動向に、さらなる拍車がかかる」という次第である。また市場規模は商品先物市場の方が小さいため、大量の資金が流れ込むことで、各市場の反応は大きなものとなる。

その後は反動による急降下、「リーマンショック」(2008年9月以降)による乱高下を経て、現在の高値安定状態に移行。各食品項目は200から250位のボックス圏で位置している。基準値、かつ今世紀初頭までは水準的な値の「100」と比べると、2倍以上の状態で推移しているのは、安定ではあるが、安心や安寧とはやや違う感はある。

次に示すグラフは、横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月としたもの。この年の7月・8月から、直近の金融危機のきっかとなった「サブプライム・ローン」問題が露呈し、市場は大変動の動きを示す。そのため昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく確認できる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年6月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年6月)

砂糖価格が激しい勢いのもとに変動しているが、それ以外の食料品では穀物と油脂が1、2年ほどやや値を下げ、乳製品は上昇したあと、下降の動きを示しているのが分かる。一方で食肉は2009年以降じわじわとだが確実に上昇基調にあり、その歩みの安定ぶりが、逆に不気味さを覚えさせる。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するために、各指標の月次データを用いて「前年同月比」と「前月比」を当方で算出し、その数字の変移が分かりやすいようにグラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年6月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年6月)

総合指数は前月比でマイナス1.8%、前年同月比はマイナス2.8%。いずれもマイナスを示している。この一年来では全体的な価格は安定、やや下がり気味な状況。

個別項目では前月比はやや穀物と油脂が下がり気味な気はするが、それでもさほど大きな幅では無く、安定した値動きの中にある。他方前年同月比(季節変動などをのぞいて純粋に年ベースでの動向を推し量れる)では食肉と砂糖が大きく上げ、穀物が下げている。これらの動きから、食肉や砂糖はこの一年でやや上昇したが昨今では横ばい、穀物はこの一年下げ基調が続いていることが読み取れる。

穀物の動きがやや気になるのでリリースでその詳細を確認すると、主に小麦とトウモロコシの値下がりが原因とし、その理由に「収穫見通しの改善」「穀倉地帯であるウクライナからの出荷減少懸念が和らいだため、その反動」を挙げている。一方米価格はわずかな上昇を示したが、これは対国内における米市場の混乱(政治的混乱に伴う米買取制度への不安)が要因。

また、日本では価格の上昇が注目されている乳製品については、今月分のデータは前月比・前年同月比共にマイナスを示しているが、これについて下落方面への価格調整が続いており、さらに値を下げるかもしれないと言及している。チーズ価格は需要が大きく値を底上げしているが、粉ミルクが供給過剰気味となり、これが乳製品全体の価格を下げる要因となっていると説明ている。

農林水産省のレポートで現状を確認


今記事で付随的資料として毎月精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、6月30日に更新された2014年6月分を確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、米で生産量が増加するものの、小麦、とうもろこし、大麦で減少し、史上最高を示した前年度を下回る見込み。他方消費量は小麦・大麦で減少するが、とうもろこし・米で増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.3億トン)。そして期末在庫量見込みは生産量が消費量をほんのわずかだが上回ることから、上昇する傾向を示している(5億1190万トン、生産量比で21.0%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

生産量に関して減少が予想される小麦、とうもろこし、大麦だが、小麦は収穫面積や単収の低下がカナダやアメリカで発生、とうもろこしは中国やアルゼンチンなどで増加するものの、ウクライナでの単収減少やインドやブラジルでの減少、そして大豆はEUやトルコ、カナダでの減少によるものとしている。

穀倉地帯でもあり世界の食料事情に小さからぬ影響を与えるウクライナ地方の政治情勢だが、6月ではやや状況改善の影響が生じていたものの、現在にいたるも同地方の情勢は不安定なままにあることに違いは無い。一応レポートでは例えば小麦について「政治的・経済的混乱の穀物輸出への影響について、現時点では政府による穀物輸出業務への支障に関する発表や、輸出港や物流における支障に関する情報はみられない」「政情不安にもかかわらず、同年度の輸出量見込み(9.5百万トン)は達成されると見られる」とあり、輸出量に関する懸念は「現時点では」薄らいだと見て良いだろう。

一方気象状況においては、先月から続きアメリカ本土での低温・乾燥に伴う、小麦の生育の不作が懸念視されている。市場動向に関しては、むしろこちらの方を注視すべきかもしれない。


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